フジクラ一転上方修正でPTS S高|5月にS安を招いた通期予想を増額
ここで思い出したいのが、わずか1か月前の出来事です。フジクラは5月14日に決算でストップ安、5月19日には新中期経営計画を受けて−16.95%と、立て続けに大きく売られました。その引き金のひとつが「弱いと受け止められた通期予想」だったんですよね。今回はその予想を、会社自身が大きく書き換えてきた格好になります。
- 6/18引け後に通期・中間を上方修正。通期は営業利益+46.9%・経常+45.0%、中間期は営業利益+89.1%とほぼ倍増。PTSはストップ高水準に張り付き
- 増額後の通期予想は、5月のS安・中計ショックの起点になった「弱い予想」を上回るだけでなく、新中計の27年度計画やアナリスト予想も超える水準
- 修正理由は光コンポーネントの受注・売価アップと、5月に下振れ要因とされた水素不足影響の緩和。下期も継続見込み
「弱い予想で二度売られた銘柄が、その予想を自ら増額した」という珍しい展開を、速報として整理していきます。
引け後に出た、通期・中間の同時上方修正
今回の開示は、6月18日の大引け後でした。当日の現物はというと、前日比−5.67%・終値4,461円と、むしろ安値引けで終えていたんですよね。直近は6月12日からの数営業日で1割超戻していたので、その反動の押し目という見え方だったところに、引け後の上方修正が出てきた形です。
発表されたのは、2027年3月期の中間期と通期、両方の予想引き上げです。とくに目を引くのが時間軸で、第1四半期の決算発表を待たずに修正が出てきたところがあります。会社としては、それだけ早い段階で上振れの確度が高まったということなのだろうと思います。そして発表後、時間外のPTSでは買いが集中し、ストップ高水準に張り付きました。売買代金も大きく膨らんでいます。
数値で見るインパクト
まず通期(2027年3月期)から見ていきます。営業利益は前回予想2,110億円から3,100億円へ、率にして+46.9%。経常利益は2,180億円から3,160億円へ+45.0%。純利益は1,560億円から2,290億円へ+46.8%で、1株当たり利益(EPS)は94.22円から138.31円に切り上がります。
さらにインパクトが大きいのが中間期(上期)です。営業利益は920億円から1,740億円へ、+89.1%。ほぼ倍増の水準です。ここで気づくのが、上期だけの営業利益1,740億円が、前回の通期予想2,110億円の8割超に達してしまうという点なんですよね。上期で1年分の利益の大半を稼ぐ計算になり、いかに前回予想が保守的だったかが浮かび上がります。
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,430億円 | 1兆4,620億円 | +17.6% |
| 営業利益 | 2,110億円 | 3,100億円 | +46.9% |
| 経常利益 | 2,180億円 | 3,160億円 | +45.0% |
| 純利益 | 1,560億円 | 2,290億円 | +46.8% |
| EPS | 94.22円 | 138.31円 | +46.8% |
| 項目 | 前回予想 | 今回予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,940億円 | 7,780億円 | +31.0% |
| 営業利益 | 920億円 | 1,740億円 | +89.1% |
| 経常利益 | 950億円 | 1,770億円 | +86.3% |
| 純利益 | 670億円 | 1,280億円 | +91.0% |
図1で並べたように、今回の修正後の通期営業利益3,100億円は、5月14日時点の会社予想2,110億円を大きく上回るのはもちろん、後で触れる新中計の27年度計画(2,690億円)や、当時のアナリスト予想(約2,636億円)すら超える水準になっています。
5月にS安を招いた予想が、一転して増額された
ここが今回いちばん面白いところだと思うんですよね。少し時計を戻します。
5月14日、フジクラは前期(2026年3月期)に最終利益+72.5%という絶好調の決算を出しながら、ストップ安で引けました。売りの中心になったのは、新たに示した2027年3月期の会社予想が市場予想を大きく下回ったことです。続く5月19日には、3年後に売上1.6兆円を掲げる強気の新中期経営計画(本ブログでは「28中計」と表記)を発表したものの、投資家の期待がそれをさらに上回っていたため、−16.95%の急落となりました。いずれも「業績が悪い」のではなく、会社の見通しが投資家の期待に届かなかった、いわゆる期待値リセットの動きでした。
そして今回の修正は、その「届かなかった予想」を会社自身が引き上げてきたことになります。図2のように、5月の2回の急落と今回の上方修正は、同じ通期予想をめぐって正反対の方向に作用した格好です。
もうひとつ見逃せないのが、修正理由に「水素不足影響の緩和」が挙がっている点です。5月のS安を解説した記事では、光ケーブル増産にともなう水素調達リスクを、下振れ要因のひとつとして触れていました。そのリスクが緩和方向に向かったと会社が明言したわけで、当時の下振れ材料がひとつ薄れた格好です。修正理由のもう一本柱である、ハイパースケーラー向け光コンポーネントの受注と売価アップも、AIインフラ需要をそのまま映した内容です。
一方で、これだけ短期間での大幅増額は、別の声も生んでいるようです。「では5月のあの保守的な予想は何だったのか」という疑問です。たしかに、わずか1か月で通期営業利益の見立てが約47%も変わるのは、予想の精度という観点では落ち着かないところがあります。強気派にとっては待望の増額ですが、5月に予想を信じて手放した投資家から見れば複雑な展開で、ここは評価が分かれる修正なのかなと思います。
国内市場・関連株の反応
当日の現物は上方修正の前に取引を終えているので、本格的な反応が出るのは翌営業日の寄り付き以降になります。ですので現時点で確認できるのは、時間外のPTSでストップ高水準に買われていることと、米国でも光ファイバ大手のコーニングが時間外で買われていることくらいです。方向を言い切るのは控えますが、需給の初動としては強い反応が出ている、とは言えそうです。
業種の目線で見ておきたいのが、フジクラが属する非鉄金属業種です。5月14日と5月19日は、フジクラの大幅安が効いて非鉄金属が東証33業種の下位に沈んでいました。とすると、今回の上方修正で同じ業種がどちらに振れるかは、翌日の業種別データで確認したいところです。むしろ同業の住友電工や古河電工も、5月は連れ安していました。電線3社がそろってAI関連の物色対象として見直されるのか、翌営業日の動きが手がかりになります。
翌日以降に意識したいシナリオ
今回のサプライズの大きさと、戻り待ちの売りという需給の重さ。このどちらが上回るかが、当面の焦点になります。ですので、2つのシナリオに分けて整理しておきたいと思います。
増額された通期予想が中計計画もアナリスト予想も上回り、しかも上期偏重で着地の確度が高そうなことから、業績面の追い風は本物という整理になります。加えて、修正後EPSが138.31円へ切り上がったぶん、株価のPER(株価収益率)も機械的には低下するため、5月の急落で意識された割高感はいくらか和らぐ方向です。サプライズが素直に評価されれば、戻りを試す展開も考えられます。
一方で、当日の現物が修正前に安値引けしていたこと、5月に二度の急落を経て戻り待ちの売りがたまっていそうなこと、そして先ほどの「コンサバ予想への不信」が一部に残る可能性は気がかりです。つまり、好材料は出たものの、上値では戻り売りに上昇が抑えられる、という展開も否定はできません。
- 新予想を受けたアナリスト目標株価の改定
- 27年度コンセンサス(市場予想の平均)の上方修正幅
- 第1四半期決算での進捗
- 住友電工・古河電工など同業のトーン
これらが出そろうにつれて、今回のサプライズがどこまで株価に定着するかが見えてくる局面だと思います。
- 1通期営業利益は前回予想比+46.9%・経常+45.0%の大幅増額で、中間期は+89.1%とほぼ倍増。
- 2増額後の水準は新中計の27年度計画やアナリスト予想も上回り、5月のS安・中計ショックの起点だった予想が逆方向に動いた格好。
- 3修正理由には、5月に下振れ要因とされた水素不足影響の緩和と、ハイパースケーラー向け光コンポーネントの受注・売価アップが並ぶ。
ただし、わずか1か月での約47%の増額は「では5月の予想は何だったのか」という疑問も残し、評価が割れる修正でもあります。短期はアナリストの目標株価改定、中期はAIデータセンタ需要の持続性が、このサプライズの定着を測る物差しになりそうです。









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