「昨夜SOXが下げたから、今日は東エレクも安いだろう」。半導体株を見ている人なら一度は口にする通説です。私も毎朝SOXを確認しますが、21年分のデータで検証すると、効くのは大きく下げた日だけという結果でした。
※本記事では、SOX指数と値動きの連動性が高いETF「SOXX」を代理データとして使っています(理由は末尾のQ&Aへ)。
- SOXが下げた翌日、日本の半導体は65%の確率で下落・平均-0.81%。向きとしては通説どおりでした(過去5,226営業日)。
- ただし効いているのは下げ幅の大きさ。小幅安(〜−1%)の翌日は約55%とほぼ五分ですが、−2%超では8割超に跳ね上がります。
- 連動の強さは相関r=0.47。「SOXを見れば翌日が分かる」ではなく、”程度”で測るべき関係です。SOXは翌日の主役の一人ですが、全部ではありません。
- 判定:★★★★☆(条件付きで正しい)
- 対象:東京エレクトロン(8035)・アドバンテスト(6857)の等加重平均を、日本の半導体(装置)株の代表とする
- 米半導体:フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の代理としてSOXX(iシェアーズ半導体ETF)の前営業日リターンを使う
- 対応:米国市場は日本の早朝に引けるため、「SOX前日 → 日本翌日」で突き合わせる。期間は2005-03-01〜2026-07-15(5,226営業日)
- 指標:株価リターンの比較(配当は未考慮)。特定銘柄の売買を勧める趣旨ではありません。出典=Stooq、集計は私の自作です
そもそも、SOXと日本の半導体はどう繋がっているのか
SOXは米国に上場する半導体銘柄で構成される株価指数です。エヌビディアやマイクロン、AMDといった顔ぶれで、世界の半導体需給とAI投資の温度感がここに映ります。日本の東京エレクトロンやアドバンテストは、その顧客・競合・サプライチェーンでつながっているので、値動きが連動しやすい——ここまでは自然な話です。
ポイントは時差です。米国市場が引けるのは日本時間の早朝で、日本市場が開くのはその後。つまり日本の半導体株は、前夜のSOXの結果を受けて寄り付きます。だから「SOX前日 → 日本翌日」という順番で並べて数えるのが筋になります。この記事もその対応で集計しました。
SOXが下がった翌日、日本は本当に下がるのか
SOXの前日の騰落を7つの階級(大きく下げた〜大きく上げた)に分け、それぞれの翌日に日本の半導体がどう動いたかを平均したのが図1です。
方向としては通説どおり、連動は確かに存在します。SOXが−3%超下げた翌日は平均-2.78%、逆に+2%超上げた翌日は平均+1.91%。ところが階段の”段差”に注目すると、話は単純ではありません。SOXが小さく下げた(−1〜0%)だけの翌日は平均-0.13%と、ほとんど動いていないのです。
効くのは”下げ幅”しだいだった
同じことを「翌日に下落した割合」で見ると、非対称がもっとはっきりします(図2)。
小幅安(−1〜0%)の翌日に日本が下がる確率は約55%。これはほぼコイン投げで、「SOXが少し下げた」だけでは翌日の予想材料にほとんどならないということです。ところが下げ幅が−2〜−3%になると81%、−3%超では84%へと跳ね上がります。大きく崩れた夜の翌日だけ、日本はほぼ逃げられない——そういう構図でした。
ただし本当に効くのは、−2%以上下げた日だけ。
なぜ”下げ幅しだい”になるのか
この結果は、次のように考えると理解しやすいでしょう。日本の半導体株の1日の値動きには、為替や国内の個別材料、その日の地合いなどSOX以外の要因がたくさん混ざっています。SOXが1%そこそこ下げたくらいの小さな信号は、こうしたノイズに埋もれてしまう。一方、SOXが2〜3%と大きく崩れる夜は、AI・半導体そのものへの見方が変わったサインであることが多く、為替や個別材料といったノイズを上回るほど影響が強くなり、翌日の日本にまで伝わってきます。
実際、連動の強さを表す相関係数はr=0.47でした。完全に連動する1.0にはほど遠く、ある程度は動きを共有するが、半分以上は別の要因で決まるくらいの強さです。SOXは翌日を左右する主役の一人ではありますが、全部ではない、と読むのが正直なところだと思います。
また対象は翌日1日ぶんの反応で、その先の値動きは別の話です。相関r=0.47は「傾きはあるが、外れる日も多い」という程度の強さだと受け止めてください。SOX安でも、為替やその銘柄固有の材料で逆行高になる日はふつうにあります。
私は寄り前に米SOXの引けを必ず見ますが、−1%前後なら「まあ誤差」と流します。反応を変えるのは、SOXが−2%、−3%と大きく崩れた朝だけ。そういう日は無理に取りにいかず、寄りの気配を一段慎重に見る——それくらいの使い方に落ち着いています。
- 〇SOX下落の翌日、日本は65%の確率で下落・平均-0.81%。階段もきれいに右肩上がりで、連動は確かに存在する。
- △効くのは下げ幅しだい。小幅安(〜−1%)の翌日は約55%とほぼ五分で、はっきり効くのは−2%超に限られる。
- ×連動の強さは相関r=0.47どまり。SOXだけで翌日は決まらず、「SOXが下げた=必ず下げる」とは言えない。












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