- MLCC(村田・太陽誘電)を中心に、①上流=材料/②下流=用途/③装置=ツルハシ/④横=代替部品/⑤受益・被害の5方向へ視点をずらせる。
- 本丸はもう買われた。比較的目立っていないのは、①材料・③装置・⑤商社といった”川上・裏方”の領域。
- ただし周辺は「テーマ便乗で動くだけ」「本丸の業績が出てから遅れて動く」ものも多く、本丸から距離が遠いほど慎重に見たい。
MLCCを中心に置いた「ずらし5方向」マップ
注目の本丸(MLCC)を真ん中に置いて、そこから視点をずらせる方向を整理すると、大きく5つになります。上に向かえば材料、下に向かえば用途、横や裏には装置・代替部品・受益や被害を受ける側。それぞれに代表的な銘柄を当てはめてみました。
この地図を手元に置いて、本丸の中心から順に外へ歩いていきます。本丸に近い方向ほど値動きが素直に連動し、遠い方向ほど「テーマに乗っているだけ」の度合いが増えやすい——その距離感も各方向で添えていきます。
中心の本丸は、もう大きく上がっている
真ん中にいるのが、村田製作所(6981)・太陽誘電(6976)・TDK(6762)・京セラ(6971)といったMLCCの作り手です。AIサーバー向け需要と値上げ期待で、ここ数カ月でしっかり買われました。本丸の「なぜ上がったか・各社の違い・過熱の見方」は別記事で深掘りしているので、そちらに譲ります。この記事の主役は、あくまでその周りの5方向です。
本丸の周りを5方向に歩く
MLCCは、セラミックの粉や金属の電極といった材料からできています。本丸がたくさん作るほど、その材料も多く要るので、数量の面では本丸に素直に連動しやすい方向です。
堺化学工業(4078):酸化チタンの大手で、MLCCの主材料である「チタン酸バリウム」など電子材料も手がけています。
ノリタケ(5331):食器で知られる会社ですが、MLCC向けの内部電極ペースト(電子ペースト)を手がけ、MLCC材料の増産にも動いています。電子部品材料の売上比率は高めで、後で出てくる③装置(焼成炉)にも顔を出す——①材料と③装置の両方にまたがるのが面白いところです。
住友金属鉱山(5713):MLCCの内部電極に使う微粒のニッケル粉を手がけています。非鉄大手で電子材料も両輪の一社です。
三井金属(5706):外部電極などに使う銅粉(MLCC・LTCC電極用ペースト向け)を手がけています。こちらも非鉄大手で、MLCCは機能性粉体の一用途です。
※注意点として、これらの会社は他の事業も持つため、MLCC材料が業績に占める割合は会社ごとに違います(とくに住友金属鉱山・三井金属は非鉄全体が大きく、MLCC材料は一部です)。そこは各社の開示で確かめたいところです。
MLCCが大量に使われる「使い道」の側です。ここで大事なのは、いまMLCCが買われている理由は、用途のなかでもAIサーバー(データセンター)にほぼ絞られるという点です。AIサーバーは1台あたりのMLCC搭載数が汎用サーバーの何倍にもなり、これが需要の震源になっています。スマホやEVも使い道としては大きいものの、いまの株価を動かしている「増えている分」ではありません(むしろスマホ・PC向けは、弱ければ足を引っ張る側の話です)。
ただ、用途をAIサーバーに絞ると、それは本丸が買われている理由そのもの=皆がいちばん見ている場所に戻ってきます。完成品メーカーは規模が大きく、その中でMLCCは無数の部品の一つでもあります。つまり②は「視点をずらす」というより本丸の中心に戻る方向で、出遅れを探すという意味での妙味は薄い。ずらしの妙味は、むしろ①材料・③装置・⑤受益の側にあります。
MLCCを「作る側」を支える、製造装置や、製造に使う治具・消耗材です。どのメーカーが勝っても作る工程は要るので、ゴールドラッシュでつるはしを売るような立ち位置になります。MLCC作りのキモは、薄いシートを何百層も積み上げて「焼く」工程。この焼成まわりに日本の上場企業がいます。
日本ガイシ(5333):MLCCの焼成に使うローラーハースキルン(連続焼成炉)で多くの納入実績があるとしています。碍子で培ったセラミックスの技術が土台です。
ノリタケ(5331):①の材料でも登場した会社です。MLCC向けの焼成炉に加え、焼くときに製品を載せる「サヤ・セッター」(SiC製などの道具材)も手がけています。①の電子ペーストと合わせ、材料と装置の両面でMLCCに関わる——だからこの地図では①と③の2か所に顔を出します。
東洋紡(3101):少し毛色が違い、「焼く前」の工程材です。MLCCの薄いセラミックシートを作るときに土台として使う離型フィルムを手がけ、会社側はこのMLCC用フィルムがAIサーバー向けを中心に伸びていると説明しています。焼成炉とはレイヤーの違う”つるはし”ですね。
東レ(3402):同じく離型フィルムで、MLCC用ポリエステルフィルムは世界トップシェアとされ、増産も進めています。さらにMLCC材料の粉砕に使うジルコニアビーズも手がけ、工程材として何重にも絡む一社です。
※この方向のもう一つの特徴は、シートの積層機や検査装置といった「MLCC専業の装置メーカー」には非上場の会社が多く、株として買える純粋な銘柄が限られることです。また設備投資には波があるため、本丸の好業績が出てから半歩遅れて動くこともあります。なお粉砕用のセラミックビーズではニッカトー(5367)や第一稀元素化学工業(4082)なども周辺候補です。
MLCCと同じ「電気をためる・整える」役割を、別の方式で担う部品です。アルミ電解コンデンサ(ニチコン〔6996〕・日本ケミコン〔6997〕)やフィルムコンデンサ(指月電機製作所〔6994〕)がこれにあたります。小型・高容量はMLCC、高い電圧・大容量はアルミ電解やフィルム、と土俵が分かれています。この横方向は別記事のコンデンサ整理でまとめて扱っているので、詳しくは「コンデンサ株一斉高をゼロから整理した記事」へ(※公開後にURL差し込み)。なお置き換え合う関係でもあるため、本丸が強い局面で必ず一緒に上がるとは限らない点は意識しておきたいところです。
MLCCの不足や値上げで「得する側・コストを被る側」です。いちばん間接的で、連想の鎖も長くなります。同じ値上げでも、立場によって追い風になる側と逆風になる側に分かれます。
受益(追い風になりやすい側)
加賀電子(8154)・マクニカホールディングス(3132):MLCCを含む電子部品を扱う商社です。部品が逼迫・値上がりする局面では、調達力や取扱の面で間接的に恩恵を受けることがあります。
損害(逆風になりやすい側)
シークス(7613)・ユー・エム・シー・エレクトロニクス(6615):MLCCを大量に買って製品を組み立てるEMS(電子機器の受託製造)の代表格です。部品代の比重が大きく、値上げを製品価格に転嫁しきれないと、利益が圧迫されやすい側にいます。
ややこしいのは、同じEMSでも商社機能を持つ加賀電子(8154)はグループの調達力で部品を確保・交渉できるため、むしろ受益側に回る面があることです。つまり「組み立て専業か、調達力を持つか」で、同じ値上げの効き方が逆になります。なお商社は仕入れ先メーカーの方針(取引の見直しなど)でも業績が振れるため、「MLCCが上がったから自動的に潤う/傷む」とは言い切れない方向でもあります。
「周辺」を見るときの3つの注意
①便乗との見分け:距離が遠い方向ほど、「関連」と呼ばれて一緒に動いても業績に効くとは限りません。その事業がMLCCにどれだけ効くか(売上比率・受注・採算)が開示で確かめられるかを見ます。
②連動の遅速:材料は本丸に素直に連動しやすい一方、装置は設備投資のタイミングで半歩遅れることがあります。同じ「周辺」でも、効いてくるタイミングは方向ごとに違います。
大事なのは、この地図は「次に上がる銘柄リスト」ではなく「視点をずらすための地図」だということです。周辺だからといって割安でも安全でもなく、本丸と同じように過熱していることもあります。地図はあくまで、見落としを減らすための道具として使いたいところです。
まとめ:5方向の早見表
ここまでの5方向を、一枚の表にまとめておきます。本丸からの距離が近いほど値動きは素直に連動し、遠いほど「便乗」の度合いが上がりやすい、という目盛りで見てください。
| 方向 | 代表銘柄 | 本丸との距離 | ひとことメモ |
|---|---|---|---|
| ① 上流:材料 | 堺化学工業(4078)、ノリタケ(5331)、住友金属鉱山(5713)、三井金属(5706) | 近い | 誘電体・電極の材料。数量増に素直。ただし大手は非鉄・化学全体が大きく、MLCC比率は会社次第。 |
| ② 下流:用途 | AIサーバー(需要の震源) | 本丸寄り | いまの上昇はAIサーバーがほぼ全て。本丸の中心に戻るため出遅れ妙味は薄い。 |
| ③ ツルハシ:装置・治具 | 日本ガイシ(5333)、ノリタケ(5331)、東洋紡(3101)、東レ(3402) | やや遠い | 焼成炉・サヤ・離型フィルム・ビーズなど。専業の装置は非上場が多く、設備投資の波で半歩遅れることも。 |
| ④ 横:代替部品 | ニチコン(6996)、日本ケミコン(6997)、指月電機製作所(6994) | 別記事 | 他方式のコンデンサ。土俵が違い、本丸が強くても必ず連れ高するとは限らない。 |
| ⑤ 受益・被害 | 受益:加賀電子(8154)、マクニカHD(3132)/被害寄り:シークス(7613)、UMCエレクトロニクス(6615) | 最も間接的 | 商社は逼迫・値上げで間接受益。組立専業EMSは部品高でコスト増を被りやすい。仕入先の方針でも振れる。 |
※代表銘柄は本記事で取り上げた一例で、関連銘柄の網羅ではありません。銘柄コードは東証。各社のMLCC関連事業が業績に占める割合は会社により異なります。
本丸が大きく上がると、「乗り遅れた、周辺で何か拾えないか」と気持ちが急ぎがちです。ただ個人的には、周辺を「次の値上がり候補」として焦って探すより、まずこうやってMLCCを中心にした5方向の地図を持っておく方が役に立つと思っています。知らない銘柄が「MLCC関連」と出てきたときに、「ああ、材料の方か」「装置側の話か」と置き場所がすぐ分かるからです。そのうえで、本丸からの距離が遠いものほど便乗の度合いが上がる、という目盛りを忘れずに見ていきたいところです。各方向の中身は、別記事で順に掘り下げていく予定です。










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