- 日経は3.85%安。米雇用統計ショックで全面安、最高値から3営業日で6.9%下げました。
- チャートは前回高値と25日線が重なる支持帯で下げ止まり。押し目としては健全な形に見えます。
- ただし信用買い残は高水準のまま、評価率も天井圏。需給の過熱は、まだ抜けきっていないように見えます。
①何が起きたか
発端は、6月5日に出た米国の雇用統計です。雇用が強いのは本来いいニュースのはず。ところが、いまの相場では少し事情が違います。
- 雇用統計が大幅上振れ:市場予想およそ8.9万人に対し、結果は17.2万人。
- 利下げ期待が後退:景気が強いと、FRB(米国の中央銀行)が利下げを急がない、という連想が働きます。
- 米金利が上昇 → ハイテク売り:米半導体株のSOX指数は週末に10%超下落、ナスダックも4%超安。
- 直前に最高値:日経は6月3日に史上最高値をつけたばかりで、反動が出やすいタイミングでした。
ですので今回の急落は、外部要因と過熱感が重なって出たもの、と読み取れます。
②数値で見るインパクト
6月3日のザラ場高値68,786円からの下落率は6.9%(終値ベース)。VIXは19.90へ急騰し、米10年金利も4.576%まで上がりました。ドル円は160円台に乗せています。
③国内市場の反応 ― 逃げた先と叩かれた先
中身を業種で見ると、二極化がはっきりしていました。私が重く見ているのは対TOPIX相対騰落。市場平均(TOPIX)と比べた強さを示す数字で、全面安の日でも“どこに資金が逃げたか”が見えてきます(単位はpt=ポイント、プラスなら平均より強い)。
強かったのは保険・食料品・小売といった内需ディフェンシブ。逆に最も売られたのは非鉄金属で、半導体に近い電気機器も大きく下げました。景気敏感とハイテクを売って内需に逃げる、典型的なリスクオフのローテーションが起きた一日、という感じですね。市場の過熱・冷却を測る市場体温計でも、いちばん広く見るLayer1はマイナス5の「極寒」まで冷え込んでいます(市場体温計の読み方はこちら)。
各業種の騰落率から市場平均(TOPIX)の騰落率を引いた数字です。全面安・全面高の日でも「相対的にどこが強かったか」が分かるので、資金の逃げ場や物色の中心をつかむのに向いています。詳しくは対TOPIX相対騰落の用語集で解説しています。
④需給とテクニカルで「下げ止まり」を点検
ここがこの記事のいちばん見たかったところです。まずはチャートを見てください。
今日の安値は63,406円、終値は64,024円。下ヒゲを引いて切り返しました。注目はこの安値の水準です。
・前回高値 ≒ 63,300円(5月に何度かはね返された水準)
この2つが重なる63,300〜63,600円に、今日の安値がぴたりと届いて止まりました。チャートの形だけ見れば、上昇トレンド中の押し目として健全な下げ方に見えます。
短期は売られすぎ、でも中期はまだ。 過熱具合を測る騰落レシオ(値上がり数÷値下がり数。100超で買われすぎ、未満で売られすぎの目安)は、25日ベースが92.67で中立。一方、短い6日ベースは76.22まで下がり「過冷」ゾーンに入りました。短期では売られすぎでも、中期ではまだ底を示すほどではない、という位置です。
ところが、信用取引の数字を見ると、もう少し気になる景色が出てきます。
- 信用買い残:約6.39兆円 ― お金や株を借りて買っている残高。数か月でいちばんの高水準で、5週間で13.7%も積み上がりました。
- 信用倍率:7.08倍 ― 買い方が売り方の何倍か。ふだんは5〜6倍なので、かなり買いに偏っています。
- 信用評価率:-0.36% ― 信用で買っている人の含み損益の平均です。普段は-5〜-10%あたりで動き、-3%に近づくと「天井圏」とされます。今回の-0.36%は、その天井ラインのさらに上。ほぼ含み損ゼロという、めったに出ない過熱(ほぼ異常値)の水準です。
買い方は高値圏でパンパンに積み上がったまま、含み損もほとんど抱えずにこの急落を迎えました。本当に底値が近いときは評価率がマイナス15〜20%まで沈み、投げ売りが一巡しているもの。いまはその真逆です。ですので積み上がった買い残は、反発の燃料というより下げが続いたときに出てくる「売り圧力の在庫」に近い、と私は見ています。
⑨二段下げか、自律反発か
テクニカルと需給で、見えてくる方向が逆を向いています。この綱引きを2つのシナリオに整理します。
25日線(約63,574円)と前回高値(約63,300円)の支持帯を守れれば、上昇トレンド中の押し目として素直に反発しやすい形です。米経済そのものは雇用統計が示すとおり強く、ここから崩れ続ける展開は考えにくいように思います。
逆に63,300〜63,574円を明確に割り込むと、高水準の信用買い残の整理(追証・ロスカット)が出やすく、下げ足が速くなる余地があります。チャートのきれいさが見せる以上に、下にもろい可能性は意識しておきたいところです。
⑩まとめ
今日の日経は、外部ショックで大きく下げながらも、前回高値と25日線が重なる支持帯でいったん下げ止まりました。チャートの形は「健全な押し目」で、米経済の強さも踏まえると、総崩れのシナリオは中心には置きにくいと感じます。
当日のマーケット全体の動きは日次レポートでも詳しく扱っています。










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