「日銀が利上げすると株は下がる」は本当?|1973年からの利上げ24回を数えたら、利上げの日に日経平均は下がっていませんでした

💬 今回検証する通説
日銀が利上げすると、
株は下がる
30秒でわかるこの記事
  • 1973年以降の日銀の利上げ24回で、利上げが決まった日の日経平均は12勝12敗・平均+0.17%。ふつうの日と変わりません。今回の6回は5勝1敗でした。
  • 1週間後・1か月後・3か月後・半年後も、ふつうの期間と区別がつきません。1年後だけ平均−4.2%ですが、バブル期の5回を除くと帯の中に戻ります。
  • 利上げが続いた時代のあとに大きな下げが来たのは、5回のうち3回。ただし日経平均の天井は、最後の利上げより前に来ていたことが3回あり、「利上げが終わったら売る」は実行できません。
  • 利上げで上がるはずの銀行株も、決定日にはほとんど動いていません。上がるのは発表の2〜3か月前です。
判定:★★☆☆☆

2024年7月31日に日銀が利上げを決め、その3営業日後の8月5日に日経平均は12%下げました。あの記憶があるので、私は「利上げ=株が下がる」という印象を持っていました。ただ、あれは利上げのせいだったのか。1973年からの利上げ24回をぜんぶ並べて、利上げの日・1週間後・1か月後・1年後に日経平均がどう動いたかを数えました。利上げの日に下がった回数は、上がった回数と同じでした。

この記事でわかること
  1. 利上げが決まった日、日経平均は下がったのか(24回・今回の6回は前場と後場に分けて)
  2. 持つ期間を1年まで延ばすと、どこかで「下がる」と言えるのか
  3. 利上げが何回も続いたあとに、何が来たのか。天井は利上げから読めるのか
  4. 利上げで上がるはずの銀行株は、決定日にどう動いたのか

検証した24回の利上げ

日銀が政策金利を引き上げた日を、日銀の公表資料から拾いました。1973年から2026年9月までで24回。5つの時代に分かれます。

公表日政策金利
前→後
決定日1週間後1か月後3か月後1年後
1973年(公定歩合)
1973/3/314.25→5.00%−1.0%−4.0%−12.7%−11.4%−14.9%
1973/5/295.00→5.50%0.0%−2.7%+1.3%+4.3%+2.7%
1973/6/305.50→6.00%+0.3%+1.7%+9.6%−6.0%−2.2%
1973/8/286.00→7.00%+0.1%+0.2%−7.4%−9.5%−17.4%
1973/12/217.00→9.00%−0.2%+3.0%+7.7%+5.4%−6.5%
1979〜80年(公定歩合)
公表日政策金利
前→後
決定日1週間後1か月後3か月後1年後
1979/4/163.50→4.25%−0.1%−0.2%+3.2%+1.0%+11.3%
1979/7/234.25→5.25%0.0%+1.4%+4.4%+5.4%+10.6%
1979/11/15.25→6.25%−0.4%−1.2%−0.1%+5.0%+10.9%
1980/2/186.25→7.25%−1.0%−0.7%−3.4%−1.2%+4.8%
1980/3/187.25→9.00%+0.2%−0.5%+3.7%+3.8%+9.7%
1989〜90年(公定歩合)
公表日政策金利
前→後
決定日1週間後1か月後3か月後1年後
1989/5/302.50→3.25%−0.2%−2.1%−1.6%+2.9%−3.7%
1989/10/113.25→3.75%−0.4%−1.1%+0.6%+6.6%−34.7%
1989/12/253.75→4.25%+1.7%+1.8%−3.1%−16.3%−37.3%
1990/3/204.25→5.25%−1.5%+1.8%−9.0%+4.1%−15.7%
1990/8/305.25→6.00%+3.1%−3.3%−12.5%−5.1%−10.0%
2000〜07年(無担保コール)
公表日政策金利
前→後
決定日1週間後1か月後3か月後1年後
2000/8/110.00→0.25%+0.9%+1.2%+2.0%−4.0%−26.4%
2006/7/140.00→0.25%−1.7%−1.8%+3.1%+9.1%+20.0%
2007/2/210.25→0.50%−0.1%+1.0%−4.3%−2.1%−22.4%
2024〜26年(今回)(無担保コール)
公表日政策金利
前→後
決定日1週間後1か月後3か月後1年後
2024/3/19−0.10→0.10%+0.7%+1.7%−3.2%−2.3%−4.9%
2024/7/310.10→0.25%+1.5%−10.0%−0.4%+0.2%+6.6%
2025/1/240.25→0.50%−0.1%−1.1%−3.0%−14.4%+31.8%
2025/12/190.50→0.75%+1.0%+2.9%+7.7%+5.1%—
2026/6/160.75→1.00%+0.1%+4.4%−3.0%−6.0%—
2026/9/181.00→1.25%+1.4%+2.1%———

※すべて「公表日の前の営業日の終値」からの騰落率。決定日=公表日の終値、1週間後=5営業日後、1か月後=20営業日後、3か月後=60営業日後、1年後=250営業日後。「—」はまだその日が来ていないもの。1998年より前の政策金利は公定歩合、以降は無担保コール翌日物で、2024年3月は−0.1%→0〜0.1%(マイナス金利の解除)です

この記事の数字は、ぜんぶ公表日の前の日の終値を基準にしています。「利上げが決まる前の晩に日経平均を持っていたら、そのあとどうなったか」という読み方です。公表が土曜だった2回(1973年3月31日・6月30日)と、手元のデータに終値が無い1989年12月25日は、次の営業日を決定日として数えました。

検証① 利上げが決まった日、日経平均は下がったか

まず、利上げが決まった日そのものです。棒の高さは、前の日の終値から公表日の終値までの動き。赤が下げ、緑が上げです。

利上げが決まった日、日経平均は下がっていなかった1973年以降の利上げ24回。利上げを決めた日の終値が、前の日の終値からどれだけ動いたか※赤が下げ、緑が上げ。金色の破線は24回の平均−3%−2%−1%0%+1%+2%+3%+4%上がった ↑下がった ↓−1.0%73/30.0%73/5+0.3%73/6+0.1%73/8−0.2%73/12−0.1%79/40.0%79/7−0.4%79/11−1.0%80/2+0.2%80/3−0.2%89/5−0.4%89/10+1.7%89/12−1.5%90/3+3.1%90/8+0.9%00/8−1.7%06/7−0.1%07/2+0.7%24/3+1.5%24/7−0.1%25/1+1.0%25/12+0.1%26/6+1.4%26/91973年1979〜80年1989〜90年2000〜07年2024〜26年(今回)24回の平均 +0.17%24回のうち上げが12回、下げが12回。平均は+0.17%で、ふつうの日(+0.03%)と変わりません。今回の6回に限ると、決定日は5勝1敗でした。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図1:利上げを決めた日の日経平均の騰落(24回)。金色の破線は24回の平均
▼検証条件
対象:日経平均の日次終値(1973年1月〜2026年10月9日・13,303営業日)/利上げ:日本銀行「金融政策に関する決定事項等」「基準割引率および基準貸付利率の推移」と各会合の公表資料から拾った24回/基準:公表日の前営業日の終値/指標:公表日の終値までの騰落率/配当:含まない/出典:Stooq(2026年6月5日まで)、Yahoo!ファイナンス(それ以降。重なる158営業日で終値が一致することを確認)

24回のうち上げが12回、下げが12回。平均は+0.17%で、1973年以降のふつうの1日の平均(+0.03%)と変わりません。いちばん下げた日でも−1.7%(2006年7月)で、2024年8月5日のような下げは、利上げの日には一度も起きていません。今回の6回に限ると、決定日は5勝1敗です。

日銀の決定は昼休み(12時台〜13時ごろ)に公表されるので、「前場は様子見で、発表を見て後場に売られる」形なら、終値だけでは見落とします。今回の6回を、前場(前日比)と後場(前引けから大引け)に分けたのが表2です。

公表日前場
前日比
後場
前引け→大引け
大引け
前日比
2024/3/19−0.4%+1.0%+0.66%
2024/7/31前場は下げて始まり一時500円超安発表後にプラス転換、一時600円超高+1.49%
2025/1/24+0.6%−0.7%−0.07%
2025/12/19+1.2%+0.1%+1.03%
2026/6/16−0.1%+0.2%+0.13%
2026/9/18+0.8%+0.6%+1.38%

※2025年以降の4回はYahoo!ファイナンスの1時間足から、2024年の2回は株探・OANDAの当日記事から。前引けの時刻は11時30分

発表後の後場だけで下げたのは2025年1月の1回で、残りは上げか横ばい。2024年7月31日は、前場に500円超下げたあと、13時前の発表を受けて買いが入り、600円超高まで上げています。「発表を見て売られる」形は、今回の6回には出ていません。1998年より前の公定歩合は夕方や休場日に公表されることが多かったので、古い回は「翌営業日の終値」も見ましたが、こちらも13勝11敗・平均+0.03%で同じです。

検証② 持つ期間を延ばすと、下がるのか

「その日は下がらなくても、じわじわ効く」という見方もあります。決定日から1年後まで、7つの窓で測りました。棒の後ろの薄い帯は「まぐれでもこのくらいは出る範囲」で、同じ長さのふつうの期間の平均(金色の破線)を中心に描いてあります。棒が帯をはみ出していれば「偶然では出にくい」と読んでください。

持つ期間を延ばしても、「下がる」と言えるのは1年後だけ利上げ24回のあと、日経平均が前の日の終値からどれだけ動いたかの平均。帯は、同じ長さのふつうの期間の平均を中心に描いた※下の数字は24回のうち上がった回数。1年後は21回(まだ1年たっていない3回を除く)。左右で目盛りが違いますまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)ふつうの期間の平均(1973年以降の全営業日)−4%−2%0%+2%+4%上がった ↑下がった ↓決定日から1か月後まで+0.17%決定日12勝12敗+0.03%翌営業日13勝11敗−0.24%1週間後12勝12敗−0.88%1か月後10勝13敗−10%−5%0%+5%+10%+15%+20%上がった ↑下がった ↓3か月後から1年後まで−1.10%3か月後12勝11敗−0.76%半年後10勝12敗−4.18%1年後9勝12敗決定日から半年後まで、6つの窓はぜんぶ帯の中。ふつうの日と区別がつきません。1年後だけ平均−4.2%で帯の外。ただし次の図のとおり、バブル期の5回が引っ張っています。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図2:利上げ24回のあと、決定日から1年後までの日経平均の騰落の平均。左右で目盛りが違います
▼検証条件
窓:決定日(公表日の終値)・翌営業日・5・20・60・120・250営業日後/帯:1973年以降の全営業日で同じ長さの騰落率を測ったばらつき(標準偏差)を回数の平方根で割って2倍した幅。中心は全営業日の平均/回数:決定日〜1週間後は24回、1か月後・3か月後は23回、半年後は22回、1年後は21回(まだその日が来ていない回を除く)

決定日から半年後まで、6つの窓はぜんぶ帯の中です。1か月後は10勝13敗・平均−0.88%で、ふつうの1か月(+0.54%)より弱いのですが、まぐれでもこのくらいの差は出ます。帯の外に出るのは1年後だけ(9勝12敗・平均−4.2%)。ふつうの1年が+7.1%なので、11ポイントほど悪い。ここだけ見ると「利上げすると1年後に下がる」に見えます。

検証③ 1年後の下げは、バブル期の5回だった

その1年後を、利上げの時代ごとに割ってみます。左が1か月後、右が1年後。帯はそれぞれの時代の回数(5回・5回・5回・3回・今回は3回)で描いているので、回数が少ない時代ほど帯が広くなります。

1年後に下げているのは、バブル期の5回利上げの時代ごとに、1か月後と1年後の日経平均の騰落の平均。帯は、その時代の回数で描いた「まぐれでも出る範囲」※今回の1年後は、まだ1年たっていない回を除いた3回だけですまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)1か月後−10%−5%0%+5%+10%1973年−0.3%(3勝2敗)1979〜80年+1.6%(3勝2敗)1989〜90年−5.1%(1勝4敗)2000〜07年+0.3%(2勝1敗)2024〜26年(今回)−0.4%(1勝4敗)1年後−40%−20%0%+20%+40%−7.7%(1勝4敗)+9.5%(5勝0敗)−20.3%(0勝5敗)−9.6%(1勝2敗)+11.2%(2勝1敗)1年後に5回とも下げたのはバブル期だけ(平均−20.3%)。1979〜80年は5回とも上げています。バブル期の5回を除くと、1年後は16回の平均+0.9%・9勝7敗で、帯の中に戻ります。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図3:利上げの時代ごとの、1か月後と1年後の日経平均の騰落の平均
▼検証条件
区分:1973年(5回)/1979〜80年(5回)/1989〜90年(5回)/2000〜07年(3回)/2024〜26年(6回・1年後は3回)/帯:図2と同じ作り方で、回数をその時代の回数にしたもの

1年後に帯の外へ出ているのは1989〜90年だけです。5回とも下げて平均−20.3%。1989年12月25日の利上げの4日後、12月29日が日経平均の史上最高値(当時)の38,915円でした。バブル期の5回を除くと、1年後は16回の平均+0.9%・9勝7敗で、帯の中に戻ります。1979〜80年は5回とも1年後に上げています。「利上げすると1年後に下がる」のではなく、「バブル崩壊の前に利上げがあった」というのが、図2の1年後の正体です。

意外な結論
利上げの日に、日経平均は下がっていなかった。
1年後の下げは、バブル期の5回が作っていた。

検証④ 利上げが続いたあとに、何が来たか

1回ごとではなく、利上げの時代を1つのかたまりで見ます。最初の利上げの前日を100として、その半年前から、最後の利上げの2年後までの日経平均を6本重ねました。●が最後の利上げ、○がその区間の天井です。

利上げの時代の日経平均:天井は、最後の利上げより前に来ていた最初の利上げの前日を100として、その半年前から、最後の利上げの2年後(500営業日後)まで。●は最後の利上げ、○は天井※今回(紺)は2026年9月の利上げまでで、その先はまだありません050100150200半年前最初の利上げ1年2年3年最初の利上げからの営業日数(1年=250営業日)。縦の破線が最初の利上げ1973年1979〜80年1989〜90年2000年2006〜07年2024〜26年(今回)過去5回のうち3回(1973年・1989〜90年・2000年)は、天井(○)が最後の利上げ(●)より前。日銀は、株が天井を打ったあとも利上げを続けていました。今回は利上げ6回の間に+64%。過去5回でいちばん上がった2006〜07年でも+19%です。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図4:利上げの時代ごとの日経平均の道のり(最初の利上げの前日=100)。今回(紺)は2026年9月まで
▼検証条件
起点:最初の利上げの公表日の前営業日の終値=100/区間:起点の125営業日前から、最後の利上げの500営業日後まで(今回は2026年10月9日まで)/天井:この区間での日経平均の最高値/帯:起点からの道のりには帯を付けません(離れるほど幅が広がるだけで判定に使えないため)
利上げの時代最初→最後の
利上げ
その間の
日経平均
日経平均の天井
最後の利上げとの前後
最後の利上げから
2年の最大の下げ
1973年
5回
1973/3/31
→1973/12/21
−20.6%1973/1/24
天井が先
−29.8%
安値 1974/10
1979〜80年
5回
1979/4/16
→1980/3/18
+7.6%1981/8/17
利上げが先
−12.2%
安値 1980/3/
1989〜90年
5回
1989/5/30
→1990/8/30
−24.9%1989/12/29
天井が先
−47.3%
安値 1992/8/
2000年
1回
2000/8/11
→2000/8/11
+0.9%2000/4/12
天井が先
−45.2%
安値 2002/2/
2006〜07年
2回
2006/7/14
→2007/2/21
+18.6%2007/7/9
利上げが先
−61.4%
安値 2009/3/
2024〜26年(今回)
6回
2024/3/19
→2026/9/18
+63.6%2026/6/25
天井が先
−2.3%
まだ12営業日

※「最後の利上げから2年の最大の下げ」は、最後の利上げの日以降の高値から、その後2年以内の安値までの下げ幅。1973年は利上げの途中の高値から測ると−35.9%ですが、最後の利上げの日から先だけで測ると3割に届きません

最後の利上げから2年のうちに3割以上下げたのは、5回のうち3回(1989〜90年・2000年・2006〜07年)。引き金は、バブル崩壊・ITバブル崩壊・リーマンショックで、それぞれ別の出来事です。これだけ見ると「利上げが終わると大きな下げが来る」に見えます。

ただし表の「天井」の列を見てください。1973年・1989〜90年・2000年の3回は、日経平均の天井が最後の利上げより前に来ています。1989年の天井は12月29日で、日銀はそのあと1990年3月と8月に2回利上げしました。2000年の天井は4月12日で、ゼロ金利の解除は8月です。日銀は物価と景気を見て決めるので、株の天井には遅れて動く。「利上げが終わったから下がった」ではなく、「下がり始めたあとも、日銀はしばらく利上げを続けた」が過去の形です。

もうひとつの物差しも置いておきます。1973年以降、どの日から数えても「その後2年のうちに高値から3割以上下げる」は31%の日で起きています。1990〜2009年に限ると59%。上の3回はこの20年の中にあるので、利上げが終わったからなのか、この20年はいつでもそうだったのか、5回では区別がつきません。

今回は、利上げ6回の間に日経平均が+64%。過去5回でいちばん上がった2006〜07年でも+19%なので、利上げの時代にこれだけ上がった例はありません。だからといって先がどうなるかは、この記事の物差しでは言えません。

検証⑤ 今回の利上げの日と、据え置きの日

「会合の日はそもそも荒れる(上がる)のでは」という見方の答え合わせです。2024年1月から2026年9月までの決定会合22回を、利上げした6回と据え置いた16回に分けました。

今回の22会合:利上げの日は上がり、1か月後は据え置きの日より弱い2024年1月〜2026年9月の決定会合22回を、利上げした6回と据え置いた16回に分けて、日経平均の動きを平均した※どちらも「会合の前日の終値」からの騰落。帯は、それぞれの回数で描いた「まぐれでも出る範囲」まぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)−6%−4%−2%0%+2%+4%+6%+8%上がった ↑下がった ↓利上げした会合(6回)+0.77%決定日5勝1敗−0.02%1週間後4勝2敗−0.37%1か月後1勝4敗据え置いた会合(16回)+0.20%決定日9勝7敗+1.23%1週間後11勝5敗+3.84%1か月後13勝3敗決定日は利上げの日のほうが強い(5勝1敗・平均+0.77%)。1か月後は利上げ1勝4敗、据え置き13勝3敗で逆向き。ただし6回では帯の中です。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図5:今回の決定会合22回を、利上げした会合と据え置いた会合に分けた日経平均の動き
▼検証条件
会合:2024年1月〜2026年9月の金融政策決定会合22回(2日目の日付)/基準:会合2日目の前営業日の終値/窓:決定日・5営業日後・20営業日後/帯:図2と同じ作り方で、回数を6回・16回にしたもの

決定日は、利上げした日のほうが強い(5勝1敗・平均+0.77%。据え置きは9勝7敗)。1か月後は逆で、利上げの会合は1勝4敗、据え置きの会合は13勝3敗です。向きは通説寄りですが、利上げは6回しかないので棒は帯の中。この2年半は据え置きの翌月がよく上がった相場だった、というところまでが言えることです。

買い向かうと、どこまで沈むか

「利上げの日に下がらない」を売買の根拠にするなら、外れたときにどこまで沈むかも見ておく必要があります。利上げの前日の終値から、3か月のあいだの安値までの下げ幅を、24回ぶん並べました。

利上げから3か月のうちに、どこまで沈んだか利上げの前日の終値から、その後60営業日のあいだの安値までの下げ幅。24回を、深く沈んだ順に並べた※金色の破線は、ふつうの日から数えた3か月の沈みの真ん中(−4.1%)。10%以上沈むのは、ふつうの日からでも23%あります−25%−20%−15%−10%−5%0%2025/1 2024〜26年(今回)−22.1%1989/12 1989〜90年−21.5%1990/8 1989〜90年−18.8%2024/7 2024〜26年(今回)−18.3%1973/3 1973年−16.4%2026/6 2024〜26年(今回)−11.4%1990/3 1989〜90年−10.4%1973/8 1973年−9.5%2000/8 2000〜07年−9.5%2007/2 2000〜07年−7.2%2024/3 2024〜26年(今回)−6.7%1973/6 1973年−6.0%1980/2 1979〜80年−5.2%2006/7 2000〜07年−4.4%1989/5 1989〜90年−3.7%1973/12 1973年−3.3%1973/5 1973年−2.7%1989/10 1989〜90年−2.6%1979/11 1979〜80年−2.2%1980/3 1979〜80年−1.3%1979/4 1979〜80年−0.9%1979/7 1979〜80年0.0%2025/12 2024〜26年(今回)0.0%2026/9 今回・まだ3か月前0.0%10%以上沈んだのは24回中7回。今回の6回では3回(2024年7月・2025年1月・2026年6月)です。利上げの日に売る理由はなくても、そのあと3か月のうちに1割沈むことは、4回に1回ほどあります。出典:日経平均はStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)、利上げの日付は日本銀行の公表資料。集計は私
図6:利上げから3か月(60営業日)のうちの、安値までの下げ幅。深く沈んだ順
▼検証条件
指標:公表日の前営業日の終値から、その後60営業日の終値の最安値までの下落率/比較:1973年以降の全営業日から同じ60営業日の最安値を測ったときの真ん中(−4.1%)と、10%以上沈んだ日の割合(23%)

10%以上沈んだのは24回中7回。今回の6回では3回で、2024年7月(−18.3%)・2025年1月(−22.1%)・2026年6月(−11.4%)です。2025年1月の下げは4月の関税ショック、2024年7月は8月5日の急落で、どちらも利上げとは別の材料が重なりました。ふつうの日から数えても10%以上沈むことは23%あるので、利上げの日が特別に危ないわけではありません。利上げの日に売る理由はなくても、そのあと3か月で1割沈むことは4回に1回ほどある、という前提で持つことになります。

利上げで上がるはずの銀行株も、決定日には動いていない

日経平均ではなく、利上げで素直に上がるはずの銀行株はどうだったか。私が普段の集計に使っている細かい分類(142グループ)で、今回の6回を見ました。数字はTOPIXとの差で、プラスなら市場全体より強かったという意味です。

公表日前60日前5日決定日後5日後20日
メガバンク(3社)
2024/3/19+9.1%−3.7%−1.39%+1.8%+1.7%
2024/7/31+10.3%−2.7%+3.00%−7.3%−8.5%
2025/1/24+16.8%−2.2%−0.03%+3.1%+4.9%
2025/12/19+4.2%+0.5%+0.38%+0.2%+6.2%
2026/6/16+13.6%0.0%−0.60%+1.1%+8.7%
2026/9/18−7.3%−1.3%−0.69%+2.3%—
地方銀行
2024/3/19+2.8%−2.4%−1.39%+2.6%+2.6%
2024/7/31+4.1%−0.8%+3.53%−6.3%−8.1%
2025/1/24+9.1%−2.1%−0.06%+4.3%+5.7%
2025/12/19+10.7%+2.4%+1.18%−1.8%+4.6%
2026/6/16+9.1%+1.0%−0.84%+0.1%+7.4%
2026/9/18+9.8%+0.4%+0.63%+3.5%—

※各期間のTOPIXとの差の合計。時価総額で加重。前60日=公表日の前の60営業日、後20日=公表日の翌日から20営業日。2026年9月18日の後20日は10月9日までの15営業日

メガバンクは、6回のうち5回で発表の2〜3か月前からTOPIXを10%前後も上回っていて、直前の1週間は4回でわずかにマイナス、決定日は2勝4敗でほぼ動かず、そのあと1か月はまた上(4回)。利上げで上がる株ですら、利上げを決めた日には動いていません。織り込まれるのは会合の日ではなく、その2〜3か月前の報道と金利の上昇の間です。142グループぜんぶで見ても、決定日に帯の外へ出たのは10グループで、142グループを測れば偶然でも7グループほどは外に出るので、「利上げの日に動く業種」は見つかりませんでした。金利が動く日にどの業種が動くかは、材料別の金利回と#09 金利上昇で銀行株で測っています。

なぜ、利上げの日に下がらないのか

理由は3つあると考えています。ひとつは、利上げが会合の日に起きる出来事ではないこと。今回の6回はどれも、事前の報道と金利の上昇で数か月かけて値段に入っていて、会合の日に残っているのは「予想どおりだった」という確認だけでした。銀行株が2〜3か月前から上がり、当日は動かないのがその形です。逆に、事前の報道がなかった2022年12月20日の長期金利の上限引き上げ(利上げではないので24回には入れていません)では、日経平均はその日に−2.5%でした。知らされていた決定は値段に入っていて、知らされていなかった決定は動く、ということだと思います。ふたつめは、利上げが「景気がいい」の裏返しであること。日銀は物価と景気を見て上げるので、利上げのある時期は株にとっても悪くない時期が多い。3つめは、下げの引き金が別にあること。1990年も2000年も2008年も、日経平均を大きく下げたのは利上げそのものではなく、バブル崩壊やリーマンショックでした。利上げは景気の山の近くに出る目印で、山を作った原因ではない、というのが私の整理です。

材料別の金利回では、2026年に限ると「金利が上がった日に日経平均が下がる」年になっていることを書きました。それと今回の「利上げの日に上がった」は矛盾しません。金利が日々上がる局面で株が売られることと、利上げが決まった日に株が動かないことは、別の話です。

判定:「日銀が利上げすると株は下がる」は本当か?
「日銀が利上げすると、株は下がる」
  • ×利上げの日・その週に下がる——24回で12勝12敗・平均+0.17%。今回の6回は決定日5勝1敗で、発表後の後場も下げていない
  • ×1か月〜半年で下がる——ふつうの期間と区別がつかない(6つの窓すべて帯の中)
  • △1年後に下がる——平均−4.2%で帯の外。ただしバブル期の5回を除くと帯の中
  • △利上げが終わると大きな下げが来る——5回のうち3回。ただし天井は最後の利上げより前に来ていたことが3回あり、「最後の利上げ」はあとからしか分からない
★★☆☆☆
利上げの日に、株は下がっていなかった

★2にした理由を書きます。通説を「利上げが決まったら売られる」の意味に取るなら、24回で勝ち負けが半々、今回は5勝1敗で、★1に近い。「利上げが続く時代の先には下げが来る」の意味に取るなら、過去5回のうち3回でそうなっていて、★3〜4に見える。ただ後者は、天井が利上げより先に来ていたり、どの日から数えても2年で3割下げが3割の確率で起きていたりで、利上げを合図に使える形ではありません。読者が使える意味で採点すると、★2です。

この結果、実践にどう活かす?

1
利上げの日に、持ち株を売る理由はない
24回で下げたのは半分、今回は6回中5回上げ。発表後の後場も下げていません。「利上げだから」で手放すのは、このデータでは分が悪い。見るのは利上げの有無ではなく「織り込みと決定のズレ」で、買い持ちなら「利上げはない」と見られている会合のほうが、外れたときに下に動くぶんだけ警戒が要ります。
2
「利上げ打ち止め=天井」を合図にしない
最後の利上げかどうかは、次の会合で据え置きが続いて初めて分かります。しかも過去の天井は、最後の利上げより前に来ていたことが3回。分かった頃には遅いことが多い。
3
利上げの日に買うなら、3か月で1割沈む前提で量を決める
決定日は上がりやすくても、そのあと3か月で10%以上沈んだのが24回中7回、今回は6回中3回。利上げの日の強さは「その日の話」で、翌月以降を守ってはくれません。
4
銀行株を利上げで買うなら、会合の日ではなく2〜3か月前
メガバンクは発表の2〜3か月前からTOPIXを10%前後上回り、当日は動きません。「利上げが決まったから銀行株」は、出遅れです。
本質:利上げも株高も、どちらも「景気がいい」の結果です。同じ親から生まれた兄弟のようなもので、利上げが株を下げているわけでも、上げているわけでもない。だから利上げの有無から株の上げ下げは読めません。利上げは景気の体温計のようなもので、高熱のときに出る目印ですが、体温計が熱を出しているわけではありません。
私の場合は

利上げの日に下がらないのは、観測報道などで市場がすでに織り込んでいるからだと思っています。よほどのマイナスサプライズは、いまの日銀ではまず起きません。ただ、買い持ちの側から見るとズレの向きは対称ではなく、「利上げは確実」と見られていて据え置きなら上に外れやすく、「利上げはない」と見られていて利上げなら下に外れます。だから私は、「利上げはない」と見られている会合のほうを少し警戒します。決定そのものより、前後の総裁の発言のほうが効くことも多いので、会合の日だけ身構えても意味がない、というのが私の感覚です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 利上げが決まった日の日経平均は、24回で12勝12敗・平均+0.17%。今回の6回は5勝1敗で、発表後の後場も下げていません。
  • 1週間後から半年後まで、ふつうの期間と区別がつきません。1年後の−4.2%は、バブル期の5回が作った数字です。
  • 利上げが続いた時代のあとに大きな下げが来たのは5回中3回。ただし天井は最後の利上げより前に来ていたことが3回あり、利上げを合図には使えません。
  • 銀行株も決定日には動かず、上がるのは発表の2〜3か月前。利上げは会合の日に起きる出来事ではなく、数か月かけて値段に入っていきます。
判定:★★☆☆☆ 利上げの日に、株は下がっていなかった
Q. 2024年8月5日の急落は、利上げのせいではなかったのですか?
利上げの決まった7月31日の日経平均は+1.49%で、発表後の後場に上げています。下げ始めたのは翌8月1日からで、8月2日の米雇用統計の弱さと急な円高が重なり、8月5日に−12.4%となりました。利上げが円高の一因だったことは否定できませんが、「利上げが決まった日に売られた」形ではありません。24回の中で、利上げから1週間で10%下げたのはこの1回だけです。
Q. 決定の日は上がっても、引け後の総裁会見で翌日に下げるのでは?
総裁の記者会見は15時30分からで、その内容は翌営業日の値に出ます。24回の翌営業日は13勝11敗・平均+0.03%で、会見で売られるのが通例とは言えません。2024年7月31日は会見が強めで、翌日から3営業日で−12%まで下げましたが、米雇用統計の悪化と急な円高が重なった回です。
Q. 日経平均だけで測って大丈夫ですか?TOPIXだと違いますか?
今回の6回をTOPIXで測ると、決定日は+1.1%・+1.4%・−0.0%・+0.8%・−0.2%(2026年9月は手元のデータが7月までで未計測)で、向きは日経平均と同じです。1973年からの長い期間はTOPIXの日次データがそろわないので、日経平均で統一しました。
Q. 24回は少なくないですか?
少ないです。だから「まぐれでもこのくらいは出る範囲」の帯を図に描いて、帯の外に出たものだけを「偶然では出にくい」と言うようにしています。帯の幅は、まぐれで帯の外に出てしまう確率が20回に1回(5%)になるように取っています。時代ごとに割った図3は5回ずつなので帯がさらに広く、「下がった」と言えるのはバブル期だけでした。
Q. 次の利上げのときはどう見ればいいですか?
会合の日の日経平均の上げ下げは、利上げの有無ではほぼ決まりません。見るなら、会合の2〜3か月前からの金利と銀行株の動きで「どこまで織り込まれたか」を測るほうが、このデータには合っています。次回の会合は2026年10月29〜30日です。
  • データ出典:日経平均はStooq(1949年5月〜2026年6月5日)とYahoo!ファイナンス(2026年6月以降)。重なる158営業日で終値が一致することを確認して継ぎ足しました。利上げの公表日は、日本銀行「金融政策に関する決定事項等(1995年以前)」の掲載日(公定歩合引上げに関する政策委員会議長談・「公定歩合の引上げについて」)、「基準割引率および基準貸付利率(従来「公定歩合」として公表されていたもの)の推移」、各回の金融政策決定会合の公表資料。集計はすべて私が行っています。
  • 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、1973年以降の全営業日で同じ長さの騰落率を測ったときのばらつき(標準偏差)を、回数の平方根で割って2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
  • 1973年以前の公定歩合の変更は、日本銀行のサイトの推移表に掲載がないため対象にしていません。1998年より前の政策金利は公定歩合、以降は無担保コール翌日物で、物差しが違います。2024年3月19日は「−0.1%→0〜0.1%」のマイナス金利解除、2000年8月11日は「ゼロ金利解除」で、どちらも利上げとして数えました。
  • 公表が土曜だった2回(1973年3月31日・6月30日)は、次の営業日を決定日として数えています。1989年12月25日(月曜)はStooqのデータに終値が無いため、翌26日の終値で数えました(この回だけ2営業日ぶんの動きです)。1998年より前の公定歩合は夕方や休場日の公表が多く、「決定日の終値」に発表後の動きが入っていない回があります。そのため翌営業日の終値も測り、本文に併記しました。
  • 表2の前場・後場は、2025年1月以降の4回がYahoo!ファイナンスの1時間足(11時台の足の終値を前引け、12時台の足の始値を後場寄りとしたもの)、2024年3月19日はOANDA証券のマーケットニュース(前引け39,596円・大引け40,003.60円)、2024年7月31日は株探ニュース(前場に一時500円超安、13時前の発表後にプラス転換し一時600円超高)によります。
  • 「最後の利上げから2年の最大の下げ」は、最後の利上げの日以降の高値から、その後500営業日以内の安値までの下落率です。1973年は、利上げの途中(1973年3月)の高値から測ると−35.9%ですが、最後の利上げ(12月)の日から先だけで測ると−29.8%で、3割に届きません。本文の「3回」はこの厳しいほうの数え方です。
  • 銀行株の数字は、私が普段の集計に使っている分類表(プライム中心・142グループ)によるもので、東証の業種分類とは一致しません。メガバンクは三菱UFJ・三井住友・みずほの3社、地方銀行は分類表の地銀グループです。各期間のTOPIXとの差を日ごとに足し合わせた値で、時価総額で加重しています。
  • 2022年12月20日は、日本銀行が長期金利の変動幅の上限を0.25%から0.5%に引き上げた日(政策金利は据え置き)で、日経平均の終値は前日比−2.46%でした。事前の報道がなく、市場の予想になかった決定として本文で引き合いに出しています。
  • 2026年9月18日の利上げは、1か月後以降の数字がまだありません(2026年10月9日時点)。図6の3か月の沈みも15営業日ぶんです。

本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。

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