2026年9月15日の東京市場は、米国の半導体株の急落を受けて始まりました。前日14日のニューヨークで、半導体銘柄をまとめたSOX指数が5.86%安と大きく下げていたからです。
日経平均の始値は6万3,190円37銭。前日の終値から302円62銭安く、半導体の主力は軒並み売り気配からのスタートでした。
ところが引けてみると、日経平均は8円89銭安の6万3,484円10銭。日本の半導体主力9社は平均で0.29%高と、下げるどころか小幅に上げて終わっています。
私は以前、「米SOXが下がった翌日は、日本の半導体も下がる」を10年ぶんのデータで調べた記事を書きました。そのときの結論は「大きく下げたときほど当てはまる」です。今日はその反対が出ました。
① 米SOX指数は14日に5.86%安。その翌日の東京で、半導体主力9社の平均は0.29%高でした。
② 理由は順番だと思います。東京は11日に4.71%安、14日に1.97%安と2日に分けて先に下げていて、ニューヨークがまとめて下げたのはそのあとでした。9月9日の終値からの合計は東京が6.19%安、SOXが6.71%安で、下げ幅はほぼ同じです。
③ 日経平均が8円89銭安で収まったのはソフトバンクグループ1社によるものです。同社の押し上げは353円99銭で、これを除くと362円88銭安でした。
何が起きたか|週末に出たAI減速の話が、3営業日かけて一周しました
週末に出たひとつの話が、東京とニューヨークを順番に回りました。
12日、アンソロピックのダリオ・アモデイ氏がAI開発のペースを落とす必要性に言及し、オープンAIのサム・アルトマン氏とイーロン・マスク氏が同調したと報じられました。第三者による安全性の評価や国際的な基準づくりが、AIの進歩の速さに追いついていない、という趣旨です。
株式市場の受け取り方は、AI関連をひとまとめに売るものではありませんでした。開発のペースが落ちれば、装置や部材をつくって売る側の需要見通しは下がります。一方で、できあがったAIを業務に組み込む側にとっては、安全性の評価や運用の管理そのものが仕事になります。
この材料が出たのは日本時間の週末で、取引があったのは月曜からです。東京の取引が終わるのは15時30分、ニューヨークが開くのは同じ日の22時30分。時間の並びでいえば、東京のほうが先に値段をつける側にいます。
数字で見る|SOXが5.86%下げた翌日に、東京の半導体は0.29%高
寄り付きの弱さは、引けまでにほとんど消えました。
日経平均は9時5分に安値6万3,067円18銭をつけたあと切り返し、11時26分に高値6万4,101円00銭まで買われました。大引けは6万3,484円10銭です。
安値から高値までの値幅は1,033円82銭で、高値からは616円90銭下げています。値幅だけは大きく、行った先から戻ってきた一日でした。
日本の半導体9社=東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ、レーザーテック、SUMCO、ルネサスエレクトロニクス、イビデン、SCREENホールディングス、キオクシアホールディングスの9社です。1社1票の単純平均として数えました。
寄与額=その銘柄の値動きが日経平均を何円動かしたかを表した概算で、単位は円です。
| 銘柄 | 15日終値 | 15日 | 14日 | 11日 |
|---|---|---|---|---|
| レーザーテック | 35,590円 | +3.22% | -0.26% | -4.82% |
| キオクシアホールディングス | 51,750円 | +2.29% | -6.37% | -6.99% |
| SUMCO | 2,900.5円 | +1.20% | -3.14% | -3.24% |
| SCREENホールディングス | 12,140円 | +0.29% | -1.22% | -6.02% |
| ディスコ | 51,400円 | -0.06% | -1.06% | -2.99% |
| イビデン | 19,115円 | -0.13% | -2.15% | -5.42% |
| 東京エレクトロン | 50,650円 | -0.55% | -1.03% | -2.56% |
| ルネサスエレクトロニクス | 3,155円 | -0.66% | -0.50% | -3.86% |
| アドバンテスト | 30,160円 | -2.96% | -2.02% | -6.49% |
| 9社の平均 | - | +0.29% | -1.97% | -4.71% |
15日の騰落率が大きい順に並べています。試験装置のアドバンテストだけが3%近く下げ、メモリーのキオクシアホールディングスと検査装置のレーザーテックは上げました。
電子部品まで広げると、上げはもっとはっきりしています。村田製作所が3.24%高、太陽誘電が5.54%高、メイコーが6.00%高、日本ケミコンが7.30%高、日本電波工業が7.23%高。値上がり率の上位には半導体商社のトーメンデバイス9.97%高も並びました。
東証33業種で見ると、電気機器は0.46%安。下げてはいますが、33業種のなかでは15番目で、真ん中あたりです。米国の半導体が5.86%下げた翌日としては、静かな下げ方だったと思います。
順番を並べ直す|下げ幅は同じで、違ったのは下げた日でした
東京とニューヨークを、同じ日付で横に並べてみます。
図1:左が東京市場での日本の半導体9社の平均、右が同じ日付の夜の米SOX指数です。同じ行が同じ日付で、東京の取引が終わったあとにニューヨークが開きます。赤が上げ、青が下げ。あいだの黄色い帯は、その間に出た材料です。
10日の東京は0.14%高で、その夜のSOXが2.66%安。翌11日の東京は4.71%安と、前夜のSOXの下げの1.8倍ほど下げました。
ところがその11日の夜、SOXは1.81%高と戻しています。東京の下げだけが大きかった形です。
週末を挟んで14日、東京は1.97%安。ソフトバンクグループが10.72%安で、日経平均は518円35銭安でした。その夜のニューヨークで、SOXが5.86%安になります。そして15日の東京は0.29%高です。
9月9日の終値から数えると、日本の半導体9社は6.19%安、米SOX指数は(14日まで)6.71%安。下げた幅はほとんど同じで、違ったのは下げた日でした。
私自身の検証とは、逆の結果が出ています
「米SOXが下がった翌日は、日本の半導体も下がる」は、10年ぶんのデータで調べたときに条件付きで当てはまるという結果でした。効くのは大きく下げたときで、5.86%安はまさにその条件に入ります。
それでも今回そうならなかったのは、東京が先に下げ終わっていたからだと私は見ています。平均の形では「SOXが下げた翌日は日本も下げる」でも、その前に日本が先に下げていれば、翌日に下げる分は残りません。
韓国と台湾も、同じ14日に下げています
「東京だけが先に受けた」と言い切るのは、少し行き過ぎだと思います。14日はKOSPIが3.26%安、SKハイニックスが6.35%安、サムスン電子が4.05%安でした。台湾加権指数は0.70%安、TSMCは1.24%安です。
月曜のアジアがそろって先に下げ、その夜にニューヨークが追いついた、というのが実際のところだと思います。そのなかで東京は、翌15日の戻りがいちばん早い部類でした。
前夜に、反対向きの発言も出ています
14日の米国市場が引けたあと、ロサンゼルスで開かれていた会議の壇上にトランプ大統領から電話が入り、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOとのやり取りが公開されたと報じられています。2人ともAI開発のペースを落とすことには反対の立場で、日本時間では15日の朝、東京が開く前の時間帯にあたります。
15日の東京が戻した理由には、これも入っていると思います。ただ、発言が出たのは東京が開く前なのに、寄り付きは302円62銭安で、9時5分に安値をつけてから切り返しています。発言だけで買われたのなら、寄り付きから高く始まっていたはずです。下げの材料を先に消化し終えていたところへ、前夜の発言が重なった形だと見ています。
円安で支えられただけ、とも言いにくい形です
ドル円は155円18銭で、前営業日から57銭の円安です。ただし円安の効きやすい輸送用機器は0.17%安、電気機器も0.46%安で、どちらも33業種の真ん中あたりでした。円安を理由に輸出株が買われた形跡は、この日の業種の並びからは見えません。
入れ替えも東京が先でした|作る側を売って、使う側を買う
東京が日中にやった入れ替えを、その夜のニューヨークがなぞりました。
14日の東京では、装置やメモリーを作る側が売られる一方で、富士通が7.39%高、NECが6.90%高と、AIを業務に組み込む側が買われました。前日の記事では、この2つを「作る側」「使う側」として数えています。
その夜のニューヨークで起きたのは、同じ形でした。SOXは5.86%安で、エヌビディアが3.36%安、AMDが4.40%安、ブロードコムが4.77%安。
いっぽうでクラウドストライクが13.85%高、サービスナウが7.41%高、セールスフォースが4.73%高、アルファベットが3.22%高、マイクロソフトが1.97%高。ナスダック総合が0.56%安にとどまったのは、この逆行高があったからです。
そして15日の東京は、その入れ替えを巻き戻しました。富士通は2.01%安、NECは1.11%安。前日に10.72%安だったソフトバンクグループは7.54%高です。
日本株は寄り付き前の海外の動きで方向が決まりやすく、上げの多くが夜のうちに起きていることは以前に数えました。今回の14日は、その関係が反対を向いた日だったと思います。
指数が動かなかったのは、1社ぶんでした
日経平均の8円89銭安は、1銘柄の押し上げで作られています。
図2:左が9月15日に日経平均を動かした金額(寄与額)の上位6銘柄と下位5銘柄、右がその結果の日経平均の前日比です。左右とも単位は円で、同じ物差しで描いています。
ソフトバンクグループの押し上げは353円99銭でした。日経平均の前日比は8円89銭安ですから、この1社を外すと362円88銭安になります。
押し下げの側はアドバンテストが222円05銭で、2位の東京エレクトロン28円16銭を大きく離しています。半導体が静かだったといっても、日経平均のなかではアドバンテスト1社の下げが効いていました。
前日14日は、同じソフトバンクグループが563円98銭を押し下げて、日経平均は518円35銭安でした。2営業日続けて、1銘柄で指数の向きが決まっています。日経平均が一部の銘柄にどれだけ寄っているかは、10年ぶんのウエートで数えた記事にまとめています。
売買代金の首位はキオクシアホールディングスの1兆4,976億円で、東証プライムの売買代金7兆4,384億円のおよそ20%にあたります。指数は動かなかった一方で、代金は1社に寄っていました。
金利が3.03%まで上がったのに、銀行と保険は下げました
33業種は上昇8・下落25で、指数の横ばいとは中身が違います。
| 上がった業種 | 値上がり率 | 下げた業種 | 値上がり率 |
|---|---|---|---|
| 情報・通信業 | +2.07% | 石油・石炭製品 | -2.24% |
| 医薬品 | +1.12% | 銀行業 | -1.85% |
| サービス業 | +0.74% | 証券・商品先物業 | -1.60% |
| ガラス・土石製品 | +0.50% | 保険業 | -1.48% |
| パルプ・紙 | +0.35% | 卸売業 | -1.44% |
東証33業種の上位5業種と下位5業種です。上げたのは8業種、下げたのは25業種でした。
国内の長期金利はこの日、一時3.03%まで上がりました。それでも銀行業は1.85%安、保険業は1.48%安、証券・商品先物業は1.60%安です。三井住友フィナンシャルグループが2.67%安、りそなホールディングスが3.24%安、東京海上ホールディングスが1.51%安でした。
いちばん下げたのは石油・石炭製品の2.24%安です。WTI原油は103.75ドルで2.33%高と3日続伸しているので、原油と反対を向いています。
どちらも18日の日銀の会合を前に、前週からの上げを利益確定する動きだと私は見ています。金利や原油の水準が理由なら、こうはならないはずだからです。
明日以降|2つの会合と5連休、それに半導体の中身
今週は金融政策の週で、そのあとに5連休が控えています。
- ① 16日のFOMC。結果が出るのは日本時間17日の午前3時で、ウォーシュFRB議長の記者会見が続きます。米10年国債の利回りは5.045%まで上がっています。
- ② 18日の日銀の会合と、同じ日の朝に出る8月の全国消費者物価指数。国内の長期金利もこの日、一時3.03%をつけました。この日売られた銀行・保険は、イベントを通過してから改めて見たいところです。
- ③ 19日からの5連休。21日が敬老の日、22日が11年ぶりの「国民の休日」、23日が秋分の日で、東京市場は18日(金)の大引けから24日(木)の寄り付きまで開きません。連休をまたぐぶんの持ち高をどうするかは、17日・18日の売買に出やすいところです。
- ④ 半導体のなかの二極化。この日はアドバンテストが2.96%安、キオクシアホールディングスが2.29%高、太陽誘電が5.54%高と、装置と部品・メモリーで向きが割れました。どちらに資金が残るかで、電気機器の見え方が変わります。
あすは7月の機械受注、8月の貿易統計、8月の訪日外国人客数の発表があります。
まとめ
9月15日のマーケット・3行まとめ
日経平均は8円89銭安の6万3,484円10銭。前日のニューヨークで米SOX指数が5.86%安だったのに、日本の半導体主力9社は平均0.29%高で終わりました。
9月9日の終値からの合計は、日本の半導体9社が6.19%安、米SOX指数が6.71%安。下げ幅はほぼ同じで、違ったのは下げた日でした。東京は11日と14日に、ニューヨークは14日に下げています。
指数が横ばいで収まったのはソフトバンクグループ1社の押し上げ353円99銭によるもので、これを除くと362円88銭安。TOPIXは0.52%安で、33業種は上昇8・下落25でした。
14日の東京が日中にやった「作る側を売って使う側を買う」入れ替えは、その夜のニューヨークでも同じ形で起きました。東京が海外の後追いをするだけ、とは限らない日だったと思います。
土日に出たAI開発の減速の話を、日本が先に、そのあとアメリカが織り込んだ。この3営業日は、その順番だったと私は見ています。記事の中身も、その順番で並べました。
減速の話そのものがどうなるかは、まだ分かりません。14日の米国では、大引け後にトランプ大統領とエヌビディアのフアンCEOが、開発のペースを落とすことに2人とも反対の立場を示したと報じられています。減速を求める側と、そうさせない側の両方が同じ週に出てきた形です。
相場のほうは、商いに厚みを感じません。東証プライムの値上がりは801銘柄、値下がりは685銘柄でほぼ拮抗し、33業種は8勝25敗でした。売買代金は7兆4,384億円と前日より増えていますが、そのおよそ2割はキオクシアホールディングス1社です。
そのうえ16日にFOMC、18日に日銀の会合、19日から5連休があり、米10年国債の利回りは5.045%、国内の長期金利も一時3.03%と高い水準にあります。いま株を買う理由が思いつかない、という状況だと感じています。
私自身も様子見を強めていて、積極的な買いは控えています。
日本の半導体9社(図1・表):東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)、レーザーテック(6920)、SUMCO(3436)、ルネサスエレクトロニクス(6723)、イビデン(4062)、SCREENホールディングス(7735)、キオクシアホールディングス(285A)の9社。各日の終値から前日比を出し、1社1票の単純平均として数えました。株価はYahoo!ファイナンスの日足、期間は2026年9月9日から9月15日までです。
米SOX指数:フィラデルフィア半導体株指数の日足終値。9月9日11,931.32、9月10日11,614.17、9月11日11,824.00、9月14日11,131.28。9月9日からの変化率は6.71%安です。東京の9社は9月9日の終値から9月15日の終値までで平均6.19%安でした。
寄与額:大引け後に公表された市場データにもとづく概算です。ソフトバンクグループの15日の寄与は353円99銭、14日は563円98銭の押し下げ。日経平均の前日比8円89銭安から前者を差し引いて362円88銭安としています。
韓国・台湾:KOSPI、台湾加権指数、サムスン電子、SKハイニックス、TSMCの日足終値から前日比を出しました。
日経平均がどれだけ一部の銘柄に寄っているかは「日経平均は上位3社で決まる」は本当かに、米SOXと日本の半導体の関係は「米SOXが下がった翌日は、日本の半導体も下がる」は本当かにまとめています。半導体株そのものの見方は日本の半導体株の見極め方、毎日の数字は日次レポートで追っています。















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