日経平均の定期入れ替え|10月から変わる選び方と、もう一つの変更
先日、TOPIXで初めての定期入れ替えについて整理しました。同じ「入れ替え」でも、TOPIXと日経平均では仕組みがまるで違います。TOPIXが2年半かけてウエートを下げていくのに対し、日経平均は実施日に一発で入れ替わります。だから「誰が入って誰が出るか」の重みは、こちらのほうがずっと大きいんですよね。
ただ、今回の改定は「情報通信が新しくできる」だけの話ではありません。資料を開くと動いている業種は3か所あって、狙いは技術セクターの「5割超」をならすことだったと分かります。それに、いちばん気になるのは「で、これで日経平均は動くの?」というところだと思います。本記事では変わる中身と選ばれ方の順番、過去11回の入れ替えで採用・除外銘柄が実際どう動いたか、そして指数そのものへの影響はどれくらいかまでを、23の疑問で整理していきます。
- 10月1日から選定基準が変わり、セクターが6→7に。判定に使う7月末の基準日はすでに通過し、結果は例年なら9月上旬に発表
- 動く業種は3か所。通信4社とサービスのIT関連10社が「情報通信」へ、医薬品9社が「技術」から「消費」へ。技術セクターは55.67%→43.24%に縮む
- 過去11回・37銘柄の実測では、採用銘柄は発表翌日の寄り付きが高値。そこから20営業日後まで中央値−6.29%と、日経平均に負け続けていた
- ただし直すのはセクターの偏りだけ。時価総額トップのトヨタが0.80%、5位のアドバンテストが12.19%という1銘柄あたりの集中には、今回も手がついていない
「そもそも入れ替えって何?」から始めて、疑問が浮かぶ順番のまま、23問で解いていきましょう。
まず「日経平均の入れ替え」の基礎から
相場が大きく動くという話ではありません。2026年10月1日から、日経平均の銘柄の選び方のルールが変わります。それに合わせて、いつもどおりの定期的な銘柄の入れ替えもあります。
判定に使う「基準日」は7月末で、こちらはすでに過ぎています。どの銘柄が入って、どの銘柄が抜けるのか。その発表は、例年どおりなら9月上旬です。
そもそも日経平均に「定期的な入れ替え」があること自体、あまり知られていないところがあります。まずはそこから見ていきます。
年に2回、4月の第1営業日と10月の第1営業日に、構成銘柄を入れ替える仕組みです。判定に使う基準日は、それぞれ1月末と7月末。1回に入れ替えられるのは最大3銘柄までと決まっています。
ここは間違えやすいところなのですが、日経平均の定期見直しは「年1回・秋だけ」ではありません。2022年9月の改定で年2回になりました。日経の公式サイトの「よくあるご質問」には、いまも「毎年1回、秋に実施します」という古い記述が残っているので、そちらを見て年1回だと思っている方も多そうです。
発表の時期については、実はルール上の決まりがありません。同じ「よくあるご質問」に「ルールにより決められた発表日はありません。原則として10月初の入れ替え実施に対して、9月上旬をメドに発表することが多い」と書かれているだけです。実際のリリース日は2019年9月4日、2021年9月6日、2022年9月5日、2023年9月4日、2024年9月4日、2025年9月8日。春の回は2025年・2026年とも3月5日でした。おおむね月初の第1週に集まっている、という感じですね。
ちなみに2011年のように企業再編が重なった年は、8月上旬に前倒しされた例もあると説明されています。日付を断定できる性質のものではない、と思っておくのが安全です。
別物です。いちばん大きな違いは、指数の作り方そのものにあります。TOPIXは時価総額加重——会社の大きさで重みが決まる指数で、外れる銘柄も四半期ごと8回に分けて2年半かけてウエートを下げていきます。
対して日経平均は株価平均——1株の値段を足して割る指数で、入れ替えは実施日に一発で完了します。段階的な移行期間はありません。
| TOPIX | 日経平均 | |
|---|---|---|
| 指数の作り方 | 時価総額加重 | 株価平均 |
| 定期見直し | 年1回(10月) | 年2回(4月・10月) |
| 基準日 | 8月末 | 1月末・7月末 |
| 外れ方 | 8回に分けて2年半 | 実施日に一発 |
| 1回の入れ替え数 | 制限なし | 最大3銘柄 |
TOPIX側の仕組みはTOPIX初の定期入れ替えにまとめています。一発で入れ替わるぶん、日経平均では「誰が入って誰が出るか」がそのまま効いてくる。その選び方が、10月から変わります。
銘柄を選ぶルールとして変わるのは2つです。ひとつは、産業を分ける「セクター」を6つから7つに増やして「情報通信」を新設すること。もうひとつは、「同一セクター内での採用・除外」という手順を新しく追加すること。選定基準と算出要領の変更履歴にも、この2項目しか載っていません。
ただ、それとは別にどの業種がどのセクターに入るかの割り当てが、3か所動きます。ここが今回いちばん見落とされているところで、日経が本当にやりたかったのはむしろこちらに見えます。
いずれも「セクター」が絡む話です。ただ、そのセクターが選定のどこで使われているのかが分からないと、変更の意味も見えてきません。
225銘柄はどう選ばれているのか
4つの手順で決まります。
- ①流動性を測る:過去5年の売買代金と、過去5年の売買代金当たりの価格変動率(高値÷安値÷売買代金)の2つで測り、東証プライム上場銘柄のうち上位450銘柄を「高流動性銘柄群」とします
- ②絶対除外・絶対採用:450位から外れた採用銘柄(451位以下)は除外。上位75位以内の未採用銘柄は採用
- ③セクターの過不足を調整:450銘柄をセクターに分け、多すぎるセクターから外し、足りないセクターに足す
- ④同一セクター内での入れ替え:今回新設された手順
採用225に対して母集団が450。ちょうど2倍という関係になっています。今回いじられたのは、この③と④です。
産業の偏りを防ぐための仕組みです。流動性だけで選ぶと、たまたま売買が活発な業種ばかりが増えてしまう。それを避けるために、450銘柄をセクターに分けて、各セクターに属する銘柄数の半分を、そのセクターの「妥当な採用数」とします。
そのうえで、実際の採用数が妥当数より多いセクターからは流動性の低い順に外し、少ないセクターには流動性の高い順に足す。日経平均が「日本の産業構造をひととおり映す指数」であろうとしているのは、この手順があるからなんですよね。
なお、ここでいうセクターは東証の33業種とは別物です。
「技術」から通信が抜けて、独立したセクターになります。業種の名前も「通信」から「情報通信」に変わり、業種別日経平均株価の指数名もあわせて改称されます。
ただ、中身は通信会社だけではありません。日経は同時に「サービス」に入っていたIT関連銘柄を「情報通信」へ移すとしています。基準日時点の構成銘柄でいうと、移ってくるのはこの10社です。
- ディー・エヌ・エー、ネクソン、SHIFT、野村総合研究所、メルカリ、LINEヤフー、トレンドマイクロ、任天堂、東宝、コナミグループ
もともと通信にいたNTT・KDDI・ソフトバンク・ソフトバンクグループの4社と合わせて、情報通信セクターは14社・ウエート11.26%でスタートすることになります。任天堂やコナミ、東宝まで入るので、「通信」というより「デジタル関連をまとめた枠」に近いですね。
なぜ独立させたのか。理由は日経自身が書いています。指数のルールを変えるときは、事前にコンサルテーション——「こう変えようと思うが、どうか」と市場参加者に意見を募る手続きで、いわばパブリックコメントの指数版です——を実施することになっているからです。日経平均は投資信託やETFのベンチマークでもあるので、中身が急に変わると運用する側が困る。だから先に告知して、意見を聞くわけですね。今回は2026年5月18日から6月15日まで募集し、7月9日に結果が公表されました。寄せられた意見は「証券・金融関係」「自営業・個人・その他」といった属性つきで公開されます。
その提案文書には、こう書かれていました。「サービスに属していた銘柄の一部を通信に移す影響で、技術セクターのウエートも上昇することになります。そのままでは技術セクターのセクターサイズが過大となるため、工業技術と情報通信技術を分け、後者を新設セクターとして独立させます」。
そしてもう一か所、同じ資料には技術セクターから出ていく業種が書かれています。
医薬品が「技術」から「消費」へ移ります。武田薬品、第一三共、中外製薬、アステラス、エーザイ、塩野義、大塚HD、住友ファーマ、協和キリンの9社です。
これで技術セクターは「医薬品・電気機器・自動車・精密機器・通信」の5業種から、「電気機器・自動車・精密機器」の3業種だけになります。基準日時点で数えると、61社・55.67%から48社・43.24%へ。消費のほうは、IT関連10社が抜けて医薬品9社が入るので40社・21.89%になります。
理由も、同じ提案文書に明記されていました。「現状の日経平均の『技術』セクターは5割を超えています。医薬品の所属セクター変更によってセクターウエートの偏りが改善され、より適切に実態を表すことができると判断しました」。あわせて「食品メーカーが医薬品事業を手掛けるケースがある一方、医薬品メーカーの健康食品事業への参入が相次ぐなど、食品業種との近接性が高まっている面もあります」とも書かれています。
報道は「情報通信セクターの新設」を中心に伝えていますが、資料を開くと変更は3か所あって、狙いは技術セクターの5割超をならすことだったと分かります。ちなみに外食関連も「サービス」から「小売業」へ移りますが、どちらも消費セクターの中なのでセクターは変わりません。
ここは慎重に見ておきたいところです。妥当数は「450銘柄のうちそのセクターに属する銘柄数の半分」で決まります。業種が移れば、採用されている数だけでなく、妥当数のほうも同時に変わるからです。
参考になるのは直近の実例です。2026年4月の定期見直しでは、除外された2社(ジーエス・ユアサ、カシオ計算機)がどちらも技術セクターで、理由は「セクター間の銘柄過不足調整」と説明されていました。一方で採用されたパン・パシフィックHDは消費セクターで、こちらも過不足調整。つまり技術は多すぎ、消費は足りないという状態だったわけです。
今回の組み替えは、その偏りを直しにいく方向を向いています。ただ、10月の入れ替えでどのセクターが過不足になるかは別の話です。妥当数を決めるのは450銘柄の中の分布で、そのリストは公表されていません。医薬品やIT関連が450の中に何社あるかで、過不足の出方は変わります。だから「10月も技術から出る」とは言い切れないところです。
セクターごとの過不足を直したあとに、もう一段だけ入れ替えを行う手順です。7つのセクターそれぞれについて、「採用されている中で流動性順位がいちばん低い銘柄」と「未採用の中でいちばん高い銘柄」の順位差を計算します。
そして、その差がいちばん大きかったセクターで、その2銘柄を入れ替える。「ずっと採用されているけれど、実は下位に沈んでいる銘柄」と「未採用だけれど、ずっと上位にいる銘柄」を、1組だけ交換するイメージですね。
この手順の条文には、発動する条件も、順位差の下限も書かれていません。
条文だけを読むかぎり、そう読めます。従来は「見直しの結果、入れ替えの生じない年もあります」と公式に説明されていました。そこが変わる可能性がある、ということです。
実際、この改定案に対するコンサルテーションでは、証券・金融関係からこんな意見が出ています。
- 「本見直しにより銘柄入替が恒常的に発生する可能性がある点について、指数の安定性や長期的な投資指標としての特性への影響を注視すべき」
- 「入替に伴う市場需給の偏りやコスト増加が懸念されるため、①入替ルールおよび基準の一層の透明化、②入替候補銘柄や想定変更内容の早期開示による予見可能性の向上、③必要に応じた段階的な入替についても対応を検討してほしい」
ただし入れ替えの上限は3銘柄のままですし、最終的な採用・除外は学識経験者などの意見を得たうえで日経が判断すると定められています。機械的に必ず毎回1組動く、と決まっているわけではない点は押さえておきたいところです。
1株の値段が、そのまま重みになる
日経平均に連動する投資信託やETFは、指数と同じ中身を持つ必要があります。ですから採用が決まった銘柄は買わなければならず、除外が決まった銘柄は売らなければならない。しかも値段を見ずに、決められた日に売買することになります。
そのタイミングは実施日ではありません。10月1日の算出から新しい顔ぶれになるということは、その前営業日である9月30日の終値の時点で、すでに新しい中身を持っている必要がある。だから売買は実施日の前営業日の大引けに集中します。
もっとも、日経平均は株価平均の指数なので、どの銘柄がどれだけ効くかは会社の大きさでは決まりません。
1株の値段が高い銘柄ほど、指数への影響が大きくなります。時価総額が10兆円でも株価が1,000円の会社より、時価総額1兆円で株価が2万円の会社のほうが効いてしまう。素直に足し算するとそうなります。
これを調整するのが株価換算係数です。採用時は原則1ですが、基準日時点の株価が構成銘柄の採用株価合計の1%を超える場合は、0.1〜0.9の値が設定されます。2026年4月に採用されたキオクシアが0.7、パン・パシフィックHDが1だったのは、この基準によるものです。
株式分割や併合があったときも、この係数で調整します。たとえばフジクラは1対6の分割にあわせて係数が1から6に、川崎重工は1対5の分割で0.1から0.5に変わりました。分割で株価が6分の1になっても、指数に使う採用株価は変わらない仕組みですね。
それでも、1銘柄の影響が大きくなりすぎることがあります。
あります。1銘柄のウエートが「キャップ水準」を超えると、一時的に引き下げられる仕組みです。水準は導入時(2022年10月の定期見直し)が12%、2023年10月から11%、2024年10月以降は10%と、段階的に下げられてきました。
判定するのは定期見直しの基準日時点のウエートで、適用はその定期見直しの実施日から。超過するとキャップ調整比率0.9が設定され、すでに設定されている銘柄はさらに0.1下げられます。逆にウエートが5%を下回れば0.1ずつ戻され、1に戻ると設定が解除されます。
そして今年10月の分については、実はもう発表されています。
一部は決まっています。2026年7月31日——まさに基準日の日付で、こんなリリースが出ました。
アドバンテスト(6857)が基準日時点でキャップ水準10%を超えたため、10月1日からキャップ調整比率を0.9→0.8に変更するというものです。キャップ調整済み株価換算係数は7.2から6.4へ下がります。
同社は2026年4月にも8から7.2へ下げたばかりで、2回連続の引き下げになります。基準日時点のウエートを実際に見てみると12.19%。すでに一度キャップをかけた状態で、それでもまだ12%を超えていたわけです。
参考までに、基準日時点の上位はアドバンテスト12.19%、ファーストリテイリング9.77%、東京エレクトロン8.67%、ソフトバンクグループ6.58%。上位3社で3割を超えます。半導体関連の一極集中が、指数の作り方の側からも押し戻されている格好ですね。
ここまでが仕組みの話です。では実際、採用や除外が決まった銘柄は、これまでどう動いてきたのでしょうか。
過去11回、採用・除外銘柄は実際どう動いたか
上がります。ただし、上がるのは発表翌日の寄り付きだけでした。
2017年から2026年までの定期見直し11回、採用19銘柄・除外18銘柄について、日経平均の同期間リターンを差し引いた超過リターンを計算してみました。採用銘柄は19件中17件が窓を開けて始まり、前日終値比で平均+2.74%。発表は取引終了後に出るので、最初に値段がつくのが翌日の寄りになります。
問題は、その寄り値で買えたとして、そこから先どうなるかです。
数字を見るかぎり、間に合っていません。発表翌日の寄り値を起点にすると、そこから先の4区間すべてで中央値がマイナスでした。寄り付きから引けにかけて−1.14%、実施前日まで−0.88%、実施日まで−4.04%、実施の20営業日後までで−6.29%。20営業日後まで追うと、19件中14件がマイナスです。
ひとつ注意があります。区間を1本ずつ切り出すと、件数が少ないぶんノイズに沈んでしまいます(たとえば「翌日の引け→実施前日の引け」だけを見ると19件中11件がマイナスで、ほぼコイン投げ)。下がり方は、積み上げてはじめて見えてくる種類のものです。
なお平均で見ると−2.84%とマイナス幅が小さく出ますが、これは2026年4月に採用されたキオクシアが+61.97%と大きく上げたためです。上げの理由はAIメモリ相場で、指数採用とは関係がありません。同社を除くと18件中14件がマイナス、中央値−6.37%になります。
それが逆なんですよね。除外銘柄も発表翌日は窓を開けて下げます(平均−3.94%)。ただ、その寄り値が底になっていました。
寄り値から実施日の引けまでを見ると、18件中16件がプラスで、中央値+5.78%。発表翌日のザラ場だけを取っても18件中13件がプラスです。除外が決まったからといって売り込むのは、少なくとも実施日までの区間では逆を向いていた、ということになります。
では、除外銘柄が本当に売られるのはいつなのか。
指数から抜けたあとです。実施日の引けから20営業日後までを見ると、18件中15件がマイナスで平均−5.70%。寄り値からの累積で見ると中央値+0.28%まで戻っていて、いったん上げた分をそっくり吐き出す形になります。
この2つを並べると、こう言えそうです。採用は片道の下り坂、除外は往復。採用銘柄は発表翌日の寄りが高値でそこから戻らず、除外銘柄は発表翌日の寄りが底で、実施日まで戻して、抜けたあとにまた沈む。
指数から外れること自体が売り材料というより、「指数に入っていたから持たれていた分」が時間をかけて剥がれていく過程、と読むほうが近いのかなと思います。
ついでにもう一つ。パッシブが実際に売買する実施前日そのものは、ほとんど動いていません。超過リターンは採用銘柄が+0.48%、除外銘柄が+0.49%。発表から実施まで15日前後あるあいだに需給が消化されてしまい、売買が出る日には値段がもう動かないのだと思います。ちなみに2020年10月1日は東証のシステム障害で終日売買が成立せず、定期見直しの実施日に取引が無かった唯一の回になりました。
ここまでは、入れ替えの対象になった銘柄の話です。では、日経平均そのものはどうなのでしょうか。
で、日経平均そのものは動くのか
ほとんど動きません。基準日時点のウエートで試算してみます。
アドバンテストのキャップ調整比率が0.9から0.8になると、同社のウエートは12.19%から10.98%へ、1.21ポイント下がります。その分は他の224銘柄に配分されるので、技術セクター(新)と情報通信を合わせた比率は54.50%から53.88%へ。動くのは0.62ポイントです。キャップをかけたあとも、ハイテク系で日経平均の半分という構図は変わりません。
しかも0.8にしても、10.98%とキャップ水準の10%を超えたままです。株価がこのままなら次の基準日(2027年1月末)でまた0.7に引き下げられ、そこでようやく9.75%。10%を下回るまでに1年かかる計算になります。引き下げは0.1刻みなのに対し、相場のほうがずっと速いんですよね。
銘柄の入れ替えのほうは、もっと小さい話です。2026年4月にセクター間の過不足調整で採用されたパン・パシフィックHDのウエートは0.047%。過不足調整で入ってくるのは流動性順位が下のほうの銘柄なので、そもそも重みがありません。参考までに225銘柄のウエート中央値は0.154%で、下位30銘柄を全部足しても0.57%。上限3銘柄の入れ替えで指数が動く余地は、実質ないと言えそうです。
では、そもそも日経平均のウエート集中そのものは、どうなっているのでしょうか。
半分は直しにいっていて、半分は手つかず、というのが正確なところです。
セクターの偏りのほうには、はっきり手をつけています。技術セクターは55.67%から43.24%へ。日経自身が「技術セクターは5割を超えています」と書いて、それをならすために業種を組み替えた。ここは意図的な是正です。
手つかずなのは、1銘柄あたりのウエート集中のほうです。
基準日時点のウエートを積み上げると、こうなります。
| 上位から | ウエート合計 | 全体に占める銘柄数の割合 |
|---|---|---|
| 上位3銘柄 | 30.63% | 1.3% |
| 上位11銘柄 | 50%超 | 4.9% |
| 上位23銘柄 | 62.74% | 10.2% |
| 残り202銘柄 | 37.26% | 89.8% |
つまり、銘柄数でちょうど1割にあたる上位23社で、指数の6割超を占めています。極端に言えば、残りの9割が1%下げても、上位1割が0.6%上がれば日経平均は変わらない。これは株価平均という作り方そのものから来ているもので、セクターの分け方を変えても動きません。
集中を抑える仕組みはキャップだけで、しかも対象は10%を超えた銘柄に限られます。いま該当するのはアドバンテスト1社。ファーストリテイリングは9.77%で、あと一歩のところで対象外です。
この点はコンサルテーションでも実際に指摘されていました。「さらなるウエート集中を回避するための措置を引き続き検討してほしい」(証券・金融関係)、「日経平均株価の代表性・分散性を高めるため、構成比率の上限・下限や株価換算係数の設定方法の見直しを検討すべき」(自営業・個人)といった声です。一方で「集中は日本市場の中で成長を評価されてきた企業の株価パフォーマンスを反映しているという側面もあり、指数としての連続性の観点でも構築手法を大幅に見直す必要はない」という意見もありました。
日経は「今後も指数の品質向上を目指した改良を検討していきます」と回答しています。ただ、今回決まったのはセクターの分け方の話で、1銘柄あたりのウエートをどう決めるかには踏み込んでいません。セクターの偏りは直す、けれど銘柄の偏りは触らない——今回の改定の線引きは、そこに引かれています。
そしてこの偏りは、日経平均に連動する商品を持つときに、そのまま効いてきます。
いま見てきた重みの配分を、そっくりそのまま持つということです。日経平均に連動するETFや投資信託を買うと、上位4社だけで37.21%。「日本株に分散投資している」つもりでも、中身はかなり偏っています。
会社の大きさと並べてみると、ねじれ方がはっきりします。
| 銘柄 | 株価 | 時価総額 | 日経ウエート | ウエート順位 |
|---|---|---|---|---|
| トヨタ自動車 | 3,132円 | 45.7兆円 | 0.80% | 22位 |
| 三菱UFJ | 3,508円 | 41.6兆円 | 0.19% | 99位 |
| ソフトバンクG | 5,255円 | 30.0兆円 | 6.58% | 4位 |
| アドバンテスト | 35,900円 | 26.3兆円 | 12.19% | 1位 |
| 東京エレクトロン | 54,290円 | 25.4兆円 | 8.67% | 3位 |
| 三井住友FG | 6,606円 | 25.1兆円 | 0.11% | 137位 |
| ファーストリテイリング | 73,510円 | 23.4兆円 | 9.77% | 2位 |
| みずほFG | 8,110円 | 19.8兆円 | 0.04% | 190位 |
時価総額でいちばん大きいトヨタが0.80%で22位。5番目のアドバンテストが12.19%で1位です。会社の大きさはトヨタが1.7倍なのに、日経平均への効き方は15分の1。3メガバンクにいたっては、時価総額を合わせると86兆円を超えるのに、日経ウエートの合計は0.34%。アドバンテスト1社の36分の1にとどまります。
これは日経平均が間違った指数だという話ではなく、株価平均という作り方の性質です。重みが1株の値段で決まる以上、会社の規模とは一致しません。TOPIXなら時価総額で重みが決まるので、順番はおおむね会社の大きさどおりになります。同じ「日本株の指数」でも、持っている中身が違うわけですね。
実際、この差は日々の値動きにそのまま出ています。2026年4月13日から8月21日までの89営業日を数えてみると、33業種の多数決と日経平均の向きが食い違った日が30日(33.7%)ありました。3日に1日です。日経がプラスなのに過半の業種が下げていた日が19日、日経がマイナスなのに過半の業種が上げていた日が11日。日経とTOPIXで騰落の符号そのものが逆だった日も18日(20.2%)ありました。
極端な日を挙げると、7月30日は33業種のうち28業種が下落したのに日経平均は+0.71%(TOPIXは−0.54%)。逆に7月2日は26業種が上昇したのに日経は−2.47%でした(TOPIXは+0.09%)。「日経が上がった」と「日本株が上がった」は、同じことを指していない日がそれなりにあります。
日経平均のETFを触るなら、自分が実際に何に賭けているのかを一度見ておくといいのかなと思います。数字そのものは相場で動きますが、順番がねじれているという構造のほうは、株価平均をやめないかぎり変わりません。そして今回の改定でも、そこは変わりませんでした。
ここまでが指数そのものの話です。最後に、目前に迫っている今回の入れ替えに対する構え方を整理しておきます。
過去11回のデータからは、少なくとも次の2つは支持されていません。「採用されそうな銘柄を先回りして買う」——寄り値が高値でそこから20営業日で中央値−6.29%。「除外されそうな銘柄を売る」——実施日までは18件中16件がプラスに戻していました。
整理すると、今回の改定は指数そのものはほとんど動かさないのに、入れ替えの対象になった銘柄には効くという非対称な出来事です。日経平均としては0.62ポイントの話でも、除外された銘柄は実施後20営業日で18件中15件がマイナスになっていました。「日経がどうなるか」で見ると空振りしますが、「その銘柄がどうなるか」で見ると無視できない。
もう少し踏み込むと、指数イベントは「値段がつくのが一瞬で、その後は元の理屈に戻る」タイプの材料なのかなと思います。採用されたから業績が良くなるわけでも、除外されたから会社が悪くなるわけでもない。値動きが落ち着いたあとに残るのは、結局その会社の中身のほうです。
そのうえで、この先の節目を並べておきます。①例年どおりなら9月上旬の採用・除外の発表 ②10月1日の実施 ③アドバンテストのキャップ調整済み係数が6.4になること。加えて、技術セクターから2業種が抜けたことでセクターの過不足がどう出るか。年間の需給イベントの中での位置づけは、日本株の年間需給カレンダーの4月・10月のマスにまとめてあります。発表が出たら、本記事にも答え合わせを追記します。
調べていていちばん腑に落ちたのは、この改定の狙いが「技術セクターの5割超をならすこと」だった、という点です。報道は「情報通信セクターの新設」を伝えていますが、資料を開くと動く業種は3か所あって、医薬品が技術から消費へ移り、サービスのIT関連10社が情報通信へ移ります。任天堂やコナミまで情報通信に入るのは、少し意外でした。技術セクターは55.67%から43.24%へ。産業の分け方は、報じられているよりだいぶ大きく動いています。
そのうえで効き方が大きそうなのは、もう一つの新ルールのほうです。「同一セクター内での採用・除外」には発動する条件も順位差の下限も書かれていない。これまであった「入れ替えの生じない年」が、事実上なくなる可能性があります。コンサルテーションで「入替が恒常的に発生する可能性」への懸念が寄せられていたのも、同じところを見ているのだと思います。
ただし、直しにいっているのはセクターの偏りまでです。上位23銘柄で指数の62.74%、アドバンテスト1社で12.19%という1銘柄あたりの集中は、業種を組み替えても動きません。キャップの引き下げで動くのも0.62ポイント。コンサルテーションでは「さらなるウエート集中を回避する措置を検討してほしい」という声も出ていましたが、そこは今回の対象外でした。セクターの偏りは直す、けれど銘柄の偏りは触らない——今回の線引きは、そこに引かれているのだと思います。
そのうえで、過去11回を実測してみると、採用銘柄が上がるのは発表翌日の寄り付きだけで、そこから先は日経平均に負け続けていました。指数は動かないのに、当該銘柄には効く。この非対称のほうが、実務では効いてきます。
まずは9月上旬の発表で、技術セクターからいくつ出るのか。そして10月1日に、アドバンテストのウエートがどこまで抑えられるのか。新しいルールの効き方を測る最初の材料は、この2つになりそうです。















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