円高で日経1,130円安|下げた業種の並びは10年の集計どおりでした

2026年9月8日、日経平均は前日比1,130円51銭安(-1.70%)の6万5,269円33銭で引けました。前日に1,378円90銭上げたぶんの8割ほどを、1日で返した形です。安値引けでした。

下げた理由として挙がっているのは、円高と中東の報道の二つです。ドル円は7日の大引け時点の1ドル155円70銭に対して、8日の大引けは153円74銭。前場には153円ちょうど近くまで進みました。

そこでこの記事では、下げた業種と上げた業種の並びを見ます。前回、10年ぶんのデータで「円安の日に強い業種」と「円高の日に強い業種」を分けて測ってありますので、その分け方に8日の値動きを当てはめて、円高がどれくらい効いた日だったのかを確かめます。結論を先に書くと、並びは集計どおりでした。ただし、それで下げ幅の全部が説明できるわけではありません。

この記事の要点(先に3つ)
① ドル円は7日の大引け155円70銭に対して8日の大引けは153円74銭で、大引け同士で比べると約2円の円高です。7日は東京が引けたあとに円が買われたので、8日はその円高の水準のまま東京が開いたことになります

② 東証33業種を、10年ぶんの集計で「円安の日に強い8業種」「どちらでもない14業種」「円高の日に強い11業種」に分けると、8日の成績は-0.03+0.25+0.85(いずれも日経平均を引いた差)。きれいに順番どおりに並びました

③ ただし、いちばん落ちたガラス・土石製品は「どちらでもない」側の業種です。下げ幅1,130円51銭のうち349円は東京エレクトロンとアドバンテストの2銘柄ぶんで、こちらは円ではなく半導体の側の話でした

何が起きたか|昨日の円高の水準のまま、東京が開きました

前日の記事で「8日の寄り付きが答え合わせになる」と書きました。その答えから見ていきます。

7日の東京では、ドル円は156円20銭台から155円70銭ほどの範囲で動いていました。値幅は50銭ほどで、株価が身構えるような動きではありません。円が大きく買われたのは、東京が15時30分に引けたあとの17時台でした。

ですので8日の東京は、前日の株価がまだ織り込んでいない円高の水準から始まったことになります。朝8時の時点で153円96銭、9時で153円73銭。前場の11時台には153円02銭まで進みました。大引けは153円74銭でした。

2日ぶんのドル円を、東京の株式市場が開いていた時間といっしょに並べたのが図1です。

2026年9月7日から8日にかけてのドル円の動き(15分足) 9月7日の東京市場が開いている間、ドル円は1ドル156円台前半で動いていた。東京が15時30分に引けたあと、17時台に154円16銭まで約1円50銭の円高が進んだ。8日の東京は153円73銭で始まり、前場の11時台に153円02銭まで円高が進み、大引けは153円74銭。7日の大引け155円70銭と比べると約2円の円高になる。 図1 ドル円の2日間(15分ごとの終値・日本時間) 7日は東京が引けたあとに円が買われました。8日は、その円高の水準のまま東京が開いています 156.0円 155.5円 155.0円 154.5円 154.0円 153.5円 153.0円 7日の東京(9:00〜15:30) 8日の東京(9:00〜15:30) 7日 9時 15時30分 21時 8日 3時 9時 15時30分 7日の大引けの水準 155円70銭 17時台 154円16銭 前場の安値 153円02銭 8日の大引け 153円74銭 約2円 の円高 数値はYahoo!ファイナンスの15分足(終値)。円の数字が小さくなるほど円高です。

図1:ドル円の2日間(15分ごとの終値・日本時間)。青い帯が東京の株式市場が開いている時間です。

円が買われている理由として挙げられているのは、日銀の追加利上げ観測です。9月17日から18日にかけて金融政策決定会合が開かれますので、そこへ向けた織り込みが進んでいる形ですね。8日の日本の10年国債の利回りも2.909%と、前日から0.02%ほど上がっています。

もう一つが中東です。後場に入って「サウジアラビア南部で複数のエネルギー施設が攻撃を受けた」との報道が伝わり、そこから日経平均は下げ幅を広げて安値で引けました。WTI原油は94.59ドルと3.40%上げて3日続伸です。日経VI(これから1か月の値動きの大きさを市場がどう見ているかを示す指数で、上がるほど警戒が強い)は21.86から32.05へ46.6%跳ねました。

つまり8日は、円高が朝から業種の並びに出ていて、そこへ後場から中東が乗った日でした。指数は前場に一時6万6,791円84銭(前日比392円高)まで上げる場面もありましたが、後場に報道が重なってからは戻すことなく、安値で引けています。

数値で見るインパクト|下げ幅の349円は、半導体2銘柄ぶんでした

前日は上げ幅の88%が4銘柄ぶんでした。8日は、同じ偏りが下げの側に出ました。

終値は6万5,269円33銭で、前日比1,130円51銭安(-1.70%)。同じ日のTOPIX(東証プライムの全銘柄をまとめた指数)は-1.83%、東証グロース市場250指数は-0.57%です。前日は日経平均だけが大きく上げてTOPIXが+0.55%どまりでしたので、3つの指数の開き方が、前日とちょうど裏返しになりました。

東証プライムで上がった銘柄は362、下がった銘柄は1,159。4銘柄に3銘柄が下げた計算です。前日は指数が2%上げながら下がった銘柄のほうが多い日でしたので、8日は「指数も中身もそろって下げた」という点で、前日より素直な下げ方でした。

日経平均を押し下げた寄与額を見ると、東京エレクトロンが185円04銭、アドバンテストが164円12銭で、この2銘柄だけで約349円。以下、TDKが103円33銭、イビデンが93円19銭と続きます。逆に押し上げたのはソフトバンクグループの272円74銭で、この1銘柄だけが指数を大きく支えました。

※寄与額は、その銘柄の値動きが日経平均を何円動かしたかを表す概算です。日経平均は株価の高い銘柄ほど指数への影響が大きくなる作り方をしているため、こうした偏りが出ます。

国内市場の反応|10年の集計と、同じ並びになりました

ここからが本題です。下げた業種と上げた業種を、為替の効き方で並べ直してみます。

まず物差しを短く説明します。前回の記事で、東証33業種それぞれについて「ドル円が1%動いた日に、日経平均より何%多く上がったか」を10年ぶん測りました。その結果、はっきり円安の日に強かったのが8業種、はっきり円高の日に強かったのが11業種で、残りの14業種は日経平均と同じだけしか動きませんでした(「円安なら輸出株」は本当?)。

この記事で「日経平均を引いた差」を使う理由

ふだんの日次レポートでは、業種の強弱はTOPIXを引いた差(対TOPIX相対騰落)で見ています。この記事で日経平均を引いているのは、10年ぶんの集計が日経平均を基準に作ってあるので、物差しをそろえるためです。8日はTOPIXが-1.83%、日経平均が-1.70%ですので、どちらを引いても全業種に同じ数字を足し引きするだけで、業種の順番そのものは変わりません。考え方は対TOPIX相対騰落・累積ptの読み方で説明しています。

この3つの分け方に、8日の業種別の騰落率を当てはめたのが図2です。数字は、その業種の騰落率から日経平均の-1.70%を引いた差で、単位はポイントと書きます。棒が右に出ていれば日経平均より強かった、左なら弱かった、ということです。

2026年9月8日の東証33業種の騰落率から日経平均を引いた差 9月8日の東証33業種を、10年ぶんの集計で円安に強かった8業種、どちらでもない14業種、円高に強かった11業種の3つに分けて、当日の騰落率から日経平均の-1.70%を引いた差を横棒で並べた図。円安に強い8業種の平均は-0.03ポイント、どちらでもない14業種は+0.25ポイント、円高に強い11業種は+0.85ポイントで、円高に強い側が上に来ている。ただし円安に強い側の石油・石炭製品は原油高で+3.61ポイント、円高に強い側の情報・通信業はソフトバンクグループ1銘柄で+3.90ポイントと、為替以外の理由で外れている。 図2 9月8日の33業種(騰落率から日経平均を引いた差) 10年ぶんの集計で「円安に強い/どちらでもない/円高に強い」に分けた順に並べています 棒が右に出るほど日経平均より強かったということです。縦の線が日経平均と同じ(0)です(単位はポイント) 円安に強い8業種 円安の日に日経平均より強かった業種 この8業種の平均 -0.03 石油・石炭製品 +3.61 証券・商品先物業 +0.93 保険業 +0.41 銀行業 +0.22 その他金融業 -0.13 鉄鋼 -1.05 ゴム製品 -1.83 輸送用機器 -2.44 どちらでもない14業種 為替では日経平均と同じだけしか動かない業種 この14業種の平均 +0.25 鉱業 +2.78 小売業 +2.07 不動産業 +1.93 建設業 +1.78 医薬品 +1.50 食料品 +1.22 倉庫・運輸関連業 +1.16 卸売業 +0.85 海運業 +0.70 非鉄金属 -1.59 精密機器 -1.94 機械 -1.95 電気機器 -2.20 ガラス・土石製品 -2.74 円高に強い11業種 円高の日に日経平均より強かった業種 この11業種の平均 +0.85 情報・通信業 +3.90 陸運業 +2.31 空運業 +1.91 水産・農林業 +1.76 電気・ガス業 +1.46 パルプ・紙 +0.71 その他製品 +0.53 サービス業 +0.17 化学 -0.91 繊維製品 -1.07 金属製品 -1.47 業種の騰落率は東証33業種の指数。日経平均は-1.70%。3つの分け方は10年ぶん(2016年9月〜2026年9月)の集計によるものです。

図2:9月8日の東証33業種を、10年ぶんの集計による3つのグループに分けて並べたものです。業種の騰落率は東証33業種の指数、日経平均は-1.70%です。

グループの平均は、円安に強い8業種が-0.03、どちらでもない14業種が+0.25、円高に強い11業種が+0.85。円高の日なら円高に強い側が上に来るはずで、この順番は集計どおりです。中身を数えても、円高に強い11業種のうち8業種が日経平均を上回りました。円安に強い8業種は、上回りと下回りが4つずつです。

個別の並びも素直でした。円安に強い側でいちばん落ちたのは輸送用機器で、日経平均を2.44ポイント下回っています。武蔵精密工業が10.83%安、豊田合成が7.79%安、トヨタ自動車が4.12%安と、完成車も部品も売られました。逆に円高に強い側では、陸運業が2.31ポイント上回り、東京地下鉄が3.03%上げています。

ただ、この図には為替と関係のない棒が2本あります

図2で上下に飛び出している2業種は、円が理由で動いたわけではありません。

一つが石油・石炭製品です。10年の集計では「円安に強い」側に入る業種なのに、8日は日経平均を3.61ポイント上回りました。理由は中東の報道による原油高で、出光興産が2.94%上げています。もう一つが情報・通信業で、3.90ポイント上回っていますが、中身はソフトバンクグループ1銘柄です。この業種の売買代金の86%を同社が占めていて、同じ業種のKLabは6.52%下げて年初来安値を更新しています。この2本は、為替とは別の材料で引っ張り上げられた棒だと見ておくのがよさそうです。

下げた側にも、為替では説明できない業種があります
8日にいちばん落ちたのはガラス・土石製品(日経平均を2.74ポイント下回る)で、これは10年の集計では「どちらでもない」側の業種です。落ち幅を作ったのは日本特殊陶業の7.89%安で、自動車向けのプラグや半導体向けの部品を手がける会社ですので、中身は次に挙げる電子部品と同じ流れです。電気機器の-2.20、機械の-1.95、精密機器の-1.94も同じグループでした。

太陽誘電が7.92%安、村田製作所が7.83%安、TDKが6.89%安、ジェイテクトが8.68%安。前回の記事で「電機は円安で上がる8業種に入っていない」と書きましたが、8日の電機の下げも、やはり為替の側では説明がつきません。ここは半導体・電子部品そのものの売り買いの話だと見ています。

翌日以降のシナリオ|見るのは3つです

8日の値動きの形から、明日以降に確かめたい点です。

明日以降に確かめたい3つ
  • ① 153円台が定着するかどうか。日銀の会合を控えて円が買われている形ですので、ここが定着するなら、8日の業種の並びは1日で終わらずに続きやすいところ。逆に155円台へ戻すようなら、輸送用機器などは戻りが早くなります
  • ② 中東の続報とWTIの水準。8日は石油・石炭製品と鉱業が上位に来ました。原油高が続けば資源側は支えられますが、指数全体には重荷になります。この形が過去にどう出たかは「有事の原油高で資源・海運株は買われる」は本当か?で7局面ぶん検証しています
  • ③ 10日の米PPIと、11日の米CPI。11日は東京で9月のメジャーSQ(先物とオプションの決済日)も重なります。中身と関係のない値動きが出やすい日ですので、週の後半は数字を額面どおりに受け取らないほうがよさそうです

もう一つ気にしているのが、売買の集中です。8日の東証プライムの売買代金は8兆4,774億円で前日から増えましたが、キオクシアホールディングス1銘柄で2兆663億円と、市場全体の24%を占めています。同社が売買代金の首位に立つのは3営業日連続で、この日は3.56%安でした。増えたぶんが特定の銘柄に吸われている形ですので、市場全体に資金が戻ってきたとは読みにくいところです。

まとめ

9月8日のマーケット・3行まとめ

  • 日経平均は1,130円51銭安(-1.70%)の6万5,269円33銭で安値引け。朝から約2円の円高で始まり、後場に中東の報道が重なりました
  • 10年ぶんの集計で分けた3グループの成績は、円安に強い8業種が-0.03、どちらでもない14業種が+0.25、円高に強い11業種が+0.85。円高の日らしい順番に並びました
  • ただし下げ幅1,130円51銭のうち349円は東京エレクトロンとアドバンテストの2銘柄ぶんで、いちばん落ちたガラス・土石製品も「どちらでもない」側の業種です

為替の並びは出ましたが、下げ幅を大きくしたのは後場の中東の報道と、半導体・電子部品の売りでした。円高は「どの業種が下げるか」を決めていて、「どれだけ下げるか」は別の材料が決めていた、という日だったのかなと思います。

📝 個人的な見解
輸送用機器は円高で想像以上に落ちました。ただ、指数の下げ幅を作ったのは、後場からの中東の報道だと見ています

輸送用機器は、円高を受けて私の想像以上に落ちました。10年の集計どおりの並びとはいえ、トヨタ自動車が4%を超えて下げるのは、円が2円動いた日としては大きい下げ方です。

ただ、それ以上に効いたのが後場に伝わった中東の報道です。前場に一時392円高まで戻していた指数が、そこから戻すことなく安値で引けたのは、円高よりもこちらの重さだと受け止めています。個別株を見ても、投げ売りに近い下げが多かったように感じました。

先の日程も、持ち高を取りにくい並びです。今週末の11日はメジャーSQ、来週は日銀とFRBの会合が重なる週で、それが終わると日本市場は19日から23日まで5連休に入ります。中東と円高の材料にこの日程が重なりますので、新しいポジションはなかなか取りづらいところです。

ですので私は、ここから戻すシナリオだけでなく、このまま下落調整に入るシナリオも頭に入れておくつもりです。明日はまず寄り付きの為替と、8日に投げられた銘柄が続落するかどうかを見ます。

※本記事は、公表情報および私が独自に集計した市場データをもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。ドル円の日中の値はYahoo!ファイナンスの15分足データを整理したもので、取引所や金融機関の公式値とは異なる場合があります。前場の安値は5分足では152円88銭でした。本記事のドル円は東京の大引け(15時30分)時点で揃えており、夕方以降に154円台へ戻したため、日次レポートに載せている終値(154円21銭)とは基準の時刻が違います。日経平均・TOPIX・東証グロース市場250指数・売買代金・値上がり値下がり銘柄数・業種別の騰落率・寄与額は、大引け後に公表された市場データにもとづく作成時点の数値です。寄与額は概算であり、算出方法により差が出ることがあります。業種を3つに分けた基準は2016年9月から2026年9月までの10年ぶんの集計によるもので、将来の値動きを保証するものではありません。日銀・FRBの政策に関する見方は市場の観測であり、実際の結果を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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