💬 今回検証する通説
有事の原油高で、
資源株・海運株は買われる
30秒でわかるこの記事
- 中東の有事7回を、全上場銘柄・33業種で測りました。翌日に7戦全勝だったのは鉱業・石油石炭・非鉄金属、0勝7敗は空運だけ。
- ただし1週間後まで買われ続けたのは鉱業(原油を掘る側)だけ。1か月持って勝てる業種は33業種のどこにもありませんでした。
- 鉱業を持ち続けられるかは原油しだい。原油が5週間上がり続けた2026年3月ですら、3か月後には−10.6%まで戻しました。
- 「海運は有事で買われる」は、大手3社では翌日だけ。タンカー会社なら当たっていました。
- 売られたのは、燃料を買う側(化学)ではなく客足が減る側(空運・旅行)。翌日0勝7敗、3か月後も0勝7敗です。
判定:★★★☆☆
中東で何かが起きると、決まって「石油株を買え」「海運株を買え」と言われます。私も何度も耳にしてきましたし、実際に買ったこともあります。ただ、それが本当に毎回そうなる動きなのか、それとも印象なのか。2019年からの中東の有事7回を、東証の全上場銘柄でさかのぼって数えてみました。通説の「資源」と「海運」で答えが分かれ、しかも「買われる株」より「売られる株」のほうがそろっていました。
この記事でわかること
- 有事の翌日、33業種のどこが買われ、どこが売られたのか
- それが1週間後・1か月後まで続くのか
- 「海運は有事で買われる」の正体はどの会社なのか
- 原油が5週間上がり続けた2026年3月に、何が起きたのか
検証した7つの局面
中東で何かが起きて原油に注目が集まった、次の7回です。どの局面も「東京市場が最初に反応できた営業日」の前の営業日の終値を基準にして、そこから翌日・1週間後(5営業日)・1か月後(20営業日)・3か月後(60営業日)の値動きを測りました。土日や祝日に起きた出来事は、休み明けの最初の営業日が反応した日です。
| 局面・きっかけ | 基準日→ 最初に反応した日 | 原油(WTI)の 1か月の最大上昇 | TOPIX 翌日 | TOPIX 1か月後 |
|---|
2019/09 サウジの石油施設が無人機攻撃で一時停止 | 9/13→9/17 | +15% | +0.3% | +1.3% |
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2020/01 米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害 | 12/30→1/6 | +3% | −1.4% | −2.8% |
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2023/10 ハマスがイスラエルを攻撃、ガザで大規模衝突 | 10/6→10/10 | +8% | +2.1% | +3.0% |
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2024/04 イランがイスラエルを史上初めて直接攻撃 | 4/12→4/15 | ほぼ横ばい | −0.2% | −1.0% |
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2024/10 イランがイスラエルへ大規模なミサイル攻撃 | 10/1→10/2 | +10% | −1.4% | +0.5% |
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2025/06 イスラエルがイランを攻撃、米軍も核施設を空爆(約12日で停戦) | 6/12→6/13 | +10% | −0.9% | +1.1% |
|---|
2026/03 米・イスラエルがイランを大規模攻撃。ホルムズ海峡が事実上の封鎖に | 2/27→3/2 | +51% | −1.0% | −10.1% |
|---|
※原油の最大上昇は、基準日から30日のあいだの最高値で測ったもの。2026年3月は5週間目の4月7日に114ドル(+71%)まで上がっています。TOPIXの数字は「その局面で市場全体がどう動いたか」の目安です。
この記事の数字は、ぜんぶTOPIXとの差で書きます。同じ期間にTOPIX(東証の株価全体の平均)がどれだけ動いたかを引いた残りで、プラスなら「市場全体より強かった」、マイナスなら「弱かった」という意味です。2026年3月のようにTOPIXそのものが1か月で10%落ちた局面でも、「その中で買われたのはどこか」を同じ物差しで比べられます。
検証① 翌日、どの業種が買われ、どの業種が売られたか
まず全体の地図から。有事の翌日に、東証33業種のそれぞれがTOPIXをどれだけ上回ったか(下回ったか)を、7局面で平均したものです。業種の中は、時価総額の大きい会社ほど重く数えています(INPEXが鉱業の大半を占める、というふうに)。棒の後ろにある薄い帯は「まぐれでもこのくらいは出る範囲」で、棒が帯をはみ出していれば「偶然では出にくい」と読んでください。
図1:有事の翌日、33業種がTOPIXをどれだけ上回ったか(7局面の平均)。右端は7局面のうちTOPIXに勝った回数
▼検証条件
対象:東証全上場銘柄(各局面で約3,800〜4,200銘柄。ETF・REITなど「その他」は除く)を東証33業種に分け、時価総額で加重/
局面:上の7局面/
基準:東京市場が最初に反応できた営業日の前営業日の終値/
指標:翌営業日の終値までの騰落率から、同じ日のTOPIXの騰落率を引いた値(業種の加重平均)の7局面平均/
帯:7局面の値のばらつきから求めた標準誤差の2倍/
出典:J-Quants(株価・TOPIX・業種)
上の端に鉱業(+5.3%・7勝0敗)と石油・石炭製品(+3.3%・7勝0敗)、下の端に空運(−2.2%・0勝7敗)。通説の「資源が買われる」は、翌日については本当でした。7回中7回同じ向きになる確率は、まぐれなら128回に1回(0.8%)です。33業種を並べているので、まぐれの7戦全勝が1業種くらい混じってもおかしくないのですが、鉱業・石油石炭・空運には「原油が売上に効く/客足に効く」という理屈が先にあるので、偶然扱いはしません(建設業の7戦全勝は+0.4%と小さく、理屈も思い当たらないので、こちらが「まぐれの1業種」だと思っています)。
「INPEXや日本郵船、ANAのような代表銘柄だけを見れば足りるのでは?」とも思ったのですが、選んだ銘柄が都合よかっただけ、という疑いを消したかったので、全上場銘柄で数えています。代表銘柄だけで測っても向きは同じでした。
化学は、この結果を見るまで私は「原油をコストに持つ側」として売られると思っていました。ところが化学という業種で見ると−0.2%・2勝5敗で、帯の中。ナフサを買う側の代表である三井化学そのものは翌日−0.4%と弱めでしたが、業種ぜんたいでは売られていません。「原油=コストだから売られる」という説明は、化学には当てはまりませんでした。売られたのは空運です。この話は検証⑥でもう一度出てきます。
検証② 1週間後に残った業種、1か月後に残った業種
翌日に買われた業種が、そのまま持ち続けられるのか。図1と同じ並び(翌日に買われた順)で、1週間後と1か月後の同じ数字を見ます。
図2:図1と同じ33業種を同じ順で並べ、1週間後(左)と1か月後(右)のTOPIXとの差を見たもの
▼検証条件
図1と同じ対象・基準・物差し。1週間後=基準日から5営業日目の終値、1か月後=20営業日目の終値まで/
帯:図1と同じく標準誤差の2倍。持つ期間が長いほど局面ごとの振れが大きくなるので、帯も広がる
1週間後に帯の外で残っていたのは、鉱業(+5.3%・6勝1敗)だけでした。翌日は7戦全勝だった石油・石炭製品は+2.2%・4勝3敗、非鉄金属は+0.1%・4勝3敗で、どちらも帯の中に戻っています。同じ「資源」でも、原油を掘って売る側(鉱業)と、原油を買って精製する側(石油・石炭製品)では、続く長さが違うということです。製油は原油高が売値にもコストにも効くので、初日の連想買いが終わると差が消える、と読んでいます。
1か月後は、33業種のどこにも帯の外で勝っている業種がありません。鉱業も+3.3%・3勝4敗で帯の中です。「有事で買って1か月持つ」は、どの業種でも成り立ちませんでした。反対側では、空運が1週間後−3.0%、1か月後−4.1%と沈んだままです。
1か月後の図で鉄鋼が帯の外(−2.7%・0勝7敗)に出ていますが、これは有事のせいと言い切れません。7局面のうち少なくとも4つで、決算や中国の景気対策、米国の鉄鋼関税といった鉄鋼固有の材料が同じ窓に重なっていました。脚注に置いておきます。
検証③ 鉱業の1か月後は、原油の1か月後で決まる
鉱業だけが1週間後まで残り、1か月後には消える。これを「鉱業は初動だけ強い」と読むのは正確ではないと思っています。局面ごとに、鉱業の1か月後(TOPIXとの差)と、原油(WTI)の同じ1か月の騰落率を並べてみます。
図3:局面ごとの、鉱業の1か月後(TOPIXとの差・紺)と原油の同じ1か月の騰落率(金)。原油だけはTOPIXとの差ではなく原油そのものの値動き
▼検証条件
鉱業:図1と同じ集計の20営業日目の値/
原油:WTI原油の日次価格(FRED・DCOILWTICO)。基準日の直近の値から、20営業日目の日付の直近の値までの騰落率/向きの一致=両方プラス、または両方マイナス
7局面のうち5局面で向きが同じで、原油が5%以上動いた局面では例外なく同じ向きでした。向きが違った2局面(2023年10月・2024年10月)は、原油が1か月でほとんど動かなかった局面です。2026年3月は原油が+56%、鉱業が+33%。逆に2020年1月は原油が−19%で、鉱業も−7%です。鉱業を1か月持って勝てるかどうかは、業種の性質ではなく「原油がそのあと高止まりするか」で決まっていました。原油が1か月以内に戻す局面(7局面のうち6局面がそうでした)では、鉱業も一緒に戻しています。
本質握り続けられるかは、鉱業ではなく「原油」しだい
翌日に買われるのは毎回ですが、そのあと残るかは原油が決めます。原油の先行きを読めないなら、鉱業株の1か月後も読めない、ということです。個別のエネルギー株の見分け方はエネルギー株ガイドに整理しています。
検証④ 「海運は有事で買われる」の正体
海運は、33業種では翌日+1.6%・5勝2敗、1週間後−0.5%・2勝5敗と、通説のようには買われていません。ただ、海運と一口に言っても、コンテナ船・ばら積み船が主力の大手3社と、原油を運ぶタンカーの会社では、有事の効き方が違うはずです。分けて測りました。
図4:海運の大手3社(左)とタンカー会社3社(右)の、翌日・1週間後・1か月後のTOPIXとの差(各3社の平均)
▼検証条件
大手3社:日本郵船・商船三井・川崎汽船の単純平均/
タンカー会社3社:共栄タンカー・飯野海運・明海グループ(旧・明治海運。2023年10月以降の5局面)の単純平均/基準・物差し・帯は図1と同じ。小型株は時価総額で加重すると1社で決まってしまうので、ここは単純平均
大手3社は翌日+1.5%・5勝2敗と上がるものの、1週間後には−0.8%・2勝5敗と平均でマイナスに転じます。コンテナやばら積みの運賃は原油では決まらず、世界景気や船の需給で動くからだと思います。タンカー会社3社は翌日+1.6%・6勝1敗で帯の外、1週間後も+1.2%・4勝3敗と平均プラスを保っています(ただし帯の中)。
| 銘柄 | 翌日 | 1週間後 | 1か月後 | 2026年3月の 1か月後 |
|---|
日本郵船 大手・コンテナ/ばら積み | +1.8% 5勝2敗 | −0.0% 2勝5敗 | +1.5% 3勝4敗 | +16.6% |
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商船三井 大手・タンカーも多い | +1.6% 5勝2敗 | −0.3% 3勝4敗 | +2.1% 3勝4敗 | +26.7% |
|---|
川崎汽船 大手・コンテナ/自動車船 | +1.1% 5勝2敗 | −2.1% 2勝5敗 | −1.6% 3勝4敗 | +15.8% |
|---|
共栄タンカー タンカー専業(小型株) | +2.6% 6勝1敗 | +3.8% 6勝1敗 | +11.5% 4勝3敗 | +72.7% |
|---|
飯野海運 タンカー・ガス船 | +1.1% 4勝3敗 | +0.5% 3勝4敗 | +4.4% 5勝2敗 | +17.6% |
|---|
明海グループ タンカー中心(2023年〜の5局面) | +1.0% 4勝3敗 | −0.6% 3勝4敗 | +13.9% 4勝3敗 | +108.5% |
|---|
※各社の数字はTOPIXとの差の7局面平均(明海グループは5局面)。灰色は帯の中、色つきは帯の外。右端は2026年3月の局面(ホルムズ海峡の封鎖)の1か月後
1社ずつ見ると、共栄タンカーは翌日6勝1敗、1週間後も6勝1敗(+3.8%)で、封鎖が現実になった2026年3月は1か月で+73%でした。明海グループは同じ局面で+109%。大手3社も同じ局面では+16〜27%と大きく上がっていますが、通説のように「有事のたびに」買われていたのはタンカー会社のほうです。「海運は有事で買われる」は、船の種類を言い落としていた通説だった、というのが今回の読みです。ただしタンカー会社は小型株で、値が飛びやすいぶん沈むときも大きいので、金額ではなく向きの話として受け取ってください。
検証⑤ 2026年3月、原油が5週間上がり続けたら
7局面のうち、原油が数日で戻らずに上がり続けたのは2026年3月だけです。2月28日の攻撃のあと、WTIは67ドルから5週間かけて114ドル(4月7日)まで上がりました。この局面を60営業日(5月末まで)追ったのが図5です。TOPIXそのものは15営業日で−11.5%まで落ち、60営業日後にはほぼ元の水準に戻っています。
図5:2026年2月27日を0とした、鉱業・海運・空運のTOPIXとの差(60営業日)。金の破線は原油の天井(4月7日)
▼検証条件
対象:2026年3月の局面のみ。鉱業・海運業・空運業(東証33業種・時価総額で加重)/
基準:2026年2月27日の終値/
指標:各営業日の終値までの騰落率からTOPIXの騰落率を引いた値/
期間:3月2日〜5月末の60営業日/1局面だけなので帯はない
鉱業は1か月後に+32.7%まで行きました。INPEX単体では+38.8%です。原油が天井を打った4月7日には+20%まで縮み、そのあとも崩れて3か月後には−10.6%。INPEXは−5.6%、石油資源開発は−25.5%です。原油が5週間上がり続けた局面ですら、3か月持つと利益は消えていました。海運も+19.6%から−2.6%へ。検証③の「原油しだい」は、こういう形で効きます。原油の天井で降りないと、戻すということです。
反対側の空運は、1か月後−7.5%、3か月後−13.9%と、TOPIXが元に戻ったあとも沈んだままでした。ANAが−15.6%、JALが−12.7%です。買われた側が元に戻るあいだに、売られた側は戻っていません。
検証⑥ 売られたのは「燃料を買う側」より「客足が減る側」
空運が翌日0勝7敗なのは検証①で見ました。同じ「客足が減る側」であるホテル・旅行はどうか。空運(ANA・JAL・日本空港ビルデング)と、航空会社を除いたホテル・旅行(HIS・リゾートトラスト・共立メンテナンスなど10社)を、翌日から3か月後まで並べます。
図6:空運・空港(左)と航空会社を除いたホテル・旅行(右)の、翌日・1週間後・1か月後・3か月後のTOPIXとの差
▼検証条件
空運・空港:ANAホールディングス・日本航空・日本空港ビルデングを時価総額で加重/
ホテル・旅行:私が普段使っている銘柄の分類表の「ホテル・旅行」から航空会社3社を除いた10社前後を時価総額で加重/基準・物差し・帯は図1と同じ。3か月後=60営業日目
空運は翌日−2.0%・0勝7敗、1週間後−2.5%・1勝6敗、3か月後−9.7%・0勝7敗。ホテル・旅行も、航空会社を除いて翌日−0.9%、1か月後−2.7%、3か月後−9.6%と同じ向きです。一方で、燃料や原料として原油を買う側の総合化学(三井化学・住友化学・三菱ケミカルなど13社)は翌日−0.1%・3勝4敗で帯の中、1か月後も−1.5%で帯の中でした。有事で売られたのは「燃料が高くなる会社」ではなく「客が来なくなる会社」です。空運はその両方を持っているので、いちばん沈みました。
「空運は有事と関係なく、ずっと弱いだけでは?」という見方もあると思います。確かに、7局面の基準日の前の25営業日を見ても、空運はTOPIXに負けている局面のほうが多い(中央値で−2.7%)です。だから1か月後・3か月後の数字には「もともと弱かった」ぶんが混じっています。ただ、翌日の0勝7敗と1週間後の1勝6敗は、その前から続く弱さでは説明できない大きさです。翌日〜1週間が有事の効き目、それ以降は地合い込み、と読んでください。
意外な結論
「買われる株」を当てるより、
「売られる株」を持っていないか確かめるほうが、確実だった。
もう少し細かく分けると──「有事の金」「有事の防衛株」も翌日だけ
33業種は粗いので、私が普段使っている細かい分類(プライム中心・141グループ)でも同じ集計をしました。有事と聞いて思い浮かぶグループを抜き出したのが表3です。
| グループ | 翌日 | 1週間後 | 1か月後 |
|---|
石油・資源 INPEX・石油資源開発・ENEOS・出光など10社 | +4.2% 7勝0敗 | +3.6% 6勝1敗 | +1.9% 2勝5敗 |
|---|
金価格・貴金属 住友金属鉱山・三菱マテリアルなど6社 | +1.5% 6勝1敗 | −1.4% 3勝4敗 | −3.1% 2勝5敗 |
|---|
防衛 三菱重工・IHI・川崎重工など12社 | +1.2% 5勝2敗 | +0.4% 4勝3敗 | +0.3% 4勝3敗 |
|---|
宇宙・航空 三菱重工・IHIなど9社 | +1.7% 6勝1敗 | +0.8% 4勝3敗 | −2.0% 2勝5敗 |
|---|
総合商社 三菱商事・三井物産など8社 | +1.2% 6勝1敗 | +0.4% 3勝4敗 | +1.6% 5勝2敗 |
|---|
ガス 東京ガス・大阪ガスなど7社 | +0.9% 6勝1敗 | +2.0% 6勝1敗 | +0.9% 5勝2敗 |
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完成車 トヨタ・ホンダなど10社 | +0.3% 5勝2敗 | −1.0% 1勝6敗 | −1.8% 2勝5敗 |
|---|
タイヤ・ゴム ブリヂストンなど9社 | −0.5% 2勝5敗 | −1.1% 1勝6敗 | −1.8% 3勝4敗 |
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総合化学 三井化学・住友化学・三菱ケミカルなど13社 | −0.1% 3勝4敗 | −0.6% 2勝5敗 | −1.5% 2勝5敗 |
|---|
空運・空港 ANA・JAL・日本空港ビル | −2.0% 0勝7敗 | −2.5% 1勝6敗 | −3.2% 1勝6敗 |
|---|
※TOPIXとの差の7局面平均と勝ち数。時価総額で加重。灰色は帯の中、色つきは帯の外。グループの銘柄は私の分類表によるもので、東証の業種とは一致しません
金価格・貴金属(住友金属鉱山など)は翌日6勝1敗で買われ、1週間後には−1.4%、1か月後−3.1%。防衛・宇宙航空・重工造船も翌日は帯の外まで買われて、1か月後にはマイナスです。「有事の金」「有事の防衛株」も、翌日に買って翌日に売る動きでした。1週間後まで残っているのは、やはり石油・資源(+3.6%・6勝1敗・帯の外)と、意外なところでガス(+2.0%・6勝1敗)だけです。ガスはLNGの調達コストが上がるはずなのに買われていて、これは有事の話というより「市場全体が落ちる局面で、電気・ガス・食品のような守りの株に資金が逃げる」動きだと思っています。
なぜ、掘る側は買われ、客足が減る側は売られるのか
図7:有事の原油高が、業種のどこに効くか(仕組みの整理図)
鉱業(INPEX・石油資源開発)は原油を掘って売る側です。原油高はそのまま売値の上昇なので、買われる。ただし原油が戻れば売値も戻るので、握り続けられるかは原油しだい。空運とホテル・旅行は、有事で渡航が減る側です。空運は燃料も上がるので二重に効き、翌日から沈んで戻りません。海運はそのあいだにいて、原油を運ぶタンカーは運賃が跳ねる一方、コンテナやばら積みの運賃は原油とは別の理屈で動く。だから大手3社は向きが定まらず、タンカー会社だけが通説どおりに動いた。化学は原油をコストに持ちますが、製品の値段に転嫁できる部分もあり、客足が減るわけでもないので、業種としては売られなかった。「原油=コスト→減益→売られる」という理屈は、コストの話だけで客足の話が抜けていた、ということだと思います。
判定:「有事の原油高で資源・海運は買われる」は本当か?
「有事の原油高で、資源株・海運株は買われる」
- 〇資源株は買われる——翌日は本当(鉱業7勝0敗・石油石炭7勝0敗)。1週間後まで残るのは鉱業だけ(+5.3%・6勝1敗)
- △ただし1か月持って勝てる業種は無い。鉱業の1か月後は原油の1か月後で決まる(7局面中5局面で同じ向き)
- △海運株は買われる——大手3社は翌日だけ(1週間後−0.8%・2勝5敗)。タンカー会社なら当たっていた(翌日6勝1敗)
★3にした理由を書きます。通説の前半「資源株は買われる」は、翌日については7戦全勝で本当です。1週間後まで残るのが鉱業だけで、1か月後にはどこも残らない、という条件付きなので〇にはできません。後半の「海運株は買われる」は、大手3社では当たらず、タンカー会社なら当たる。通説の言い方が雑だっただけで、中身に当たっている部分がある。合わせて★3です。海運を大手3社だけで測っていたら、★2にしていたと思います。
この結果、実践にどう活かす?
1
有事の翌日に買うなら、鉱業か石油石炭。持つのは1週間まで
翌日は7戦全勝でも、1週間後に残るのは鉱業だけ、1か月後はどこも残りません。翌日に乗るなら「1週間で降りる」を先に決めておくほうが、このデータには合っています。
2
1週間を超えて持つなら、見るのは株ではなく原油
鉱業の1か月後は原油の1か月後で決まっていました。原油が高止まりする理由(供給が実際に止まっているか)が説明できないなら、鉱業株の1か月後も説明できません。2026年3月の鉱業は、1か月後の高値で+32.7%、原油の天井(4月7日)の時点でも+20%、3か月持つと−10.6%でした。
3
海運を買うなら、タンカー会社かどうかを先に見る
大手3社は1週間後には平均マイナスです。「海運=有事」で反射的に郵船・商船三井を買うのは、このデータでは分が悪い。タンカー会社は向きがそろっていますが小型株なので、量を抑えて。
4
まず、空運・旅行を持っていないか確かめる
翌日0勝7敗、3か月後も0勝7敗。買われる側を当てにいくより、売られる側を持っていないかを先に確認するほうが、確実に効きます。化学は業種としては売られていないので、慌てて手放す必要はありませんでした。
私の場合は
有事の原油高そのものが、そう何度もあるわけではありません。資源株を一時的に買うことはありますが、長く持ち続けることはしていません。短期で急騰するぶん、下落も急なことが多いからです。欲張らず、数日で利益を確定することがほとんどです。有事のときは上がる業種がある一方で、当然下げる業種もあるので、持ち株にそちら側が入っていれば、すばやくいったん損切りすることにしています。
まとめ
この記事のまとめ
- 有事の翌日、鉱業・石油石炭・非鉄金属が7戦全勝、空運が0勝7敗。33業種ぜんぶで見ても向きは同じでした。
- 1週間後まで残るのは鉱業だけ(+5.3%・6勝1敗)。1か月持って勝てる業種は33業種のどこにもありません。
- 鉱業の1か月後は原油の1か月後で決まる。原油が5週間上がり続けた2026年3月でも、3か月後には−10.6%。
- 海運は大手3社では翌日だけ。タンカー会社なら当たっていた(共栄タンカーは翌日6勝1敗・1週間後6勝1敗)。
- 売られたのは客足が減る側(空運・ホテル・旅行)。燃料を買う側の化学は帯の中でした。
判定:★★★☆☆ 初動は本当。1週間で残るのは鉱業だけ
Q. ホルムズ海峡が本当に封鎖されたら、海運は上がるのでは?
2026年3月がまさにその局面で、海運は1か月後に+19.6%(TOPIXとの差)まで上がりました。大手3社も+16〜27%です。ただしそれは7局面のうち封鎖が現実になった1回だけで、緊張が高まっただけの残り6局面では、大手3社は1週間後に負け越しています。「封鎖なら上がる」は本当で、「有事なら上がる」は大手3社には当てはまらない、という切り分けです。
Q. 7局面は少なくないですか?
少ないです。だから帯(まぐれでも出る範囲)を図に描いて、帯の外に出たものだけを「偶然では出にくい」と言うようにしています。7回中7回同じ向きは、まぐれなら128回に1回。ただし33業種を同時に見ているので、まぐれの7戦全勝が1業種くらい混じる(建設業がそれだと思っています)ことは、頭に入れておいてください。
Q. 小型株でも同じですか?
翌日の空運の弱さは、ANA・JAL(TOPIXの大型・中型)に集中していて、小型の空運業(航空測量やLCCなど)はほぼ動いていません。鉱業も大型ほど反応が大きい(INPEXのような大型で+7%台、小型で+1%)。「業種の話」というより「その業種の大手の話」と読むのが正確です。
Q. 比べる相手が日経平均ではなくTOPIXなのはなぜですか?
日経平均は値がさ株の影響が大きく、有事の日にファーストリテイリングや半導体株がどう動いたかで数字が変わってしまうためです。全上場銘柄の平均に近いTOPIXのほうが「市場全体より強かったか」を測る物差しとして素直だと考えました。
本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。
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