1Q決算の確報|1,468社の21.3%が上方修正、EPSは7.6%増

1Q決算の確報|1,468社の21.3%が上方修正、EPSは7.6%増

2026年8月14日の引け後までに、東証プライムの1,554社のうち1,468社が4〜6月期の決算発表を終えました。全体の94.5%です。ほぼ出そろったと言っていいと思います。

そこで7月1日から8月14日までの決算見出し1,525本を分類し直したところ、上方修正313社に対して下方修正45社でした。割合は21.3%と3.1%です。

ただ、今回いちばん驚いたのはこの数字ではありませんでした。前半戦の21.1%が、母数が2.2倍になっても下がらなかったことです。

この記事の要点(先に4つ)
① 発表を終えた1,468社のうち21.3%が上方修正、3.1%が下方修正でした。8月4日時点の21.1%からほとんど動いていません。

② 日経平均のEPSは決算シーズンの12営業日で7.59%増えました。ちなみに前年の同じ12営業日は、1.43%の減少です。

③ 確報で初めて見えたのは業種の入れ替わりでした。非鉄金属が20社中14社(70.0%)で全業種トップ、一方で情報・通信業は16.7%から9.3%へ失速しています。

④ 上方修正とは別に、増益か減益かも数えました。方向が読める1,208社のうち増益は72.8%です。ただし証券・商品は増益94.7%なのに上方修正がゼロで、2つの物差しでは順位が入れ替わります

何が起きたか|プライムの94.5%が発表を終えた

まず、シーズンがどこまで進んだかを押さえておきます。3月期企業の1Q決算は8月に入って一気に増え、8月7日だけで302本という山を作りました。8月6日が197本、7月31日が186本ですから、7日が突出したピークだったことになります。

そのうえで8月14日の引けまでに、プライム1,554社のうち1,468社が発表を終えました。8月4日時点の記事では659社・42.4%でしたので、この10営業日で809社が積み上がったことになります。

なお集計の方法は前回とそろえています。株探の決算速報(プライム)に掲載された見出しを1本ずつ拾い、「上方修正」「下方修正」の文字が入っているものを数えました。同じ会社が複数回登場する場合は1社として扱っています。

数値で見るインパクト|21.1%は21.3%で着地した

全体の集計は次のとおりです。母数はいずれも「発表を終えた1,468社」で、プライム全体ではありません。

項目8月4日時点8月14日(確報)
発表を終えた社数659社(42.4%)1,468社(94.5%)
上方修正139社(21.1%)313社(21.3%)
下方修正19社(2.9%)45社(3.1%)
ネット上方率+18.2pt+18.3pt
増配・配当の増額108社(16.4%)207社(14.1%)
「最高益」に言及89社(13.5%)187社(12.7%)

※ネット上方率=上方修正率−下方修正率。単位のptは差を表すときに使っています。

前回の記事で私は「残り約900社は中小型に偏るので、比率は今後下がりやすい」と書きました。ところが実際には21.1%が21.3%になっただけで、ほぼ動いていません。予想が外れた形です。

というのも、後半に発表した809社のなかにも上方修正が174社あったからです。規模の大きい会社ほど発表が早い、という傾向はたしかにありますが、少なくとも今回は中小型が足を引っ張るという形にはなりませんでした。

前年との比較|去年の1Q決算はEPSが下がっていた

とはいえ、21.3%という数字だけを見せられても多いのか少ないのか判断がつきません。そこで指数の側から答え合わせをしてみます。

日経平均EPSの見方

日経平均EPSは「日経平均÷PER」で計算される、225社の予想利益を1株あたりに直した値です。会社が業績予想を引き上げれば増え、引き下げれば減ります。つまり上方修正が積み上がっているなら、EPSも増えているはずです。この指標の詳しい成り立ちは8月5日の記事で扱いました。

1Q決算シーズンによる日経平均EPSの変化 2024年・2025年・2026年の3年比較 各年の7月29日直前の営業日を100として、8月14日直前の営業日までの12営業日について日経平均EPSの推移を重ねた折れ線グラフ。2026年は100から107.59へ7.59パーセント上昇し、12営業日のあいだほぼ一本調子で切り上がった。2024年は102.37で2.37パーセントの上昇。2025年は2営業日目の100.79をピークに低下に転じ、98.57と1.43パーセントの下落で終えた。EPSの実額は2026年が2795円から3007円へ、2024年が1817円から1860円へ、2025年が1996円から1967円へ。同じ12営業日の比較で、2026年はプラス7.59パーセント、2024年はプラス2.37パーセント、2025年はマイナス1.43パーセント。 決算シーズンで日経平均EPSはどう動いたか 3年比較 日経平均EPS(終値÷指数ベースPER)。各年7/29直前の営業日=100として、8/14直前までの12営業日を重ねた 横軸の日付は2026年のもの。2024年・2025年は営業日数をそろえて重ねている 2026年 2024年 2025年 98 100 102 104 106 108 起点 7/29 7/31 8/4 8/6 8/10 8/14 決算発表が本格化した7/29直前から12営業日 2026年 107.6 2024年 102.4 2025年 98.6 2025年の高値(100.79) ここから低下に転じ、100を回復せずに終えた 決算シーズンの12営業日でEPSはどれだけ動いたか 2026年 ▲ 7.59% 2024年 ▲ 2.37% 2025年 ▼ 1.43% EPS実額 2026年 2,795円→3,007円 / 2024年 1,817円→1,860円 / 2025年 1,996円→1,967円 同じ12営業日の比較で、2026年は+7.59%、2025年は-1.43% 出所:日経平均終値と指数ベースPERからEPSを算出(原データ:Stockbrain/nikkei225jp.com) 決算集計:株探「決算速報」東証プライム 1,468社

図1:各年7/29直前の営業日を100として、8/14直前までの12営業日を重ねたもの。2026年は+7.59%、2024年は+2.37%、2025年は−1.43%でした。出所:日経平均終値と指数ベースPERからEPSを算出。

2026年の決算シーズン12営業日で、日経平均のEPSは2,795円から3,007円へ7.59%増えました。ちなみにEPSが3,000円台に乗ったのは初めてです。

一方で2025年の同じ12営業日は、1,996円から1,967円へ1.43%減っています。決算を通過して利益予想がむしろ削られた年でした。2024年は+2.37%ですから、今年の伸びは3年で突出していることになります。

また、形の違いも出ています。2025年は2営業日目に高値をつけたあと低下に転じ、そのまま100を回復せずに終えました。今年は12営業日ほぼ一本調子で切り上がっています。

業種別|非鉄70%、鉄鋼は両極、情報通信は失速

ここからが確報で初めて見えた部分です。8月4日時点では発表社数が少なく本文に載せられなかった業種が、確報では全社発表済みになりました。発表10社以上の業種を、上方修正率の高い順に並べます。

業種発表上方修正率下方修正率8/4時点の上方率
非鉄金属2070.0%5.0%75.0%(4社)
ゴム製品1050.0%0.0%
鉄鋼2045.0%20.0%33.3%(9社)
化学11235.7%2.7%32.6%
電気機器11833.1%1.7%35.7%
機械10732.7%1.9%38.1%
小売業10617.0%0.0%19.7%
食料品6013.3%10.0%10.3%
情報・通信業1509.3%4.0%16.7%

※発表10社未満の業種は除外し、上位と下位から9業種を抜き出しています。海運業は5社すべてが上方修正(100%)ですが、母数が小さいため参考値です。除いた業種では輸送用機器31.6%、卸売業25.9%、医薬品6.5%、電気・ガス0.0%でした。

目を引いたのは非鉄金属でした。20社すべてが発表を終えて、うち14社が上方修正です。前回は4社しか発表しておらず参考値として脚注に置いた業種でしたが、確報では全業種トップに立ちました。

そのうえで対照的なのが鉄鋼です。上方修正45.0%は上から3番目なのに、下方修正も20.0%と全業種で最も高い。つまり同じ業種のなかで明暗が分かれたわけで、こういう並び方をする業種はほかにありませんでした。

一方で失速したのが情報・通信業です。8月4日時点では60社発表で16.7%でしたが、確報では150社で9.3%まで落ちました。しかも下方修正6社は、食料品と並んで最多です。後半に発表した90社が、明らかに弱かったことになります。

なお前回「下方修正ゼロ」として注目した機械・電気機器・化学は、いずれもゼロが崩れました。ただし機械2社・電気機器2社・化学3社で、率にすると1.7〜2.7%です。全体の3.1%を下回っていますから、相対的な強さは保たれたと見ていいと思います。

増益か減益か|上方修正とは別の物差しで見る

ここまで上方修正の数を追ってきましたが、これは会社が自分で出した計画をどれだけ上回ったかを数えたものです。いわばサプライズの大きさで、前年と比べて利益が増えたかどうかとは別の話になります。

そこで同じ見出しから、今度は増益か減益かを拾い直しました。「4-6月期(1Q)経常は58%増益で着地」なら増益、「26%減益で着地」なら減益、という数え方です。

区分社数1,468社に対する比率
増益880社59.9%
減益328社22.3%
方向が読めない260社17.7%

※「方向が読めない」は、見出しが業績予想の修正だけを伝えていて前年比の水準に触れていないものです。「今期経常を13%上方修正」だけでは、前年比で増益なのか減益なのかが分かりません。260社のうち219社が上方修正の記事でした。

ですから方向が読める1,208社に絞ると、増益が72.8%、減益が27.2%です。上方修正21.3%と比べると、当然ながらこちらのほうがずっと高い比率になります。

業種別の増益・減益の内訳 東証プライム1,468社の1Q決算 発表を終えた各業種の企業を、決算見出しの文言から増益・減益・方向不明の3つに分けた100パーセント積み上げ帯グラフ。全体では増益880社、減益328社、方向不明260社で、方向が読める1,208社に対する増益の割合は72.8パーセント。増益の割合が高い順に、証券・商品94.7パーセント、銀行業90.2パーセント、非鉄金属90.0パーセント、建設業82.3パーセントと続く。一方で電気・ガスは増益27.3パーセントにとどまり、13業種で唯一、減益が増益を上回った。上方修正率と並べると順位が入れ替わる。証券・商品は増益94.7パーセントなのに上方修正はゼロ、銀行業も増益90.2パーセントに対し上方修正17.4パーセント。逆に鉄鋼は上方修正45.0パーセントと高いが増益は60.0パーセントにとどまり、下方修正も20.0パーセントと全業種で最も高い。下方修正率が10パーセントを超えたのは鉄鋼20.0パーセントと食料品10.0パーセントの2業種だけで、全体では3.1パーセント。方向不明は見出しが業績予想の修正だけを伝え、前年比の水準に触れていないもので、非鉄金属と鉄鋼では発表社数の半分を占める。 上方修正が多い業種と、増益が多い業種は違った 東証プライム1,468社の決算見出しを、増益・減益・方向不明に分類(2026年4〜6月期) 帯は発表社数に対する内訳。増益率は「方向が読めた社数」に対する割合で、右端に上方修正率と下方修正率を併記 増益 減益 方向不明 業種(発表社数) 増益・減益・方向不明の内訳 増益率 上方修正率 下方修正率 証券・商品 19社 94.7% 0.0% 0.0% 銀行業 69社 90.2% 17.4% 0.0% 非鉄金属 20社 90.0% 70.0% 5.0% 建設業 67社 82.3% 10.4% 3.0% 電気機器 118社 81.0% 33.1% 1.7% 機械 107社 76.6% 32.7% 1.9% 化学 112社 75.3% 35.7% 2.7% 卸売業 112社 74.2% 25.9% 0.9% 情報・通信業 150社 69.1% 9.3% 4.0% 小売業 106社 64.0% 17.0% 0.0% 食料品 60社 62.7% 13.3% 10.0% 鉄鋼 20社 60.0% 45.0% 20.0% 電気・ガス 22社 27.3% 0.0% 0.0% プライム全体 1468社 72.8% 21.3% 3.1% 証券は増益94.7%でも上方修正ゼロ。鉄鋼は上方45.0%・下方20.0%で水準は下位。電気・ガスは唯一の減益超え ※「方向不明」は見出しが業績予想の修正だけを伝え、前年比の水準に触れていないもの。非鉄金属と鉄鋼では発表社数の半分を占めます。 ※増益率の母数は「方向が読めた社数」、上方修正率の母数は「発表社数」で、両者は異なります。出所:株探「決算速報」の見出しを分類。

図3:発表を終えた企業を、決算見出しの文言から増益・減益・方向不明の3つに分けたもの。帯は発表社数に対する内訳で、増益率は「方向が読めた社数」に対する割合です。右端に上方修正率と下方修正率を併記しています。下方修正率が10%を超えたのは鉄鋼20.0%と食料品10.0%の2業種だけでした。出所:株探「決算速報」の見出しを分類。

並べてみると、2つの物差しで順位がまるで入れ替わりました。目についたのは3つです。

① 証券と銀行は、実力は強いのにサプライズがない

証券・商品は増益94.7%なのに上方修正がゼロでした。野村が+32%、松井が+95%、極東証券が2.5倍と好調なのですが、19社のうち1社も通期計画を引き上げていません。ちなみに銀行業も、増益90.2%に対して上方修正は17.4%です。

つまり保守的な計画を置いたまま、着実に稼いでいるという形になります。上方修正率だけを見ていたら、この2業種は下位に沈んで見えるところでした。なお建設業も増益82.3%に対し上方修正10.4%で、同じ性格です。

② 鉄鋼は逆。サプライズは大きいが水準は弱い

一方の鉄鋼は上方修正45.0%と全業種で3番目に高いのですが、増益率は60.0%で下から2番目でした。下方修正20.0%が全業種最高だったこととあわせて、会社計画からのブレは大きいものの、前年比の水準としては強くないということになります。

③ 電気・ガスは唯一、減益が増益を上回った

電気・ガスは22社で増益27.3%にとどまりました。東電HDが−89%、邦ガスが−52%、中部電が−36%と並びます。そして13業種のなかで、減益が増益を上回ったのはここだけです。

しかも上方修正も下方修正もゼロでした。会社計画どおりに減益、つまりサプライズなしで着実に悪い、という形です。上方修正率だけで見ていたら「0%だが下方修正もゼロだから中立」と読んでしまうところで、私はここがいちばん危なかったと思っています。

増益率と上方修正率は母数が違います。増益率は「方向が読めた社数」、上方修正率は「発表社数」が母数です。とくに非鉄金属と鉄鋼は方向不明が発表社数の半分を占めるため、増益率のほうは残り半分だけを見た数字になります。同じ土俵の比較ではない点にご注意ください。

PERのレンジ|帯が6,000円ぶん切り上がった

最後に、この決算が指数の水準にどう効いたかを見ておきます。6月の記事で私は、日経平均のPERはおおむね23〜26.5倍のレンジで動いていると書きました。当時のEPS2,769円で換算すると、63,700〜73,400円という帯になります。

この帯は6月に始まった話ではありません。2025年10月からの212営業日を並べると、日経平均は183日、割合にして86%を帯の中で過ごしています。上に抜けたのは4月27日の1日だけでした。

日経平均とPERレンジ帯(指数ベース23〜26.5倍) 2025年10月1日〜2026年8月14日 日経平均の終値に、指数ベースPER23倍と26.5倍を価格に換算した帯を重ねた図。2025年10月からの212営業日のうち183営業日、割合にして86パーセントで、日経平均は帯の内側に収まっていた。帯の上限を超えたのは2026年4月27日の1日だけ。帯はEPSの増加にともなって右肩上がりに切り上がり、2025年10月の45,040円から51,894円が、2026年8月14日には69,165円から79,690円になった。一方で日経平均は2026年7月28日から8月14日まで13営業日連続で帯の下限を下回っており、これはこの期間で最長。7月29日には61,434円、PER21.98倍まで下げた。株価が下がったからではなく、決算でEPSが増えたぶん帯が上に動いたためで、8月14日の終値68,714円に対し帯の下限は69,165円、PERは22.85倍だった。 10カ月ずっと帯の中。いまは決算で帯だけが上へ動いた 日経平均終値と、指数ベースPER23〜26.5倍を価格に換算した帯(2025/10/1〜2026/8/14・212営業日) レンジの23〜26.5倍は6/23の記事で確認した水準。帯はその日のEPSで日々引き直している 日経平均(終値) PER23〜26.5倍の帯 45,000 50,000 55,000 60,000 65,000 70,000 75,000 80,000 10月 11月 12月 26/1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 26.5倍 79,690 23倍 69,165 8/14終値 68,714 PER22.85倍 4/27 唯一の上抜け(26.51倍) 7/28から13営業日連続で帯の下 この期間で最長。7/29は61,434円・PER21.98倍 212営業日のうち183日(86%)が帯の中。上に抜けたのは4/27の1日だけです 帯そのものは、決算のたびに上へ動いています 時点 日経平均EPS PER23倍 PER26.5倍 2025/10/1 1,958円 45,040円 51,894円 2026/6/23 2,769円 63,700円 73,400円 2026/8/14 3,007円 69,165円 79,690円 出所:日経平均終値と指数ベースPER(原データ:Stockbrain/nikkei225jp.com) EPS=終値÷PER。四本値は用いず終値のみ

図2:日経平均の終値に、指数ベースPER23倍と26.5倍を価格に換算した帯を重ねたもの。2025年10月からの212営業日のうち183日(86%)が帯の中でした。帯はEPSが増えるたびに切り上がり、2025年10月の45,040〜51,894円が、8月14日には69,165〜79,690円になっています。出所:日経平均終値と指数ベースPER。四本値は用いず終値のみ。

ところが7月28日から8月14日まで、13営業日連続で帯の下限を下回っています。これはこの10カ月半で最長です。7月29日には61,434円、PERで21.98倍まで下げました。

そして今回の決算でEPSは3,007円まで増えました。同じ23〜26.5倍を当てはめると、帯は次のように移動します。

時点EPSPER23倍PER26.5倍
6月23日2,769円63,700円73,400円
8月14日3,007円69,165円79,690円

※PERは指数ベース。レンジの23〜26.5倍は6月23日の記事で確認した水準をそのまま使っています。

2カ月足らずで、帯ごと6,000円ぶん持ち上がりました。上限も下限も、株価が動いたからではなくEPSが増えたから切り上がっています。

7月29日の安値から8月14日までに11%戻していますが、同時に帯も上へ動いたため、株価は帯に追いついていません。

そして8月14日の終値68,714円は、この帯の下限69,165円をわずかに割っています。PERで見ると22.85倍で、レンジの下です。1年ぶりの高値圏にいながら、PERではこの1年で安いほうに位置しているという、ややねじれた状態になっています。

補足:8万円をEPSとPERだけで割ってみる

ここまで帯の話をしてきたので、ついでに割り算をしておきます。相場の予想ではなく、EPSとPERだけで機械的に計算するとどうなるかという話です。なお23〜26.5倍という帯は価格にすると15.2%の幅があるので、これで株価が説明できるというほどの精度ではありません。

PER現在のEPS3,007円での日経2022年以降での日数
25.0倍75,179円59日(5.2%)
25.5倍76,683円29日(2.6%)
26.0倍78,186円9日(0.8%)
26.5倍79,690円1日(0.1%)

※2022年以降の1,128営業日ベース。しかもこの59日はすべて2025年10月以降で、それ以前にPER25倍を超えた日はありません。

26.5倍は「よくある水準」ではなく、4年半で1日しか触れていない天井でした。しかもEPS3,007円に26.5倍をかけても79,690円で、8万円には310円届きません。8万円に必要なPERは26.60倍で、最高値26.51倍をわずかに上回ります。

ですからEPSが今のままなら、8万円は「レンジの上限まで買われた場合」ではなく「レンジの上限を更新した場合」になります。ただし同じ8万円を、EPSの側から見ると景色が変わります。

PER8万円に必要なEPS現在3,007円から
26.5倍(最高値圏)3,019円+0.4%
25.5倍3,137円+4.3%
24.5倍3,265円+8.6%
24.23倍(直近10カ月半の中央値)3,302円+9.8%

※直近10カ月半のPERは中央値24.23倍。帯の中での位置も中央値0.35(0が下限・1が上限)と、やや下寄りで推移してきました。

つまりPERを平凡な24.23倍に置いても、EPSが3,302円まで増えれば8万円に届きます。今回の決算シーズンだけでEPSは7.59%増えましたから、決算を2回通す幅ではあります。

同じ8万円でも、値段で買われて届くのと、利益が増えて届くのとでは必要な条件がまるで違います。ただしここで計算したのはEPSとPERの割り算だけです。PERの上限そのものが金利や為替で動く以上、26.5倍を天井として固定するのも危険だと思っています。

この集計の限界|見出しに書かれた分しか数えていない

いくつか断っておきたいことがあります。まず、この集計は見出しに「上方修正」と明記されたものだけを数えています。決算短信の本文で実質的に予想を引き上げていても、見出しが「◯%増益で着地」であれば含まれません。ですから21.3%は、実態よりやや低めに出ている可能性があります。

次に、7月1日から8月4日ぶんの見出しは前回集計をそのまま引き継ぎました。というのも、株探の一覧は2週間ほど経つと見出しが省略表示に変わり、数値部分が読めなくなるためです。8月5日以降の851本だけを今回新しく取得しています。

あわせて、EPSは指数ベースPERから逆算した値です。日経が公表する加重平均EPSとは定義が違いますが、比較した3年とも同じ定義でそろえています。

📝 個人的な見解
決算の中身は良かった。そして今年の株高は、期待が先行したものではなく利益が押し上げたものだった——この2点が今回の集計で確認できたと思っています

整理は3つです。

  • 21.1%が下がらなかったことを重く見ています。というのも、私は前回「比率は下がりやすい」と書いて外したからです。母数が2.2倍になっても維持されたということは、この21%台が偶然ではなく実力だったということになります。
  • 情報・通信業の失速が気になっています。150社という母数の大きい業種で、前半16.7%から後半9.3%まで落ちるのは小さくない変化です。ただ今回の材料では中身まで踏み込めませんので、業種指数の推移を見ながら追いかけるつもりです。
  • PERの帯は、下値の目安としては使えると思っています。幅は15.2%と広く、上限と下限をきれいに往復しているわけでもありません。ただ23倍を割ったあと20営業日後の株価が分かる8回は、いずれも上昇していました。もっとも同じ期間に日経は54%上げていますから、23倍が効いたのか地合いが良かったのかまでは分けられません。

ただし今回が過去8回と違うのは、株価が下がって23倍を割ったのではなく、EPSが増えて帯のほうが上がった点です。同じ「下限割れ」でも、中身は逆を向いています。

結論は「1Qは良い決算シーズンだった、ただし次にEPSが動くのは2Q決算まで待つことになる」です。

※本記事の集計は、株探「決算速報」(東証プライム)に2026年7月1日から8月14日までに掲載された見出し1,525本を、私が独自に分類・集計したものです。うち7月1日から8月4日ぶんは前回集計(8月4日公開)を引き継いでいます。業種区分は株探の33業種(東証の業種分類に準拠)を使用し、プライム構成銘柄数は同社の業種別一覧に基づく1,553社に、一覧に未収載だが決算速報に登場した1社を加えた1,554社としています。見出しの文言による分類のため、決算短信の本文で実質的に予想を修正しているケースは反映されていない場合があります。増益・減益の判定も見出しの文言によるもので、見出しが業績予想の修正だけを伝えている場合は「方向が読めない」として集計から除いています。日経平均EPSは終値÷指数ベースPERで算出した値で、日経公表の加重平均EPSとは定義が異なります。記載の数値は執筆時点のものです。本記事は情報整理・分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と裁量で行っていただくようお願いいたします。

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