日経平均EPS+6.0%|下げは値段、戻りは利益、8/5はPERが拡大

日経平均EPS+6.0%|下げは値段、戻りは利益、8/5はPERが拡大

7月からの日本株は、下げ方と戻り方の性格がはっきり分かれていました。同じ1か月を1本の線で見ると、この違いが消えてしまいます。

7月1日から決算前の7月29日まで、日経平均は12.83%下落しました。この間のEPS(1株利益)は+0.97%とほぼ横ばいです。下がったのは業績ではなく、値段のほうでした

ところが7月29日から8月4日は、株価+4.11%に対しEPSも+4.20%。決算が出た瞬間、市場はほぼ1対1で素直に評価しています。そして8月5日、3.66%高のうち利益で説明できるのは0.77%だけでした。3つ目の局面として、今度は値段が戻り始めています

この記事の要点(先に3つ)
決算前(7/1〜7/29)は日経-12.83%に対しEPS+0.97%。EPSが動かないまま株価だけが下げ、PERは25.46倍から21.98倍へ縮みました。

② 決算集中の4営業日(7/29〜8/4)は日経+4.11%・EPS+4.20%でPERはほぼ不変。決算は無視されるどころか、ほぼ1対1で株価に反映されています。

③ 8月5日は日経+3.66%に対しEPSは+0.77%。差はPERの拡大(21.96倍→22.59倍)で、7月に縮んだ値段が戻り始めたことになります。

何が起きたか|利益は伸び続け、値段だけが往復した

まず現在地です。日経平均のEPSは225銘柄の会社予想利益をもとに算出される1株利益で、これが伸びたということは、日本株全体の利益見通しが実際に切り上がったという意味になります。7月1日と8月5日を並べます。

指標7月1日8月5日変化
日経平均株価70,474.96円66,300.44円-5.92%
日経平均EPS2,768.07円2,934.95円+6.03%
日経平均PER25.46倍22.59倍-2.87倍
株式益回り3.93%4.43%+0.50pt

※日経平均のPER・EPS・益回りはnikkei225jp.comの日次データ(指数ベース)より。EPSは会社予想ベースです。益回りはPERの逆数で、株式の利回りにあたります。「pt」は率どうしの差を表す単位です。

1か月で利益は6%増え、株価は6%下がりました。ただこの差し引きだけを見ても、何も分かりません。EPSとPERが別々の時期に動いていれば、合計は打ち消し合ってしまうからです。実際そうなっていました。

数値で見るインパクト|3つに割ると性格が完全に分かれる

そこで、7月1日から8月5日までを3つに割ってみました。境目は決算が本格化する直前の7月29日と、直近の8月4日です。

日経平均とEPS・PERの3局面(2026年7月1日〜8月5日) 2026年7月1日を100とした日経平均とEPSの推移および日経平均PER。第1局面の7月1日から7月29日は、EPSが100.0から101.0とほぼ横ばいのまま日経平均だけが100から87.2へ12.83%下落し、PERは25.46倍から21.98倍へ縮小した。第2局面の7月29日から8月4日は日経平均が4.11%上昇しEPSも4.20%上昇、PERは21.96倍でほぼ不変だった。第3局面の8月4日から8月5日は日経平均が3.66%上昇したのに対しEPSの伸びは0.77%にとどまり、PERが21.96倍から22.59倍へ0.63倍拡大した。下げは値段、戻りは利益、そして最後に値段が戻り始めたという3段階。 下げは値段、戻りは利益、そして値段が戻り始めた 2026/7/1〜8/5・日経平均225。上=7/1を100とした指数/下=PER(倍) ① 決算前(7/1〜7/29) 値段だけが下がった ② 利益で戻す 90 95 100 105 EPS 106.0 日経平均 94.1 EPSは7月末までほぼ横ばい 日経平均PER(倍) 22 24 26 25.46倍 21.96倍 22.59倍 8/5 +0.63倍 07/01 07/10 07/21 07/29 08/05 ① 7/1〜7/29 日経 -12.83%/EPS +0.97% → 値段だけが下がった ② 7/29〜8/4 日経 +4.11%/EPS +4.20% → 利益だけで戻した(PERはほぼ不変) ③ 8/4〜8/5 日経 +3.66%/EPS +0.77%/PER +0.63倍 → 値段が戻り始めた
図1:日経平均とEPSを7月1日=100として指数化したもの(上)と、同期間の日経平均PER(下)。データ:nikkei225jp.comの日次データより作成。
局面日経平均EPSPER下げ・上げの中身
① 決算前
7/1→7/29
-12.83%+0.97%-3.48倍値段
② 決算集中
7/29→8/4
+4.11%+4.20%-0.02倍利益
③ 直近
8/4→8/5
+3.66%+0.77%+0.63倍値段
合計
7/1→8/5
-5.92%+6.03%-2.87倍

きれいに分かれました。①の下げは、EPSがほとんど動かないままPERだけが3.48倍縮んだものです。業績とは関係のない下げでした。

②の4営業日は、上昇率4.11%とEPSの伸び4.20%がほぼ一致し、PERは21.98倍から21.96倍とほとんど動いていません。株が買われて割高になったのではなく、利益そのものが増えたぶんの上げです。

ここで一度立ち止まる価値があります。「決算は良いのに株価は下がった」という状態は、実はどの局面にも存在しません。市場は決算を無視していたのではなく、決算が出る前に値段を下げていただけでした。

そして③です。8月5日は日経平均が3.66%上げましたが、EPSの伸びは0.77%(+22.49円)にとどまりました。差の分はPERの拡大で、21.96倍から22.59倍へ7月の下落が始まって以来はじめて、値段のほうが戻りました。日経平均はこの日2,342円高となり、アドバンテスト1銘柄で約504円分を押し上げています。

独自分析|EPS上昇の84%は最後の5営業日に集中した

日次で見ると、EPSの上がり方は階段状でした。7月1日から8月5日でEPSは166.88円上がっていますが、そのうち139.95円、全体の84%が7月30日からの5営業日で発生しています。

日付EPSの変化その日の決算発表(プライム)
7月30日(木)+65.26円101本
7月31日(金)+31.12円186本
8月3日(月)+18.47円63本
8月4日(火)+2.61円72本
8月5日(水)+22.49円集計中

※決算発表の本数は株探の決算速報(プライム)に掲載された見出し数。8月5日分は集計中です。EPSは翌営業日に反映される場合があります。

発表本数とEPSの動きは、おおむね対応しています。ただ8月4日は、トヨタが今期最終を8%、ヤマハ発動機が70%上方修正しながらEPSの伸びは2.61円。下方修正や据え置きが相殺した可能性もあります。

そして8月5日のEPSは+22.49円。悪くない伸びですが、この日の株価上昇3.66%を説明するには到底足りません。決算ではなく、評価そのものが変わった日だったということです。

いずれにせよ、決算がEPSを押し上げる関係そのものは、日次データでも確認できます。1Q決算は期末から45日以内が目安ですので、発表は8月14日ごろまで続きます。EPSはもう一段切り上がる余地があります。

業種で見るとどうか|押し上げた顔ぶれと資金の向き

EPSを押し上げたのはどの業種か。先にまとめた集計では、プライムで決算を終えた659社のうち139社が上方修正し、機械38.1%・電気機器35.7%・化学32.6%が上位でした(1Q決算の途中経過|659社の21%が上方修正)。

対TOPIX相対騰落とは
業種の騰落率からTOPIXの騰落率を引いた差分です。指数が動いた日は33業種がまとめて上下するため、騰落率だけでは「資金が入った業種」を見分けられません。差分なら、市場平均に勝った業種=資金が残った業種が浮かびます。
→ もっと詳しく知りたい方は:対TOPIX相対騰落・累積ptの読み方を読む

この顔ぶれは、資金の向きともおおむね一致しています。8月4日の対TOPIX相対騰落では機械が+3.21ptで33業種中2位、海運は10日累積で+7.26ptと最も強い並びでした。EPSを押し上げた業種に、資金も残っていたことになります。

ただし全業種で揃うわけではありません。化学は下方修正ゼロ・上方修正15社ながら10日累積-3.92ptと沈んでおり、業種の単位では噛み合わないところが残っています

これからのシナリオ|PERが戻るのか、EPSが止まるのか

一歩踏み込む|値段はなぜ下がり、なぜ戻り始めたのか

ここまでが本筋です。以下は「では、値段のほうがなぜ動いたのか」という一歩踏み込んだ話になります。

まず、7月1日から8月4日にかけてのPER縮小3.50倍が金利で説明できるかを試算しました。この間、10年国債利回りは2.705%から2.855%へ0.15pt上がっています。7月1日の益回り3.93%が同じだけ上がって4.08%になったとすると、PERは24.51倍です。つまり金利で説明できるのは3.50倍のうち約0.95倍、全体の27%にとどまります

残る7割強は、金利が上がった以上に株が売られたぶん——リスクプレミアムの拡大です。その正体として有力なのが、AI・半導体関連株の逆回転でした。日本経済新聞は、7月の日経平均が4か月ぶりに反落した要因をAI・半導体関連株安と整理しています。2,566円安となった7月28日は、中国の露光装置国産化が報じられた日であり、熊本地震でTSMC熊本工場などが操業を止めた日でもありました。

ここで効くのが日経平均の作りです。株価の高い銘柄ほど影響が大きい株価平均型ですので、高PERの値がさ半導体株が売られると、EPSが動かないまま指数のPERだけが縮みます

そして8月5日の反転も、同じ理屈で説明がつきます。この日の日経平均の押し上げ幅トップはアドバンテストで、1銘柄で約504円分。日経の見出しは「日米好決算でAIラリー復活」でした。値段を下げた主役が半導体だったのなら、値段を戻す主役も半導体になる——3局面を通して、筋は一本に通っています。

※27%は「益回りが金利と同じだけ上がる」と置いた単純な試算で、寄与度を厳密に分解したものではありません。半導体株の指数寄与も、銘柄別に計算して確かめたわけではありません。

◎ 強気に見るなら

EPSは伸び続けており、8月5日にはPERまで戻り始めました。利益と値段の両方が上を向いた形です。プライムの決算は8月14日ごろまで続くのでEPSにはまだ余地があり、PERも7月1日の25.46倍からは2.87倍低い水準です。半導体の評価が戻り切れば、両輪で押し上がる計算になります。

△ 弱気に見るなら

ただ、8月5日はまだ1日です。中国勢の台頭も熊本の供給網の傷も、1日の上げで解決したわけではありません。SOX指数が高値から20%下げた過去の局面では、景気拡大時でも安定化に1〜2か月かかる傾向があるとされます。値段の戻りが本物かどうかは、8〜9月の半導体決算を見るまで確定しません。

どちらに転ぶかは、8月14日以降の決算で見えてきます。そこで私は、7月1日の水準に戻るには何が必要なのかを先に計算しておくことにしました。

📝 個人的な見解
7月の下げは値段の問題でした。8月5日には値段のほうも戻り始め、5営業日で下げ幅の半分以上を取り戻しています。ただ、V字での高値更新はメインシナリオに置いていません。いったんもみ合うか、もう一度下げて安値を切り上げてから高値を目指す——そういう形を想定しています

整理は3つです。

  • 「決算は良いのに株価は下がった」という局面は、実は一度もありませんでした。下げた期間のEPSは+0.97%しか動いておらず、EPSが伸びた期間は株価も同じだけ上がっているからです。市場は決算を無視していたのではなく、決算の前に値段を下げていただけでした。
  • 高値更新に必要なのは+6.3%で、埋め方は2通りあります。7月1日の70,475円まで、8月5日の66,300円からは6.30%です。EPSだけで埋めるなら2,935円→3,120円、PERだけで埋めるなら22.59倍→24.01倍。必要な幅はまったく同じです。ただしEPSは5週間で166円伸びたうち84%が5営業日に集中しており、発表のピークは過ぎています。一方24.01倍は、5週間前に市場が実際に払っていた25.46倍より低い水準です。
  • そしてこの2つは、独立ではありません。半導体の決算が良ければ、EPSが上がると同時に、7月にPERを縮めた「AIは大丈夫なのか」という疑いのほうも晴れるからです。7月に縮んだ3.50倍のうち金利で説明できるのは0.95倍だけで、残りはこの疑いの部分でした。だから8〜9月の半導体決算は、利益の話であると同時に、評価そのものの分岐点になります。
※本記事で使用した日経平均のPER・EPS・株式益回り・国債利回りは、nikkei225jp.comが公表する日次データに基づきます。EPSは日経平均採用225銘柄の会社予想をもとに指数ベースで算出されるもので、実績値ではありません。銘柄入替や算出方法の変更によって不連続に動く場合があります。決算発表の本数および業種別の上方修正率は、株探「決算速報」(東証プライム)の見出しを私が独自に分類・集計したものです。対TOPIX相対騰落は私の日次集計によります。7月の下落要因および8月5日の上昇要因に関する記述は日本経済新聞・株探等の報道を参照しましたが、PERの変化への寄与度を銘柄別に分解したものではありません。8月5日のデータは速報値であり、確報で修正される場合があります。記載の数値は執筆時点のものであり、今後の株価・業績見通しを保証するものではありません。本記事は情報整理・分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と裁量で行っていただくようお願いいたします。

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