日経急落の現状確認|信用評価率・25日線で見る「下げ止まり」の条件

6月8日の日経平均は前週末比3.85%安と急落しました。きっかけは、週末の米雇用統計が予想を大きく上回ったこと。利下げ期待がしぼみ、米金利の上昇からハイテク株中心に売りが波及した流れです。6月3日の最高値からは、わずか3営業日で6.9%下げました。 ただ、チャートを開くと印象が変わります。日経は前回高値と25日線が重なる節目で、きれいに下げ止まっているんですよね。本物の押し目なのか、一服にすぎないのか。需給の数字とあわせて点検します。
この記事の3行まとめ
  1. 日経は3.85%安。米雇用統計ショックで全面安、最高値から3営業日で6.9%下げました。
  2. チャートは前回高値と25日線が重なる支持帯で下げ止まり。押し目としては健全な形に見えます。
  3. ただし信用買い残は高水準のまま、評価率も天井圏。需給の過熱は、まだ抜けきっていないように見えます。

何が起きたか

発端は、6月5日に出た米国の雇用統計です。雇用が強いのは本来いいニュースのはず。ところが、いまの相場では少し事情が違います。

  • 雇用統計が大幅上振れ:市場予想およそ8.9万人に対し、結果は17.2万人
  • 利下げ期待が後退:景気が強いと、FRB(米国の中央銀行)が利下げを急がない、という連想が働きます。
  • 米金利が上昇 → ハイテク売り:米半導体株のSOX指数は週末に10%超下落、ナスダックも4%超安。
  • 直前に最高値:日経は6月3日に史上最高値をつけたばかりで、反動が出やすいタイミングでした。

ですので今回の急落は、外部要因と過熱感が重なって出たもの、と読み取れます。

数値で見るインパクト

日経平均
64,024
-3.85%
TOPIX
3,852
-2.45%
グロース250
748
-2.27%
VIX(恐怖指数)
19.90
+4.22
米10年金利
4.576%
+11bp
指数PER
23.18倍
6/3は24.77

6月3日のザラ場高値68,786円からの下落率は6.9%(終値ベース)。VIXは19.90へ急騰し、米10年金利も4.576%まで上がりました。ドル円は160円台に乗せています。

「割高だったから下げた」は半分だけ正しい 指数ベースのPERは直近22〜26倍のレンジで、23.18倍は割高とは言いにくい水準です。とはいえ、PERが下がった背景には5月中旬の利益見通し(EPS)の切り上げがあります。「株価が安くなった」より「分母が増えた」面が大きいので、PER的に下値が固いとまでは言い切れない、という気がします。

国内市場の反応 ― 逃げた先と叩かれた先

中身を業種で見ると、二極化がはっきりしていました。私が重く見ているのは対TOPIX相対騰落。市場平均(TOPIX)と比べた強さを示す数字で、全面安の日でも“どこに資金が逃げたか”が見えてきます(単位はpt=ポイント、プラスなら平均より強い)。

逆行高(内需に逃避)
保険 +4.47pt食料品 +3.55pt小売 +3.50pt
急落(景気敏感・ハイテク)
非鉄金属 -4.40pt電気機器 -3.43ptガラス土石 -2.73pt

強かったのは保険・食料品・小売といった内需ディフェンシブ。逆に最も売られたのは非鉄金属で、半導体に近い電気機器も大きく下げました。景気敏感とハイテクを売って内需に逃げる、典型的なリスクオフのローテーションが起きた一日、という感じですね。市場の過熱・冷却を測る市場体温計でも、いちばん広く見るLayer1はマイナス5の「極寒」まで冷え込んでいます(市場体温計の読み方はこちら)。

▶ 対TOPIX相対騰落とは?

各業種の騰落率から市場平均(TOPIX)の騰落率を引いた数字です。全面安・全面高の日でも「相対的にどこが強かったか」が分かるので、資金の逃げ場や物色の中心をつかむのに向いています。詳しくは対TOPIX相対騰落の用語集で解説しています。

需給とテクニカルで「下げ止まり」を点検

ここがこの記事のいちばん見たかったところです。まずはチャートを見てください。

日経平均 日足ローソク足。前回高値と25日線が重なる支持帯で下げ止まり
日経平均の日足ローソク足と25日線(2026/4/22〜6/8)。ザラ場高値68,786円(6/3)から終値ベースで-6.9%。前回高値と25日線が重なる約63,300〜63,600円の支持帯で下げ止まった。

今日の安値は63,406円、終値は64,024円。下ヒゲを引いて切り返しました。注目はこの安値の水準です。

2つの節目が重なる支持帯で止まった ・25日線 ≒ 63,574円(過去25日の終値平均。中期の勢いの目安)
・前回高値 ≒ 63,300円(5月に何度かはね返された水準)
この2つが重なる63,300〜63,600円に、今日の安値がぴたりと届いて止まりました。チャートの形だけ見れば、上昇トレンド中の押し目として健全な下げ方に見えます。

短期は売られすぎ、でも中期はまだ。 過熱具合を測る騰落レシオ(値上がり数÷値下がり数。100超で買われすぎ、未満で売られすぎの目安)は、25日ベースが92.67で中立。一方、短い6日ベースは76.22まで下がり「過冷」ゾーンに入りました。短期では売られすぎでも、中期ではまだ底を示すほどではない、という位置です。

ところが、信用取引の数字を見ると、もう少し気になる景色が出てきます。

  • 信用買い残:約6.39兆円 ― お金や株を借りて買っている残高。数か月でいちばんの高水準で、5週間で13.7%も積み上がりました。
  • 信用倍率:7.08倍 ― 買い方が売り方の何倍か。ふだんは5〜6倍なので、かなり買いに偏っています。
  • 信用評価率:-0.36% ― 信用で買っている人の含み損益の平均です。普段は-5〜-10%あたりで動き、-3%に近づくと「天井圏」とされます。今回の-0.36%は、その天井ラインのさらに上。ほぼ含み損ゼロという、めったに出ない過熱(ほぼ異常値)の水準です。
信用評価率 -0.36% は「天井圏の異常値」 信用評価率は普段マイナス圏で動き、平時はだいたい-5〜-10%0%に近づくほど過熱(天井)、-15〜-20%まで沈むと底とされます。今回の-0.36%は天井ゾーンのさらに上端で、ほとんど含み損を抱えていない=買い方が極端に強気という、めったに見ない水準なんですよね。
ここが最重要 ― この数字は「急落の前」のもの 信用残は週1回しか更新されないため、上の数字はすべて5月29日時点=今回の急落より前です。6月8日の3.85%安も、高値からの6.4%下げも、まだ反映されていません。
買い方は高値圏でパンパンに積み上がったまま、含み損もほとんど抱えずにこの急落を迎えました。本当に底値が近いときは評価率がマイナス15〜20%まで沈み、投げ売りが一巡しているもの。いまはその真逆です。ですので積み上がった買い残は、反発の燃料というより下げが続いたときに出てくる「売り圧力の在庫」に近い、と私は見ています。
もう一つの注目点 ― 海外投資家が「買い」から「売り」へ 4月からずっと続いていた海外投資家の買い越しが、5月最終週に初めて売り越しへ転換しました。規模そのものは小さく、四半期末のリバランスの範囲かもしれません。とはいえ、急落の直前の週に、長く続いた買いの流れが途切れたという事実は、私としては軽く見たくないところです。日本株を支えてきた最大の買い手の手が止まったサインなのか、一時的な調整なのか。ここは続けて確認したいと思います。

二段下げか、自律反発か

テクニカルと需給で、見えてくる方向が逆を向いています。この綱引きを2つのシナリオに整理します。

強気:健全な押し目

25日線(約63,574円)と前回高値(約63,300円)の支持帯を守れれば、上昇トレンド中の押し目として素直に反発しやすい形です。米経済そのものは雇用統計が示すとおり強く、ここから崩れ続ける展開は考えにくいように思います。

弱気:信用整理の二段下げ

逆に63,300〜63,574円を明確に割り込むと、高水準の信用買い残の整理(追証・ロスカット)が出やすく、下げ足が速くなる余地があります。チャートのきれいさが見せる以上に、下にもろい可能性は意識しておきたいところです。

当面の日程も上値を重くしそう 6月10日(水)に米CPI、12日(金)にメジャーSQ。どちらも相場が振れやすいイベントなので、通過するまでは方向感が出にくい、といったところでしょうか。

まとめ

今日の日経は、外部ショックで大きく下げながらも、前回高値と25日線が重なる支持帯でいったん下げ止まりました。チャートの形は「健全な押し目」で、米経済の強さも踏まえると、総崩れのシナリオは中心には置きにくいと感じます。

分岐点は、この支持帯を守れるか 63,300〜63,600円を守れる限りは押し目、割れたら信用整理の二段下げ、という綱引きです。気になるのは、信用の過熱がまだ数字に反映されていないこと。次回の信用残データで評価率がどこまで沈むかを見れば、過熱が抜けたのかどうかが分かってきます。

当日のマーケット全体の動きは日次レポートでも詳しく扱っています。

※本記事は個人的な相場観の整理であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。記載した数値は作成時点のもので、正確性を保証するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。

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