「セルインメイ(5月に株を売れ)」は本当か?|日本では〇、米国では×【日米35年検証】

💬 今回検証する通説
「セルインメイ」(5月に売って、秋まで相場から離れろ)
30秒でわかるこの記事
  • 「5月に売れ」と言うわりに、5月はむしろ強い。日米とも本当に弱いのは8〜9月“だけ”で、Sell in May という名前はちょっと盛ってます。
  • 従うと得かは国で正反対。本場アメリカでは大損、なぜか日本では得してきました。
  • 判定:★★★☆☆(市場と時代しだいで、効いたり効かなかったり)。

投資の世界には「Sell in May(5月に売れ)」という有名な格言があります。正しくは “Sell in May, and go away”——5月に売って、秋(だいたい9〜10月)まで相場から離れていろ、という意味。毎年5月になるとニュースやSNSで「そろそろセルインメイ警戒」みたいな話が出てきますよね。じゃあこれ、本当に効くんでしょうか。日経平均とS&P500の約35年分で、しかも「実際にその通り売買したら勝てたのか」まで確かめてみました。

この記事でわかること
  1. 「5月に売れ」は当たっているのか(本当に弱いのは何月か)
  2. その通りに売買したら、持ちっぱなしに勝てたのか
  3. 日本とアメリカで、効き方はどう違うのか

そもそも「セルインメイ」って?

セルインメイは、もともとイギリス〜アメリカ(ウォール街)発祥の相場格言です。「夏場は商いが薄く相場がさえないから、5月に一回売って、秋に戻ってこい」というもの。

元になったのは、欧州の古い言い回し “Sell in May and go away, come back on St. Leger’s Day”(5月に売って立ち去り、セントレジャー・デー=9月中旬に戻ってこい)だと言われます。夏は休暇シーズンで市場参加者が減り、商いが薄く相場が低調になりやすい、という経験則が背景にあります。本場・欧米で語られてきたものなので、まずは「本当に夏は弱いのか」を月ごとに見て、それから「本場アメリカと日本で違うのか」を確かめていきます。

月別で見たら、5月はむしろ強かった

まず、日経平均とS&P500それぞれについて、1990年以降の「各月の平均リターン」を並べてみました。黄色く塗ったのが、セルインメイが「売って離れていろ」と言う5〜10月です。

月別の平均リターン:日本 vs アメリカ(1990年〜) 「5月に売れ」と言うわりに、5月はむしろプラス。本当に弱いのは夏(8〜9月) 日経平均 S&P500 -1% +0% +1% +2% 「セルインメイ」が売れと言う期間(5〜10月) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 本当の谷は8〜9月 ↑ 出典:Stooq(日経平均・S&P500の月末終値)をもとに集計。1990年〜の各月の平均月次リターン。配当は含まず。
図1:月ごとの平均リターン(日経平均 vs S&P500)
▼ 検証条件
対象:日経平均・S&P500の月末終値(指数)/期間:1990年1月〜2026年5月/集計:各月の月次リターン(前月末→当月末)の平均値/配当:含まず/出典:Stooq

グラフを見ると、肝心の5月、日米そろってプラスです(日経+0.8%/S&P+1.3%)。「Sell in May」と言うわりに、5月で売ると、その5月の上昇を取り逃すことになります。じゃあ本当に弱いのはいつかというと——8月と9月。ここだけ日米そろってマイナスに沈んでいます。

なお、ここで使っているのは各月の平均リターンです。平均は一部の大きな上昇・下落に引っ張られやすいので、あくまで「月ごとのクセを見るための参考値」として読んでください。

白眉 その1

「Sell in May」は、名前を盛っている。
本当に弱いのは5月じゃなくて、8〜9月だった。

なぜ8〜9月かというと、理由は毎年同じではありませんが、夏休みシーズンで市場参加者が減ること、機関投資家のポジション調整(中間期末などに向けた持ち高の入れ替え)が重なりやすいことなどから、この時期は歴史的に値動きが不安定になりやすいと言われています。

ついでに言うと、このグラフは“夏枯れ”や“年末ラリー(11〜12月の強さ)”の検証にもなっているのですが、それぞれ立派な通説なので、別の回でちゃんと判定します。このうち夏枯れについては、通説検証#04「夏枯れ相場は本当か?」で、8月の売買代金を41年分さかのぼって判定しました(結論を先に言うと、商いは確かに細るのに、下落のほうは最近消えています)。今回はセルインメイに集中します。

で、従ったら儲かるの? 日本とアメリカで正反対だった

「夏が弱い」はわかった。でも大事なのは「実際にその通り売買したら、ただ持ちっぱなしより得だったのか」ですよね。そこで、毎年きっちり5月末に売って、10月末に買い戻すのを35年間くり返したら最終的にいくらになったか、を「ただ持ちっぱなし」と比べてみました(手数料も引いています)。それを並べたのが下の図です。

結論だけ先に言うと、アメリカは長期で右肩上がりなので「夏に降りるデメリット」が大きく、日本は長く停滞していたので「夏の下落を避けるメリット」が勝った——これが日米で逆になった理由です。

「夏に売る」と「持ちっぱなし」、35年でどっちが増えた? 1ずつ投じて1990年〜の最終資産(手数料込み・配当は含まず)。※日本と米国で縦軸の大きさが違う点に注意 ずっと持ちっぱなし セルインメイ(5月末売り・10月末買い) 日本(日経平均) 0.5倍 1.0倍 1.5倍 2.0倍 2.5倍 3.0倍 3.5倍 1.8倍 3.0倍 持ちっぱなし セルインメイ → 夏売りの勝ち アメリカ(S&P500) 5倍 10倍 15倍 20倍 25倍 22.4倍 8.5倍 持ちっぱなし セルインメイ → 持ちっぱなしの勝ち 出典:Stooq(日経平均・S&P500の月末終値)をもとに集計。配当は含まず。過去の実績であり将来を保証しない。
図2:「夏売り」と「持ちっぱなし」の最終資産(日米)
▼ 検証条件
対象:日経平均・S&P500の月末終値/期間:1990年〜2026年に1ずつ投資した最終資産(倍)/夏売りルール:毎年5月末に売り→10月末に買い戻し(11〜4月のみ保有、5〜10月は現金)/手数料:売買のたび片道0.1%(年2回)。持ちっぱなしは売買なしで手数料0/税金:考慮せず/配当:含まず/出典:Stooq

結果は、日本とアメリカで驚くほど対照的でした。

本場アメリカ(S&P500)では、ただ持ちっぱなしが22.4倍に対し、セルインメイは8.5倍。従った人は、ただ持っていた人の4割以下しか増やせませんでした。アメリカ株は夏のあいだも7月や10月にしっかり上げるので(弱いのは8〜9月くらい)、5月末に降りてしまうと、その7月・10月の上昇まで取り逃すんですね。本場生まれの格言なのに、少なくとも今回検証した2市場では、アメリカのほうが成績は悪い結果でした。

ところが日本(日経平均)では逆。ただ持ちっぱなしが1.8倍に対し、セルインメイは3.0倍。夏に逃げた人のほうが増えていました。日本株は1990年以降、夏に大きく崩れる年が多かったので、夏に降りる作戦がハマったわけです。

白眉 その2

アメリカ生まれの格言なのに、本場アメリカでは大損。
なぜか日本でだけ、効いてきた。

「時代」でも見てみると、効果は薄れていた

ここまでは「市場(日米)」の違いでした。でも、もうひとつ大事な軸があります。「時代」です。夏売りは、いつの時代でも同じように効いたのか——起点を1990年・2000年・2013年に変えて、日米それぞれで「持ちっぱなし」と「夏売り」を並べたのが下の図です。

時代別:「夏売り」と「持ちっぱなし」、どっちが増えた? 各時代を起点にした最終資産(倍・手数料込み・配当は含まず)。※日本と米国で縦軸の大きさが違う点に注意 持ちっぱなし セルインメイ(夏売り) 日本(日経平均) 1.8倍 3.0倍 1990年〜 夏売りの勝ち 3.4倍 3.4倍 2000年〜 ほぼ互角 6.0倍 2.0倍 2013年〜 持ちっぱなしの勝ち アメリカ(S&P500) 22.4倍 8.5倍 1990年〜 持ちっぱなしの勝ち 5.3倍 3.1倍 2000年〜 持ちっぱなしの勝ち 4.9倍 2.1倍 2013年〜 持ちっぱなしの勝ち 出典:Stooq(日経平均・S&P500の月末終値)をもとに集計。配当は含まず。過去の実績であり将来を保証しない。
図3:起点の時代を変えたときの「夏売り」と「持ちっぱなし」(日米)
▼ 検証条件
対象:日経平均・S&P500の月末終値/期間:起点を1990年/2000年/2013年の3通りに変え、いずれも2026年までの最終資産(倍)/夏売りルール・手数料・税・配当:図2と同じ(5月末売り→10月末買い・片道0.1%×年2回・税考慮せず・配当含まず)/出典:Stooq

日本は、1990年〜が「夏売り3.0倍 > 持ち1.8倍」で夏売りの勝ち → 2000年〜は「3.4倍 ≒ 3.4倍」でほぼ互角 → 2013年〜は「持ち6.0倍 > 夏売り2.0倍」ときれいに効果が薄れて、ついに逆転しています。日本株がぐんぐん上がり出した2013年以降は、アメリカと同じで「夏に降りると上昇を取り逃す」側に回りました。いっぽうアメリカは、どの時代でも持ちっぱなしの勝ち(夏売りは届かず)。つまり、セルインメイが日本で効いたのは“日本株が冴えなかった時代”の裏返しだった、というのが時代の区切りでもはっきり見えます。

私の判定:「市場と時代しだい」で★3

📊 通説検証 判定
通説:「セルインメイ(5月に売って、秋まで相場から離れろ)」は効く?
  • 「夏(8〜9月)は弱め」は日米とも事実
  • 日本では、夏に逃げる戦略が持ちっぱなしに勝ってきた(ただし2013年以降は逆転)
  • ×本場アメリカでは、従うとむしろ大損(22倍→8.5倍)
  • “5月”は実は強い/日本で効いたのは「停滞期」の話で、株高に転じた近年(2013年〜)はむしろ逆効果
★★★☆☆
判定:市場と時代しだい(一律には言えない)

もうひとつ正直に付け足すと、日本でセルインメイが効いてきたのは、日本株そのものが長いあいだ冴えなかったことの裏返しでもあります。持ちっぱなしが1.8倍にしかならない相場だったからこそ、「夏の下げを避ける」効果が目立った。もし日本株がアメリカみたいに右肩上がりだったら、たぶん同じことは起きていません。だから「日本では効く=日本株は最高」ではない、というのは添えておきたいところです。

「じゃあ5月末に売ればいいの?」——そうとも言い切れません

ここまで読むと、「6月から弱いなら、その手前の5月末に売って夏をやり過ごせばいいのでは?」と思いますよね。理屈はそのとおりで、実際この検証の“夏売り戦略”がまさにそれです。日本では過去、それで得してきました。でも「だから5月末に売ればいい」と言い切れない理由が3つあります。

ひとつ目は、それが通じたのは「日本で・過去は」だけだということ。同じ「5月末に売る」を本場アメリカでやると大損でした(6〜7月も上がるので、降りると取り逃す)。同じ行動が、市場と時代で正反対の結果になります。しかも図3のとおり、その日本でさえ、株が上がり出した2013年以降は「持ちっぱなし」のほうが得(持ち6.0倍 > 夏売り2.0倍)になっていて、いまも効くとは限りません。ふたつ目は、図1は35年をならした“平均”で、毎年その通りになるわけではないこと。夏に急騰した年も普通にあり、売った年に限って夏に大きく上がれば、それを丸ごと逃します。みっつ目は、配当・税金で目減りすること。売って現金にしている間は配当をもらえませんし、利益確定のたびに税金(約20%)もかかります(図2は手数料は引きましたが、税金までは引いていません)。

つまり「6月から弱い→5月末に売る」は、理屈は正しく、日本では過去ワークした。でも普遍の必勝法ではない。だから判定は「効く(★5)」ではなく「市場と時代しだい(★3)」にしています。

初心者はどう受け止めればいい?

「結局、5月になったら売ったほうがいいの?」と思いますよね。これも「こうすべき」とは言えないので、今回の検証で私が持てた“こんな見方もあるよ”を3つ置いておきます。

1
格言は“発祥の地”でこそ効くとは限らない
セルインメイはアメリカ生まれですが、データ上は本場で一番効いていませんでした。「海外で言われてるから」を、日本にそのまま当てはめない方がよさそうです。
2
名前のイメージより、中身(何月か)を見る
「Sell in May」の弱点は5月ではなく8〜9月でした。言葉の語感より、実際のデータがどこを指しているかを見るほうが確かかも、と思います。
3
「リターン」と「気の楽さ」は別もの
夏に降りるとリターンは市場しだいですが、暴落に当たる確率(最大下落)は日米とも下がっていました。増やすためか、夜ぐっすり眠るためか、で評価が変わります。

この検証の前提だけ、正直に

本質指数だけの比較で、配当は入れていません

今回も「指数」そのものの値動きで比べています。配当(再投資)を入れると、ずっと持っている人のほうが有利になる方向です。とくにアメリカは配当が厚いので、配当まで含めると「本場では従うと損」がさらにはっきりします。※1 ※2

私の場合は
私は「長期で持つもの」と「短期で持つもの」で分けて考えています。まず長期でじっくり持つ資産は、セルインメイを基本ガン無視。理由はシンプルで、今回のデータが示すとおり持ちっぱなしのほうがリターンが良かったから。あと、毎年きっちり売り買いするのが純粋にめんどくさい、というのもあります(笑)。いざ5月末に全部売る、というのは踏ん切りもつきませんし。いっぽうで、短期で持っている銘柄については少しだけ警戒します。夏(8〜9月)は荒れやすいんだな、というのを頭の片隅に置いて、その時期は新しく大きく買うのを慎重にしたり、利益が乗っているものは早めに利確を考えたり……くらいの“ゆるい使い分け”です。あくまで私のやり方、ですが。

まとめ

通説検証 #02 のまとめ
  • 「夏は弱い」はだいたい本当。ただし弱いのは5月ではなく8〜9月で、「Sell in May」という名前は少し盛っている。
  • 従うと得かは国で正反対。本場アメリカでは大損、日本では得してきた(ただし日本株が長く低迷した裏返しでもある)。
  • カレンダー任せの売買が万能なわけではない。大事なのは「どの市場・どの時代の話か」。これは過去の検証で、将来の保証でも投資の推奨でもありません。
  • 判定:★★★☆☆(市場と時代しだい)

「5月に売れ」という言葉だけを信じると、本当に大事な情報を見落とします。今回のデータが示していたのは「5月が弱い」ではなく、市場によって季節性はまるで違う、ということでした。

よくある質問

Q. 日本株なら、毎年5月に売ったほうがいいの?
A. 過去はそれで得した期間が多かった、というだけです。日本株が低迷していた裏返しでもあり、配当も考慮していません。将来も続く保証はないので、「過去はこうだった」と受け止めるのが安全です。
Q. なんで本場アメリカで効かないの?
A. アメリカ株は夏(7月など)も上がることが多く、長期で右肩上がりだからです。毎年夏に降りていると、その上昇を取り逃して複利が効かず、持ちっぱなしに大きく負けました。
Q. 「5月」じゃなくて「8〜9月に売る」ならどうなの?
A. データ上は夏の谷は8〜9月でした。ただ、月をピンポイントで狙う売買はタイミングの当て勘に近くなり、手数料や読み外しのリスクも増えます。今回は格言どおりの「5月末売り」を検証しています。
脚注・前提
  • ※1 データ出典:Stooq(日経平均・S&P500の月末終値)。月末終値ベースで集計し、私が作図しました。S&P500の1957年以前は遡及復元値を含みます。
  • ※2 配当(インカム)は未考慮。「夏売り」戦略は5月末に売り→10月末に買い戻しを毎年くり返すため、年2回売買します。その1回ごとに資産の0.1%(片道)を手数料として差し引いて計算しました(例:35年なら約70回ぶん)。「持ちっぱなし」は売買しないので手数料はかかりません。なお、利益確定のたびにかかる税金(約20%)は計算に含めていません(含めると夏売り側の手取りはさらに減ります)。手数料率は商品・時代・売買単位で変わるため、あくまで一例です。また起点をずらすと数字は変わるため、特定の起点だけで断定はしていません。
※本記事は過去データの分析であり、将来の運用成果を示すものではありません。特定の銘柄・商品・投資手法を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。記載の数値は筆者が公開データをもとに集計したもので、正確性を保証するものではありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA