- 12月は確かに平均以上の月。日経77年で平均+1.18%・勝率64%(他の月の平均は+0.78%・勝率57%)。米国はさらに顕著です。
- ただしラリーの本番は後半だけ。日経は15営業日目までマイナス圏を漂い、最後の約1週間で一気に上げる。前半は勝率5割のコイントスです。
- 意外な事実:2010年以降、12月は「特別な月」ではなくなった──12月が弱くなったのではなく、他の月が強くなったから。
- 判定:★★★★☆(本番は後半から)
「年末ラリー」。クリスマスラリー、サンタクロースラリーとも呼ばれる、12月の株は上がりやすいという有名な経験則です。今回はこの通説を、日経平均77年分・S&P500 98年分の12月をすべて分解して検証しました。結論から言うと、この通説はシリーズでは珍しく、ほぼ素直に当たっています。ただし「12月に入ったら買い」と受け取ると、前半の凪に裏切られます──ラリーには開始時刻があるからです。
- 12月は本当に「強い月」なのか(他の11か月との比較)
- 年末ラリーはいつ始まるのか(12月を営業日単位で分解)
- 本家「サンタクロースラリー」の厳密な定義でも成立するのか
なおこの記事は、年間需給カレンダー(通説検証#00)の「12月」のマスを深掘りするスポーク記事です。
検証①:ルールと言葉を固定する
まず言葉の整理から。「年末ラリー」と「クリスマスラリー」は、日本の市況解説ではほぼ同義で、12月後半〜年末にかけての上昇を指す緩い言い方です。一方、本家の「サンタクロースラリー」には厳密な定義があります。米国のStock Trader’s Almanacが提唱した「年末の最終5営業日+新年の最初の2営業日」という7営業日の窓です※1。日本の古い相場用語では、大納会に向けた最終盤の上げを「掉尾の一振(とうびのいっしん)」とも呼びます。
検証のルールも固定します。「12月のリターン」は11月末終値から12月末終値までの騰落率。月の中身を見るときは、12月の第1営業日から営業日を1日ずつ数え、11月末を起点とした累積リターンの平均的な歩みを追います。前半・後半に分けるときは暦の15日まで/16日以降で区切ります。
検証②:12月は本当に「強い月」なのか
まず月単位の成績です。日経平均の77回の12月は、平均+1.18%・勝率64%。12月以外の月の平均が+0.78%・勝率57%ですから、確かに平均を上回る月です。S&P500はさらにはっきりしていて、98回の12月は平均+1.27%・勝率71%(他の月は+0.60%・58%)。歴史的には、12月が「良い月」とされてきたのはデータの裏付けがあります。
ちなみに12月が12か月の中で何位なのかは、通説検証#02(セルインメイ)の月別リターン図で確認できます。本記事の持ち場は、その先──12月の「中身」の分解です。
検証③:ラリーはいつ始まるのか──12月を営業日で分解する
12月の第1営業日から、平均するとどんな道のりで+1%強に到達するのか。77年分(米国は98年分)を重ねて平均した「12月の平均的な歩み」が図1です。
日経平均の線に注目してください。初日にご祝儀のように少し上げたあと、10営業日目にはほぼゼロ、15営業日目には−0.1%とマイナス圏に沈みます。つまり12月の前半3週間は、平均するとほぼ横ばい〜微マイナス。そこから最終日までの残り約1週間で、一気に+1.4%前後まで駆け上がる──これが77年分を平均した12月の姿です。S&P500も細部は違えど、後半に上げが集中する形は同じです。
ラリーは「最後の約1週間」で起きる。
15日目−0.1% → 20日目+1.4%。77年分を重ねた「平均の歩み」
ではなぜ、前半は凪なのでしょうか。仮説として形が合うのが、損出し売りの存在です。12月には上げの需給だけでなく、節税のために含み損を年内に確定する個人の売りという下押しの需給が同居しています。この売りには明確な締切があります。株の税務上の損益は受渡日ベースで年を区切るため、現在の制度(約定の2営業日後に受渡)では年内受渡の最終売買日=大納会の2営業日前※2。たとえば2026年なら大納会が12月30日(水)なので、12月28日(月)が損出しの締切です。だから損出し売りは月の前半〜中盤に出て、この締切とともに一巡します。売り圧力が消えたあとの最終週に買いだけが残る──と考えると、図1のパスの形(前半の凪と最終週の急上昇)とは辻褄が合います。ただしこれはあくまで形が整合する仮説であって、今回の検証で因果まで確認できたわけではない点はお断りしておきます。
補足:締切の前と後で、値動きは本当に変わるのか
せっかくなので、この仮説も数字で当たってみました。各年の損出しの締切日──現行制度では大納会の2営業日前、2018年以前の制度では3営業日前※2──を特定し、その前後の値動きを77年分平均します。物差しとして、日経の普段の1日は平均+0.04%(勝率52%)です。まず締切日までの期間は、1日あたり+0.05%とほぼ普段どおりのペースでした。売りが相場を押し下げているというより、上値を抑えている程度、という見え方です。ところが締切の翌営業日だけは別物で、平均+0.53%・勝率70%。普段の1日の約14倍──普段なら3週間近くかかる上げ幅を、この1日で動いてきた計算です。おまけの発見をひとつ──ご祝儀と言われる大納会当日は、実は平均−0.004%のほぼ横ばい(勝率52%)。「掉尾の一振」は、大納会の前日までにほぼ終わっているようです。もっとも、この時期は本家サンタクロースラリーの窓とも重なるため、この強さのすべてが損出し一巡のおかげとは言い切れません。「締切の翌日が突出して強い」は事実、「締切のおかげ」は仮説──この区別は保ったままにしておきます。
検証④:検証③は本物か──勝率で再現性を確かめる
ただし、検証③のグラフ(図1)には弱点があります。「平均」は少数の極端な年に引っ張られることです。実際、日経の12月には+12.8%(2009年)のような暴騰の年もあれば、−10.5%(2018年)の年もあります。検証③で見たきれいなラリーが、数年の暴騰が作り出した幻という可能性は残る。そこで各年を前半(〜15日)と後半(16日〜)に割り、「何年に1回プラスで終わったか」=勝率で、形が毎年再現されているのかを確かめます(図2)。
結果、幻ではありませんでした。日経の後半は勝率68%──77年のうち52年でプラス、およそ3年に2年のペースで再現されています。対する前半は勝率53%で、ほぼコイントス。S&P500では差がもっと鮮明で、後半の勝率は77%(前半は60%)。平均だけでなく再現性の面でも、「年末ラリー」の実体は「12月後半ラリー」と呼ぶのが正確です。
本家「サンタクロースラリー」の窓でも成立するか
では、窓をさらに狭めて本家の定義──最終5営業日+新年最初の2営業日──ではどうか。結果は、日経で平均+1.38%・勝率75%(77回)、S&P500で平均+1.45%・勝率76%(98回)。窓を年末に寄せて狭めるほど、勝率が階段状に上がっていきます(日経:月全体64%→後半68%→サンタ窓75%)。「掉尾の一振」という古い日本語は、データの形をかなり正確に言い当てていたわけです。
検証⑤:時代別に切る──直近の12月はどうか
最後に、この傾向が現代でも生きているかを時代別に確認します(図3)。
12月そのものの成績は、どの時代も安定しています。日経の2010年以降でも平均+0.90%・勝率69%と、負けにくい月であることは変わりません。ところが2010年以降は「他の月」の平均が+1.09%まで上がり、12月を追い抜きました。米国も同じで、2010年以降の12月は+0.55%と、他の月の+1.09%の半分です。12月が弱くなったのではありません。上げ相場が続いて、毎月が年末ラリー並みになった──だから12月「だけ」が特別ではなくなった、というのが直近の姿です。なお月内の「前半凪・後半ラリー」の形は、2010年以降も日米とも維持されています(後半勝率:日経69%・米国69%)。
12月が弱くなったのではなく、他の月が強くなったから。
日経:12月+0.90% vs 他の月+1.09%(勝率は69%で健在)
📊 判定
- 〇12月後半の優位は日米・全時代で頑健(勝率68〜77%)。本家サンタクロースラリーの窓なら勝率75%(日経)まで上がる
- △前半は勝率5割のコイントス。「12月に入ったら買い」は早とちりで、ラリーの開始は月の後半から
- △2010年以降は他の月も強く、12月「だけ」が特別な月ではない。平均+1%は「傾向」であり、単年では普通に下がる年もある
リターンの上乗せ幅(+0.4%程度)だけ見れば★3寄りですが、「後半に上げが集中する」という月内の形が、日米・全時代でここまで一貫して再現されるアノマリーはシリーズでも珍しく、通説の骨格は当たっていると評価して★4としました。減点の1つ星は、前半を含めて「12月は上がる」と雑に信じた場合の裏切られやすさ、そして直近は他の月との差が消えている点です。
初心者はどう受け止めればいい?
まとめ
- 12月は歴史的に平均以上の月(日経+1.18%・勝率64%/米+1.27%・71%)。通説の骨格は当たっている。
- ただし上げは後半に集中。日経は15営業日目までマイナス圏で、ラリーは最後の約1週間。前半はコイントス。
- 窓を狭めるほど勝率は上がる:月全体64%→後半68%→本家サンタ窓75%(日経)。
- 2010年以降は他の月も強く、12月「だけ」が特別ではない。
- 判定は★★★★☆「本番は後半から」。
よくある質問
- ※1 サンタクロースラリーの定義は Stock Trader’s Almanac(Yale Hirsch)による「年末の最終5営業日+新年の最初の2営業日」。本記事の検証もこの窓で行いました。
- ※2 受渡制度は2019年7月16日にT+3からT+2(約定の2営業日後受渡)へ短縮されました。そのため2018年以前の「年内受渡の最終売買日」は大納会の3営業日前です。補足検証ではこの区分(2019年以降=2営業日前・それ以前=3営業日前)で締切日を機械的に定めましたが、さらに古い年代の受渡慣行は現在と異なる可能性があります。実際の締切は証券会社の案内で必ず確認してください。
- 出典:Stooq の日経平均・S&P500 日次終値データを私が集計。図はすべて自作です。
- 集計方法:12月リターン=11月末終値→12月末終値の騰落率。月内パスは11月末を起点に、12月の営業日ごとの累積リターンを全年平均。前半/後半は暦の15日まで/16日以降で区切り。配当・売買コスト・税は含みません。
- 対象期間:日経平均1949年〜2025年の12月(77回)、S&P500は日次データが安定する1928年以降の12月(98回)。サンタクロースラリー窓は翌年1月のデータが必要なため、最終年は翌年1月分まで取得できた年で集計。
- 図1のパスは21営業日目以降が存在しない年があるため、20営業日目までを表示しています。













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