2026年9月18日、日銀が政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げました。結果が伝わったのは、東京市場が昼休みに入っている11時50分ごろです。
教科書どおりなら、利上げは円高、そして銀行株の買いにつながります。この日に起きたのは、その両方の逆でした。ドル円は1円89銭の円安、銀行業は0.54%安です。
日経平均は882円70銭高の6万5,018円95銭。ただしTOPIXは0.07%安で、上がった業種は33のうち7つだけでした。
① 利上げの決定が伝わった11時50分から、ドル円は40分で77銭の円安に動きました。昼休みをはさんだ後場の寄り付きで、日経平均は前引けから670円のギャップをつけて始まっています。
② 上げたのは非鉄金属2.29%高と電気機器1.98%高を筆頭に7業種だけ。上位10銘柄で1,016円ぶんを押し上げた一方、東証プライムの値上がりは511銘柄、値下がりは1,003銘柄でした。
③ 金利が上がると収益が増えるとされる銀行・保険・その他金融は、そろってマイナスです。金利の材料は買う側ではなく、電気・ガス業2.24%安、不動産業1.47%安という売る側に出ました。
何が起きたか|11時50分の利上げ決定と、そこから始まった円安
決定そのものは予想どおりで、動いたのは為替でした。
日銀は18日までの金融政策決定会合で、政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げることを決めました。賛成7・反対2です。植田総裁は会見で「政策の局面が変化した」と述べ、物価を2%の水準で安定させることが大事だとしています。
朝方には8月の全国消費者物価指数も出ていて、生鮮食品を除くコアは前年比1.7%の上昇でした。市場の予想は1.8%で、わずかに下回っています。
図1:上がドル円、下が日経平均です。どちらも9月18日の東京市場の時間帯(9時から15時30分まで)の5分ごとの値で、灰色は昼休み、オレンジの点線が利上げの決定が伝わった11時50分です。
ドル円は午前中ずっと156円20銭前後で動いていましたが、11時45分の156円17銭から40分後の12時25分には156円94銭まで、77銭の円安に振れました。最初の5分だけで42銭です。そのあとも戻らず、15時30分で157円11銭、日次レポートの入力時点(17時ごろ)では157円51銭。前の営業日の155円62銭から、1円89銭の円安になりました。
日経平均の前引けは525円86銭高の6万4,662円11銭。決定をはさんだ後場の寄り付きは6万5,332円57銭で、昼休みの前後で670円のギャップがついています。高値は6万5,436円57銭、安値は6万4,403円85銭で、値幅は1,032円72銭でした。
利上げを決めたのに円が売られたのはなぜか。会見で次の一手までの距離が近づいたとは受け取られなかった、というのが市場の見方として報じられています。私も、上げ幅が0.25%と事前の予想どおりで、コアの物価が予想をわずかに下回ったことのほうが効いたように見えますね。ただ、会見の言葉のどこが効いたのかは、来週の海外市場の反応まで見ないと分からないところです。
数字で見る|882円の上げのうち、1,016円ぶんは10銘柄です
指数は大きく上げましたが、動いたのは一部の値がさ株でした。
日経平均を押し上げたのは、アドバンテスト436円86銭(5.99%高)、東京エレクトロン215円21銭(4.20%高)、キオクシアホールディングス110円05銭(9.40%高)、イビデン72円41銭(5.85%高)、レーザーテック41円97銭(8.70%高)。この5銘柄だけで876円50銭、上位10銘柄まで広げると1,016円ぶんになります。日経平均の上げ幅882円70銭を、10銘柄で超えている計算です。
前の晩のフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が3.14%高でしたから、材料は米国から来ています。そこへ円安が重なった形です。
いっぽうで、東証プライムの値上がりは511銘柄、値下がりは1,003銘柄。私が毎日数えているスクリーニング基準の上昇比率は33.0%で、前の営業日の83.5%から1日で50ポイント落ちました。TOPIXは3.05ポイント安の4,091.14で3日ぶりの反落、JPX日経400も0.25%安です。日経平均だけが上げた一日でした。
売買代金は10兆3,970億円と、前の営業日の7兆1,538億円から3兆円以上ふくらんでいます。首位はキオクシアホールディングスの1兆8,189億円で、1銘柄で市場全体の17.5%です。年初来高値の更新は46銘柄、安値の更新は3銘柄でした。
東証グロース市場250指数は2.49%高の808.98で、800ポイントを回復しています。
上がった7業種|非鉄金属と電気機器、中身は半導体と電線でした
上げたのは33業種のうち7業種で、上位2つが半導体と電線を含みます。
上げたのは非鉄金属2.29%高、電気機器1.98%高、金属製品0.64%高、ガラス・土石製品0.60%高、機械0.37%高、医薬品0.07%高、証券・商品先物業0.02%高の7業種です。前の営業日は28業種が上げていましたから、ほぼ入れ替わりました。
値上がり率の上位には、関東電化工業9.64%高、キオクシアホールディングス9.40%高、フルヤ金属9.36%高、レーザーテック8.70%高、三井金属7.35%高、KOKUSAI ELECTRIC 7.24%高が並びます。非鉄金属が首位に来たのは、三井金属やフルヤ金属といった金属のほか、フジクラ1.75%高など電線が入っているためです。
円安の日にどの業種が買われやすいかは、「円安なら輸出株」は本当?で10年ぶんを数えています。
金利が動いたのに、金融は買われませんでした|売られたのは電力と不動産です
利上げの日に、銀行・保険・その他金融はそろってマイナスでした。
図2:9月18日の東証33業種の値上がり率から、金利に関係の深い8業種を抜き出したものです。上の4つは金利が上がると収益が増えるとされる業種、下の4つは借入や設備が重い業種で、この分け方は私が選んだものです。
銀行業は0.54%安で、大手3行は三菱UFJフィナンシャル・グループ0.88%安、三井住友フィナンシャルグループ0.70%安、みずほフィナンシャルグループ0.63%安。保険業1.14%安、その他金融業1.05%安で、金融でプラスだったのは証券・商品先物業の0.02%高だけでした。報道では利益確定の売りとされています。
金利そのものは上がっていて、日本の10年国債利回りは2.978%と3%の手前です。それでも金融が買われなかったのは、利上げが会合の前からほぼ確実と伝わっていて、株価に先に入っていたからだと私は見ています。
前日の記事でも、米国が3年2か月ぶりに利上げを決めた翌日に銀行業が33業種の27番目だったことを書きました。今度は日銀の番でしたが、結果は同じです。「金利が上がれば銀行株」というアノマリーを10年ぶんのデータで数えた結果は、「金利が上がれば銀行株は買い」は本当か?にまとめています。
代わりに売られたのは反対側でした。電気・ガス業は2.24%安で33業種の最下位、東北電力5.36%安・四国電力4.00%安と地方電力の下げが目立ちます。不動産業1.47%安、倉庫・運輸関連業1.41%安、陸運業1.38%安と、借入や設備の重い業種が下位に並びました。金利の材料は、買う側ではなく売る側だけに出ています。日本の長期金利と業種の関係は金利上昇で上がる株・下がる株はどれ?で別に数えました。
前の営業日まで買われていた資源と海運も、石油・石炭製品1.88%安、海運業1.72%安と反落しています。WTI原油が101.78ドルから100.09ドルへ下げた影響です。
次に東京が開くのは24日|5連休をはさみます
19日から23日まで東京市場は休みで、その間に米国は3日動きます。
- ① 円安が続くかどうか。利上げを決めた日に1円89銭の円安になりました。この水準のまま連休に入るので、海外の受け止めが出るのは連休中です。円安が続けば半導体と輸出の追い風、戻せばこの日の上げの一部は剥がれます。
- ② 米国の半導体。この日の上げは前夜のSOX3.14%高をそのまま受けたものです。米10年国債の利回りは4.946%と高いままで、金利が上がる場面でも半導体だけが買われる形がどこまで続くかを見ます。18日は米国の四半期最終売買日(クアドラプルウィッチング)にもあたります。
- ③ 幅が戻るかどうか。上昇比率は83.5%から33.0%へ1日で落ちました。指数が882円上げた日に3分の2の銘柄が下げています。この狭さが連休明けも続くのか、それともこの日だけのものだったのかは、24日の値上がり業種の数で分かります。
まとめ
9月18日のマーケット・3行まとめ
日銀が政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げた日、日経平均は882円70銭高の6万5,018円95銭。TOPIXは0.07%安、東証グロース市場250指数は2.49%高でした。
利上げの決定が伝わった11時50分からドル円は40分で77銭の円安に動き、後場の寄り付きで日経平均は670円のギャップをつけました。上げたのは非鉄金属と電気機器を筆頭に7業種だけで、値上がりは511銘柄、値下がりは1,003銘柄です。
銀行業は0.54%安、保険業は1.14%安。金利の材料は金融の買いではなく、電気・ガス業2.24%安や不動産業1.47%安という売りのほうに出ました。
利上げの日に円安と金融安がそろった一日でした。東京市場は、この形のまま5連休に入ります。
銀行をはじめとする金融が買われなかったのは、利上げをすでに織り込んでいたからだと思います。会合の前からほぼ確実と伝わっていましたから、決まったこと自体には反応しようがなかったのでしょう。
気になるのはその先です。ここまで金融は強い動きが続いていました。そこへ利上げの発表という、待っていた材料が出てしまった形になります。出尽くしで、いったん調整に入ることもあり得るところです。ここからの買いは慎重に考えたいと思っています。
これで米FRBと日銀、ふたつのイベントが終わりました。どちらも利上げです。前もって予想されていたものが両方とも決まったので、ここからは材料そのものより、通過したあとに相場がどちらへ向くかのほうを見ることになります。
日本は19日から5連休で、次に東京が開くのは24日の木曜です。その間もアメリカは動いています。イベントを通過したあとの動きがどう出るのか、連休中の米国市場をよく観察しておきたいところですね。
図1の日中の値:Yahoo!ファイナンスのチャートデータの5分足で、日経平均は「^N225」、ドル円は「JPY=X」です。時刻は日本時間で、5分足の各足の終値を結んでいます。日経平均は11時30分から12時30分までの昼休みにデータがないため、線を切っています。利上げの決定が伝わった時刻(11時50分)は報道にもとづくもので、図では点線で示しました。
ドル円の2つの数字:「157円11銭」は5分足の15時30分の値、「157円51銭」は私が毎日の日次レポートに記録している入力時点(大引け後の17時ごろ)の値です。前の営業日の155円62銭も同じ17時ごろの値で、1円89銭の円安はこの2つの差です。図1の中の77銭は、11時45分と12時25分の5分足どうしの差になります。
図2の8業種:東証が公表する33業種の値上がり率から、私が金利に関係が深いと考えた8つを抜き出したものです。上の4業種と下の4業種という分け方も私が決めたもので、東証の分類ではありません。33業種すべての値上がり率は日次レポートに毎日載せています。
寄与額:大引け後に公表された市場データにもとづく概算です。上位5銘柄の合計876円50銭、上位10銘柄の合計1,016円は、算出方法によって差が出ることがあります。売買代金のシェア17.5%は、キオクシアホールディングスの1兆8,189億円を東証プライムの10兆3,970億円で割ったものです。
円安の日に買われやすい業種は「円安なら輸出株」は本当?に、長期金利と業種の関係は金利上昇で上がる株・下がる株はどれ?に、銀行株と金利の関係は「金利が上がれば銀行株は買い」は本当か?にまとめています。前日の米国の利上げについては米利上げの翌日、日経213円高、毎日の数字は日次レポートで追っています。















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