「日経平均から外された株は戻る」は本当か?|本が書かれた頃は戻っていました。いまのルールでは戻りません

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

💬 今回検証する通説
日経平均から外された株は、
売られすぎたところから戻る
30秒でわかるこの記事
  • 「まとめて売られる日」は実在しました。入れ替えの前日、その銘柄の出来高はふだんの13.8倍(27件中11件は20倍超)。
  • 本が書かれた頃(2021年まで)は、本のとおり戻っていました。前日の引けで買って5営業日で+2.17%・勝率62.5%
  • ところが2022年10月にルールが変わってからは戻りません。同じ持ち方で−1.16%・勝率33.3%、20営業日では−4.51%です。
  • 落ちる場所も入れ替わりました。昔は知らされた翌日に一気に、いまは外されたあとに落ちています。
  • 手が出せるのは定期入れ替えのぶんだけでした。臨時の除外14件のうち10件は、上場そのものが無くなっています
判定:★★☆☆☆

日経平均の入れ替えで外される銘柄は、指数に合わせて動くお金にまとめて売られます。だったらそこは売られすぎで、あとから戻るのではないか——これは柳橋義昭さんの『先回りイベント株投資』という本でも紹介されている、それなりに知られた狙い方です。10年ぶんの入れ替えを1件ずつ数えてみました。結果は★2。本が書かれた頃までは、本のとおり戻っていました。ただ2022年10月に日経平均の選び方のルールが変わってからは、まとめて売られる日の引けで買っても、戻っていません。

この記事でわかること
  1. 外される銘柄が、いつ・どれだけ売られているのか
  2. 「入れ替えの前日の引け」で買うと、そのあとどうなったのか
  3. 本が書かれた頃は戻っていたのに、いまは戻らなくなっていること
  4. この結果を、日々の売買でどう使えばいいのか

まず、入れ替えの仕組みから

日経平均はいま、年に2回(4月と10月の第1営業日)構成銘柄を見直します(2021年までは年1回、10月だけでした)。臨時の入れ替えもあります。どちらも入れ替えの日の1か月ほど前に、日本経済新聞社から「この銘柄を外して、この銘柄を入れる」というリリースが出ます。今回調べた定期の入れ替えでは、発表から入れ替えの日まで中央値で17営業日でした。

ここで大事なのが、外される銘柄が指数から抜けるタイミングです。新しい銘柄が入れ替えの日から指数に入るということは、外される銘柄は、その前日の引けまでが日経平均の一員ということになります。日経平均をまねて運用しているお金(インデックスファンドやETF)は、その前日の引けで持ち株を売り切らないと、指数からズレてしまいます。

だから売り圧力がいちばん強くなるのは、入れ替えの前日の引けです。本が勧めているのも「この日の下げを過ぎてから買い、数日〜2週間ほどで売る」という持ち方なので、この記事では「入れ替えの前日の終値で買ったら、そのあとどうなったか」を測ります

数えた対象と、数えられなかったもの

2016年9月以降、日経平均から外された銘柄は42件ありました。定期の入れ替えが28件、臨時が14件です。ただし臨時の14件のうち10件は、TOB・経営統合・完全子会社化による上場廃止そのものでした。会社が無くなって外れたわけですから、外れたあとの株価が存在しません。買おうにも買えない、ということです。

残った31件(定期27件+臨時4件)が、この記事で数えた対象です(定期は28件のうち、入れ替えの前日に売買停止で終値のなかった日野自動車を除いています)。上場が続いた臨時の4件は、東芝の不正会計後の二部降格など事情がばらばらで、数も4件しかないので判定には使わず、あとで全件そのまま載せます。つまり、この通説を実際に試せるのは定期入れ替えのぶんだけということになります。以降の図は、断りがなければ定期の27件です。

検証① 外された株は、いつ落ちるのか

まず全体の形から見ます。入れ替えの前日、つまり通説どおりに買う日の終値を0にそろえて、その前後60〜90営業日の値動きを平均した線です(TOPIXの動きは差し引いています)。右半分はそのまま「前日の引けで買った人の損益」、左半分は「買う日より前は、その値段に比べて高かったか安かったか」と読んでください。

外された株は、いつ落ちるのか入れ替えの前日(=買う日)の終値を0にそろえた、前後の値動きの平均(TOPIXの動きを差し引いた%)。定期見直し27件※右半分は「前日の引けで買った人の損益」そのもの。左半分は「買う日より前は、その値段に比べてどこにいたか」ですこの図は道のりの形を見るための図です。「偶然かどうか」の判定は、区間ごとに測った図3・図4で行います。−8%−6%−4%−2%0%+2%+4%+6%買値より高い ↑安い ↓発表入れ替えが公表される(引け後)入れ替えの前日日経平均をまねて運用するお金が、まとめて売る引け−60日−40日−20日入れ替えの前日+20日+40日+60日+80日← 入れ替えの前日から数えた営業日 →ここで買う+20日 −3.27%(図4と同じ数字)底は、外されたあと31営業日ごろ(−5.06%)発表のあとに下げ、前日に向けていったん戻す発表のあとに落ち、入れ替えの前日に向けていったん戻し、外されたあとにまた下げています。買う日(入れ替えの前日)は、この道のりの中で安値ではありませんでした。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図1:外される前後の道のり。発表のあとと、外されたあとの2か所で下げている
▼検証条件
対象:2016年9月〜2026年4月の日経平均の定期入れ替えで除外された27銘柄/期間:各銘柄の入れ替えの前日を0日目として、60営業日前〜89営業日後(日本曹達はデータの開始が2016年9月のため、−60〜−11日目は26銘柄の平均)/集計:各銘柄の株価を0日目の終値で割り、同じ期間のTOPIXの変化を差し引いた値の平均/帯:この図には置いていない(起点からの累計なので離れるほど幅が広がるだけで、区間ごとの判定は図3・図4で行う)/配当:含まない/出典:J-Quants(株価)・日本経済新聞社(入れ替えの日付)

形が2段になっています。発表のあとに一度落ちて、入れ替えの前日までいったん戻し、外されたあとにまた下げる。底は入れ替えから30営業日ほど過ぎたあたり(買値から−5%ほど)で、そこからゆっくり戻していきます。買う日の値段は、この道のりの中で安いほうではありませんでした。

ひとつ注意があります。発表日は銘柄ごとに違うので、平均するとその前後がなだらかに見えます。発表の翌日だけを取り出すと、この図で見えるよりもはっきりした下げになります。それは検証③で見ます。

もうひとつ。この図には「まぐれでもこのくらいは出る範囲」の帯を置いていません。起点から離れるほど銘柄ごとの動きが積み上がって帯が広がるだけで、何も判定できないからです。「偶然かどうか」は、次からの図で区間ごとに測ります

検証② 「まとめて売られる日」は、確かにありました

次に出来高です。売り圧力が本当に集中しているのかを、株数で確かめます。

まとめて売られる日は、確かにありました外される銘柄の出来高が、ふだんの何倍になったか(定期見直し27件の中央値)※「入れ替えの前日」は、その銘柄が日経平均に入っている最後の日。日経平均をまねて運用するお金は、この日の引けで売り切ります0倍5倍10倍15倍1.0倍ふだんの日この銘柄のふだんの出来高(入れ替えの前日と発表の翌日を除いた中央値)4.1倍発表の翌営業日いちばん多い日で17.4倍(東洋製罐グループ)13.8倍入れ替えの前日いちばん多い日で41.4倍(東洋製罐グループ)27件のうち11件は、ふだんの20倍を超える出来高でした。まとめて売られる日は、確かにあります。問題は、入れ替えの前日の引けが安値なのかどうかです。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図2:入れ替えの前日、出来高はふだんの13.8倍になっていた
▼検証条件
対象:定期入れ替えで除外された27銘柄/集計:各銘柄について、入れ替えの前日と発表の翌営業日を除いた前後151営業日の出来高の中央値を「ふだん」とし、その何倍かを計算。図の数字は27銘柄の中央値/出典:J-Quants

入れ替えの前日の出来高は、ふだんの13.8倍でした。いちばん多かった東洋製罐グループホールディングス(2021年)は41.4倍、27件のうち11件が20倍を超えています。発表の翌営業日も4.1倍と増えますが、桁が違います。

「みんなが同じ日にまとめて売る」は、思い込みではありませんでした。問題はここからです。入れ替えの前日の引けが、安値なのかどうか。

検証③ 発表から外されたあとまでを、4つに区切る

いつ落ちているのかを特定します。日本経済新聞社のリリースを1件ずつ当たって発表日を確定させ、発表の当日・その翌営業日・そこから入れ替えの前日まで・入れ替えのあと20営業日、の4つに区切って測りました。

ここから図にうすい帯が出てきます。帯は「本当は差がなくても、まぐれでこのくらいは出てしまう」幅です。棒が帯の中なら偶然の範囲、帯からはみ出したら「偶然では出にくい差」と読みます。目安は、まぐれで出る確率が20回に1回(5%)を切るかどうかです。

発表から、外されたあとまでを4つに区切ると定期見直しで外された26件。TOPIXの動きを差し引いた平均(%)※発表日を1件ずつ調べられた26件が対象。日本曹達だけは発表日がデータの始まりより前で測れませんまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)−6%−4%−2%0%+2%+4%TOPIXに勝った ↑負けた ↓+0.25%発表の当日リリースは引け後(値段は動かない)−2.60%発表の翌営業日知らされて最初の1日+1.94%その翌日〜入れ替えの前日約16営業日−3.51%入れ替えのあと20営業日前日の引けで買って落ちているのは「知らされた翌日」と「外されたあと」の2か所です。発表から入れ替えまでのあいだは、むしろ戻しています。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図3:4つの区間に分けたもの。落ちているのは「知らされた翌日」と「外されたあと」
▼検証条件
対象:定期入れ替えで除外され、発表日を確認できた26銘柄/集計:各区間の株価の変化から、同じ期間のTOPIXの変化を差し引いた値の平均。帯は0を中心に標準誤差を2倍した幅/出典:J-Quants(株価)・日本経済新聞社「日経平均株価の構成銘柄の変更について」等のリリース18本

発表の当日は+0.25%で、ほとんど動いていません。リリースが引け後に出るので、当日の終値には間に合わないからです。値段が動くのは翌営業日で、−2.60%。ここは帯の外に出ました。

そのあと入れ替えの前日までは+1.94%と、むしろ戻しています。「入れ替えの前日に向けて、じりじり下がっていく」という形ではありませんでした。そして入れ替えの前日を過ぎてから、20営業日で−3.51%。ここも帯の外です。

白眉①
値段が落ちるのは、まとめて売られる日ではありません。
知らされた翌日です。

検証④ それで、入れ替えの前日に買ったらどうなったか

本題です。通説どおり、入れ替えの前日の引けで買って、何営業日か持ってみます。

ひとつ先にお断りしておきます。今回の対象は27件しかありません。この数だと、まぐれと見分けられる差はかなり大きくないと足りません。そのぶん帯が広くなっています。

それで、入れ替えの前日に買ったらどうなったか入れ替えの前日の終値で買って、何営業日か持ったときの平均(TOPIXの動きを差し引いた%)。定期見直し27件※「入れ替えの前日」=日経平均に入っている最後の日。本が言う「売られすぎたところで買う」をそのまま試した図ですまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)−8%−5%−2%0%+2%+5%+8%TOPIXに勝った ↑負けた ↓+0.31%+1日勝率56%−0.24%+3日勝率44%−0.12%+5日勝率44%−1.05%+10日勝率37%−3.27%+20日勝率41%−3.74%+40日勝率37%−2.31%+60日勝率44%戻るどころか、持つほど負けが増えています。20営業日で帯をはみ出しました。勝率も、+3営業日から先はずっと5割を割っています。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図4:入れ替えの前日に買って何営業日か持ったときの平均。持つほど負けが増えている
▼検証条件
対象:定期入れ替えで除外された27銘柄/集計:入れ替えの前日の終値で買い、N営業日後の終値で売ったときの騰落から、同じ期間のTOPIXの騰落を差し引いた値の平均。帯は0を中心に標準誤差を2倍した幅。勝率は、TOPIXに勝った回数の割合/配当・手数料:含まない/出典:J-Quants

翌日だけは+0.31%とわずかにプラスで、勝率も55.6%あります。ところが3営業日から先は、平均も勝率も落ちていく一方でした。20営業日で−3.27%、ここだけが帯の外に出ています。勝率は40.7%、つまり27回のうち勝ったのは11回です。

ここは慎重に書きます。7つの窓を並べて、帯の外に出たのは20営業日の1つだけです。20回に1回のまぐれでも、7回試せば1回くらいは起きます。ですから「戻るという証拠がどこにも出てこない」とは言えますが、「必ず負ける」と言い切るには足りません。3営業日から先の6つの窓は方向が負け側にそろっていますが、そこまでです。

もうひとつ断っておくと、看板にした20営業日は、本の持ち期間(数日〜2週間)より長い窓です。本の持ち方に近い3〜10営業日で見ると−0.24%/−0.12%/−1.05%で、どれも帯の中。「本の言う戻りは出ていない」までは言えますが、「本のとおりに持つと大きく負ける」とは言えません。この話は検証⑥で時期を分けると、もう一段はっきりします。

1件ずつの成績も出しておきます。いいところだけ選んでいないことを見てもらうためです。

外された銘柄発表の
翌営業日
前日に買って
20営業日
20営業日のあいだの
いちばん深い含み損
入れ替えの前日の
出来高(ふだん比)
三井E&S
2023年10月 除外
+4.1%−26.4%−26.4%1.4倍
日本板硝子
2023年10月 除外
+2.9%−15.7%−16.7%4.0倍
東京ドーム
2019年10月 除外
−10.2%−12.7%−12.8%21.7倍
ユニチカ
2022年10月 除外
+7.6%−12.5%−13.0%11.8倍
東邦亜鉛
2023年04月 除外
−0.1%−11.5%−11.5%12.2倍
日本製紙
2024年10月 除外
+2.7%−9.3%−9.3%8.0倍
古河機械金属
2018年10月 除外
−8.7%−7.9%−7.9%19.5倍
マルハニチロ
2022年10月 除外
+0.1%−6.6%−6.6%13.8倍
松井証券
2023年10月 除外
+1.4%−5.9%−7.0%22.1倍
日本軽金属ホールディングス
2023年04月 除外
−0.2%−5.4%−5.4%9.1倍
東洋紡
2023年04月 除外
−0.6%−4.1%−4.1%7.6倍
OKI
2022年10月 除外
+2.0%−2.3%−2.9%11.8倍
北越紀州製紙
2017年10月 除外
−6.2%−2.2%−2.3%24.6倍
大平洋金属
2024年04月 除外
−3.0%−1.2%−4.2%7.7倍
宝ホールディングス
2024年04月 除外
−4.4%−1.1%−4.1%28.0倍
明電舎
2017年10月 除外
−6.9%−0.8%−1.5%22.1倍
DIC
2024年10月 除外
+0.8%+0.1%−0.2%11.5倍
三菱倉庫
2025年04月 除外
−6.1%+1.5%−0.6%37.6倍
シチズン時計
2025年10月 除外
−5.0%+2.2%0.0%22.4倍
スカパーJSATホールディングス
2021年10月 除外
+1.5%+2.2%0.0%5.6倍
日本化薬
2020年10月 除外
−10.4%+2.4%−3.2%40.3倍
東洋製罐グループホールディングス
2021年10月 除外
−16.4%+2.6%0.0%41.4倍
住友大阪セメント
2024年04月 除外
+1.7%+2.9%−0.9%11.4倍
日本曹達
2016年10月 除外
+2.9%−1.9%27.2倍
カシオ計算機
2026年04月 除外
−4.0%+5.9%−1.1%15.9倍
日清紡ホールディングス
2021年10月 除外
−12.1%+6.2%0.0%25.5倍
ジーエス・ユアサコーポレーション
2026年04月 除外
+1.9%+8.3%0.0%5.5倍

※すべてTOPIXの動きを差し引いた値です。「発表の翌営業日」は、発表日を確認できた26件のみ(日本曹達は発表日がデータの開始より前のため空欄)。

検証⑤ 外したとき、どこまで沈むか

平均だけ見て「思ったほど負けていない」と受け取られると困るので、途中の含み損も出しておきます。入れ替えの前日に買って20営業日持ったあいだの、いちばん深いところです。

外したとき、どこまで沈むか入れ替えの前日に買って20営業日持ったあいだの、いちばん深い含み損(TOPIXの動きを差し引いた値)。定期見直し27件※棒は「そこまで沈んだ回数」。左ほど浅く、右ほど深い含み損です0件5件10件15件14件3%以上27件のうち52%10件5%以上27件のうち37%5件10%以上27件のうち19%2件15%以上27件のうち7%1件20%以上27件のうち4%いちばん深く沈んだのは三井E&Sの−26.4%。5%以上沈んだのは27件中10件でした。平均の含み損は−5.32%。買ったあと、いったん沈むのがふつうでした。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図5:買ったあと、どこまで沈んだか。27件のうち10件は5%以上沈んでいる
▼検証条件
対象:定期入れ替えで除外された27銘柄/集計:入れ替えの前日の終値で買い、その後20営業日のあいだの各日の終値で測った含み損(TOPIXの動きを差し引いた値)の、いちばん深い値。棒はその深さに届いた件数/出典:J-Quants

途中の含み損は平均で−5.32%、中央値で−3.24%。5%以上沈んだのが27件中10件、10%以上が5件で、いちばん深かったのは三井E&S(2023年)の−26.4%でした。20営業日後の平均が−3.27%だからといって、途中もその幅で済む話ではないんですよね。

検証⑥ 昔は戻っていた。いまは戻らない

ここが今回いちばん大事なところです。26件を、銘柄の選び方のルールが変わった2022年10月の前と後で2つに分けます。それぞれ「知らされた翌日」「前日の引けで買って5営業日(本の持ち方)」「前日の引けで買って20営業日」の3本を並べました。

昔は戻っていた。いまは戻らない定期見直しで外された26件を、選び方のルールが変わった2022年10月の前と後で分けたもの(TOPIXの動きを差し引いた平均)※日経平均は2022年10月の定期見直しから、見直しが年2回になり、選ぶ候補の範囲(売買代金の上位450銘柄)も公表されましたまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)−10%−5%0%+5%+10%TOPIXに勝った ↑負けた ↓2021年10月まで古いルールでの入れ替え・8件(本が書かれた頃)−8.68%知らされた翌日発表の翌営業日+2.17%5営業日持つ前日の引けで買う本の持ち方 勝率62%−1.26%20営業日持つ前日の引けで買う勝率50%2022年10月から新しいルールでの入れ替え・18件+0.11%知らされた翌日発表の翌営業日−1.16%5営業日持つ前日の引けで買う本の持ち方 勝率33%−4.51%20営業日持つ前日の引けで買う勝率33%昔は知らされた翌日に一気に落ち、前日に買えば本のとおり数日で戻していました。いまは発表では落ちず、前日に買っても戻らず、外されたあとに落ちています。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図6:ルールが変わった2022年10月の前と後。昔は本のとおり戻り、いまは戻らない
▼検証条件
対象:定期入れ替えで除外され、発表日を確認できた26銘柄を、2022年10月の定期見直しの前(8件)と後(18件)に分けたもの/集計:「知らされた翌日」「20営業日持つ」は検証③と同じ。「5営業日持つ」は入れ替えの前日の終値で買って5営業日後の終値で売った騰落からTOPIXの騰落を差し引いた平均/出典:J-Quants・日本経済新聞社

2021年10月までは、知らされた翌日に−8.68%。8件のうち7件が下げていて、帯の外です。そして本の持ち方どおり前日の引けで買って5営業日持つと、+2.17%・勝率62.5%で、帯のふちを少し越えています。20営業日まで持つと−1.26%に戻ってしまいますが、本の言う「数日〜2週間で一定の値幅」は、本が書かれた頃のデータでは出ていました。

2022年10月からは逆です。知らされた翌日は+0.11%で、18件のうち10件はむしろ上がっています。前日に買って5営業日持っても−1.16%・勝率33.3%。そして外されたあと20営業日が−4.51%で、こちらが帯の外に出ました。本の持ち方は、いまのルールでは効いていません

この境目には、制度の裏づけがあります。日本経済新聞社は2022年7月27日に構成銘柄の選定基準の改定を発表していて、2022年10月の定期見直しから、見直しが年2回になり、選ぶ候補の範囲も公表されました。売買代金の上位450銘柄を「高流動性銘柄群」とし、そこから選ぶ、という形です。候補が事前に絞れるようになったぶん、発表がサプライズではなくなった——という説明は成り立ちます。本が出たのは2020年6月で、この改定より前です。本が間違っていたのではなく、本が書かれたあとに前提が変わった、と私は読んでいます。

ただし、順番は白状しておきます。私は数字を見てから2つに割って、あとからルールの変わり目と重なることに気づきました。本来なら逆です。ルールの改定が原因だと言い切れるだけの材料はありませんし、8件と18件はどちらも少ない数です。「境目が制度の変わり目と一致している」までが、いま言えることになります。

1本ずつ見ると、こういう形です

平均の話が続いたので、実物を2本だけ載せます。それぞれの時期で、形がいちばんはっきり出たものです。

1本ずつ見ると、こういう形です入れ替えの前日(=買う日)の終値を0にそろえた、その銘柄だけの道のり(TOPIXの動きを差し引いた%)※それぞれの時期で、形がいちばんはっきり出た1本です。1銘柄なので「まぐれの範囲」の帯はありません昔の形 東洋製罐グループHD(2021年)発表の翌日に、いちばん大きく落ちた1本−40%−30%−20%−10%0%+10%+20%+30%発表入れ替えの前日−60日−30日前日+30日+60日発表の翌日 −16.4% / 入れ替えの前日の出来高 ふだんの41.4倍● から ● = 入れ替えの前日に買って20営業日で +2.6%いまの形 ユニチカ(2022年)発表では上がり、外されたあとに沈んだ1本発表入れ替えの前日−60日−30日前日+30日+60日発表の翌日 +7.6% / 入れ替えの前日の出来高 ふだんの11.8倍● から ● = 入れ替えの前日に買って20営業日で −12.5%昔は発表の翌日にまとめて落ちて、そこから戻していました。いまは発表では落ちず、入れ替えの日がいちばん高いところになっています。出典:日経平均株価銘柄変更履歴・各回のニュースリリース(日本経済新聞社)と J-Quantsの日足より私が集計。2016年9月〜2026年9月
図7:昔といまの代表例。左は発表の翌日に落ちきった形、右は入れ替えの日が高値になった形
▼検証条件
対象:東洋製罐グループホールディングス(2021年10月除外)・ユニチカ(2022年10月除外)/集計:図1と同じ(入れ替えの前日の終値を0にそろえた、TOPIXの動きを差し引いた道のり)。1銘柄なので帯はありません/出典:J-Quants

左の東洋製罐グループホールディングスは、発表の翌日に−16.4%。入れ替えの前日の出来高はふだんの41.4倍でした。そこで買っていれば20営業日で+2.6%と、わずかにプラスです。昔の形は発表の翌日に落ちきっていたので、前日に買えば本のとおり戻りました(旧ルール8件の平均で、5営業日+2.17%。図6の左です)。

右のユニチカは正反対です。発表の翌日は+7.6%と上げて、そのまま入れ替えの日に向かって上がり続け、入れ替えの前日がいちばん高いところになりました。そこで買うと20営業日で−12.5%です。

白眉②
いまは、外されたあとに落ちます。
入れ替えの前日の引けは、安値ではありませんでした。

この2本は、形がいちばんはっきり出た端の例です。旧ルールでも発表の翌日に下げなかった銘柄はあります(スカパーJSATホールディングス・+1.5%)し、いまの形をもっと極端にしたのが検証⑤の三井E&S(20営業日で−26.4%)です。全部の成績は検証④の表に載せています。

当然出てくる疑問に、先に答えておきます

「小型株が全体で戻っただけでは?」 外される銘柄は時価総額が小さめのものが多いので、その可能性は考えました。TOPIXの代わりに規模の近い小型株指数を差し引いて図4と同じ計算をすると、20営業日で−3.35%(TOPIXで差し引いた図4の値は−3.27%)。ほとんど変わりませんでした。小型株全体の動きのせいではないようです。

「外れたあとに消えた会社を除いているから、生き残りだけを見ているのでは?」 除いたのは、外れたあとの株価そのものが無い10件だけです(上場廃止で消えたので、買おうにも買えません)。上場が続いた臨時の4件は、外さずに全部載せます。

銘柄+1営業日+5営業日+20営業日+60営業日
東芝
2017年08月・東証二部へ降格
+7.1%+8.8%+31.4%+24.5%
千代田化工建設
2019年08月・東証二部へ降格
+3.6%+5.4%+5.0%−9.9%
新生銀行
2022年04月・市場区分の移行
+0.4%+0.9%+0.7%−6.6%
ニデック
2025年11月・特別注意銘柄への指定
+5.0%+11.0%+0.2%+7.7%

※TOPIXの動きを差し引いた値です。この4件は定期の入れ替えとは事情が違い、件数も4件しかないので、判定の材料には使っていません。東芝の+31%は不正会計問題のあとという特殊な事情のもとでの数字です。

「27件では少なすぎるのでは?」 そのとおりです。だから図には毎回「まぐれでもこのくらいは出る範囲」の帯を描いて、棒が帯の中か外かで見てもらう形にしました。個別株の10年ぶんのデータで数えられるのは、これで全部です。

📊 判定
「日経平均から外された株は、売られすぎたところから戻る」
  • まとめて売られる日は実在する(入れ替えの前日の出来高はふだんの13.8倍)
  • 本が書かれた頃(2021年まで)は本のとおり戻っていた(前日に買って5営業日で+2.17%・勝率62.5%)
  • ×いまのルール(2022年10月〜)では戻らない(5営業日で−1.16%・勝率33.3%、20営業日で−4.51%)
  • 8件と18件は少なく、ルール改定が原因とまでは言い切れない
★★☆☆☆
旧ルールでは戻っていた。いまのルールでは戻らない

★2にした理由を書きます。本の言う戻りは、本が書かれた頃のデータでは確かに出ていました。ただ、これから使えるかで言えば、いまのルールになってからの18件では戻らず、外されたあとの20営業日は−4.51%と帯の外です。「昔は正しかったが、いまは使えない」。×にはしないが、〇にもできない、という★2です。8件と18件という数の少なさも、これ以上強く言えない理由です。

この結果、実践にどう活かす?

1
出来高が膨らんだ日を「安値」と読まない
ふだんの13.8倍の出来高は目立ちます。ただ、いまのルールになってからの18件では、そこが底ではありませんでした。出来高が急に増えた日は「誰かが売らされている」ことの証拠ではありますが、「売り切った」ことの証拠にはならない、ということですね。
2
持ち株が外されるなら、「翌営業日」と「外されたあとの1か月」を分けて見る
リリースは引け後に出るので、値段が動くのは翌営業日からです。ただ、いまのルールでは翌営業日は平均+0.11%とほとんど動かず、落ちたのは外されたあとの20営業日(−4.51%)でした。発表の翌日に落ちなかったからといって、安心はできません。
3
外された銘柄は、しばらく候補から外しておく
底は外されたあと30営業日あたりでした。同じ銘柄を買うにしても、そのあたりまで待ってから改めて判断するほうが、今回のデータとは整合します。
本質なぜ「売られすぎ」に見えるのか

昔は、発表が不意打ちだったので知らされた翌日に大きく落ち、まとめて売られる前日の引けは、すでに落ちきったあとの安いところでした。だから本のとおり戻った。いまは候補が事前に分かるので発表では落ちず、前日の引けはむしろ高いところにあります。そのうえ指数から外れると、理由を問わず買い続けてくれる買い手が1つ減ります。売りが終わったからといって、買いが戻ってくるわけではないんですよね。本の理屈そのものは正しくて、その理屈が効く形が変わった、ということだと思っています。

私の場合は

入れ替えのニュースが出た銘柄は、以前は「安くなったところを拾えないか」という目で見ていました。今回数えてみて、その見方はやめました。いまは、発表の翌営業日の値動きだけ確認して、あとは30営業日ほど候補から外しておくようにしています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 入れ替えの前日、外される銘柄の出来高はふだんの13.8倍。まとめて売られる日は実在します。
  • 本が書かれた頃(2021年まで)は、前日に買って5営業日で+2.17%・勝率62.5%と、本のとおり戻っていました。
  • 2022年10月のルール改定のあとは、同じ持ち方で−1.16%・勝率33.3%、20営業日で−4.51%。底は外されたあと30営業日あたりです。
  • 落ちる場所も入れ替わりました。昔は知らされた翌日、いまは外されたあとです。
  • 臨時の除外はほとんどが上場廃止で、そもそも買えません。
判定:★★☆☆☆ 旧ルールでは戻っていた。いまのルールでは戻らない
Q. 逆に、入れ替えで新しく採用される銘柄を買うのはどうなのでしょうか?
今回は測っていません。この記事で固定した問いは「外された株は戻るのか」の1本だけで、採用される側は買い手が集まる話ですから、別の検証になります。機会があれば改めて数えてみます。
Q. 外された銘柄を空売りすれば勝てるということですか?
この記事は、そう判断するための材料にはなりません。いまのルールでは平均が負け側にそろっていますが、7つの窓のうち帯の外に出たのは20営業日の1つだけです。売り方から見ると、20営業日で5%以上上がった回も27件中3件あります(検証④の表をご覧ください)。方向がそろっていることと、売買として成り立つことは別の話だと思います。
Q. なぜ2016年からのデータなのですか?
今回使っている個別株の日足データが2016年9月からのためです。それ以前の入れ替えは対象に入っていません。指数そのものを使う検証(過去のシリーズ記事)では1949年からのデータを使っていますが、個別株を1件ずつ数える検証では、この10年ぶんが手元にあるすべてになります。
  • データ出典:J-Quants(個別株・TOPIX・小型株指数の日足/2016年9月〜2026年9月)、日本経済新聞社「日経平均株価銘柄変更履歴」および各回のニュースリリース18本。集計はすべて私が行っています。
  • 入れ替えの発表日は、日経平均プロフィルのニュースリリースを1件ずつ開き、リリース本文で除外銘柄と入れ替えの日を照合して確定させました。
  • 2022年10月の改定については、日本経済新聞社「日経平均株価の算出要領および構成銘柄選定基準の改定について」(2022年7月27日発表・2022年10月の定期見直しから適用)によります。定期見直しを年2回(4月・10月の第1営業日)とすること、市場流動性の測定に売買代金を用い、上位450銘柄を「高流動性銘柄群」とすることが記されています。
  • 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、標準誤差を2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
  • 株価はすべて終値ベースで、TOPIX(「小型株が全体で戻っただけでは?」の比較のみ小型株指数)の同じ期間の動きを差し引いています。配当・売買手数料・税金・売買時の値動き(スリッページ)は含んでいません。
  • 日野自動車(2026年4月除外)は経営統合にともなう売買停止で、入れ替えの前日に終値がないため対象外としました。日本曹達(2016年10月除外)は、データの開始が2016年9月のため、発表日まわりと図1の集計から外れています。
  • 検証⑥の時期の分け方は、数値を確認したあとで決めた区切りです。制度改定の日付と一致していますが、改定が原因であることを確かめたものではありません。
  • 書籍:柳橋義昭『安定的に利益を出せる 先回りイベント株投資』(2020年6月刊)第3章に、日経平均から除外された銘柄のリバウンドを狙う手法が紹介されています。買い方は「入れ替え実施日の前日(当時は9月の最終営業日)の下げを過ぎてから買い、数日〜2週間ほどで売る」というもので、本記事の「入れ替えの前日の終値で買う」はこれに合わせています。本の刊行は2022年10月の選定基準改定より前です。

本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。

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