MSCIの定期見直しとは?── 8月31日の引けに何が起きるのかを22問で整理
そして同じ8月31日は、TOPIX初の定期入れ替えの基準日でもあります。ひとつの日の引けに、性格の違う指数イベントが2つ重なります。
ただ、調べていていちばん面白かったのは今回の3銘柄そのものではありませんでした。過去39回の入れ替えを全部数えてみたら、「MSCIは5月と11月が本番で、2月と8月は小粒」という説明が、2023年にすでに成り立たなくなっていたんですよね。いまも多くの記事がその前提で書かれています。本記事では、制度の基礎から日程の読み方、そして発表のあと株価が実際どう動いたかまで、22の疑問でゼロから整理します。
- 実施は8月31日(月)の引け。採用=KOKUSAI ELECTRIC、除外=JFEホールディングスと西武ホールディングス。「9月1日に実施」ではありません
- 「2月・8月は小規模」は終わっている。旧制度の2月・8月は1回平均0.3件・12回中9回がゼロだったのに対し、2023年2月以降は1回平均6.1件・ゼロは一度もなし
- 除外は指数から消えることではなく、大型・中型の箱から小型の箱へ移るだけ。同じ会社が何度も出たり入ったりしています
「そもそも何が起きるの?」から始めて、疑問が浮かぶ順番のまま、22問で解いていきましょう。
まず「MSCIの入れ替え」の基礎から
MSCIの株価指数で、日本株の構成銘柄が入れ替わります。実施されるのは8月31日(月)の大引け。MSCIのプレスリリースの表現は “All changes will be implemented as of the close of August 31, 2026” で、「8月31日の引けの時点で」と書かれています。
発表はすでに済んでいます。MSCIが結果を出したのは現地時間の8月12日(水)の夜で、日本には13日(木)の早朝に伝わりました。本記事では、この2つを「発表(現地8月12日)」と「日本で最初に売買できた日(8月13日)」として区別して書きます。
この指数に連動して運用しているファンドは、指数と同じ中身を持たなければいけません。だから入れ替えのタイミングで、採用される銘柄を買い、除外される銘柄を売ります。値段を見て売買するわけではなく、指数に合わせるために機械的に出てくる注文です。これが引けに集中します。
相場全体を動かすようなイベントとして扱われることは、あまりありません。目立つのは当事者の銘柄と、その日の引けの出来高のほうです。
指数をつくって提供している会社です。ニューヨーク証券取引所に上場していて、代表的なものにMSCI ACWI(先進国+新興国の全世界株)、MSCI World(先進国株)、MSCI EAFE(米国・カナダを除く先進国株)などがあります。「オルカン」で知られる全世界株のインデックスファンドが連動先にしているのも、多くはMSCI ACWIです。
規模感を数字で見ておきます。MSCIの株価指数に連動するETFの運用資産が2兆8,183億ドル、ETF以外も含めてMSCIの指数をベンチマークにしている資産全体では21兆ドル超(いずれも2026年6月末時点・MSCIの決算資料より)。ETFだけで前年から39%増えています。
日本のウエートは、2026年7月末時点でMSCI ACWIの5.05%、MSCI Worldの5.73%。米国を除いた先進国のMSCI EAFEでは23.32%で、国別では最大です。日本株にとって無視できない規模のお金が、この指数を見て動いています。
似て見えますが、つくっている会社も、判定の基準も、日程もばらばらです。
| MSCI | TOPIX | 日経平均 | |
|---|---|---|---|
| つくっている会社 | MSCI(米国) | JPX総研 | 日本経済新聞社 |
| 見直しの頻度 | 年4回(2・5・8・11月) | 年1回(初回は2026年10月) | 年2回(4月・10月) |
| 主な判定基準 | 浮動株調整後の時価総額と流動性 | 売買代金回転率と浮動株時価総額 | 市場流動性とセクターのバランス |
| 今回の日程 | 8/12発表 → 8/31の引けに実施 | 8/31が基準日 → 10/7公表 → 10/30実施 | 9月上旬に発表 → 10/1実施 |
| 8月31日の役割 | 売買が出る日 | 測るだけの日 | 関係なし |
いちばん押さえておきたいのは最後の行です。8月31日に実際の売買が出るのはMSCIのほうだけで、TOPIXのほうはその日の数字を測っているだけ。同じ日付でも、意味がまったく違います。
TOPIX側の中身はTOPIX初の定期入れ替え、日経平均側は日経平均の定期見直しでそれぞれ22問ずつ整理しています。
MSCIグローバル・スタンダード指数(大型株+中型株)の日本銘柄で、採用が1社、除外が2社です。
| 区分 | 銘柄 | コード | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 採用 | KOKUSAI ELECTRIC | 6525 | 半導体の成膜装置。2024年8月にも採用され、半年後に除外されている |
| 除外 | JFEホールディングス | 5411 | 高炉大手。2017年以降の39回では、はじめての登場 |
| 除外 | 西武ホールディングス | 9024 | 2025年11月に採用されたばかり。9か月での除外 |
顔ぶれを見ると、それだけで今回の話の半分が見えてきます。3社のうち2社が「前にも登場している」んですよね。KOKUSAI ELECTRICは2度目の採用で、西武ホールディングスは採用からわずか9か月での除外。このあたりはQ19でデータとして詳しく見ます。
KOKUSAI ELECTRICの事業内容そのものは日本の半導体株の見極め方の製造装置のところで整理しています。
「除外」の意味を、正しく取る
ここがいちばん誤解されているところだと思います。違います。
MSCIの指数は、大きさで箱が分かれています。時価総額の上のほうから約85%をカバーするのが「スタンダード指数(大型+中型)」、約99%までカバーするのが「IMI(投資可能市場指数)」。その差にあたる部分が「スモールキャップ指数(小型)」です。
今回の3社を、この箱で見てみます。同じ8月31日に実施されるスモールキャップ指数のほうの入替リストを開くと、答えが書いてあります。
- JFEホールディングス・西武ホールディングス——スタンダードから除外されると同時に、スモールキャップに採用
- KOKUSAI ELECTRIC——スタンダードに採用されると同時に、スモールキャップからは除外
つまり起きているのは箱の移動です。IMIやACWI IMIといった広いカバーの指数の中には、3社とも変わらず入ったままです。「MSCIから外された」という言い方は、正確ではないんですよね。
もっとも、需給の面では箱の移動にも意味があります。世界株のインデックスファンドが連動先にしているのは、たいていスタンダード指数やACWIのほうです。下の箱に移れば、その分の買い手はいなくなる。「消える」ではないけれど「軽くなる」——このくらいの距離感で受け取るのがよさそうです。
基本は順位です。国ごとに投資できる銘柄を並べ、大きいほうから積み上げて、カバー率が目標に届くところで線を引きます。
- 大型株指数——時価総額の上位およそ70%
- スタンダード指数——上位およそ85%(大型+中型)
- IMI——およそ99%
- スモールキャップ指数——IMIとスタンダードの差(およそ14%)
この線のことを「マーケット・サイズ・セグメント・カットオフ」と呼びます。線を引くのは市場ごとですが、位置は自由ではなく、先進国全体から四半期ごとに計算される「世界共通の最低ライン」の範囲に収まるよう挟まれます。日本市場の中の順位だけでは決まらない、ということですね。
加えて、流動性の条件もあります。日本は先進国扱いなので、12か月と3か月の売買代金比率(ATVR)がそれぞれ20%以上、売買が成立した日の割合が直近4四半期を通じて90%以上、浮動株比率(FIF)が0.15以上。どれだけ大きくても、売買が細ければ入れないという設計です(FIFには例外規定もあります)。
順位づけに使うのは、発行済み株式のうち海外投資家が実際に買える部分だけを取り出した浮動株調整後の時価総額です。持ち合いや創業家の保有分が多い会社は、時価総額が大きくても順位は下がります。
株価の基準日は、MSCIの方法論に決まりが書かれています。8月の見直しなら7月の最終10営業日のうちのいずれか1日。原文は “Any of the last 10 business days of July” です。
この「基準日を狙い撃ちできない」という性質は、TOPIXの入れ替えとも共通しています。あちらは8月の日次平均を使いますが、狙いは同じで、短期の思惑で順位を動かせないようにするためです。
それを防ぐためにバッファという仕組みがあります。線をちょっと超えただけでは動かさず、余裕をもって超えたときにはじめて動かす、というものです。
- 上の箱に上がるには——ひとつ上のカットオフの1.5倍を超える必要がある
- 下の箱に落ちるには——カットオフの0.67倍を下回る必要がある
かなり広く取ってあります。中型株に上がるには「線の1.5倍」まで大きくならないといけないので、少し株価が上がったくらいでは採用されません。逆に落ちるほうも、線を割った程度では残ります。
それでも出たり入ったりを繰り返す銘柄がある——というのがQ19で見る話です。
日程の読み方(ここを間違えると1日ずれる)
今回の流れはこうです。
- 2026年8月12日(水)——MSCIが結果を発表。現地時間の夜なので、日本には13日(木)の早朝に伝わります
- 2026年8月31日(月)の大引け——リバランスの実施。売買が出るのはここ
- 2026年9月1日(火)——effective date。「新しい中身で始まる日」
次回以降の日程もMSCIが公表しています。ただし公表されているのは発表日と effective date の2つだけで、実施日そのものは載っていません。実施は effective date の前営業日の引けなので、そこから逆算する形になります。
- 11月の見直し——11月11日(水)発表/effective date は12月1日(火)→ 実施は11月30日(月)の引け
- 2027年2月の見直し——2月9日(火)発表/effective date は3月1日(月)→ 実施は2月26日(金)の引け
ちなみに「実施の何営業日前に発表する」という成文のルールは見当たりませんでした。実績ではおおむね2〜3週間前(日本の営業日で11〜13日ほど)ですが、あくまで目安です。
どちらも間違いではないのですが、言っていることが違います。ここは1日ずれるので、ていねいに分けておきます。
- implementation(実施)——8月31日の引け。パッシブの売買が出るのはこの瞬間
- effective date——9月1日。MSCIの用語集の定義は “From the open day date as of which changes are implemented”、つまり「変更が反映された状態で始まる日」
MSCIのカレンダーには effective date のほうが載っているので、それを見て「9月1日に売買が出る」と読んでしまうと、当日の値動きを1日ぶん取り違えます。出来高が膨らむのは8月31日の引けです。
この1日のずれはTOPIXや日経平均でも同じです。指数イベントでは、まず「売買が出るのはいつの引けか」を確認するのが確実だと思います。
多くの人は株探などのニュースで知る、という感じではないでしょうか。私もそうでした。ただ、一次情報は誰でも無料で開けます。登録もログインも要りません。
| 入手先 | 載っているもの | 使いやすさ |
|---|---|---|
| MSCI公式の入替リストPDF | 国別の採用・除外の全銘柄(英文社名) | ◎ 全部載っている。証券コードはなし |
| MSCIのプレスリリース | 指数ごとの件数と、上位3社の名前だけ | △ 日本銘柄は載っていない |
| 株探・みんかぶ等のニュース | 日本銘柄の社名とコード | ○ 発表当日の朝に出る。速い |
| MSCIの日程表(PDF) | 次の8回分の発表日・effective date | ◎ 先の予定を押さえるならこれ |
ひとつ注意しておきたいのが2行目です。MSCIのプレスリリースには、日本の銘柄名は一切出てきません。名指しされるのは指数ごとに「採用のうち時価総額が大きい3社」だけです。今回、MSCI World指数で挙がっていたのはSanDisk・Carpenter Technology・ATIというアメリカの3社。日本の銘柄を確認したいなら、入替リストのPDFのほうを開く必要があります。
MSCI_Aug26_STPublicList.pdf。開いて「MSCI JAPAN INDEX」を探すと、その回の採用・除外がそのまま載っています。小型株のほうは STPublicList が SCPublicList に変わるだけです。本記事のデータは、この39回分のPDFをすべて開いて日本銘柄を数えたものです。
「5月と11月が本番」は、まだ本当か
かつては本当でした。制度の側にはっきり理由があったんですよね。
2022年までのMSCIは、年4回の見直しを2種類に分けていました。5月と11月が「半期見直し(SAIR)」、2月と8月が「四半期見直し(QIR)」です。両者は名前だけでなく、やることが違いました。
| 5月・11月(半期見直し) | 2月・8月(四半期見直し) | |
|---|---|---|
| 対象銘柄の見直し | ゼロから全部組み直す | 新規上場の取り込みなどに限定 |
| バッファ | 0.67倍/1.5倍(狭い) | 0.5倍/1.8倍(広い) |
| 結果 | 入れ替えが多く出る | ほとんど動かない |
ポイントはバッファです。2月・8月は「落ちるには半分になるまで、上がるには1.8倍になるまで」という広い設計だったので、そもそも動きようがなかった。2月・8月が小粒だったのは、制度設計上そうなっていたからと読めます。
成り立ちません。2017年2月から2026年8月までの39回を、MSCI公式の入替リストで全部数えてみました。
グラフの左半分では、オレンジ(2月・8月)がほとんど床に張りついています。それが2023年2月の点線を境に、灰色(5月・11月)と見分けがつかない高さになりました。
| 2月・8月の1回あたり | 5月・11月の1回あたり | 差 | |
|---|---|---|---|
| 旧制度(2017/02〜2022/11) | 0.3件 | 12.8件 | 38.5倍 |
| 新制度(2023/02〜2026/08) | 6.1件 | 9.3件 | 1.5倍 |
いちばんはっきりしているのは、平均ではなくレンジのほうでした。
- 旧制度の2月・8月(12回)——12回のうち9回が「日本銘柄の変更ゼロ」。いちばん多かった回でも2件
- 新制度の2月・8月(8回)——ゼロの回は一度もなし。いちばん少ない回でも3件、多い回は10件
旧制度の上限が2件、新制度の下限が3件。両者の範囲は1件も重なっていません。平均の差以上に、これが「別物になった」ことを示していると思います。
MSCIが2023年2月の見直しから、4回すべてを同じ内容に統合したからです。MSCIが2022年10月に出したQ&A資料に、はっきり書かれています。
(2023年2月の見直しから、以後すべての四半期包括見直しにおいて、これまで5月・11月の半期見直しに適用してきた方法論を適用する)
“In the context of the MSCI Global Investable Market Indexes, all references to ‘Semi-Annual Index Reviews’ and ‘Quarterly Index Reviews’ in relevant MSCI public documentation will be replaced with ‘Index Reviews’.”
(MSCIグローバル投資可能市場指数において、公開文書における「半期見直し」「四半期見直し」という表記は、すべて「見直し」に置き換える)
つまり「半期見直し」という言葉そのものが廃止されたわけです。実際、現行の方法論で見直しのルールを説明している箇所に “Semi-Annual Index Review” は出てきません(2007年ごろの経緯を記した付録には残っています)。書かれているのは “Quarterly Index Reviews (Index Reviews) in February, May, August and November” だけです。
それでも「5月・11月が本番」という説明が残り続けているのは、MSCIが文書を書き換えただけで大きく告知せず、読む側も一度覚えた枠組みを確認し直さないからでしょう。通説は、賞味期限が切れたことを自分では教えてくれない——今回いちばん腑に落ちたのはここでした。
発表のあと、株価はどう動いたか
直近の1回を実測したかぎりでは、発表の直後は上がりました。ただ、そこがいちばん高いところでした。
2026年5月の見直し(現地5月12日発表・日本で最初に売買できたのは5月13日・実施は5月29日の引け)で、採用3社・除外14社(うち日次データが揃う11社)がその後どう動いたかを見ています。採用されたのは古河電気工業・三井金属鉱業・レゾナック・ホールディングスの3社です。地合いの影響を落とすため、TOPIXの同じ期間のリターンを差し引いた超過リターンで、売買初日の前日(5月12日)を起点にした累積で見ています。
採用された3社は、売買できるようになった当日に中央値で+6.8%。古河電気工業にいたっては+14.1%でした。ところがそこからは下り坂で、実施日には+1.1%までしぼみ、実施から20営業日たった時点では−12.5%。3社ともマイナスに沈んでいます。
データを見るかぎり、分は悪そうです。
発表はMSCIの現地時間の夜に出るので、日本の投資家が最初に売買できるのは翌朝の寄り付きです。その時点で、株価にはもう織り込まれている。図3の形は「上がるのは発表を挟んだ一瞬だけで、そこから先は戻ってこない」と読めます。
ここで大事なのは、n=3という小ささです。3社の中央値がたまたま揃った、という可能性は十分あります。ただ、同じ形は別のところでも出ていました。日経平均の定期見直しの記事で、2017年からの11回・37銘柄を検証したときの結論が「採用は片道の下り坂、除外は往復」でした。指数も期間も違うのに、同じ絵が出ています。
理屈のほうも、それほど不思議ではありません。パッシブの買いは実施日の引けに1回出るだけで、そのあと続きません。一度きりの買いを先回りして買った人たちが、実施日を過ぎて出口を探す——という順番だとすれば、実施後に弱くなるのは自然な流れです。
2026年5月の回に関しては、逆でした。
除外11社は売買初日こそ横ばい(中央値+0.3%)で、実施日に向けて−3.1%まで沈みます。ところが実施日を過ぎると戻りはじめ、20営業日後には+6.7%。11社中8社がプラスになっていました。エムスリーの+30.0%、シスメックスの+10.0%、日本航空の+9.5%あたりが目立ちます。
これも日経平均の検証と同じ形です。この回にかぎっていえば、除外が決まったあとの区間はむしろ戻す方向に動いていた、ということになります。
とはいえ、こちらもn=11。言えるのは「売られ続けるとはかぎらない」までだと思います。日経平均の検証では、戻ったあと、実施日から20営業日かけて今度は下げていくという往復の形がありました。MSCIでも同じ続きがあるかは、今後の回で見ていきたいところです。
日本で最初に売買できた8月13日から、8月25日までの動きです。TOPIX超過・その前日(8月12日)からの累積で見ています。
| 区分 | 銘柄 | 8/13(売買初日) | 8/25までの累積 |
|---|---|---|---|
| 採用 | KOKUSAI ELECTRIC | +3.24% | −0.85% |
| 除外 | JFEホールディングス | −2.27% | +1.73% |
| 除外 | 西武ホールディングス | −5.88% | +0.80% |
初動の8月13日は採用が買われ、除外が売られました。西武ホールディングスの−5.88%はまとまった下げです。ところがその後は3銘柄とも向きが変わり、採用された1社が沈み、除外された2社が戻すという並びになっています。
もちろん、これはリバランス実施前の途中経過です。本番は8月31日の引けと、そのあと。この記事の答え合わせは9月末——実施から20営業日たったところで、あらためて数字を出すつもりです。
出たり入ったりの実像と、これから
本当です。39回の採用・除外に登場した日本企業はのべ272件・実数224社。このうち44社(およそ2割)が2回以上登場していました。
そして3回以上登場したのは、たった4社です。そのうち2社が、今回の当事者でした。
KOKUSAI ELECTRICは2024年8月に採用されたあと、たった半年後の2025年2月に除外されています。そして今回、また採用。西武ホールディングスは逆で、2021年5月に除外されたあと2025年11月に採用され、9か月後の今回、また除外です。
残る2社もなかなかです。イビデンは2020年11月に採用、2024年11月に除外、そして今年2月にまた採用。4004番は昭和電工として2018年8月に採用され2020年11月に除外されたあと、社名がレゾナックに変わった今年5月、5年6か月ぶりに戻ってきました。Q15で見た2026年5月の採用3社のうち1社が、実は出戻り組だったわけです。
Q8で見たとおりバッファはかなり広いのに、それを超えて往復するほど時価総額が動いたということでもあるんですよね。KOKUSAI ELECTRICは半導体市況、西武ホールディングスは不動産・ホテル事業の評価。どちらも短期間で見方が大きく振れた銘柄です。
そうとは限りません。一度落ちて、戻ってきた顔ぶれを並べてみます。
| 銘柄 | 除外 | 再採用 | 間隔 |
|---|---|---|---|
| 川崎重工業(7012) | 2020年11月 | 2025年8月 | 4年9か月 |
| IHI(7013) | 2020年5月 | 2025年5月 | 5年 |
| 良品計画(7453) | 2022年5月 | 2025年8月 | 3年3か月 |
| 商船三井(9104) | 2020年5月 | 2022年2月 | 1年9か月 |
| アシックス(7936) | 2019年5月 | 2024年5月 | 5年 |
| 清水建設(1803) | 2024年5月 | 2026年2月 | 1年9か月 |
川崎重工・IHIは防衛関連の主役として、良品計画は上場来高値を更新する好決算を出して、商船三井は海運市況の急騰で——それぞれまったく違う理由で戻ってきています。除外は「その時点で世界の中型株の線を割っていた」という記録でしかない、ということなんだと思います。
逆向きの例も残しておきます。採用から1年前後で除外された銘柄です。
- ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)——2020年11月採用 → 2021年11月除外(1年)
- ベイカレント・コンサルティング(6532)——2023年2月採用 → 2024年2月除外(1年)
- 東京地下鉄(9023)——2025年2月採用 → 2026年2月除外(1年)
- KOKUSAI ELECTRIC(6525)——2024年8月採用 → 2025年2月除外(半年)
「採用された」というニュースを、その会社の格が上がった証明のように読むと、この短さは説明がつかなくなります。順位が線をまたいだ、それだけのことなんですよね。
圧倒的に除外です。39回の合計で採用65件に対して除外207件。およそ3.2倍で、差し引き142件の純減になります。
ただ、これを「日本株が世界から売られている」と読むのは行き過ぎだと思います。Q5で見たとおり、スタンダードから外れた銘柄はスモールキャップに移るだけで、IMIの中には残っているからです。純減から読み取れるのは、世界の時価総額が伸びていくなかで、日本の中型株が「世界基準の中型」の線に届きにくくなってきたということだと思います(Q6のとおり、線は先進国全体から決まります)。
顔ぶれの傾向も、はっきり出ています。33業種で分類してみました(上場廃止済みの銘柄は業種が引けないため、おおよその比率です)。
| 業種 | 採用(63件中) | 除外(197件中) |
|---|---|---|
| 電気機器 | 10件(15.9%) | 18件(9.1%) |
| 機械 | 6件(9.5%) | 14件(7.1%) |
| 陸運業(電鉄) | 4件(6.3%) | 16件(8.1%) |
| 銀行業 | 0件 | 10件(5.1%) |
| 電気・ガス業 | 0件 | 7件(3.6%) |
入ってくるのは電気機器と機械——半導体、AI、防衛のあたりです。出ていくのは銀行・電鉄・電力といった内需のディフェンシブ。この9年間の入れ替えの顔ぶれには、日本株の主役交代が映っているように見えます。業種そのものの性格は33業種セクターマップで整理しています。
なお銀行株が採用ゼロなのは9年間の話で、金利のある世界に入ってからの評価はまた別です。そちらは銀行株の見極め方にまとめています。
今回調べてみて、持ち帰れるものは4つくらいかなと思います。
- 日付を押さえる——売買が出るのは8月31日の引け。9月1日ではありません。次は11月11日発表・11月30日の引けで実施
- 発表直後の値動きは、そこが高値になりうる——2026年5月の回では、採用3社とも売買初日が高値でした(1回・3社の観測です)
- 除外を「終わり」と読まない——箱の移動であって、指数からの退場ではありません。実際、戻ってきた会社がいくつもあります
- 「2月・8月は小粒」という前提を捨てる——2月・8月と5月・11月の差は、38.5倍から1.5倍まで縮みました
そのうえで、いちばん見ておきたいのは8月31日の引けの出来高です。TOPIXの基準日と重なる日でもあるので、月末の板がどう動くか。年間の需給イベントの中でのこの日の位置づけは、日本株の年間需給カレンダーの8月のマスに整理してあります。
正直に言うと、私も最初は「8月のMSCIか、小粒だな」で流しかけました。頭のどこかに「本番は5月と11月」という枠が入っていたからです。その枠がいつ・なぜできたのかを確かめないまま使っていたわけで、そこがいちばんの反省でした。
39回を数えてみたら、線は2023年2月にきれいに引かれていました。旧制度の2月・8月は12回中9回がゼロで、多い回でも2件。新制度は最少でも3件。範囲がまったく重ならない、というのは数えてはじめて見えるものです。制度の変更は静かに行われて、通説だけが残る——メジャーSQ週やETFの分配金捻出売りを検証したときの感触とも重なります。
もうひとつ、KOKUSAI ELECTRICと西武ホールディングスの往復には考えさせられました。採用の半年後に除外、採用の9か月後に除外。ニュースの見出しは毎回「採用」「除外」と強い言葉で並びますが、実際に起きているのは順位が線をまたいだり戻ったりしているだけなんですよね。出来事の大きさと、言葉の強さが釣り合っていない典型かなと思います。
まずは8月31日の引け。そして9月末に、採用・除外の3銘柄がどうなったかの答え合わせ。ここは日次レポートでも追いかけていきます。














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