「とりあえずS&P500」は本当か?|日経平均との35年を円建て・為替まで分解比較

💬 今回検証する通説
とりあえずS&P500を買っときゃいい
30秒でわかるこの記事
  • 「S&P500買っときゃいい」は、円で見れば過去の成績としてはだいたい正しい。ただし「いつ・どの通貨で見るか」で結論はけっこう変わります。
  • 実は直近の“米国株つよい”の正体、けっこうな部分が円安でした。株そのものの伸びでは、日本が勝ってた時期もあります。
  • 判定:★★★★☆(条件付きで正しい)。「無条件で最強」ではないよ、という話。

新NISAが始まってから、「とりあえずS&P500を積み立てとけばOK」って、もはや合言葉みたいになってますよね。私の周りでもよく聞きます。実際、過去の成績を見るかぎり、それはだいたい正しい。……正しいんですが、ひとつ引っかかったんです。「それ、本当に“米国株が強い”からなの?」と。もしかして、別の何かが効いてるんじゃないか。気になったので、日経平均・S&P500・ドル円の約35年ぶんのデータを引っぱり出して、円建て・為替まで分解して確かめてみました。

この記事でわかること
  1. 「S&P500を買っとけ」と言われる根拠は、本当に正しいのか
  2. その結論、いつ買ったか(起点)でどれくらい変わるのか
  3. 直近の米国優位の正体は「株の強さ」か、それとも「円安」か

そもそも、なんで「S&P500を買っとけ」と言われるのか

検証するなら、まずは通説にいちばん有利な土俵で戦ってもらうのがフェアですよね。というわけで、わざと日本株にとって最悪のタイミング——1990年のバブル天井からスタートします。「日本株はオワコン、米国株一択」という話って、たいていこの時期を引き合いに語られるんです。だったら、その“いちばん効く証拠”から見てみようじゃないか、というわけです。

下のグラフは、1990年の初めに日本株(日経平均)とアメリカ株(S&P500)へ同じ金額を入れて、いまどうなってるかを「1990年=1.0倍」に揃えて描いたものです。

バブル天井(1990年)に1を投じたら、今いくつ? ── 日経 vs S&P500 月末終値ベース・配当未考慮/同じ起点=1.0に揃えて比較 5倍 10倍 15倍 20倍 25倍 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 S&P500(円建て) 25倍 S&P500(現地$) 23倍 日経平均(円) 1.8倍 日経平均(円)は34年間ほぼ横ばい 1989年の高値を回復したのは2024年 出典:Stooq(日経平均・S&P500・ドル円の各終値)をもとに集計。配当は含まず。過去の実績であり将来を保証しない。
図1:1990年(バブル天井)に1を投じたら。日経はほぼ横ばい、S&P500(円建て)は約25倍。出典:Stooq、配当は含まず。

説明いらないくらいの差なのですが、日経平均はまさかの1.8倍。いっぽうS&P500は円建てで約25倍です。しかも日経平均、1989年末の高値(約38,915円)を抜き返すのに2024年までおよそ34年かかってます。これが「失われた30年」で、「だから米国株でしょ」と言われる原体験。グラフだけ見れば、通説は完全勝利に見えます。

でもそれ、「1990年に買った人」だけの話じゃない?

1990年って、バブルの天井で日経平均が史上最高値をつけた局面。要するに“過去最悪の高値づかみ”です。その人の戦績を、そのまま「日本株の実力」と呼ぶのは、ちょっとかわいそう。というわけで、買う年をずらして同じ計算をしてみました。

買った年(起点)日経平均(円)S&P500(現地$)S&P500(円建て)
1990年(バブル天井)1.8倍23倍25倍
2000年(ITバブル)3.4倍5.4倍8.1倍
2009年(リーマン後の底)8.3倍9.2倍16.3倍
2013年(アベノミクス〜)6.0倍5.1倍8.8倍
戦後77年トータル(1949〜)376倍498倍

景色、ガラッと変わりました。リーマンショック後の底(2009年)からなら、日経8.3倍 vs S&P500(現地通貨)9.2倍でほぼ互角。さらにアベノミクス以降(2013年)になると、現地通貨ベースで日経6.0倍 vs S&P500の5.1倍——なんと日本株のほうが勝ってるんです。戦後77年というロングスパンでも、376倍 対 498倍でいい勝負。

つまり、起点を変えれば日本株もそこまで悪くない。と言えそうです。

米国株の“勝ち”、正体は株じゃなかった

この記事の核心

“米国株が強い”の正体は、株の強さじゃなくて「為替(円安)」だった。

さっきの表をもう一回見てください。2013年起点、株そのものの伸びは日経6.0倍 > S&P500の5.1倍。株単体なら日本の勝ちです。なのに「円建て」に直すと、S&P500が8.8倍に化けて逆転する。この差を生んだ犯人はひとつだけ——ドル円が92円→159円に動いた「円安」です。

2013年に1を投じたら、今いくつ? ── 日経 vs S&P500 月末終値ベース・配当未考慮/同じ起点=1.0に揃えて比較 1倍 2倍 3倍 4倍 5倍 6倍 7倍 8倍 9倍 2015 2020 2025 S&P500(円建て) 8.8倍 日経平均(円) 6.0倍 S&P500(現地$) 5.1倍 出典:Stooq(日経平均・S&P500・ドル円の各終値)をもとに集計。配当は含まず。過去の実績であり将来を保証しない。 青と灰の差=円安ぶんの上乗せ株の伸びは日経が上。差は為替が稼いだ
図2:2013年に1を投じたら。赤(日経)が灰の点線(S&P現地)より上=株では日経が勝ち。でも円建て(青)は円安ぶん上に離れる。水色の帯がその「円安の寄与」。出典:Stooq、配当は含まず。

図1と図2を見比べると、面白いことに気づきます。1990年(図1)は、現地ドルと円建てのS&P500がほぼ重なってる。当時から今までドル円がほとんど動いてないので、あの圧勝は純粋に株の力だったんです。ところが2013年(図2)は、現地ドルと円建ての間にぶ厚い帯がある。直近の米国優位は、株が強いんじゃなくて、その大半が円安が作ってたってことです。

「S&P500買っときゃいい」っていう成功体験の正体は、米国株の強さ+“円安ボーナス”の二階建てだった。これがデータの答えでした。

私の判定:「買っときゃいい」は“条件付きで”正しい

📊 通説検証 判定
通説:「とりあえずS&P500を買っときゃいい」
  • 円で見た過去の成績では、だいたい正しい
  • 起点しだいで結論がひっくり返る(1990年と2009年で別世界)
  • 直近の優位の多くは“円安”が稼いだもの(株では日本も健闘)
  • ×「無条件で最強」ではない(円高になれば前提が崩れる)
★★★★☆
判定:条件付きで正しい

“買っときゃいい”の二階建て、その一階(円安)には「これからも円安が続く」という隠れた前提がこっそり入ってます。いまは1ドル=159円前後の歴史的な円安。もし円高に振れたら、いままで追い風だった為替がいきなり逆風に変わって、円で見た米国株のリターンは削られます。過去の検証でわかるのは「過去どうだったか」だけ。未来の保証券じゃありません。それに、資産をぜんぶドル建てに寄せるのは、それ自体が為替の一点張りでもあるんですよね。

初心者はどう受け止めればいい?

「で、結局S&P500を買っときゃいいの?」と思いますよね。正直、これからどうなるかは私にもわかりません。「こうすべき」と言える立場でもないので、今回の検証で私が持てた“こんな見方もあるよ”を、3つだけ共有しておきます。

1
「自分はどの通貨のメガネで見てるか」で、見え方が変わるかも
円で生活してる私たちの成績は、つねに「株の損益+為替の損益」。米国株を持つのは、為替リスクも一緒に背負ってるってことなんだな、と私は思いました。
2
「いつ買うか」で結果がだいぶ変わる
1990年の例のとおり、同じ対象でも起点しだいで天国と地獄。だから一気に買うより時間を分けて買う、という人もいますね。
3
「最強」って言葉には、隠れた前提があるかも
“最強”の成功体験には、たいてい隠れた前提(今回は円安)がいたりします。前提が変われば結論も変わる——私はそう考えると、ちょっと冷静になれます。

この検証の前提だけ、正直に

本質指数だけの比較なので、配当は入れてません

今回は「指数」そのものの値動きで比べてます。実際は配当(再投資)が乗るので、両者ともリターンはこれより上。とくにS&P500は分配が厚めなので、配当まで入れると米国の差はもう少し開く方向です。ここは正直に。※1 ※2

私の場合は
正直に言うと、私自身は「少なくとも自分が生きてるこの先数十年は、アメリカは強い」と思ってます。なのでS&P500の積み立ては普通に続けてます。ただ今回、その強さが“純粋な株の力”だけじゃなかった(円安もかなり効いてた)と分かって、ちょっと考えが変わりました。直近の日本株の地力を見ると、日経やTOPIXへの積み立ても足してみようかな、と検討中です。米国一本に全振り、ではなくて。

まとめ

通説検証 #01 のまとめ
  • 「S&P500買っときゃいい」は、円で見た過去成績としては正しい。でも勝因のかなりの部分は円安で、株の実力では直近の日本も負けてない。
  • 結論は起点・通貨・配当でコロコロ変わる。単純な「日本 vs 米国」の優劣論は、そのまま鵜呑みにしなくてもいいのかも、と思いました。
  • 大事なのは「どのメガネで見るか」。これは過去の検証であって、将来の保証でも投資の推奨でもありません。
  • 判定:★★★★☆(条件付きで正しい)

よくある質問

Q. 結局、S&P500と日経どっち買えばいいの?
A. この記事は「どっちを買え」を言うものじゃないです。お伝えしたいのは、過去の優劣は起点・通貨・配当で変わること、そして米国株を持つのは為替リスクも背負うことだ、という“見方”。最後の判断はご自身の状況で。
Q. 円建てだとS&P500が勝つのに、なんで株では日経が勝つ年があるの?
A. 円建てのリターンが「株の伸び×為替の動き」だからです。2013年以降は株の伸びは日経が上でしたが、円が大きく安くなったぶん、円換算したS&P500が上回りました。
Q. この結果、これからも続く?
A. わかりません。とくに円安が反転したら、円建ての米国株リターンは目減りします。過去の検証は将来を保証しません。
脚注・前提
  • ※1 データ出典:Stooq(日経平均・S&P500・ドル円の各終値)。月末終値ベースで集計し、私が作図しました。
  • ※2 配当(インカム)は未考慮。倍率は起点を1.0に揃えた価格指数の比較です。起点を1年ずらすだけで倍率は大きく変わるため、特定の起点だけで断定しないようにしています。S&P500の1957年以前は遡及復元値を含みます。
※本記事は過去データの分析であり、将来の運用成果を示すものではありません。特定の銘柄・商品・投資手法を推奨するものではなく、投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。記載の数値は筆者が公開データをもとに集計したもので、正確性を保証するものではありません。

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