2026年9月14日、日経平均は前日比518円35銭安(-0.81%)の6万3,492円99銭で引けました。前場には6万2,726円18銭まで下げ、6万3,000円を割り込む場面もありました。
ところが同じ日のTOPIXは29.91ポイント高の4,058.21(+0.74%)。東証プライムでは値上がりが1,222銘柄、値下がりは310銘柄で、33業種のうち27業種が上げています。指数だけが下げて、中身の多くは上がった一日です。
この記事では、518円の下げが誰の値動きでできていたのか、業種の赤と緑が何を隠していたのか、そして日経とTOPIXが逆を向く日が10年でどのくらいあったのかを見ていきます。
① 日経平均の下げは518円35銭。これに対してソフトバンクグループ1社の押し下げが563円98銭で、下げ幅より1銘柄の押し下げのほうが大きい一日でした
② 東証33業種では「電気機器はプラス、情報・通信はマイナス」。ところがその中身は両方とも真っ二つに割れていて、半導体まわりが売られ、ソフトウェアとITサービスが買われています
③ 日経が下げてTOPIXが上がる日は、10年ならすと17営業日に1日。ところが2026年はここまで8営業日に1日まで増えています
何が起きたか|AIの話で始まり、下げたのは指数だけでした
週末に伝わったAI関連の2つの話が、朝の売りの出発点になりました。
ひとつは、米オープンAIのサム・アルトマン氏が2026年中の新規株式公開を否定したと伝わったことです。もうひとつは、米アンソロピックの経営者がAI開発のペースについて述べた発言から、AIへの設備投資が減速するのではないかという見方が出たことでした。この2つを受けて、東京市場ではAI・半導体の主力株に朝から売りが集まっています。
前週末11日の米国市場はむしろ堅調で、NYダウが0.98%高と5営業日ぶりに反発、ナスダック総合が0.96%高、S&P500が0.86%高でした。ですので、この日の下げは米国発ではなく、週末に出てきたAI関連の材料が起点だったと見ていいと思います。
東証プライムの売買代金は7兆2,866億円、出来高は19億7,480万株でした。年初来高値を更新したのは49銘柄で、安値更新は13銘柄です。東証グロース市場250指数は785.32と2.26%上げ、6営業日ぶりに反発しました。売りが市場全体に広がった日ではありません。
下げの中身|518円の下げに対して、1銘柄で564円
寄与額を見ると、この日の下げはほぼ1銘柄ぶんでした。
寄与額は、その銘柄の値動きが日経平均を何円動かしたかを表した概算で、単位は円です。
いちばん大きく押し下げたのはソフトバンクグループで、10.72%安の5,839円、押し下げは563円98銭でした。この日の日経平均の下げ幅は518円35銭ですから、1銘柄の押し下げのほうが指数の下げ幅より45円ほど大きいことになります。計算のうえでは、この1社がなければ日経平均は小幅ながら高く終わっていた、という形です。
押し下げの上位5銘柄は、ソフトバンクグループのほか、アドバンテスト2.02%安、キオクシアホールディングス6.37%安、東京エレクトロン1.03%安、フジクラ2.97%安で、合計すると約882円になります。反対に押し上げ側の上位5銘柄は、リクルートホールディングスが99円06銭、コナミグループが27円82銭、ソニーグループが26円15銭、バンダイナムコホールディングスが25円95銭、ファーストリテイリングが22円53銭で、合計は約202円でした。
指数の下げが一部の銘柄に集まる仕組みそのものは、「日経平均は上位3社で決まる」は本当かに10年ぶんのウエートで整理しています。この日はその形が、いつもより極端に出た日でした。
売買代金の首位はキオクシアホールディングスの1兆4,306億円で、6.37%安の5万590円。2位がソフトバンクグループの3,865億円、3位がアドバンテストの2,491億円です。お金がいちばん集まった3銘柄は、そろって下げた側でした。
業種の赤と緑|「電気機器はプラス」の中身が割れています
33業種の表では、この日いちばん面白いところが見えません。
東証33業種で下げたのは6業種だけでした。非鉄金属が2.35%安、情報・通信業が1.87%安、ゴム製品が0.75%安、ガラス・土石製品が0.26%安、金属製品が0.21%安、石油・石炭製品が0.19%安です。上げた側はサービス業4.09%高、保険業2.45%高、その他製品2.03%高、水産・農林業1.77%高、陸運業1.74%高、銀行業1.52%高と続きました。
| 上がった業種 | 値上がり率 | 下げた業種 | 値上がり率 |
|---|---|---|---|
| サービス業 | +4.09% | 非鉄金属 | -2.35% |
| 保険業 | +2.45% | 情報・通信業 | -1.87% |
| その他製品 | +2.03% | ゴム製品 | -0.75% |
| 水産・農林業 | +1.77% | ガラス・土石製品 | -0.26% |
| 陸運業 | +1.74% | 金属製品 | -0.21% |
東証33業種の上位5業種と下位5業種です。上げたのは27業種、下げたのは6業種で、表に載せていない石油・石炭製品が0.19%安でした。
ここで目を引くのが、半導体があれだけ売られたのに、電気機器は0.54%高とプラスで終わっていることです。電気機器にはキオクシアも東京エレクトロンもアドバンテストも入っています。それでもプラスなのは、同じ業種の中で富士通が7.39%高、日本電気が6.90%高と大きく買われたからでした。
反対のことが情報・通信業でも起きています。1.87%安と33業種で2番目に大きく下げた業種ですが、この業種にはソフトバンクグループが入っています。業種の指数は時価総額の大きい銘柄ほど強く効くので、10.72%安の1社が業種全体の色を決めた形です。業種の赤と緑は、かなりの部分が銘柄の大きさの話でした。
124のサブ業種で見ると|作る側と使う側が、逆を向いていました
33業種をもう一段細かく割ると、この日の資金の向きがはっきり出てきます。
私は東証プライムの銘柄を、33業種よりも細かい124のサブ業種に分けて毎日集計しています。ここで使うのは対TOPIX相対騰落で、その群の平均がTOPIXより何ポイント上か下かを表した数字です。単位はptと書きます。
たとえば「+2.20pt」は、その群の銘柄の平均がTOPIXより2.20ポイントぶん上がった、という意味です。TOPIXそのものが上げた日でも下げた日でも、TOPIXとの差だけを見る形になります。読み方は対TOPIX相対騰落 累積ptの読み方にまとめてあります。
このサブ業種のうち、AIの機械やその部品を作っている7つの群と、AIを業務に使うソフトウェア・ITサービスの6つの群を並べたのが次の図です。半導体・電子部品・電線の7群を作る側として、ソフトウェアとITサービスの6群を使う側として数えました。
図1:9月14日のサブ業種別の対TOPIX相対騰落です。上の7群がAIを作る側、下の6群がAIを使う側。灰色の帯は、その群が直近91営業日でふだん1日に動く幅(平均±2標準偏差)を表しています。右端の数字は、その群の銘柄のうち何社が上がったかです。
作る側は7群そろってマイナスでした。いちばん大きく下げたのは電線の4.72pt安で、4社とも下げています。半導体製造装置は2.14pt安で、30社のうち上がったのは3社だけでした。半導体材料・電子材料が1.71pt安、電子部品が1.09pt安、この日いちばん売買代金の多かったキオクシアホールディングスが入る半導体が1.48pt安と続きます。
使う側は逆に6群そろってプラスです。サイバーセキュリティが2.73pt高で7社とも上昇、SaaS・クラウドが2.20pt高で39社のうち37社が上昇、ヘルスケアITは10社とも上げました。SIer・システム開発も59社のうち55社が上がっています。下げた側も上げた側も、一部の銘柄ではなく群ぜんたいが同じ方向を向いていました。
個別では、売られた側にキオクシアホールディングス6.37%安、SWCC6.18%安、レゾナック・ホールディングス5.98%安、太陽誘電5.38%安、古河電気工業3.42%安、住友電気工業3.37%安が並び、買われた側にはSansan7.60%高、ラクス7.39%高、マネーフォワード7.14%高、野村総合研究所6.22%高が並びました。電線が売られた背景については、データセンター向けの需要をどう見るかで動く銘柄としてフジクラ(5803)はなぜ動く?に整理しています。
ただし、図の灰色の帯を見ると、13群のどれも、ふだん1日に動く幅の内側に収まっています。ひとつひとつの群の動き方としては、特別に大きかったわけではありません。この日に起きたのは値幅の大きさではなく、向きがきれいに分かれたことのほうです。
では、その分かれ方は珍しいのか。作る側7群の平均と使う側6群の平均の差を直近92営業日ぶん数えたところ、この日の3.83ptは15番目にあたりました。6営業日に1日くらいは起きている形です。
ですので、作る側と使う側が逆を向くこと自体は、めずらしい出来事ではありません。めずらしいのは、それが33業種の表からは見えないことのほうだと思います。
なお、富士通や日本電気が入る総合電機の群も1.62pt高でしたが、この群は作る側と使う側の両方の事業を持つ会社が混ざるので、上の13群には入れずに数えています。半導体まわりの銘柄がどう分かれるかは日本半導体株の見極め方にまとめてあります。
この形は珍しいのか|10年で17営業日に1日でした
日経がマイナスでTOPIXがプラスの日を、10年ぶん数えました。
日経平均とTOPIXの日次終値をさかのぼって、日経平均がマイナス・TOPIXがプラスだった日を数えました。2016年7月27日から2026年9月14日までの2,475営業日で、あてはまったのは146日。全体の5.9%で、17営業日に1日の割合です。
ところが、これを年ごとに並べると形が変わってきます。
図2:その年の営業日のうち、日経平均はマイナス・TOPIXはプラスだった日が何%あったかです。2026年は9月14日までの171営業日を数えています。橙色は2024年以降の3年ぶんです。
いちばん少なかったのは2022年の2.0%で、49営業日に1日という頻度でした。そこから2023年5.3%、2024年7.8%、2025年9.1%と増え、2026年はここまで12.9%です。営業日にすると8日に1日で、2022年の6倍を超えます。
この日の日経とTOPIXの差は1.55ptでした。10年2,475営業日のなかでは13番目の大きさで、ふだんの振れ幅(平均±2標準偏差で±0.92pt)の外側に出ています。逆行した日のなかでも大きめの部類です。
増えている理由は、日経平均の中身がAIに寄ってきたことだと思います
8月末のウエートで見ると、日経平均の上位はアドバンテスト12.26%、ファーストリテイリング8.79%、東京エレクトロン8.56%です。上位3社だけで29.61%を占めていて、日経が独自に分けている業種では電気機器32社で38.08%になります。
TOPIXは顔ぶれが違います。ウエート1位は三菱UFJフィナンシャル・グループの3.9%で、アドバンテストは1.7%。同じアドバンテストでも、日経では12.26%、TOPIXでは1.7%と7倍の差があり、反対に三菱UFJは日経では0.186%しかありません。
AIの話で動いた日に2つの指数が逆を向くのは、測っている中身がそれだけ違うからです。この偏りが10年でどう変わってきたかは、225社のウエートを数えた「日経平均は上位3社で決まる」は本当かにまとめています。
この日、日経平均の225社のうち値上がりは158社、値下がりは66社でした。1社1票で平均すると+0.76%です。指数は0.81%安ですから、中身の多数決と指数の符号が逆になった日でした。
明日以降の材料|2つの会合と、物価の数字
今週は金融政策の週です。
- ① 15〜16日のFOMC。結果が出るのは日本時間17日の午前3時です。米10年国債の利回りは4.966%と5%が近い水準にあり、ここが動くとこの日売られた半導体まわりの戻り方にそのまま効いてきます
- ② 18日の日銀金融政策決定会合。銀行業はこの日1.52%高、三菱UFJフィナンシャル・グループが1.61%高と、金利の上がる側にお金が向いています。会合に向けてこの動きが続くかどうかが見どころです
- ③ 18日の8月全国消費者物価指数。WTI原油が103.27ドルと続伸していて、物価の数字が上振れると内需の買われ方に水を差す形になりそうです
需給では、空売り比率が前営業日の44.9%から38.1%へ下がり、日経VIは29.80から31.06へ上がりました。NT倍率は15.89から15.65へ0.24低下しています。NT倍率が下がるのは、日経よりTOPIXが強かった日の形そのものです。為替はドル円が154円61銭と45銭の円安でしたが、輸送用機器は0.12%高とほぼ動いておらず、円安よりAIの話に売買が集中した一日だったように見えます。
まとめ
9月14日のマーケット・3行まとめ
- 日経平均は518円35銭安の6万3,492円99銭。ソフトバンクグループ1社の押し下げが563円98銭で、指数の下げ幅より大きくなりました
- TOPIXは0.74%高、プライムでは値上がり1,222銘柄に対して値下がり310銘柄、33業種中27業種が上昇。下げたのは指数のほうでした
- サブ業種で見ると、半導体や電線など作る側の7群がそろって下げ、ソフトウェアやITサービスなど使う側の6群がそろって上げています
日経が下げてTOPIXが上がる日は、10年ならすと17営業日に1日。2026年はここまで8営業日に1日まで増えていて、2022年の49営業日に1日からは大きく変わりました。
土日にAI開発の減速の話が出たので、今日は間違いなく下がると思っていました。ハイテクは確かに下げましたが、正直そこまでの下落という感じはしていません。
私の持ち株がTOPIX寄りというのもあると思います。ただ、寄り付きのあとに戻す銘柄も結構あった印象で、日経平均の225社だけを見ても値上がりのほうが多い日でした。
気になっているのは、AI開発の減速の話が今後も続く場合です。そうなると今日のようにAIを作る側が弱い展開が続きそうで、なかなか手は出しづらくなりそうです。逆に使う側は、AIが出てきたらソフトウェアの会社は要らなくなる、という見方で売られてきた銘柄が多いところでもあります。そこが復活してくるかどうかは、これから見ておきたいと思っています。
サブ業種の集計(図1):東証プライム上場銘柄を私が124のサブ業種に分け、各群に属する銘柄の当日騰落率の単純平均からTOPIXの騰落率を引いた値です。1銘柄が複数の群に属することがあります。灰色の帯は2026年5月1日から9月11日までの91営業日の相対騰落の平均±2標準偏差です。キオクシアホールディングス(285A)は当日のスクリーニングデータに収録がなかったため、当日の値下がり率ランキングの6.37%安を半導体の群に加えて計算し直しています(同社が属するのはこの1群だけです)。灰色の帯と、作る側と使う側の差の順位を数えた過去の系列には、同じ理由で同社が入っていない日が91営業日のうち38日あります。
ウエートと225社の集計:日経平均のウエートは日本経済新聞社が公表している2026年8月末時点のもの、TOPIXのウエートはTOPIX連動型投資信託の月次レポート(2026年7月末時点)によります。ウエートは日々動くので、当日の値ではありません。225社の値上がり・値下がりと1社1票の平均は、8月末時点の構成銘柄に当日の騰落率を当てはめて私が数えたものです。
逆行日の集計(図2):日経平均とTOPIXの日次終値から前日比を計算し、日経平均がマイナスかつTOPIXがプラスだった日を数えました。対象は2016年7月27日から2026年9月14日までの2,475営業日です。数え上げなので、図2には帯を置いていません。2026年は9月14日までの171営業日ぶんで、年の途中の数字になります。
日経平均の中身がどれだけ一部の銘柄に偏っているかは、10年ぶんのウエートで数えた「日経平均は上位3社で決まる」は本当かにまとめています。前営業日11日の記事は日経1,259円安|SQ値に169円届かず、動いた割に進まない週で、この日はその下げの主役だったアドバンテストが2.02%安にとどまりました。当日のマーケット全体の動きは日次レポートをどうぞ。















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