フジクラ決算|1Q営業利益2.6倍・通期経常を43%上方修正、5月の予想から2倍超へ
2026年8月7日の大引け後、フジクラ(5803)が2027年3月期第1四半期の決算と、通期予想の上方修正を同時に発表しました。
1Qの営業利益は1,048億円(前年同期比+155.1%)。売上高4,020億円に対する営業利益率は15.3%から26.1%へ跳ね上がり、各段階利益が四半期ベースで過去最高を更新しました。通期の経常利益予想は3,160億円から4,530億円(+43.4%)へ引き上げられています。
ここで思い出したいのが、この会社が3か月前に何をされたかです。5月14日、フジクラは通期予想が弱いという理由でストップ安になりました。その予想は6月18日に一度増額され、今回さらに引き上げられて、当時の2倍を超えています。
① 1Qは営業利益+155.1%・経常+166.8%で四半期の過去最高。通期は経常4,530億円へ+43.4%の増額で、5期連続の最高益見込みです。
② 上方修正の中身は情報通信事業ひとつ。同事業の1Q営業利益率は23.6%→37.0%で、通期営業利益予想は前期の約2.6倍になります。
③ 株価は発表前の8月7日の取引で+12.82%と大きく上げていました。同業の古河電工-1.36%・住友電工-1.34%は下げており、電線株がそろって買われた日ではありません。
何が起きたか|1Q決算と通期の上方修正が同時に出た
開示は8月7日の大引け後です。フジクラは前期の決算発表以降、業績予想を短い間隔で引き上げてきましたが、今回は第1四半期の決算と通期の再修正を同時に出す形になりました。
1Q(2026年4〜6月)の実績は次のとおりです。売上高4,020億円(前年同期比+50.1%)、営業利益1,048億円(+155.1%)、経常利益1,115億円(+166.8%)、純利益804億円(+156.8%)。売上が5割増える一方で営業利益が2.6倍になったので、利益率が15.3%から26.1%へ大きく改善しました。量が増えたというより、稼ぎ方の質が変わっています。
そして通期です。6月18日に引き上げたばかりの予想が、そこからさらに増額されました。
| 項目 | 従来予想 (6/18修正後) | 今回予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,620億円 | 1兆7,550億円 | +20.0% |
| 営業利益 | 3,100億円 | 4,320億円 | +39.4% |
| 経常利益 | 3,160億円 | 4,530億円 | +43.4% |
| 純利益 | 2,290億円 | 3,260億円 | +42.4% |
※従来予想は2026年6月18日の上方修正後の数値です。前期(2026年3月期)の経常利益実績1,994億円に対して、今回予想は約2.3倍にあたります。
数値で見るインパクト|5月に売られた予想は、3か月で2倍を超えた
今回の増額を単体で見ると「+43%の上方修正」ですが、時系列に置くと意味が変わります。同じ「2027年3月期の営業利益」という1つの数字が、3か月でどう動いたかを並べました。
5月14日に会社が示した2,110億円は、前期に最終利益+72.5%を出しながらストップ安になった、その引き金でした。続く5月19日の中期経営計画では27年度の営業利益計画として2,690億円が示されましたが、これも市場の期待に届かず-16.95%の急落を招いています。
そこから6月18日の上方修正で3,100億円へ。そして今回、4,320億円です。5月14日の予想の約2.05倍で、3年後を見据えたはずの中計27年度計画すら、1年目で1.6倍に超過したことになります。
もっとも、この事実は素直に喜べる話ばかりでもありません。3か月で会社の見立てが2倍変わるということは、5月時点の予想の精度がそれだけ低かったということでもあります。5月に予想を信じて売った人から見れば、後味の悪い展開でしょう。会社側の保守的な出し方が、株価の乱高下を自ら大きくしている面は否めません。
何が効いたのか|情報通信の利益率が23.6%→37.0%へ
増額の中身は、ほぼ1つの事業に集中しています。情報通信事業です。
※情報通信事業とは、光ファイバー・光ケーブルと、それらをつなぐ光コンポーネント(接続部品)や融着接続機などを手がける部門です。通信会社の回線網に加えて、データセンターの内部や施設どうしを結ぶ光配線に使われるため、AI向けデータセンターの建設が増えるほど需要が積み上がる構造です。電線が祖業のフジクラにとって、いまや利益の大半を稼ぐ看板事業になっています。
| 情報通信事業 | 前年同期 | 2026年4〜6月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,438億円 | 2,644億円 | +1,206億円 |
| 営業利益 | 340億円 | 980億円 | +640億円 |
| 営業利益率 | 23.6% | 37.0% | +13.4pt |
※前年同期の値は、公表された増減額から逆算した参考値です。通期の同事業営業利益予想は2,843億円から4,018億円へ修正され、前期実績1,527億円の約2.6倍になります。
全社の1Q営業利益1,048億円のうち980億円、実に93%を情報通信1事業が稼いだ計算です。会社が挙げた要因は3つあります。世界的なデータセンター投資の拡大、米国および新規案件からの光コンポーネント・光ケーブルの受注確度向上、そして値上げと高採算製品へのシフトです。3つ目の効果は限界利益ベースで+361億円と具体的に示されました。
ここは読み方が分かれるところだと思います。利益の源泉がはっきりしているのは強みですが、裏を返せば、データセンター投資が鈍った瞬間に利益の9割が同時に細る構造でもあります。5月にこの会社が売られたとき、市場が気にしていたのもまさにこの一極集中でした。
国内市場の反応|当日は+12.82%、ただし電線株はついてきていない
8月7日のフジクラは、決算発表を待たずに大きく動いていました。始値4,650円から一度4,380円(前日比-4.7%)まで売られたあと切り返し、終値は5,185円・+12.82%。日中の値幅は900円で、前日終値に対して19.6%にあたります。
売買代金は6,215億円と東証プライムで2位、ティック回数は30万回を超えました。引け前の時点で、市場はかなりの部分を織り込みにいっていたと見るのが自然です。
問題は、この上げが電線セクター全体の話なのかどうかです。同日の主要銘柄を並べます。
| 銘柄 | 終値 | 前日比 | 売買代金 |
|---|---|---|---|
| フジクラ(5803) | 5,185円 | +12.82% | 6,215億円 |
| 古河電気工業(5801) | 3,856円 | -1.36% | 2,421億円 |
| 住友電気工業(5802) | 2,130円 | -1.34% | 647億円 |
| JX金属(5016) | 3,886円 | -6.18% | 1,224億円 |
※終値・騰落率・売買代金は東証プライムの当日データより。フジクラは非鉄金属業種の売買代金の52%を占めます。
フジクラだけが上げて、同業3社はそろって下げています。非鉄金属業種は+2.80%(対TOPIX相対+2.33pt)と33業種で4位でしたが、これは実質フジクラ1社が押し上げた数字です。「フジクラが強いから電線株を買う」という発想は、少なくともこの日については機能していません。
週明けのシナリオ|PERは40倍から28倍へ、需給はどうか
まず、上方修正で割高感がどれだけ薄れたのかを計算しておきます。8月7日終値ベースのフジクラの時価総額は9兆2,043億円です。
| 基準 | 通期純利益予想 | 時価総額ベースのPER |
|---|---|---|
| 従来予想(6/18修正後) | 2,290億円 | 約40.2倍 |
| 今回予想(8/7修正後) | 3,260億円 | 約28.2倍 |
※時価総額9兆2,043億円(8月7日終値ベース)を会社の通期純利益予想で割った簡便計算です。証券会社が表示する予想PERは自己株式の扱いなどで差が出ます。
株価が12.82%上げたあとでも、上方修正の効果のほうが大きく、PERは40倍台から28倍台へ下がりました。利益の伸びが株価の上昇を上回ったということです。
一方で、需給面には重い数字も残っています。信用倍率は31.18倍で買い残が厚く、25日移動平均からの乖離率は+10.37%。ただしRSIは59.56と、+12.82%上げた日にしては過熱していません。図2のとおり、6月下旬から7月末にかけての下げで半値近くまで売られ、そこから戻ってきている途中だからです。
◎ 強気に見るなら
利益の伸びが株価の上げを上回り、PERはむしろ低下しました。中計の27年度計画を1年目で1.6倍に超えたことは、3年後の姿そのものを描き直す材料になります。1Qで通期営業利益予想の24%を稼いでおり、上期偏重の傾向を考えると通期の着地確度も高そうです。6月18日の上方修正では時間外のPTSがストップ高水準に張り付きました。
△ 慎重に見るなら
当日すでに+12.82%上げており、織り込みがどこまで進んでいたかが読めません。信用倍率31.18倍という買い残の厚さは、好材料が出たところでむしろ利益確定売りが出やすい状態でもあります。そして何より、この銘柄は5月14日に-19.10%、5月20日に-8.52%を記録した一方、6月22日には+19.38%と、1日で2割動くことがあります。方向を当てても値幅で振り落とされる可能性は常にあります。
もうひとつ、中期の焦点として置いておきたいのが配当です。年間配当予想は38円(中間19円・期末19円)の据え置きです。同社は配当性向40%を目安としていますが、修正後の予想利益に対する配当性向は約19%にとどまります。第2四半期決算のタイミングで増配が判断されるかどうかが、次のイベントになりそうです。
整理は3つです。
- 今回の増額は、5月に売られた予想の否定でもあります。2,110億円→3,100億円→4,320億円と、同じ期の営業利益予想が3か月で約2.05倍になりました。5月のストップ安と中計ショックは「会社の見通しが期待に届かなかった」ことが理由でしたが、その見通しのほうが間違っていたことになります。
- 利益の93%が情報通信1事業から出ています。1Q営業利益1,048億円のうち980億円。データセンター投資という追い風が強いうちは効きますが、同じ集中度は逆回転のときも効きます。この会社の値動きが荒いのは、事業構造がそのまま株価に出ているからだと考えています。
- PERは約40倍から約28倍へ下がりました。株価が12.82%上げてなお割安方向に動いたわけで、バリュエーション面での余地は広がっています。ただしこれは「今回の予想が正しければ」という条件つきです。3か月前の予想が2倍ずれていた会社の予想なので、その前提はいつもより慎重に扱うべきだと思っています。
週明けに見るのは2つです。寄り付きで買われた水準を引けまで保てるかと、古河電工・住友電工が今度は連れ高するか。前者は織り込み度合い、後者は「銘柄の話」なのか「テーマの話」なのかを分ける材料になります。当日の値幅が19.6%あった銘柄なので、方向を決め打ちせずに寄り後の値持ちを見たいところです。
当日のマーケット全体の動きや業種別の対TOPIX相対騰落は日次レポートで取り上げています。












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