「1月の株価がその年を占う」は日本でも効くのか?|効いたのは1月ではなく最初の5営業日でした

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

💬 今回検証する通説
アメリカで効くとされる株のアノマリーは、日本株でも効く
30秒でわかるこの記事
  • アメリカで有名な「1月バロメーター」を日経平均76年で試すと、1月ぶんを差し引いた瞬間に効き目が消えました
  • ところが観測する期間を短くすると、年明け最初の3〜7営業日だけが、まぐれの範囲をはみ出しました
  • 2026年は、前年も年明け最初の5営業日もプラスで、合図が点灯した年です。同じ形だった過去36年のうち、75%がプラスで終わっています。
判定:★★★☆☆

海外の投資本を読んでいると、必ず出てくるのが「1月の株価がその年を占う」という話です。アメリカでは的中率88.7%という数字まで付いています。では、日本株でも効くのでしょうか。日経平均の76年分を数えてみたら、答えは「1月では効かない。効くのは年明けの数日だけ」という、少し意外な形でした。

この記事でわかること
  1. 「1月の方向がその年を占う」が日本で当たるのか、当たらないのか
  2. 当たるとしたら、年明けの何営業日を見ればいいのか
  3. 2026年はいまどういう位置にいるのか

検証の下敷きにした本

今回の下敷きにしたのは、ジェフリー・A・ハーシュ『アノマリー投資』(パンローリング・2013年)です。アメリカで長く続く相場データ年鑑『ストック・トレーダーズ・アルマナック』の中身を1冊にまとめたもので、季節性や暦のクセを片っ端から数字で並べた本なんですよね。

ただ、書かれているのはすべてアメリカの市場の話です。読みながらずっと「これ、日本でも成り立つんだろうか」と思っていました。今回はその一番の目玉である「1月バロメーター」を日本株で確かめて、ついでに本に出てくるおもな主張を通信簿にしています。

検証① 「1月の方向がその年を占う」は、日本でも当たるのか

まず本に書かれている形をそのまま日本に持ってきます。1月がプラスで終わればその年もプラス、1月がマイナスならその年もマイナス。この符号が一致するかどうかを、日経平均の1950年から2025年までの76年で数えました。

結果は的中率68.4%。1月が上げた52年のうち75.0%はその年もプラスで終わり、1月が下げた24年でプラスに終わったのは45.8%でした。数字だけ見れば、効いているように見えます。

ところが、ここには2つの落とし穴があります。

落とし穴その1:日本株は、そもそも6割以上の年が上がっている

76年のうち上昇で終わったのは50年、割合にして65.8%です。つまり1月を一切見ずに、毎年判で押したように「今年は上がります」と言い続けるだけで、65.8%は当たってしまうんですよね。

1月バロメーターの68.4%は、そこからたった2.6ポイントしか増えていません。当たっているように見えて、実は何も足していないという可能性があります。

落とし穴その2:1月ぶんが、答えのなかに入っている

もうひとつが、こちらの方が厄介です。「1月がプラスだった年は、その年もプラスだった」と言うとき、その年の成績のなかには1月ぶんがすでに入っています。1月に5%上がった年は、その時点で年間成績が5%のゲタを履いた状態から始まるわけです。

これでは、予言が当たったのか、予言そのものが答えに混ざっているのかが分かりません。そこで、年間成績から1月を外して、2月から12月までだけで測り直します

▼この図の読み方
棒は、見た期間(1月、または年明けの数営業日)が上げた年と下げた年で、そのあとプラスで終わった割合が何ポイント違ったかを表しています。棒が高いほど、その動きが先を言い当てていたことになります。
背後の薄い帯は「まぐれでもこのくらいは出てしまう範囲」です。76年しかないので、本当は何の力もなくても、たまたまこのくらいの差は出ます。棒が帯からはみ出していれば「偶然では出にくい差」、帯のなかに収まっていれば「偶然と見分けがつかない」と読みます。基準は、まぐれで出る確率が20回に1回(5%)を切るかどうかです。
1月の動きは、その年の残りを言い当てるのか 棒=年明けに上げた年と下げた年で、そのあとプラスで終わった割合の差(%ポイント) ※真ん中の棒=1月が上がった年はその時点で成績にゲタを履いている。そのゲタを外して測り直したもの まぐれでもこのくらいは出る範囲 (帯をはみ出したら「偶然では出にくい」) -10 -5 +0 +5 +10 +15 +20 +25 +30 +35 +40 %ポイント +29.2 1月の動きを見て 1〜12月を当てる 本にある形/52年・24年 +9.0 1月の動きを見て 2〜12月を当てる 1月を数えない/52年・24年 +28.3 最初の5営業日を見て 6営業日目〜年末を当てる 5日を数えない/46年・30年 左の2本は同じ「1月の動き」を見ている。違うのは、当てにいく期間に1月を数えるかどうか 1月が上がれば、1〜12月の成績にはもう1月ぶんが入っています。その分を外すと、差は帯の中に落ちました。 ところが最初の5営業日なら、同じように外しても帯からはみ出したままでした。 出典:Stooq 日経平均 日次終値(1949/05/16〜2026/06/05)より私が集計。対象は1950〜2025年の76年
図1:同じ「1月の動き」を見ても、当てにいく期間から1月を外すと差が縮む。いちばん右は、期間を年明けの5営業日に短くしたもの
▼検証条件
対象:日経平均株価(終値)/期間:1950〜2025年の76年(1949年は5月からの記録のため、2026年は年の途中のため除外)/集計:前年12月末の終値を起点に、1月末・年末それぞれの騰落の符号が一致した割合/配当:含まない/出典:Stooq

左の棒が、本に書かれている形です。差は+29.2ポイントで、まぐれの範囲(±23.6ポイント)をかろうじてはみ出しています。

真ん中が、1月ぶんのゲタを外したものです。差は+9.0ポイントまで縮み、まぐれの範囲(±24.0ポイント)にすっぽり収まりました。1月バロメーターの予測力に見えていたものは、その大半が「1月ぶんが答えに混ざっていたから」だったことになります。

ここで終われば「日本では効かない」という、それだけの話でした。ところが、いちばん右の棒があります。

検証② では、年明けの何営業日を見ればいいのか

本には、1月バロメーターとは別に「1月最初の5日間」という指標も出てきます。アメリカでは、この5日が上げた39年のうち33年で年間もプラスだったそうです。

ここで素朴な疑問が出ます。1カ月まるごと見るのと、最初の数日だけ見るのと、どちらがいいのでしょうか。そして、そもそも何日ぶん見るのが適切なのでしょうか。

そこで、大発会から1営業日、2営業日、3営業日……と観測する長さを1営業日ずつ変えて、同じ検証を並べました。どれも見た期間ぶんは答えから外して、そのあと年末までがプラスで終わったかどうかで測っています。

年明けの何営業日を見れば、その年の残りが分かるのか 棒=その日数で上げた年と下げた年の、そのあとプラスで終わった割合の差(%ポイント) まぐれでもこのくらいは出る範囲 (帯をはみ出したら「偶然では出にくい」) -15 -10 -5 +0 +5 +10 +15 +20 +25 +30 +35 +40 +45 %ポイント -8.0 1 41・35 +13.8 2 43・33 +26.4 3 44・32 +26.2 4 45・31 +28.3 5 46・30 +28.6 6 42・34 +34.8 7 45・31 +18.5 8 41・35 +8.1 9 49・27 +11.6 10 48・28 +8.1 15 49・27 +12.6 20 51・25 +9.0 1月末 52・24 大発会から何営業日ぶんを見たか(大発会=1営業日目/下段は 上げた年の数・下げた年の数) 帯からはみ出すのは3〜7営業日の5本だけ。8営業日目から先は、どこを見ても帯の中です。 1カ月まるごと見る必要はなく、むしろ見すぎると分からなくなる、という形でした。 出典:Stooq 日経平均 日次終値(1949/05/16〜2026/06/05)より私が集計。対象は1950〜2025年の76年
図2:観測する長さを1営業日ずつ変えて並べたもの。3〜7営業日の5本だけが帯からはみ出している
▼検証条件
対象:日経平均株価(終値)/期間:1950〜2025年の76年/集計:前年12月末の終値から起算してN営業日目までの騰落で年を2つに分け、そのN営業日目の終値から大納会までの騰落がプラスだった割合を比べた/配当:含まない/出典:Stooq
白眉①
1カ月も見る必要はありませんでした。
むしろ、見すぎると分からなくなります。

帯からはみ出したのは3営業日から7営業日までの5本だけです。8営業日目から先は、10営業日でも、20営業日でも、1月末まで見ても、すべて帯のなかに収まりました。

1営業日だけだと、まだ何も見えていません(むしろ符号が逆を向いています)。2営業日でようやく形が見え始めて、3営業日で帯を抜ける。そこから7営業日までがいちばん強く、8営業日目でふっと消えます。

本が「1月最初の5日間」と言っているのは、この幅のちょうど真ん中に当たります。日本でも、そのあたりが使いどころだったということになりますね。

以降は、本にならって年明け最初の5営業日で話を進めます。念のためですが、これは大発会から数えて5営業日目の終値までという意味で、1月5日という日付の話ではありません。

検証③ 5営業日で分かれた年は、そのあとどう違ったのか

「差がある」と言われても、実際どのくらい違うのかが分からないと使えません。年明け最初の5営業日で年を2つに分けて、そのあと(6営業日目から大納会まで)を比べました。

年明け最初の5営業日が上げた年と、下げた年で、そのあとはどう違ったか 左=そのあとプラスで終わった割合/右=そのあとの平均。金の破線は「76年ぜんぶの平均」 ※「最初の5営業日」=大発会から5営業日目の終値まで。1月5日という意味ではありません そのあとプラスで終わった割合 0% 20% 40% 60% 80% 100% 76年ぜんぶだと 67.1% 78.3% 上げた年 46年 50.0% 下げた年 30年 そのあとの平均の伸び 0% 5% 10% 15% 20% 76年ぜんぶだと 10.5% 17.0% 上げた年 46年 0.6% 下げた年 30年 「そのあと」=6営業日目の終値から、その年の大納会まで 上げた年だけが、ふだんより良くなっています。 下げた年は「下がる」のではなく、勝率50%のコイントスに戻るだけでした。 出典:Stooq 日経平均 日次終値(1949/05/16〜2026/06/05)より私が集計。対象は1950〜2025年の76年
図3:年明け最初の5営業日で分けた、そのあとの成績。金の破線は76年ぜんぶをならした水準
▼検証条件
対象:日経平均株価(終値)/期間:1950〜2025年の76年(上げた年46・下げた年30)/集計:5営業日目の終値を起点に、大納会までの騰落/配当:含まない(配当を入れれば両方が底上げされます)/出典:Stooq

上げた年は、そのあと78.3%がプラスで終わり、平均で17.0%伸びていました。76年ぜんぶをならした水準(67.1%・10.5%)を、はっきり上回っています。

問題は下げた年のほうです。プラスで終わった割合は50.0%。ちょうどコイントスです。

白眉②
年明けが下げても、「下がる」わけではありません。
ただ、五分五分に戻るだけです。

ここは読み違えると危ないところなので、繰り返しておきます。この指標は上げたときにだけ意味があって、下げたときは何も言っていません。「年明けが弱かったから売り」ではなく、「年明けが弱かったから、今年は分が良いとは言えない」という程度の話です。

ちなみに平均だけでなく中央値で見ても、上げた年は12.2%、下げた年は0.1%でした。一部の飛び抜けた年に引っ張られた結果ではなさそうです。

検証④ それは、前年の勢いが続いているだけではないのか

ここまで読んで、こう思った方がいるかもしれません。「地合いが良い時期は年明けも上がるし、その年も上がる。ただそれだけでは?」

もっともな疑問なので、正面から確かめます。まず、年明けを一切見ずに前年がプラスだったかマイナスだったかだけで年を分けてみました。

それは、前年の勢いが続いているだけではないのか 棒=その後プラスで終わった割合の差(%ポイント)。下段は 上げた年の数/下げた年の数 まぐれでもこのくらいは出る範囲 (帯をはみ出したら「偶然では出にくい」) -10 -5 +0 +5 +10 +15 +20 +25 +30 +35 +40 +45 +50 +55 +60 %ポイント +7.8 前年の方向だけを見る 年明けは見ない 49/26 +21.2 前年が上げた年だけで 最初の5営業日を見る 36/13 +46.2 前年が下げた年だけで 最初の5営業日を見る 10/16 何を基準に年を分けたか(下段は 上げた年の数/下げた年の数) 前年の方向だけでは、その後を言い当てられませんでした(左の棒は帯の中)。 前年に下げた年ほど、年明け最初の5営業日で、そのあとの明暗がはっきり分かれます。 出典:Stooq 日経平均 日次終値(1949/05/16〜2026/06/05)より私が集計。対象は1950〜2025年の76年
図4:何を基準に年を分けると、そのあとの明暗が分かれるか。左は前年の方向だけで分けたもの
▼検証条件
対象:日経平均株価(終値)/期間:1950〜2025年の76年(前年の騰落が計算できる75年)/集計:左の棒は前年の騰落の符号で、真ん中と右の棒は前年の方向をそろえたうえで年明け5営業日の符号で年を分け、いずれも5営業日目の終値を起点に大納会までがプラスで終わった割合の差/配当:含まない/出典:Stooq

左の棒が、前年の方向だけで分けたものです。差は+7.8ポイントで、まぐれの範囲(±23.2ポイント)のなか。前年が良かったか悪かったかだけでは、その年の先は言い当てられませんでした。

そのうえで、前年の勢いをそろえたグループの内側で、あらためて年明け5営業日を見たのが真ん中と右の棒です。

面白いのは右で、前年に下げた年のグループでは、年明け5営業日で明暗がくっきり分かれています。上げれば90.0%、下げれば43.8%。差は+46.2ポイントで、帯(±31.2ポイント)をはっきりはみ出しました。

ここは誤解されやすいので補足します。これは「前年に下げた年は年明けが上がりやすい」という意味ではありません。むしろ逆で、前年に下げた26年のうち年明け5営業日が上がったのは10年だけ、割合にして38%です。ふだんの60.5%より、むしろ少ないんです。上がりにくいけれど、上がったときの意味は大きい、という形なんですよね。

前年に下げたあとの年明けは、相場の空気が変わったかどうかの試金石になっているのかもしれません。ただし右の棒は10年と16年という小さなサンプルの比較なので、方向は見えても、強さまでは信用しすぎないほうがよさそうです。

2026年は、いまどういう位置にいるのか

せっかくなので、今年の答え合わせもしておきます。

2026年は、前年(2025年)が+26.2%で、年明け最初の5営業日も+3.18%。どちらもプラスで、合図が点灯している形です。

そこで、過去76年のなかから「前年がプラスで、かつ年明け5営業日もプラス」だった年だけを36年ぶん抜き出して、そのあとどうなったかを小さい順に並べました。

2026年と同じ合図が出た過去36年は、そのあとどうなったか 棒=前年がプラスで、かつ年明け最初の5営業日もプラスだった年の「そのあと」の成績(小さい順) ※2026年も同じ形(前年 +26.2%/年明け最初の5営業日 +3.18%) -25% +0% +25% +50% +75% +100% 1973 1957 1970 2018 1996 2010 1977 1962 1953 1966 2021 1961 1982 2004 2006 1981 1994 1980 1979 1976 1985 2024 2020 1984 2017 1983 1989 1956 1959 1988 1969 2005 1960 2013 1972 1952 2026年はいま +27.9%(2026年8月28日時点・36年のうち上から9番目) プラスで終わった 75% 平均 +15.7% 中央値 +7.4% いちばん悪かった年 -17.9% 同じ合図が出た年でも、4年に1年は結局マイナスで終わっています。 「合図が出たから上がる」ではなく、「分の良いほうに賭けられる」という話です。 出典:1950〜2025年はStooq 日経平均 日次終値より私が集計。2026年の値はStooq ^NKX の2026年8月28日終値(66,405.56円)
図5:2026年と同じ形だった36年の「そのあと」。金の破線が2026年のいまの位置
▼検証条件
対象:日経平均株価(終値)/期間:1950〜2025年のうち条件に合う36年/集計:5営業日目の終値を起点に、大納会までの騰落/2026年の値:Stooq ^NKX の2026年8月28日終値 66,405.56円(年はまだ終わっていないため途中経過です)/配当:含まない/出典:Stooq

36年のうち27年、割合にして75.0%がプラスで終わっています。平均は+15.7%、中央値は+7.4%。2026年はいま+27.9%で、36年のうち上から9番目という位置にいます。

ただ、この図でいちばん見てほしいのは左端です。同じ合図が出ていても、9年はマイナスで終わっています。いちばん悪かった1973年は−17.9%でした。1957年、1970年、2018年も15%以上の下げです。

4年に1年は外れる。これは「合図が出たから上がる」ではなく、分の良いほうに賭けられる、という程度の話だと受け止めておくのが安全だと思います。しかも2026年はまだ8月です。この位置から年末までに何が起きるかは、この図の左端が教えてくれています。

この本の主張は、日本株で何個生き残ったか

ここからは通信簿です。『アノマリー投資』に出てくるおもな主張を、日本株から見て5つに仕分けました。

『アノマリー投資』の通信簿
〇=日本でも残った/△=条件つきで残った/×=消えた/—=土俵が違う/宿題=まだ数えていない
この記事で確かめた
1月の動きが、その年を言い当てる
1月を数えないと消えた
×
年明け最初の数営業日が、その年の残りを言い当てる
3〜7営業日なら残った
シリーズで検証ずみタイトルから各記事へ飛べます
11〜4月に持ち、5〜10月は離れる
年末から新年にかけて上がる
満期日のある週は荒れる
2月は、強い時期のなかで最も弱い
×
そもそも日本に持ち込めない
大統領選挙の4年サイクル
対応する周期が日本にない
感謝祭・独立記念日など休日の癖
日付そのものが日本にない
30分ごとに見た1日のなかの癖
長期のデータが手に入らない
日本の暦に置き換えが要る
節税の売りが出たあとの1月効果
米国は12月決算、日本は3月決算
宿題
まだ確かめていないいずれも本にそう書かれているもので、日本株ではまだ数えていません
10月は下げ相場が終わる月
宿題
12月の安値を年明けに割ると、さらに下げる
宿題
7月に大きく上げた年は、後で安く買える
宿題
金曜日には売るな(曜日の癖)
宿題
年末に安値の株を買い、1月中旬に売る
宿題
そのまま持ち込めたものより、形を変えるか、そもそも土俵が違ったものが多い。「アメリカで効くから日本でも効く」とは言えませんでした。

そもそも日本に持ち込めないものがある

意外だったのが、このバケツの存在です。本の3分の1近くは大統領選挙の4年サイクルに割かれているのですが、日本の衆議院は解散のタイミングが決まっていないので、対応する周期そのものがありません。感謝祭や独立記念日のクセも、日付が日本にない以上どうにもなりません。

「効かなかった」のではなく「土俵が違う」。海外の投資本を読むときに、いちばん最初に仕分けるべきなのはここなのかもしれません。

日本の暦に置き換えれば残りそうなもの

本には、年末の節税売りが一巡したあとに小型株が買われる、といういわゆる1月効果の話が出てきます。ただアメリカの企業と個人の税の区切りは12月、日本は3月です。日本で同じことが起きるなら、時期は年明けではなく年度明けのはずなんですよね。ここは形を変えれば残る可能性があります。

すでにこのシリーズで確かめたもの

本の主張のうち4つは、このシリーズですでに検証ずみでした。上の表の「シリーズで検証ずみ」の欄から、それぞれの記事に飛べます。

この4つを並べて眺めると、アメリカで強いとされる主張ほど、日本では星が落ちているのが分かります。

まだ確かめていないもの

残りは宿題です。表のいちばん下に5つ並べました。たとえば10月について、本はアメリカでは戦後12回の下落相場が10月に終わっていると書いています。12月の安値を年明けに割り込んだあとどうなるか、曜日にクセがあるかどうかも、日本ではまだ数えていません。

どれも日経平均や個別株のデータがあれば確かめられるものなので、このシリーズで順番に扱っていくつもりです。

元ネタが気になる方は、本のほうが圧倒的に情報量があります。月ごと・週ごと・休日ごとのクセまで数字つきで並んでいるので、記事の末尾にリンクを置いておきます。

📊 判定
通説:アメリカで効くとされる株のアノマリーは、日本株でも効く
  • ×本の目玉である「1月バロメーター」は、1月ぶんを差し引くと効き目が消えた
  • 年明け最初の3〜7営業日なら、差し引いても帯からはみ出した
  • ただし時代を分けると、どの期間もサンプルが足りず判定できない
  • ×大統領選挙サイクルや米国の休日は、そもそも日本に持ち込めない
★★★☆☆
そのままでは効かない。窓を狭めると残る

★3にした理由を書いておきます。「アメリカのアノマリーは日本でも効く」を額面どおり受け取るなら、答えは×です。本が推している形(1月まるごと)では効きませんでしたし、大統領選挙サイクルに至っては土俵にすら上がれません。

ただ、窓を年明けの数営業日まで狭めれば、日本でもちゃんと残りました。しかもその幅は、本が言う「最初の5日間」とほぼ重なっています。まるごと否定するには惜しい発見でしたので、真ん中に置きました。

この結果、実践にどう活かす?

1
買いの合図ではなく、その年の温度計として使う
年明け最初の5営業日が上げたからといって、その日に何かを買う根拠にはなりません。そうではなく、今年はポジションを厚めに持てそうか、慎重に構えるべきかという、年間の温度感を測る目盛りとして見るくらいが分相応だと思います。
2
下げたときは、売りの合図にはしない
年明けが下げた30年のその後は、プラスで終わった割合がちょうど50.0%でした。これは「下がる」ではなく「分からない」という意味です。ここを取り違えて弱気に振り切ると、1986年(+45%)や2025年(+28%)のような年を丸ごと逃すことになります。
3
外れる4分の1のほうを、先に見ておく
合図が出た36年のうち9年はマイナスで終わり、いちばん悪い年は−17.9%でした。合図に賭けるなら、外れたときにどこで降りるかを先に決めておくほうが現実的です。年単位の指標は、間違いに気づくまでが長いのが厄介なところなんですよね。
本質76年まとめて、やっと見える程度の差です

今回いちばん正直に書いておきたいのはここです。年明け5営業日の効き目は、1950年から2025年までを全部ひとまとめにして、ようやく帯からはみ出しました。時代を3つに割ると、1950〜1989年も、1990〜2012年も、2013年以降も、すべて帯のなかに収まってしまいます。差の向きは3期間とも同じでしたが、それだけです。

理由は単純で、この指標は1年に1回しかデータが増えないからです。76年かけて76個。曜日のクセなら1年で250個近く貯まることを考えると、いかに心もとないかが分かると思います。「近年も効いている」とは、このデータからは言えません。

それと、なぜ年明けの数日にそんな力があるのかという理屈は、私にはうまく説明できていません。年末年始をはさんで運用方針が組み直されるから、といった説明は思いつきますが、それを裏づけるところまでは今回やれていないんですよね。

私の場合は
私は数日から数週間で回すスイングが中心なので、正直なところ年間のパフォーマンスはあまり気にしていません。ただ、今年は強くなりそうだと分かっていれば、判断に迷った場面で強気に踏み込む後押しくらいにはなります。とはいえメインは短期のトレードなので、判断材料としてそこまで重視しているわけでもないんですよね。どちらかというと、エンタメ寄りの話として楽しんでいる気がします。

まとめ

この記事のまとめ
  • 「1月の方向がその年を占う」は、日本では1月ぶんを差し引くと効き目が消えました。日本株はもともと65.8%の年が上昇で終わるので、当たっているように見えていただけでした。
  • 効いていたのは年明け最初の3〜7営業日。上げた年はそのあと78.3%がプラス、下げた年は50.0%と五分五分に戻るだけ、という非対称でした。
  • 前年の勢いだけでは説明がつかず、とくに前年に下げた年ほど、年明けの数日で明暗が分かれます
  • 2026年は合図が出ている年です。同じ形の36年は75%がプラスで終わりましたが、9年は外しています
判定:★★★☆☆ そのままでは効かない。窓を狭めると残る

よくある質問

Q. 1月バロメーターって、そもそも何ですか?
1972年にイェール・ハーシュ(今回の本の著者の父親)が考案した指標で、「1月の株価の方向が、その年の方向を占う」というものです。アメリカのS&P500では1950年以降の的中率が88.7%とされています。ただしこれは横ばいの年を除いた数字で、本のなかでも「横ばいの8回を含めると75.8%」と書かれています。手元のS&P500のデータで同じ期間を数えたところ75.8%になり、本の記載と一致しました。
Q. 「年明け最初の5営業日」は、いつからいつまでですか?
大発会(その年の最初の取引日)から数えて5営業日目の終値までです。1月5日という日付の意味ではありません。2026年でいえば1月5日から1月9日までの5日間で、前年末の終値からの騰落は+3.18%でした。
Q. 2026年は合図が出ているとのことですが、いま買えばいいのでしょうか?
この記事はそういう使い方をおすすめするものではありません。今回分かったのは「合図が出た年は、出ていない年よりも分が良かった」ということまでで、いま買うべきかどうかは別の話です。実際、同じ合図が出た36年のうち9年はマイナスで終わっています。年明けの数日は、あくまでその年の温度感を測る材料のひとつだと考えています。
  • データ出典:Stooq(日経平均株価 日次終値・1949年5月16日〜/S&P500 日次終値)。集計はすべて私が行っています。
  • 対象期間を1950〜2025年の76年にした理由:日経平均の記録が1949年5月16日から始まっており1949年が年の途中からになること、および2026年がまだ終わっていないためです。
  • 2026年の値のみ、Stooq ^NKX の2026年8月28日終値(66,405.56円)を使っています。年末時点の確定値ではありません。
  • 騰落率はすべて終値ベースで、配当・手数料・税金は含んでいません。
  • 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、割合の差の標準誤差を2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
  • 書籍:ジェフリー・A・ハーシュ『アノマリー投資』(長尾慎太郎監修・山口雅裕訳、パンローリング、2013年)。原書は The Little Book of Stock Market Cycles(Jeffrey A. Hirsch & Douglas A. Kass, 2012)。本文中の米国の数値は同書の記載によります。

本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。

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