「アメリカの中間選挙が終わると株は上がる」は本当?|1950年からの19回を日経平均とS&P500で数えたら、アメリカは19回とも上げ、日本は14回でした

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

💬 今回検証する通説
アメリカの中間選挙が終わると、
株は上がる
30秒でわかるこの記事
  • 1950年以降の中間選挙19回。S&P500は選挙の日から半年後も1年後も19勝0敗(1年後の平均+16.1%)。中間選挙のない年の同じ時期(+6.5%)より、偶然では出にくいほど高い。
  • 同じ19回を日経平均で測ると半年後16勝3敗・1年後14勝5敗で、勝率は中間選挙のない年(68%・70%)より高い。ただし上げ幅の差(1年後+14.7%対+9.4%)は、19回では偶然と見分けがつきません。
  • 1990年以降の日本は、中間選挙の年のほうが弱い(半年後+3.8%、ない年+4.9%)。アメリカは1990年以降も9勝0敗。
  • 本に載っている「中間選挙の年の安値から翌年の高値まで+48.6%」は、中間選挙でなくても、安値から高値まで測れば出る数字でした。
判定:★★★★☆

2026年11月3日はアメリカの中間選挙です。10月に入って日経平均はAI・半導体株を中心に下げ、10月23日には一時6万2,000円を割りました。

こういうときに思い出すのが「中間選挙が終わると株は上がる」というアノマリーで、私も「本格的に戻るなら選挙のあとか」と考えていました。そこで、1950年からの中間選挙19回を、S&P500と日経平均の両方で、選挙の日から1年後まで数えました。

アメリカでは本物でした。日本も勝ち越してはいるものの、上げ幅の差は19回では決めきれません。

この記事でわかること
  1. 中間選挙のあと、S&P500と日経平均はどう動いたか。中間選挙のない年と比べて違うのか
  2. 時期で割ると、日本で効いていた時代はあるのか
  3. 本の「安値から翌年の高値まで+48.6%」は、どう読めばいいか
  4. 大統領の党が負けると違うのか。2026年の安値はもう来たのか

この通説の出どころ

この通説は、ジェフリー・ハーシュ『アノマリー投資』(パンローリング)の「大統領選挙の4年周期」から来ています。かいつまむと、こうです。

本に書かれていること(アメリカ株の話)
  • 大統領の任期4年のうち、後半の2年(中間選挙の年の終わりから次の大統領選挙まで)が、いちばん株が上がる
  • 中間選挙の年は前半が弱く、その年のいちばん安いところから翌年のいちばん高いところまで、平均+48.6%上がった(25回)
  • とくに中間選挙の年の10〜12月と翌年の1〜3月は、4年の中でいちばん強い半年

本の数字はアメリカのダウやS&P500で測ったものです。この記事では、同じことをS&P500で確かめたうえで、日経平均でも同じように効くのかを数えます。

検証した19回の中間選挙

アメリカの中間選挙は、大統領選挙の2年後の11月、第1月曜の翌日の火曜に行われます。日経平均の日次データがある1949年5月以降で、1950年から2022年まで19回(表1)。

選挙日選挙前
3か月
1か月後3か月後半年後1年後S&P500
1年後
1950〜1986年(10回)
1950/11/7+7.3%−4.2%+7.7%+11.4%+44.4%+20.2%
1954/11/2−0.6%−1.7%+14.5%+5.6%+24.2%+33.2%
1958/11/4+7.4%+3.5%+13.8%+25.5%+55.5%+11.6%
1962/11/6−2.0%+5.9%+11.5%+17.5%−1.6%+26.5%
1966/11/8−2.4%−4.4%+2.0%+2.6%−5.5%+13.7%
1970/11/3−1.2%−6.9%−0.5%+13.6%+4.4%+11.9%
1974/11/5−19.1%+9.8%+15.0%+27.1%+22.4%+18.5%
1978/11/7+6.9%+2.0%+1.3%+6.7%+7.5%+9.2%
1982/11/2+4.3%+7.7%+8.4%+16.8%+26.4%+19.9%
1986/11/4−3.6%+9.9%+19.0%+46.5%+39.1%+2.3%
選挙日選挙前
3か月
1か月後3か月後半年後1年後S&P500
1年後
1990〜2022年(9回)
1990/11/6−13.3%−1.8%+5.8%+6.5%+0.9%+25.6%
1994/11/8−5.0%−2.2%−6.7%−16.4%−9.1%+26.8%
1998/11/3−13.7%+5.3%−0.4%+20.8%+33.1%+21.9%
2002/11/5−8.0%+0.8%−5.1%−7.7%+14.2%+15.7%
2006/11/7+8.2%+0.5%+6.8%+6.9%−7.3%+9.9%
2010/11/2−4.3%+11.1%+15.6%+5.3%−7.2%+7.7%
2014/11/4+8.6%+6.1%+5.0%+16.1%+16.8%+4.6%
2018/11/6−1.6%−2.9%−4.5%−3.9%+4.0%+11.6%
2022/11/8−0.2%−1.1%−1.0%+7.1%+16.9%+14.4%

※すべて「選挙日の終値」からの騰落率。選挙前3か月=選挙日の63営業日前の終値→選挙日の終値、1か月後=21営業日後、3か月後=63営業日後、半年後=126営業日後、1年後=250営業日後。日経平均は選挙日が日本の休場だった1970年と1998年(11月3日・文化の日)は、その前の営業日(11月2日)の終値を基準にしました

この記事の数字は、ぜんぶ選挙日の終値を基準にしています。「開票を見る前の晩に持っていたら、そのあとどうなったか」という読み方です。

検証① 中間選挙のあと、中間選挙のない年と比べて上がっているのか

「選挙のあと1年で+15%」と聞いても、ふつうの年でも1年持てば上がるので、それだけでは中間選挙の効き目とは言えません。

そこで、中間選挙のない年(57回)でも同じ日付(11月第1火曜)から同じ長さを測り、中間選挙の年19回と比べました(図1)。棒が中間選挙の年、金色の破線が中間選挙のない年の平均です。

棒の後ろの帯は「まぐれでもこのくらいは出る範囲」。棒が帯をはみ出したら「偶然では出にくい差」と読みます。帯の幅は、本当は差がなくても20回に1回(5%)はこの幅の外に出てしまう、という目安で取っています。

アメリカは帯の外、日本は帯の中中間選挙の年19回(1950〜2022年)。11月第1火曜の終値から1か月後〜1年後までの平均※金色の破線は同じ日付から数えた中間選挙のない年(57回)の平均、帯はその「まぐれでも出る範囲」。下は19回のうち上がった回数まぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)中間選挙のない年の平均(同じ日付から)−10%0%+10%+20%+30%上がった ↑下がった ↓日経平均(日本)+2.0%1か月後11勝8敗+5.7%3か月後13勝6敗+10.9%半年後16勝3敗+14.7%1年後14勝5敗−10%0%+10%+20%+30%上がった ↑下がった ↓S&P500(アメリカ)+1.5%1か月後14勝5敗+7.2%3か月後17勝2敗+13.5%半年後19勝0敗+16.1%1年後19勝0敗アメリカ:1年後は中間選挙の年+16.1%(19勝0敗)、ない年+6.5%。3か月後から先はぜんぶ帯の外。日本:1年後は中間選挙の年+14.7%(14勝5敗)、ない年+9.4%。差はあっても帯の中です。出典:日経平均・S&P500ともStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)。選挙日は11月第1月曜の翌日の火曜。集計は私
図1:中間選挙の日の終値から1か月後〜1年後までの平均(棒)と、中間選挙のない年の同じ日付からの平均(金色の破線)。左が日経平均、右がS&P500
▼検証条件
対象:日経平均(1949年5月〜2026年10月23日)とS&P500(1885年〜2026年10月22日)の日次終値/中間選挙の年:1950〜2022年の19回/比べる相手:1950〜2025年のうち中間選挙のない57年で、11月第1月曜の翌日の火曜の終値から同じ長さを測ったもの/指標:21・63・126・250営業日後の終値までの騰落率/帯:中間選挙のない年のばらつきを、19の平方根で割って2倍した幅/配当:含まない/出典:Stooq(2026年6月まで)、Yahoo!ファイナンス(それ以降)

アメリカ:半年後は中間選挙の年+13.5%(19勝0敗)に対して、ない年+4.0%。1年後は+16.1%(19勝0敗)に対して+6.5%。3か月後から先はぜんぶ帯の外。半年後も1年後も負けなしで、中間選挙のない年の2倍以上。本のとおりでした。

日本:1年後は中間選挙の年+14.7%(14勝5敗)に対して、ない年+9.4%。半年後も+10.9%(16勝3敗)に対して+7.5%。

向きは上で、勝率も中間選挙の年のほうが高い(半年後16勝3敗=84%に対して、ない年は68%)。ただし上げ幅の差は、19回で測ったときの帯の中に収まります。

日本株は値動きのばらつきが大きく、中間選挙のない年から19年を適当に選び直しても、半年後なら8回に1回はこれくらいの平均が出てしまうからです。帯の中は「差がない」ではなく、この差が本物かまぐれかを19回では見分けられないという意味です。日本も向きと勝率は同じ側。ただし幅の差は決めきれない、というのが図1の読み方です。

検証② 日本で効いていた時代はあるのか

19回を、1989年までの10回と1990年以降の9回に分けました(図2)。分け方は、日本株の長い上げ相場が終わった1989年末で切っただけで、数字を見てから境目を動かしてはいません。比べる相手(金色の破線)も、同じ時代の中間選挙のない年です。

1990年以降の日本は、中間選挙の年のほうが弱い中間選挙の年の半年後・1年後の平均を、1989年までの10回と1990年以降の9回に分けた※金色の破線は、同じ時代・同じ日付から数えた中間選挙のない年の平均。帯はそれぞれの回数で描いた「まぐれでも出る範囲」まぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)半年後−10%0%+10%+20%+30%日本 1950〜86年(10回)+17.3%(10勝0敗)日本 1990〜2022年(9回)+3.8%(6勝3敗)アメリカ 1950〜86年(10回)+16.3%(10勝0敗)アメリカ 1990〜2022年(9回)+10.3%(9勝0敗)1年後−20%0%+20%+40%+21.7%(8勝2敗)+6.9%(6勝3敗)+16.7%(10勝0敗)+15.3%(9勝0敗)1989年までの日本は半年後10勝0敗・+17.3%。ただし中間選挙のない年も+9.9%で、差は帯の中。1990年以降の日本は半年後+3.8%。中間選挙のない年(+4.9%)より低く、アメリカは9勝0敗のまま。出典:日経平均・S&P500ともStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)。選挙日は11月第1月曜の翌日の火曜。集計は私
図2:中間選挙のあと半年後・1年後の平均を、1989年まで(10回)と1990年以降(9回)に分けたもの。金色の破線は同じ時代の中間選挙のない年の平均
▼検証条件
区分:1950〜1986年の10回/1990〜2022年の9回/比べる相手:同じ時代の中間選挙のない年(1950〜89年は30回、1990〜2025年は26〜27回)/帯:各区分の回数(10または9)の平方根で割って2倍した幅/その他:図1と同じ

1989年まで:日本は半年後10勝0敗・+17.3%。アメリカ(10勝0敗・+16.3%)と同じ勝ち方です。ただし、その頃の日本は中間選挙のない年も+9.9%と強く、差は帯の中。中間選挙の効き目というより、どの年も上がっていた時代だった可能性があります。

1990年以降:アメリカは半年後9勝0敗・1年後9勝0敗のまま。日本は半年後6勝3敗で勝率はない年(52%)より高いものの、上げ幅の平均は+3.8%で、中間選挙のない年(+4.9%)より低い。1年後は+6.9%(6勝3敗)対+3.1%で上回り、半年と1年で向きがそろいません。下げた3回(1994・2006・2010年)はすべてこの時代です。

白眉
1990年以降の日本は、勝ち越しても上げ幅はふつうの年以下。
アメリカは1990年以降も9勝0敗。

ただし9回で測ると帯が広く、「効かなくなった」と言い切れる差でもありません。アメリカの9勝0敗も、9回では帯の中です。言えるのは「1990年以降の日本に、中間選挙を理由に強気になれる数字はない」までです。

検証③ 平均の裏のばらつき——負けた年と、途中でどこまで沈んだか

検証①②は平均の話です。平均が上向きでも、19回のうち何回負けて、途中でどこまで沈んだのかは分かりません。この結果を売買の根拠にするなら、外れたときの形を見ておく必要があります。

図3は19回それぞれの1年後。棒が日経平均、●がS&P500です。

アメリカは19回とも上げ、日本は14回中間選挙の日の終値から1年後(250営業日後)までの騰落。棒が日経平均、●がS&P500※赤が下げ、緑が上げ。金色の破線は日経平均19回の平均−20%0%+20%+40%+60%+80%上がった ↑下がった ↓+44%1950+24%1954+55%1958−2%1962−5%1966+4%1970+22%1974+8%1978+26%1982+39%1986+1%1990−9%1994+33%1998+14%2002−7%2006−7%2010+17%2014+4%2018+17%2022日経平均(上げ)日経平均(下げ)S&P500日経平均19回の平均 +14.7%※日経平均が下げたのは5回(1962・1966・1994・2006・2010年)。1990年以降の9回では3回です日経平均の1年後は、いちばん良かった1958年が+55.5%、いちばん悪かった1994年が−9.1%。S&P500の●は19回ぜんぶゼロ線より上。日本の棒は、アメリカの●より下にあることが11回あります。出典:日経平均・S&P500ともStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)。選挙日は11月第1月曜の翌日の火曜。集計は私
図3:中間選挙の日から1年後の騰落、19回それぞれ。棒が日経平均、●がS&P500
▼検証条件
指標:選挙日の終値→250営業日後の終値の騰落率/その他:図1と同じ

日経平均は、いちばん良かった1958年が+55.5%、いちばん悪かった1994年が−9.1%。S&P500の●は19回ぜんぶゼロ線より上です。

アメリカが上げても日本が下げた年は5回。1990年以降の3回は、1994年(円高と金利上昇)・2006年(翌年のサブプライム問題)・2010年(翌年の震災と円高)で、いずれも日本側の事情が重なっています。

次に、途中の沈みです。選挙日の終値から、1年のうちの安値までの下げ幅を日経平均で並べました(表2)。

日経平均:選挙日の終値から、1年のうちどこまで沈んだか
選挙の年いちばん深い沈み
選挙日の終値→安値
安値が来た日1年後
1994年−26.1%160営業日後−9.1%
2002年−14.9%116営業日後+14.2%
2018年−13.5%33営業日後+4.0%
1950年−11.1%32営業日後+44.4%
1990年−10.5%191営業日後+0.9%
1966年−9.1%225営業日後−5.5%
2010年−8.6%219営業日後−7.2%
1970年−8.2%24営業日後+4.4%
2022年−7.7%38営業日後+16.9%
2006年−7.3%250営業日後−7.3%
1998年−5.2%41営業日後+33.1%
1962年−4.4%210営業日後−1.6%
1954年−4.1%8営業日後+24.2%
1978年−1.2%31営業日後+7.5%
2014年−0.6%29営業日後+16.8%
1986年−0.4%1営業日後+39.1%
1958年−0.1%5営業日後+55.5%
1974年0.0%0営業日後+22.4%
1982年0.0%0営業日後+26.4%

※日経平均。選挙日の終値から、その後250営業日のうちの終値の最安値までの下落率。黄色の行は10%以上沈んだ回。「0.0%」は選挙日の終値を一度も下回らなかった回。S&P500は19回中3回が10%以上の沈み

日経平均が10%以上沈んだのは19回中5回。1994年は−26.1%まで沈んでから、1年後−9.1%でした。

ふつうの日から数えると、日経平均が1年のうちに10%以上沈むことは45%あるので、中間選挙のあとが特別に荒いわけではなく、むしろ穏やかなほうです。それでも4回に1回は1割沈む前提で、買う量を決めることになります。

検証④ 「安値から翌年の高値まで+48.6%」をどう読むか

本でいちばん印象に残る数字が「中間選挙の年のいちばん安い日に買って、翌年のいちばん高い日に売れたら+48.6%」です。ただ、その年の安値も翌年の高値も、あとからしか分かりません。この測り方なら、中間選挙でなくても大きな数字が出るのではないか。そこで、同じ測り方を中間選挙の年とそれ以外の年の両方でやりました(図4)。

「安値から翌年の高値まで」は、どの年でも4〜5割上がるその年のいちばん安い終値から、翌年のいちばん高い終値までの上昇率。中間選挙の年と、それ以外の年で比べた※右の棒は「選挙の日の終値で買って、翌年の高値で売れたら」。安値の日は、あとからしか分かりません0%+20%+40%+60%+80%日経平均(日本)+44.2%中間選挙の年19回+53.5%それ以外の年56回+25.5%選挙の日に買えたら19回0%+20%+40%+60%+80%S&P500(アメリカ)+41.0%中間選挙の年34回+38.6%それ以外の年106回+24.5%選挙の日に買えたら34回日本:中間選挙の年+44.2%、それ以外の年+53.5%。アメリカ:+41.0%と+38.6%。差は帯の中です。安値から高値まで測れば、どの年でも大きな数字になります。選挙の日に買って翌年の高値で売れても、日本+25.5%・アメリカ+24.5%です。出典:日経平均・S&P500ともStooq(2026年6月まで)+Yahoo!ファイナンス(2026年10月まで)。選挙日は11月第1月曜の翌日の火曜。集計は私
図4:その年のいちばん安い終値から翌年のいちばん高い終値までの上昇率。中間選挙の年と、それ以外の年。右の棒は「選挙の日の終値で買って翌年の高値で売れたら」
▼検証条件
指標:その年の終値の最安値→翌年の終値の最高値の上昇率/対象:日経平均は1950〜2024年の75年(うち中間選挙の年19)、S&P500は1885〜2025年の139年(うち中間選挙の年34)/帯:全年のばらつきを中間選挙の年の数の平方根で割って2倍した幅/右の棒:選挙日の終値→翌年の終値の最高値
  • 日経平均:中間選挙の年+44.2%、それ以外の年+53.5%
  • S&P500:中間選挙の年+41.0%、それ以外の年+38.6%(本の+48.6%はダウで測った数字なので少し違います)
  • 選挙の日の終値で買えたら:翌年の高値まで日本+25.5%・アメリカ+24.5%

どちらの国も、中間選挙の年とそれ以外の年の差は帯の中。安値から高値まで測れば、どの年でも4〜5割上がります。中間選挙の効き目というより、測り方が作る数字です。

白眉
「安値から翌年の高値まで+48.6%」は、中間選挙だから出る数字ではない。
どの年でも、安値から高値まで測ればそのくらい上がる。

実際に手に入るのは、安値でも高値でもなく、図1の「選挙の日に買って1年持った」結果(日本+14.7%・アメリカ+16.1%)のほうです。

検証⑤ 本のほかの主張と、大統領の党の勝ち負け

本には「+48.6%」以外にも、中間選挙の年についての主張が3つあります。同じ測り方を日経平均とS&P500でやった結果が表3です。

本に書かれていること日経平均S&P500読み方
選挙の前は弱い
(選挙前3か月)
−1.7%
6勝13敗・ない年+2.5%
−0.1%
17勝17敗・ない年+1.6%
日本は弱め。ただし帯の中
中間選挙の年の安値は
選挙の前に来る
19回中16回19回中18回日米とも、ほぼそのとおり
10〜12月+翌年1〜3月が
4年でいちばん強い
+9.9%
15勝4敗・ない年+6.4%
+8.5%
25勝9敗・ない年+2.2%
アメリカは帯の外。日本は帯の中

※「ない年」=中間選挙のない年の同じ期間の平均。選挙前3か月=63営業日前の終値→選挙日の終値。10〜12月+翌年1〜3月=9月末の終値→翌年3月末の終値。「安値が選挙の前に来た」=その年の終値の最安値の日が選挙日以前

「選挙の前は弱い」は、日本のほうに傾きがあるものの帯の中。「安値は選挙の前に来る」は日米ともほぼそのとおり。「10〜12月+1〜3月が強い」はアメリカだけ帯の外です。

11月から4月が強いという話そのものは#02 セルインメイと#06 年末ラリーで測っているので、ここでは「中間選挙の年だけ特別に強いか」だけを見て、日本は特別ではない、としておきます。

大統領の党が負けると、違うのか

中間選挙は、ほとんどの回で大統領の党が議席を減らします。そこで「選挙のあと、大統領の党が上下両院を持っていたか」で19回を分けました(表4)。両院を持っていたのは1950・1962・1966・1978・2002年の5回だけで、残り14回はねじれです。

選挙のあと、大統領の党は回数日経平均
半年後
日経平均
1年後
S&P500
半年後
S&P500
1年後
上下両院を持っていた5回+6.1%
4勝1敗
+11.8%
3勝2敗
+11.0%
5勝0敗
+17.1%
5勝0敗
どちらか、または両方を
持っていなかった(ねじれ)
14回+12.7%
12勝2敗
+15.7%
11勝3敗
+14.3%
14勝0敗
+15.7%
14勝0敗

※上下両院を持っていた5回=1950・1962・1966・1978・2002年。1982・1986・2010・2014・2018・2022年のように片方だけ持っていた回は「ねじれ」に入れています

日米とも、両院を持っていた5回とねじれの14回で向きは変わらず、差は帯の中(5回で測ると帯がとても広い)。大統領の党が勝っても負けても、「選挙が終わったあとは上がる」の形は同じでした。本には党の組み合わせごとの数字もありますが、回数が少なすぎるので深追いしていません。

2026年の安値は、もう来たのか

表3のとおり、中間選挙の年の安値は19回中16回で選挙日より前に来ていました。2026年の日経平均の安値(終値)はいまのところ3月31日の51,064円で、10月23日の終値62,693円はそこから+22.8%の位置です。

過去の並びどおりなら「安値はもう来ている」側ですが、10月の下げがこれを割るかどうかは、選挙日を過ぎてからしか分かりません。

なぜアメリカで効いて、日本で薄れたのか

本の説明は、政権が任期の前半に痛みを伴う政策を済ませ、後半に景気を良くして次の選挙に向かう、というものです。これが本当かどうかはこのデータでは分かりませんが、アメリカで19回とも上げている事実は、理由が何であれ動かせません。

日本については、2つのことが重なっていると考えています。

ひとつは、日本株がアメリカに連動するのは「翌日」の話で、半年や1年の道のりは日本側の事情が決めることです。1990年のバブル崩壊、1994年の円高、2006〜07年のサブプライム問題、2011年の震災と円高。アメリカが上げた1年に日本が下げた回は、どれも日本側に材料がありました。

もうひとつは、1989年までの日本は長い上げ相場の中にいて、どの時期で測っても上がっていたことです。10勝0敗は中間選挙の効き目というより、その時代の日本株の強さだった可能性があります。

戦前のアメリカも同じです。1890〜1946年の15回で測ると、半年後4勝11敗・1年後8勝7敗で、効いていません。「中間選挙のあとは上がる」は、アメリカでも戦後に出来上がった形です。

判定:「アメリカの中間選挙が終わると株は上がる」は本当か?
「アメリカの中間選挙が終わると、株は上がる」
  • 〇アメリカ株(S&P500)が上がる——1950年以降の19回で半年後・1年後とも19勝0敗。中間選挙のない年の2倍以上で、偶然では出にくい差
  • 〇日本株(日経平均)も勝ち越す——半年後16勝3敗・1年後14勝5敗で、勝率は中間選挙のない年より高い
  • △日本株も大きく上がる——上げ幅の差(1年後+14.7%対+9.4%)は19回では偶然と見分けがつかない。1990年以降は半年後の平均が中間選挙のない年より低い
  • ×安値から翌年の高値まで+48.6%——中間選挙の年でなくても、安値から高値まで測ればそのくらい上がる
★★★★☆
アメリカでは本物。日本は勝ち越すが、幅は偶然の範囲

★4にした理由です。「アメリカ株の話」として読むなら、19回で半年後も1年後も負けなしで★5に近い。「日本株も上がる」と読むなら、勝ち越してはいるものの、上げ幅の差は19回では偶然と見分けがつきません。「条件付きで正しい」の条件が「アメリカ株なら」なので、★4です。「+48.6%」だけは、測り方の問題として×を付けました。

この結果、実践にどう活かす?

1
アメリカ株を持っているなら、選挙を理由に売る側には立たない
19回で半年後・1年後とも負けなし。これを外すほうに賭ける理由は、このデータにはありません。選挙前3か月の弱さは帯の中で、「選挙前に売って選挙後に買い直す」ほどの差も出ていません。
2
日本株は「選挙が終われば戻る」を前提にしない
勝率は高めでも、上げ幅は19回では偶然と見分けがつかず、1990年以降の半年後の平均は中間選挙のない年より低い。上がるかどうかを決めていたのは、選挙ではなく日本側の材料(為替・業績・需給)でした。いまなら、AI投資が続くかと信用の買い残の重さのほうが効きます。
3
「いちばん安いところで買って、いちばん高いところで売る」前提の数字は、半分に割って読む
「+48.6%」は安値→高値で測った数字。選挙の日に買えて翌年の高値で売れても日本+25.5%、ふつうに1年持つと+14.7%。アノマリーの数字は、どこからどこまで測ったかを先に見ます。
4
買うなら、1年のうちに1割沈む前提で量を決める
選挙後1年のうちに日経平均が10%以上沈んだのは19回中5回。1994年は−26.1%まで沈みました。平均の上向きは、途中の沈みを守ってはくれません。
本質:アノマリーは「どの市場で、いつからいつまで測ったか」が本体です。同じ中間選挙でも、アメリカの戦後は効き、戦前は効かず、日本は勝率は良くても幅が決めきれません。本に載っている数字を自分の市場と自分の持ち期間で測り直すと、たいてい半分になります。半分になっても残る分が、使える分です。
私の場合は

日本株だと効き目は薄まる、という結果でした。それでも、上がるきっかけにはなるかもしれないと思っています。

10月の日本株はいいところなく下がり続けていて、これはアメリカの弱さも原因だと見ています。この雰囲気を変えるには、中間選挙が終わってアメリカが調子を取り戻し、日本もそれに引っ張られる展開が要る。そこには期待しています。

ただ、データとしては日本の効き目は薄いので、期待しすぎないようにしたい。これは実データで確かめたからこそ持てる注意で、この数字がなければ「中間選挙が終われば上がるだろう」と楽観的に構えていたと思います。

まとめ

この記事のまとめ
  • S&P500は、中間選挙の日から半年後・1年後とも19回で19勝0敗。中間選挙のない年の2倍以上で、アメリカでは本物です。
  • 日経平均は半年後16勝3敗・1年後14勝5敗で勝ち越し。ただし上げ幅の差は19回では偶然と見分けがつかず、1990年以降の半年後の平均は中間選挙のない年より低い。
  • 「安値→翌年の高値+48.6%」は、どの年でも安値から高値まで測れば出る数字。選挙の日に買って1年持つと日本+14.7%・アメリカ+16.1%です。
  • 大統領の党が勝っても負けても形は同じ。2026年の日経平均の安値は、いまのところ3月31日で、過去19回のうち16回は安値が選挙の前に来ていました。
判定:★★★★☆ アメリカでは本物。日本は勝ち越すが、幅は偶然の範囲
Q. 2026年11月3日の選挙のあと、日経平均は上がりますか?
この記事で言えるのは「アメリカ株は上がりやすい。日本株も勝ち越しているが、上げ幅は中間選挙のない年と区別がつかない」までです。上がるか下がるかを決めていたのは、選挙ではなく日本側の材料でした。答え合わせは2027年5月(半年後)にこの記事へ1行足します。
Q. アメリカの「19勝0敗」は、たまたまではないのですか?
ふつうの期間でS&P500が1年後に上がっている割合は66%ほどです。その割合で19回とも上がる確率は1%を大きく下回ります。ただし戦前の15回(1890〜1946年)では半年後4勝11敗で効いていません。「戦後のアメリカ」に限った形です。
Q. 本の「+48.6%」は間違いなのですか?
数字そのものは間違いではありません(ダウで25回を測った値)。問題は測り方で、「その年の安値」と「翌年の高値」はあとからしか分からず、同じ測り方なら中間選挙でない年でも4〜5割出ます。本の数字を否定するというより、「中間選挙だから」の部分が小さい、という読み方です。
Q. 19回は少なくないですか?
少ないです。だから図に「まぐれでもこのくらいは出る範囲」の帯を描き、帯の外に出たものだけを「偶然では出にくい」と言うようにしています。アメリカの3か月後以降は帯の外、日本はすべて帯の中。帯の中は「差がない」ではなく「この回数では決められない」の意味で、日本の差を本物と言うには4倍ほどの回数(約300年分)が要ります。
  • データ出典:日経平均はStooq(1949年5月〜2026年6月5日)とYahoo!ファイナンス(2026年6月以降)。S&P500はStooq(1885年〜2026年6月9日)とYahoo!ファイナンス(2026年6月以降)。それぞれ重なる期間で終値が一致することを確認して継ぎ足しました。集計はすべて私が行っています。
  • 通説の出どころ:ジェフリー・A・ハーシュ『アノマリー投資 ――市場のサイクルは永遠なり』(パンローリング)第5章。「中間選挙の年の安値から大統領選挙の前年の高値まで平均+48.6%(25例)」「選挙の翌年の高値から中間選挙の年の安値まで平均−20.9%」「中間選挙の年の第4四半期→翌年の第1四半期がS&P500で+16.0%」はダウ・S&P500の数字で、本文の図4・表3は同じ測り方を日経平均とS&P500で再現したものです。本の表そのものは転載していません。
  • 中間選挙の日付は「11月の第1月曜の翌日の火曜」の規則で生成し、1950〜2022年の19回を対象にしました。「中間選挙のない年」は1950〜2025年のうち中間選挙の年を除いた57年(1年後の窓は2025年を除く56年)で、同じ規則の火曜の終値から測っています。1914年の選挙(11月3日)はニューヨーク証券取引所が第一次世界大戦で7月末から12月まで休場していたため、S&P500の基準は休場前の最後の終値(7月30日)になっています。戦前15回の集計にはこの1回を含みます。
  • 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、中間選挙のない年で同じ長さの騰落率を測ったときのばらつき(標準偏差)を、回数の平方根で割って2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
  • 表4の「大統領の党が上下両院を持っていた」は、選挙後に発足した議会で、大統領の党が下院と上院の両方で過半数を持っていた回(1950・1962・1966・1978・2002年)。片方だけの回と両方とも持っていなかった回は、まとめて「ねじれ」にしています。
  • 図4の「それ以外の年」は、その年と翌年のデータがそろう年に限りました(日経平均1950〜2024年、S&P500 1885〜2025年)。
  • 表3の「10〜12月+翌年1〜3月」は、9月末の終値から翌年3月末の終値までの騰落率です。本では四半期ごとの平均の合計で示されていて、数え方が少し違います。
  • 2026年の安値・終値は2026年10月23日時点。中間選挙は2026年11月3日で、東京が結果に反応できる最初の営業日は11月4日です。

本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

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