日経-3.55%急落、ここからどう動く|PER・テクニカル・需給で点検 

本日2026年6月23日の日経平均は-3.55%(-2,565円)の大幅安となり、終値は69,788円とほぼ安値引けで取引を終えました。半導体・ハイテク株が主導した急落で、これだけ見ると「天井をつけたのでは」と身構えたくなる値動きです。ただ、テクニカル・バリュエーション・需給という複数のレンズを当ててみると、見え方はそれほど単純ではありませんでした。 この記事は「上がる/下がる」を当てに行くものではありません。今のデータが指しているいくつかの分岐(シナリオ)と、それぞれが現実になる条件を、私なりに整理してみます。
先に3行で
  1. 急落と言っても、日経はまだ25日線の +4.85% 上。「押し目で跳ね返す」定番パターンの水準にはまだ届いていません
  2. PERは約3カ月、おおむね23〜26.5倍のレンジ内。本日は25.2倍で、レンジの真ん中あたりに戻ってきました。
  3. 過熱シグナルも底値シグナルも点いていません。方向はまだ決め打ちできない地合いだと、私は見ています。

今日の急落 ―― 何が起きたか

まず事実の確認からです。日経平均は前日比-3.55%、TOPIXは-2.56%、新興のグロース250は-2.92%。値上がりした業種は33業種中わずか5つで、上昇銘柄比率も24%前後と、幅の広い下げでした。

日経平均
69,788
-3.55%
TOPIX
3,990
-2.56%
値上がり業種
5 / 33
幅広い下げ

主役は半導体・ハイテクでした。電気機器-4.70%、非鉄金属-5.26%、情報通信-4.28%と、上昇局面を引っ張ってきた群がそろって大きく崩れています。個別ではキオクシアが-15.10%、古河電工が-15.52%と、日経寄与度の高い銘柄ほど深く売られました。日経の下げ幅がTOPIXより大きかったのは、こうした値がさ・寄与度上位の銘柄に売りが集中したためと整理できます。

一方で、水産農林+1.10%、陸運+0.90%、海運+0.84%といった内需・ディフェンシブはむしろ逆行高でした。「全部が投げ売られた」のではなく、資金が値がさハイテクから内需へ退避した、という色合いです。ここは後の需給の話につながります。

PERで測る「実力値」 ―― レンジの真ん中に戻った

急落のときほど、私は値段そのものよりPER(株価収益率)を見るようにしています。「高いところから落ちた」のか「適正圏に戻っただけ」なのかで、意味がまったく変わるからです。

日経平均 指数ベースPER(倍)|2026/3/26〜6/23(大引け) 222324252627 上限 26.5倍下限 23倍本日 25.2倍3/264/155/15/156/16/156/23
日経平均の指数ベースPERの推移(2026/3/26〜6/23、大引け)。約3カ月、おおむね23〜26.5倍のレンジ内で推移しています。本日は25.2倍まで低下し、レンジの中央付近に戻りました。出所:指数ベースPER(自分で集計)。

約3カ月分を並べると、日経のPERはおおむね23〜26.5倍のレンジに収まっているのが見て取れます。6月22日に26.14倍とレンジ上限近くまで買われ、本日の下げで25.2倍へ。レンジのほぼ真ん中まで戻ってきた、という位置です。割安と呼べる水準ではありませんが、上限の過熱からは一歩引きました。

もう一段ほり下げると、6月の値動きの「中身」が見えてきます。この3カ月でEPS(1株あたり利益)は2,250円前後から2,769円へと着実に増えており、長い目で見れば上昇には業績の裏付けがありました。ただし6月の64,000円台から72,000円台への最終局面では、EPSはほぼ2,760円前後で横ばい。つまりこの直近の上げは、利益が伸びたからではなく、PERが23倍台から26倍台へ拡大した=市場が払ってもいいと考える”倍率”が上がった分だった、と読めます。

📌 読み方ナビ:PER拡大の上昇は何が弱点か

業績が伸びての上昇(EPS増)は土台が動くので崩れにくい一方、期待だけの上昇(PER拡大)は、その期待が揺らぐと素早く巻き戻ります。今日の下げは、6月に積み上がった”倍率”の一部が剥がれた動き、と捉えると腑に落ちます。EPSが当面横ばい圏なら、しばらくはPERのレンジ(23〜26.5倍)が値動きの天井・床の目安になりやすい、というのが私の見方です。

益回り(PERの逆数)は本日3.97%。日本国債10年利回りが2.66%前後ですから、株式の相対的な妙味が消えたわけではありません。バリュエーション一点で「もう高すぎる」とは言い切れない、というのが正直なところです。

テクニカルの現在地 ―― 25日線は、まだ遠い

ここが、私自身いちばん認識を改めた部分です。「素直に25日線まで押して跳ね返すパターン」を最初は思い浮かべていたのですが、チャートを当ててみると今日はまだ25日線の手前ですらないのでした。

日経平均 日足(直近38営業日)|25日線・PERレンジ帯(PER23〜26.5倍) 56,00060,00064,00068,00072,000PER26.5倍 73,400本日終値 69,78825日線 66,562PER23倍 63,700+4.85%4/305/155/296/126/23
日経平均の日足(直近38営業日)。オレンジが25日線、上下の破線帯がPER23〜26.5倍に相当する価格帯です。帯が右肩上がりなのは、4月末〜5月の決算発表でEPS(1株利益)が切り上がったため。株価はおおむねこの帯の中で推移してきました。本日終値69,788円は25日線(66,562円)まで+4.85%(約3,230円)の開きがあります。出所:日経四本値・指数ベースPERから自分で算出。

まず帯の見方から。図の上下の破線は、PER26.5倍・23倍を価格に換算した水準で、4月末〜5月の決算でEPSが切り上がったぶん、帯ごと右肩上がりに切り上がっています。株価はこの3カ月、おおむね帯の内側(PER23〜26.5倍)で動いてきました。今日の大陰線も、帯から飛び出したわけではありません。

チャートで見ると一目瞭然です。本日の大陰線でも、終値69,788円は25日線(66,562円)のはるか上にとどまっています。金額にして約3,230円、率にして+4.85%。短期の流れを示す5日線(70,870円)は割り込んだものの、中期トレンドの目安である25日線までは、まだ相応の距離がある、というのが現在地です。

6月上旬に、当時64,000円付近にあった25日線あたりで2度下げ止まって反発した実績は、チャート左寄りに確かに見えます。ただ、その後の上昇でオレンジの線は66,560円付近まで切り上がりました。「線まで押して跳ねる」シナリオが発動するには、ここからさらに下げる必要がある、という関係です。押し目買いを考えるなら、25日線と6月15日のスイング安値(66,783円)が重なる66,500〜66,800円の帯が一つの目安になります。

🧭
PERのレンジと25日線をつなげて見る 前章のPERレンジを価格に換算すると、本日のEPS(2,769円)基準でPER23倍 ≒ 63,700円、PER26.5倍 ≒ 73,400円。いまの25日線66,562円はPERにして約24倍で、レンジ下限(PER23倍=約63,700円)よりまだ上にあります。裏を返せば、25日線を下抜けて63,700円付近まで下げても、それは「いつものレンジ内」に収まる動き。25日線割れは決して珍しい事態ではなく、普通に起こり得る、と頭に置いておくのが健全だと思います。

もっとも、トレンドの形そのものは今日の段階では崩れていません。本日の安値69,788円は、直近のスイング安値(6/15の66,783円、6/11の62,336円)をいずれも割っていません。高値・安値を切り上げる上昇トレンドの構造は維持されており、ダウ理論の観点では今日の急落だけでトレンド転換とは言えない、というのが事実関係です。構造が崩れたと判断されやすいのは、66,500円付近を終値で明確に下回ったときだ、と整理しています。

需給の点検 ―― 信用・損益率・主体別を分けて見る

需給は強弱が入り混じっていて、いちばん面白いところです。「信用残」「信用評価損益率」「投資主体別」の3つに分けて、それぞれ箱で整理します。

① 信用残 ―― 売り残が急増、買い残は高止まり

6月19日時点で、信用の売り残が金額ベースで前週比+16.24%と急増しました。一方で買い残はほぼ高止まり(同+1.61%)で、信用倍率は7.29倍から6.37倍へ低下しています。売り残の増加は、ヘッジや戻り売りを狙った新規の売りが入った可能性を示します。

  • 追い風の面:増えた売り残は将来の買い戻し予備軍。相場が切り返すと踏み上げ(買い戻し)が上昇を加速させることがあります。
  • 向かい風の面:買い残は減っておらず高水準のまま。下げ局面では、この買い建ての投げ売りが上値の重しや下げ加速の要因になり得ます。
② 信用評価損益率 ―― まだ含み損は浅い

直近で値の出ている6月12日時点で-3.86%。年初来では4月初旬に-7%台まで悪化したあと、6月上旬には-0.68%とほぼ含み損が消える水準まで改善していました。つまり今はまだ含み損が浅い状態です。

水準の感覚を補足しておきます。この指標は通常の相場ではおおむね-4%〜-8%あたりで推移し、いわゆる「セリングクライマックス(総投げ)」とされる-15%〜-20%は、暴落級の下落でしか出ない稀な水準です。本日の-3.86%は通常レンジの中でもむしろ浅い(楽観寄りの)側。裏を返せば、ここから普通の調整が進むだけでも-8%前後までは深押しする余地があり、その程度では「総投げの底」とは言えない、ということです。

【後日の続報】この-3.86%は、その後プラスへ転換しましたここで「まだ浅い(楽観寄り)」と整理した信用評価損益率(6/12時点の-3.86%)は、次の週次更新(6/19基準)で+1.47%とプラスに転換しました。各種報道・集計によると約13年ぶりの珍しい動きです。詳しくは信用評価損益率が約13年ぶりにプラス転換した話で整理しています。
③ 投資主体別 ―― 海外勢の売りと、企業の買いの綱引き

海外投資家は3週連続の売り越しです(5/29、6/5、6/12の週)。しかも直近週(6/12時点)の売り越しが約5,000億円規模と、3週のなかで最大でした。日本株の主導役である海外勢が腰を入れて売ってきている、というのは見過ごせません。

ただ、それを買い支えている主体もいます。事業法人は同じ期間ずっと買い越し(自社株買いが中心とみられます)で、証券自己も直近週は大きく買い越し。「海外勢の売り」と「企業の買い」の綱引きが、ここまでの相場を支えてきた構図がデータから見て取れます。

⚠️
ここは要注意 投資主体別のデータは6月12日時点の週次までで、今日の急落を含む直近週はまだ反映されていません。海外勢が今週どう動いたかは、次の発表を待つ必要があります。数字の鮮度には注意してください。

ここからのシナリオ ―― 3つの分岐と、その条件

過熱の点検も加えておくと、騰落レシオは25日92.52・6日82.65でいずれも中立圏。過熱の目安125にも、底値の目安60にも達していません。過熱シグナルも底値シグナルも点いていない――これが今の地合いの素直な姿です。だからこそ、方向を一つに決め打ちせず、分岐で持っておきたいと考えています。以下は予想ではなく、「どの条件が満たされたら、どのシナリオに傾くか」の整理です。

A:押し目一巡 → 上昇再開

米半導体株が底堅さを保ち、66,500円の支持帯を試す前に下げ止まる展開。増えた信用売り残の買い戻し(踏み上げ)が加われば、戻りは速くなり得ます。

▶ 条件:米ハイテクの反発/出来高を伴った切り返し/VIXの低下。トレンド構造(安値切り上げ)の維持。
B:PERレンジ内のもみ合い

EPSが横ばいのまま、PER23〜26.5倍(約63,700〜73,400円)のレンジ内を行き来する展開。指数は方向感を欠き、資金は今日のように内需・ディフェンシブへ循環。足元でいちばん蓋然性を感じる姿です。

▶ 条件:新規の強材料・悪材料がともに乏しい/海外勢の売りと企業の買いが拮抗。
C:調整継続 → 水準訂正

海外勢の売りが加速し、買い残の投げを誘発。66,500円の支持帯を終値で割ると25日線割れ=トレンドの形が崩れ、PER下限の63,700円方向まで調整が長引く展開も。

▶ 条件:信用評価損益率が通常レンジ(-4〜-8%)を超えてさらに悪化/騰落レシオ25日の70割れ接近/支持帯の明確な下抜け。

私自身の「握力」の弱さ(早めに利確してしまう癖)を踏まえると、こういう局面はどのシナリオでも動けるよう、水準と条件だけ先に決めておくのが性に合っています。Aを取りに行くなら支持帯の手前での下げ止まり確認、Cに備えるなら支持帯割れでの撤退、という具合に、引き金を数字で決めておくイメージです。

まとめ ―― 急落をどう受け止めるか

今日の日経-3.55%は、数字のインパクトこそ大きいものの、レンズを変えて見ると「6月に膨らんだPERの一部が剥がれ、レンジの真ん中に戻った」動きとして整理できました。25日線まではまだ距離があり、トレンドの形も崩れておらず、過熱も底値シグナルも出ていない。同時に、25日線を割ってPER下限の63,700円方向まで下げても”レンジ内”であり、調整継続も普通にあり得る。つまりまだ何も確定していない、というのが私の結論です。

当面の注目材料としては、まず米マイクロン・テクノロジーの決算が控えています(日程はご自身でも最終確認を)。半導体が今日の急落の主役だっただけに、ここの内容次第で日本の半導体株、ひいては寄与度の高い日経が上下どちらにも大きく振られる可能性があります。仮に失望的な内容なら、半導体発の下押しが続くことも頭に置いておきたいところです。

季節性では、6月以降は積極的な買いが入りにくい「夏枯れ」が意識される時期でもあります。もっとも、この種の通説は時代や市場で効き方が変わります。日本の「夏に売る」戦略が実際どうだったかは、以前に検証記事でまとめました(「セルインメイは本当か?|日米35年検証」)。あわせて読むと、季節性をどの程度真に受けるべきかの距離感がつかめると思います。原油安によるインフレ抑制期待など追い風になり得る要素もありますが、地政学次第で前提が変わる点には留意が必要です。

急落の日こそ、値段に振り回されずデータで現在地を測る――今日はそれを実践してみました。明日以降は、66,500円の支持帯と米半導体の動向、そして次の投資主体別データを軸に、どのシナリオへ傾くかを見ていきたいと思います。

※本記事は2026年6月23日大引け時点で私が把握したデータをもとにした個人的な整理であり、特定の銘柄・指数の売買を推奨するものではありません。PER・EPS等のバリュエーション指標、移動平均線、信用残、投資主体別売買動向はいずれも基準日時点の数値で、短期間で変動します。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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