日本株の上げは夜に起きている|TOPIX上昇の65%は寄り付き前

日本株の上げは夜に起きている|TOPIX上昇の65%は寄り付き前

日本株の上げは夜に起きている|TOPIX上昇の65%は寄り付き前

日本株が上がったと言うとき、私たちはたいてい「その日の値動き」を見ています。ところが取引時間の中で起きたことと、外で起きたことを分けて数え直すと、印象がかなり変わります。

2025年7月8日から2026年8月17日までの269営業日を、夜(前日終値→当日始値)日中(当日始値→当日終値)に割って積み上げました。TOPIXの上昇+48.6%のうち、夜が+29.1%、日中が+15.0%です。

この記事の要点(先に4つ)
① TOPIXの上げの65%は取引時間外に発生していました。夜の勝率は60.2%、日中は53.5%です。

② 指数によってまるで違います。日経平均は夜53%とほぼ半々ですが、グロース250は日中だけを積み上げると-18.2%です。

③ ただし売買には転用できません。往復0.10%のコストでTOPIXは-1.3%まで沈み、下げる月は夜も下げます。

④ 使い道は読み方の側にあります。日中リターンを別に記録すると、同じ陰線でも国内要因か海外要因かを切り分けられます

何を測ったか|1日を2つに割って積み上げる

前提として、東京市場は15:30に閉まり、翌朝9:00に開きます。閉まっているあいだも米国市場や為替は動き、決算発表の多くも引け後に出ます。だから翌朝の寄り付きは、前日の終値と同じ水準からは始まりません。

前日の引け15:30 → 翌朝の寄り9:00(取引時間外)
日中
寄り9:00 → 引け15:30(ザラ場)

この記事では上の図のとおり、前日の終値から当日の始値までのずれを「夜」、当日の始値から終値までの動きを「日中」と呼んで、1日を2つに分けて測ります。具体的な数字で見ると、次のようになります。

区間使う値数値例リターン
夜(前日の引け→翌朝の寄り)前日終値 → 当日始値2,000 → 2,020+1.0%
日中(寄り→引け)当日始値 → 当日終値2,020 → 2,010-0.5%
1日トータル前日終値 → 当日終値2,000 → 2,010+0.5%

※数値は説明用の例です。夜と日中を掛け合わせると1.010×0.995=1.005となり、必ず1日の騰落率(+0.5%)に一致します。1日の値動きが、漏れなく重複なく2つに分かれているということです。

トレーダーの言葉で言えば、夜のリターンは寄り付きのギャップ(窓)のことです。つまりこの記事は、「この1年、毎朝の窓を全部積み上げたらどれだけになったか」を数えたものだと言い換えられます。ただしローソク足で「窓」と呼ぶような大きな空きだけでなく、ほとんど動かず寄った日の小さなずれも、漏らさず数えに入れています。

あとはこの「夜」と「日中」を、269日分それぞれ複利で積み上げるだけです。売買にたとえると、夜の線は「毎日引けで買い、翌朝の寄りで売る」、日中の線は「毎日寄りで買い、引けで売る」を繰り返した場合の成績(コストを考えない場合)に相当します。冒頭の+29.1%と+15.0%は、そうやって作った2本の線の到達点で、使うのは各日の始値と終値だけです。

数値で見るインパクト|上げの65%は寄り付き前だった

TOPIXの上昇を「夜だけ」と「日中だけ」に分けた累積推移 2025年7月8日から2026年8月17日までの269営業日。TOPIXの実際の上昇は+48.6%。前日終値から当日始値までの夜間だけを積み上げると+29.1%、当日始値から終値までの日中だけを積み上げると+15.0%となり、上昇の3分の2近くが夜間に発生している。 TOPIXの上げは、どこで起きているか 2025/07/08〜2026/08/17(269営業日)|夜=前日終値→当日始値、日中=当日始値→当日終値をそれぞれ積み上げ -10% +0% +10% +20% +30% +40% +50% 7月 10月 1月 4月 7月 2025年 2026年8月 実際 +48.6% 夜だけ +29.1% 日中だけ +15.0% 夜(前日引け→翌朝寄り) 日中(寄り→引け) 実際のTOPIX 出所: 株探の四本値から筆者作成。配当・手数料は考慮していません

図1:TOPIXの累積推移を夜と日中に分解したもの。青が夜だけ、オレンジが日中だけ、灰色の破線が実際のTOPIXです。青とオレンジを掛け合わせると灰色になります。出所:株探の四本値から筆者作成。

青(夜)の線がほぼ一貫して右肩上がりであるのに対し、オレンジ(日中)は2025年11月から12月にかけて目減りし、2026年4月から7月にかけても伸び悩んでいます。指数が上がり続けたこの1年で、日中の売買が価格を押し上げていた期間は思ったより短いのです。

もうひとつ、灰色(実際のTOPIX)の線の形にも注目してください。山や谷のタイミングが、青(夜)の線とほとんど重なっています。実際の値動きは夜と日中の積み重ねなので、日中がおおむね横ばいだと、指数全体の形は夜の形をそのまま引き継ぎます。「方向は夜に決まっていた」ことは、この2本の線の形の近さとして目でも確かめられます。

時間帯269日累積1日平均勝率1日の振れ幅
夜(前日引け→翌朝寄り)+29.1%+0.097%60.2%0.66%
日中(寄り→引け)+15.0%+0.056%53.5%0.84%
実際のTOPIX+48.6%+0.155%58.0%1.26%

※「1日の振れ幅」は、ふだんの1日がどのくらい動くかの目安です(標準偏差)。夜の0.66%なら、だいたい3日に2日は±0.66%の範囲に収まる、くらいの意味です。

この表が構図を要約しています。夜は「小さく、しかし高い確率で上がる」時間帯で、日中は「大きく動くが方向が定まらない」時間帯でした。日中のほうが振れ幅は3割ほど大きいのに、積み上がる量は半分です。

値幅は日中に生まれ、方向は夜に決まっていた——と言い換えてもいいと思います。

3指数の比較|グロース250は日中だけだとマイナス

3指数の上昇を夜と日中に分けた内訳 269営業日の累積。日経平均は夜+34.4%・日中+29.8%でほぼ半々。TOPIXは夜+29.1%・日中+15.0%。グロース250は夜+27.5%に対し日中は-18.2%とマイナスで、日中だけを積み上げると値を減らしていた。 同じ269日でも、指数によって「夜の比重」が違う 2025/07/08〜2026/08/17の累積。グロース250は日中だけを積み上げるとマイナスになる 夜(前日引け→翌朝寄り) 日中(寄り→引け) -20% -10% +0% +10% +20% +30% +40% 日経平均 実際 +74.4% 夜 +34.4% 日中 +29.8% TOPIX 実際 +48.6% 夜 +29.1% 日中 +15.0% グロース250 実際 +4.3% 夜 +27.5% 日中 -18.2% 出所: 株探の四本値から筆者作成。夜と日中の積が「実際」と一致します(複利のため単純な足し算にはなりません)

図2:同じ269営業日を3指数それぞれで分解したもの。夜と日中の積が「実際」と一致します(複利のため単純な足し算にはなりません)。出所:株探の四本値から筆者作成。

指数実際夜だけ日中だけ夜の寄与
日経平均+74.4%+34.4%+29.8%53%
TOPIX+48.6%+29.1%+15.0%65%
グロース250+4.3%+27.5%-18.2%算出不可

※夜の寄与は、複利を考慮して計算した「上げ全体に占める夜の取り分」です。グロース250は日中がマイナスのため、寄与率が100%を超えてしまい意味のある比率になりません。

いちばん極端なのがグロース250です。夜は+27.5%積み上げたのに、日中は-18.2%削っています。差し引きで+4.3%しか残らなかったのが、この1年のグロース250でした。

「新興市場は動いているように見えるのに残らない」という体感は、この分解でかなり説明できます。値動きが荒いのではなく、荒い部分がすべて日中に集中していて、しかもそこがマイナスなのです。

逆に日経平均は夜と日中がほぼ拮抗しています。値がさハイテク株の比重が大きく、その多くが米国株と連動して寄り付きに水準を切り上げる一方、日中も継続して買われる場面が多かったためと考えられます。

なぜ夜に上がるのか|米国株だけでは説明できない

いちばん分かりやすい説明は、米国株の持ち越しです。直近85営業日でNYダウの前日騰落率とTOPIXの夜のリターンを回帰すると、相関係数+0.457、決定係数0.208。ダウが1%上げた翌朝のTOPIXは、平均して0.30%高く寄る計算になります。

ただし決定係数0.208ということは、夜の値動きのばらつきの8割は米国株以外の要因だということです。為替、アジア時間の先物、決算発表、そして単純に寄り付きの需給が残りを埋めています。

もうひとつの説明は、日中が「リスクを降ろす時間」になっていることです。日中の振れ幅が夜の1.27倍あるのに累積が伸びないのは、上げと下げが相殺しているからです。ポジションを翌日に持ち越したくない参加者が日中に売り、翌朝の寄り付きで買い直す——という行動と整合します。

なお、これは新発見ではありません。海外では「オーバーナイト効果」として長く知られ、米国株でも同様の報告が繰り返されています。この記事の値打ちは現象の発見ではなく、直近1年余りの日本の主要3指数について実際の四本値で数字を出し直したことにあります。

月ごとに見ると|夜の優位は安定していない

日中TOPIX実際
2025年7月+3.12%+1.33%+4.49%
2025年8月+0.63%+3.84%+4.49%
2025年9月+2.04%-0.01%+2.03%
2025年10月+4.41%+1.70%+6.19%
2025年11月+1.80%-0.39%+1.40%
2025年12月+2.89%-1.93%+0.90%
2026年1月-0.69%+5.35%+4.62%
2026年2月+4.69%+5.49%+10.44%
2026年3月-6.97%-4.53%-11.19%
2026年4月+7.24%-0.63%+6.56%
2026年5月+3.69%+2.39%+6.17%
2026年6月+1.31%-0.36%+0.95%
2026年7月+1.27%-1.04%+0.21%
2026年8月(17日まで)+1.08%+3.40%+4.52%

※夜・日中とも各月内の複利。2026年8月は17日までの11営業日です。

14か月のうち夜が日中を上回ったのは9か月です。夜がプラスだった月は12か月と安定している一方、日中がプラスだった月は7か月とちょうど半分でした。

ただし2025年8月や2026年1月、直近の8月のように、日中が夜を大きく上回った月もあります。「必ず夜が勝つ」のではなく、269日を通算した結果として夜に寄っている、というのが正確な言い方です。1か月という単位で見れば逆転は珍しくありません。

そして最も重要なのは、いちばん下げた2026年3月の内訳です。TOPIX-11.19%のうち夜が-6.97%、日中が-4.53%。下落の6割もやはり夜に起きています。夜が「安全な時間帯」なのではなく、単に方向を決める情報が夜に集中しているだけなのです。

売買には使えない|コストと執行の壁

戦略(269回の売買)コスト控除前往復0.10%控除後
オーバーナイト・日経平均+34.4%+2.7%
オーバーナイト・TOPIX+29.1%-1.3%
オーバーナイト・グロース250+27.5%-2.6%
デイトレード・日経平均+29.8%-0.8%
デイトレード・TOPIX+15.0%-12.1%
デイトレード・グロース250-18.2%-37.5%

※オーバーナイト=毎日引けで買い翌朝の寄りで売る。デイトレード=毎日寄りで買い引けで売る。往復0.10%はETFのスプレッドと手数料を合わせた控えめな想定です。

往復0.10%でも、269回転ぶんを複利で積み上げると累計約31%のコストになり、夜の優位はほぼ食い潰されます。唯一プラスで残った日経平均の+2.7%も、1年強で年率2%程度です。単に指数を買って持っていれば+74.4%だったことを思えば、比較になりません。

執行の問題もあります。この計算は「毎日、大引けの終値ちょうどで買い、翌朝の寄り値ちょうどで売る」ことを前提にしています。引け成りと寄り成りを269営業日続ける必要があり、しかもどちらも約定価格を自分では選べない注文です。

ギャップの大きい日ほど滑りが大きくなります。つまり「夜のリターンが大きかった日」ほど、机上の数字と実際の約定が離れるということです。紙の上の成績と口座の中の成績が、最も乖離しやすいタイプの戦略だと思っています。

それでも使える読み方|「今日は弱い」の中身を分ける

売買シグナルにはなりませんが、相場の読み方の解像度は確実に上がります。

指数が前日比マイナスで終わった日でも、中身は2通りあります。(a) 高く寄って日中ずっと売られた日と、(b) 安く寄ってから日中は買い戻された日です。同じ「陰線」「前日比マイナス」でも意味はまるで違います。

前者は国内の売り圧力、後者は海外要因の一過性のショックである可能性が高い。日中リターン(終値÷始値)を別立てで記録しておくと、この区別が機械的にできるようになります。

「累積で積み上げて見る」という考え方
1日ごとの騰落率は雑音が大きく、方向を読み取れません。そこで日々のリターンを複利で積み上げ、線として眺めるのがこの記事の手法です。本ブログでは業種別の強弱を測るときにも同じ考え方を使っていて、各業種の騰落率からTOPIXの騰落率を引いた差を日々積み上げた「対TOPIX相対騰落」を、日次レポートの中心指標のひとつにしています。
→ もっと詳しく知りたい方は:対TOPIX相対騰落(累積)の読み方を読む

ちなみに日次レポートで使っている上昇銘柄比率や騰落レシオも、すべて終値ベースの指標です(この種の内部指標の見方は市場体温計の読み方で解説しています)。つまり「幅が広がった/狭まった」という判断も、夜の分を含んだ数字で行っているということです。

自分の持ち株でも同じ分解ができます。必要なのは始値と終値だけなので、日足をダウンロードして、表計算ソフトに割り算の列を2つ作るだけです。寄り付きで水準が決まる銘柄と、日中の売買で値が動く銘柄とでは、有効な注文の出し方が変わります。指数の平均値より、自分が触っている銘柄で確かめるほうが実益があると思います。

この集計の限界|上昇局面しか見ていない

サンプルは269営業日、そのほとんどが上昇局面です。下落相場が長く続いた期間を含んでいないため、「夜の優位」が相場環境に依存しない性質なのかは判定できません。2026年3月の1か月だけが手がかりで、そこでは夜も下げました。

四本値は株探の時系列データを用いており、配当・分配金は考慮していません。コスト試算の往復0.10%も一つの仮定にすぎず、実際の執行コストは銘柄と時間帯によって大きく変わります。

また、曜日別の集計も試しました。月曜の夜だけがマイナスで火曜と水曜の夜に偏る、という形は出ています。ただし1曜日あたり50日強しかなく、統計的にはほぼ何も言えない水準なので、数字は載せません。

📝 個人的な見解
売買には使えない。けれど「日中の値動きだけを見て強弱を判断していた」という自分の癖には気づけた——この記事で得たのはそこです
  • グロース250の日中-18.2%がいちばん効きました。新興市場は「値動きが荒い」と一括りにしていましたが、荒い部分が日中に集中していて、しかもそこが削っているという構造は数えるまで見えていませんでした。
  • 「使える」と言いたくなるのを止めました。勝率60.2%という数字だけ見れば魅力的です。ただコストを引いた瞬間に消えるものを「優位」と呼ぶのは、自分に対しても読者に対しても誠実ではないと思っています。
  • 3か月後にもう一度集計します。標本が330日程度になり、下落局面が入れば「夜の優位は相場環境に依存するか」に答えられます。今の結論は上昇相場1年分のものでしかありません。
本記事は市場データの分析であり、特定の銘柄・商品の売買を推奨するものではありません。掲載した数値は株探の時系列データ(四本値)をもとに筆者が集計したもので、配当・分配金・税金は考慮していません。過去のデータが将来の結果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA