金属商社にバトン|アルコニックス+33%・上方修正ラッシュと金の上放れ
2026年8月6日の東京市場は、前夜の米ハイテク安を受けて半導体と値がさ株が売られ、日経平均は617円安の65,683円と3日ぶりに反落しました。ところがTOPIXは+0.24%と逆に上げています。指数を沈めたのは一部の大型株で、市場全体はむしろ買われた1日でした。
その日に、鉄鋼と非鉄を扱う専門商社がまとまって逆行高になりました。アルコニックスは2営業日で+33.13%、神鋼商事も+10.98%です。
3日前に私が書いたのは「電子商社で明暗」でした。ところが今日、その電子商社を金属商社が追い抜いています。何が起きたのかを、決算と商品市況の両側から数字でほどいていきます。
① 引き金は上方修正ラッシュ。アルコニックスが8月5日に通期経常を40%上方修正して後場ストップ高、神鋼商事も8月6日に上方修正と8円増配を出しました。佐藤商事は7月31日に22%の上方修正と18円増配です。
② 同じ2営業日に金価格が+5.16%と7月のレンジを上放れしました。金属商社9社の2日間の騰落率は+8.11%で、全市場平均の+2.11%を大きく上回っています。
③ この日の最弱業種は非鉄金属(-5.62%)でしたが、中身を割ると沈んだのは電線4社(平均-6.21%)で、製錬・リサイクル勢は-0.12%とほぼ横ばいでした。同じ業種の中で、AIと金属が逆を向いています。
何が起きたか|半導体が総崩れの日に、金属がそろって逆行高
まず全体像です。この日の東証プライムは、太陽誘電が-10.98%、キオクシアホールディングスが-10.24%、フジクラが-9.40%と、AI・半導体のサプライチェーンが軒並み売られました。前夜の米国でナスダックが-0.83%と下げたことが素直に響いた形です。
一方で、値上がりした業種は33のうち26に達しています。上昇銘柄比率も72.7%で、新高値は94銘柄に対し新安値は10銘柄でした。つまり指数を押し下げたのは値がさの半導体だけで、その外側では7割超の銘柄が上げていたことになります。
そのなかで卸売業は+1.91%と、33業種の6位に入りました。ただ、業種全体が一様に強かったわけではありません。中身を見ると、上げを引っ張ったのは鉄鋼・非鉄・金属を扱う専門商社に偏っています。
9社の平均は+8.11%で、全市場平均の+2.11%のおよそ4倍でした。ただし全社が動いたわけではなく、最大手の阪和興業は+3.35%、コンドーテックは+1.21%にとどまっています。動いたのは中堅・専門の側だけ、という点は押さえておきたいところです。
数値で見るインパクト|この1週間で上方修正+増配が3社
上げた側に共通していたのは、やはり決算でした。しかも3社とも上方修正と増配をセットで出しています。
いちばん派手だったのがアルコニックスです。8月5日の昼12時30分、場中に第1四半期決算を発表し、通期経常利益を100億円から140億円へ40%引き上げました。5期ぶりの最高益予想で、年間配当も90円から95円へ増やしています。開示から30分足らずでストップ高買い気配となり、そのままストップ高で引けました。
翌8月6日も+12.03%と続伸しています。会社側は上振れの理由として、非鉄相場の高止まりと半導体向け需要を挙げました。つまり電子商社を押し上げたのと同じ需要が、一段手前の金属側にも効いているという構図です。
神鋼商事は8月6日の12時45分に発表しました。上期経常を一転して9%増益へ上方修正し、通期も増額、配当も8円積み増しています。こちらも場中の開示で、当日は+6.73%でした。
| 銘柄 | 2営業日 (8/4→8/6) | 決算・開示の中身 |
|---|---|---|
| アルコニックス(3036) | +33.13% | 通期経常を40%上方修正・5期ぶり最高益、年配当90円→95円(8/5 12:30開示、同日ストップ高) |
| 神鋼商事(8075) | +10.98% | 上期経常を一転9%増益へ上方修正、通期も増額、配当8円増額(8/6 12:45開示) |
| 松田産業(7456) | +7.26% | 貴金属リサイクルが主力。当欄の中では金・銀の価格にいちばん近い業態 |
| 白銅(7637) | +6.28% | アルミ・ステンレス板材。決算発表は8月7日の予定で、まだ出ていません |
| 佐藤商事(8065) | +5.27% | 今期経常を22%上方修正・最高益を上乗せ、配当18円増額(7/31 13:30開示) |
| 阪和興業(8078) | +3.35% | 鉄鋼商社の最大手。1か月では+0.23%とほぼ動いていない |
※2営業日の騰落率は終値ベース。決算・開示の内容は各社の適時開示および決算速報より。
ここで気になるのが白銅です。決算をまだ出していないのに、5営業日で+14.61%上げています。同じ業態で上方修正が続いたことを受けた、先回りの買いと読むのが自然でしょう。決算は8月7日の予定なので、答えは翌営業日に出ます。
国内市場の反応|「最弱業種・非鉄金属」の中身は電線だった
ところで、この日いちばん下げた業種は非鉄金属で-5.62%でした。金属が買われているのに、非鉄金属が最弱というのは一見ちぐはぐです。ですので、19社を業態で割ってみました。
| 分類 | 社数 | 8/6騰落率 | 8/4→8/6 |
|---|---|---|---|
| 電線・ケーブル | 4 | -6.21% | +2.28% |
| 金属(製錬・リサイクル・素材) | 15 | -0.12% | +6.17% |
※東証プライム上場の非鉄金属19社を、電線・ケーブル(フジクラ、住友電気工業、古河電気工業、SWCC)とそれ以外に分けて単純平均。
答えははっきり出ました。沈んだのはフジクラ-9.40%・住友電気工業-8.98%といった電線株で、これはデータセンター向けの光ケーブル需要、つまりAI関連の下げです。逆に住友金属鉱山は+6.13%、DOWAホールディングスは+4.07%、三菱マテリアルは+1.71%と、金属そのものを扱う側は上げています。
同じ「非鉄金属」という業種名の下で、AIと金属が正反対を向いた日でした。業種の平均値だけを見ていると、この動きは丸ごと見落とします。
この物差しでテーマ別に集計すると、商社は+1.67ptで10テーマの首位でした。前日まで断トツだった素材とテクノロジーは、そろってマイナスに沈んでいます。1日で主役が入れ替わった格好です。
独自分析|バトンは電子商社から金属商社へ
では、8月3日に書いた電子商社との関係はどうなったのか。両方のグループについて、全市場平均に対してどれだけ勝ったかを7月22日から並べてみました。
8月4日の時点では、電子商社が+6.75pt、金属商社が+3.54ptで、電子商社のほうが優位でした。ところが8月6日には金属商社が+9.86pt、電子商社が+7.65ptとなり、2営業日で順位が入れ替わっています。金属商社はこの2日で6.3pt積み増した計算です。
そしてもうひとつ、同じ2営業日に商品市況が動いていました。私が毎日記録している金価格は、8月4日の4,120.9ドルから8月6日の4,333.5ドルへ、+5.16%上げています。7月はずっと4,030〜4,120ドルのレンジで動いていましたから、明確な上放れです。
ただ、これを主因と決めつけるのは早いと思っています。アルコニックスが挙げた上振れ理由は「非鉄相場の高止まりと半導体需要」で、貴金属ではありません。貴金属に直結する松田産業の+7.26%も、9社平均の+8.11%と比べて突出してはいないんです。
ですので私は、主因は決算、追い風が商品市況という順番で見ています。金・銀高でコモディティ全般に資金が戻った地合いが、上方修正という好材料の効き方を増幅した——くらいの読み方が、いまの数字には合っている気がします。
注目銘柄|まだ決算を出していない2社
翌日以降を見るうえで、私が気にしているのはまだ決算を出していない銘柄です。今回の上げが決算に対する反応なら、未発表の銘柄がどう出るかで、この物色が続くかどうかが分かります。
ひとつは先ほどの白銅で、8月7日に発表予定です。決算前にすでに5営業日で+14.61%上げていますから、期待は相応に織り込まれています。もうひとつは住友金属鉱山で、こちらは8月10日の予定です。同社は金価格との連動が強く、過去にも金相場の上下でそのまま株価が動いてきました。
逆に、すでに上げた銘柄の過熱感は無視できません。アルコニックスはRSIが85.1、25日移動平均線からの乖離が+36.1%です。神鋼商事もRSI82.4、佐藤商事は77.2でした。
| 銘柄 | RSI | 25日線からの乖離 | 8/6騰落率 |
|---|---|---|---|
| アルコニックス(3036) | 85.1 | +36.1% | +12.03% |
| 神鋼商事(8075) | 82.4 | +12.7% | +6.73% |
| 佐藤商事(8065) | 77.2 | +17.2% | +1.99% |
| 白銅(7637) | 71.6 | +11.7% | +0.40% |
| 阪和興業(8078) | 61.1 | +2.4% | +1.56% |
RSIが80を超えた銘柄は、材料が一巡すると戻りも速くなります。私が毎日つけている過熱スコアでも、神鋼商事は+7、アルコニックスは+6と最上位クラスでした(買われすぎ・売られすぎを5指標で機械的に採点する方法は個別銘柄の過熱スコアで解説しています)。
なお、業態別の商社の整理は日本商社株の見極め方にまとめてあります。今回動いたのはそのうちの金属・資源型で、総合商社は8社平均で+2.78%(5営業日)と、市場平均を少し上回る程度にとどまりました。
明日以降のシナリオ|白銅の決算が最初の答え合わせ
◎ 強気に見るなら
上方修正の理由が非鉄相場の高止まりと半導体需要である以上、同じ環境に置かれた他社にも同じ数字が出てくる可能性はあります。鉄鋼は25日累積の対TOPIX相対騰落が+14.77ptと33業種の首位で、業種としての地力も伴っています。金価格が上放れした状態が続けば、金属を扱う側への物色は数日単位で残ると思います。
△ 弱気に見るなら
3日前の電子商社は8月5日をピークに、この日はもう失速しました。同じ賞味期限になる可能性は十分あります。加えてRSI80台の銘柄が並んでおり、白銅の決算が想定に届かなければ、先回りで買われた分がそのまま剥がれます。最大手の阪和興業が1か月で+0.23%と動いていない点も、業種全体の話ではないことを示しています。
私が翌日以降で見ているのは2つです。ひとつは白銅の決算で、これが上方修正なら「決算が主因」という読みが裏づけられます。もうひとつは金価格が4,300ドル台を保てるかどうかで、こちらが崩れれば商品市況側の追い風は消えます。
整理は4つです。
- 3日前の電子商社と、構図がそっくりです。上方修正を出した中堅が跳ね、最大手はほとんど動かない。あのときのマクニカホールディングスの位置に、今回は阪和興業がいます。業種が買われたのではなく、好決算の銘柄がたまたま同じ業態に固まっただけ、という可能性は今回も残ります。
- ただ、今回は金価格という追い風が乗っている点が違います。電子商社のときは決算だけでした。今回は同じ2営業日で金が+5.16%上放れし、住友金属鉱山やDOWAホールディングスといった金属側もそろって上げています。決算だけの説明では足りない広がり方をしているんですよね。
- それでも、いま追いかける理由は見つかりません。アルコニックスはRSI85.1、25日線から+36.1%の位置です。上方修正の中身が良いことと、いまの株価から買って報われることは別の話だと考えています。押し目を作ってから乗っても、遅くはないはずです。
- むしろ興味があるのは、まだ動いていない側です。阪和興業は1か月+0.23%、コンドーテックは-2.02%と、同じ業態でも取り残されています。物色が本物なら、こちらにも順番が回ってくるはずです。回らなければ、今回の上げは個別の決算に対する反応だったということになります。
結論としては「筋は通っているが、値段が高い」です。8月7日の白銅の決算で、まず一度答え合わせをします。
3日前の電子商社の分析は電子商社で明暗|決算が分けたAI組とFA組で、当日のマーケット全体の動きは日次レポートで取り上げています。










コメントを残す