2025年10月29日、日経平均株価は2.17%上がって最高値を更新しました。ニュースはどこも「日本株、最高値」と伝えていました。
ところがその日、日経平均に入っている225社のうち181社は下げていました。8割です。
私はこの日のことをよく覚えていて、「これはもうアドバンテストの指数じゃないか」と思いました。実際に数えてみると、その感覚はかなり正確でした。アドバンテスト1社を取り除くと、この日の日経平均は+0.13%。ほとんど動いていなかったことになります。
この日にかぎった話ではありません。日経平均が連日のように最高値を更新していたあの時期、私は「指数は上がっているのに、自分の持ち株はついていかない」と感じることが何度もありました。中身を数えてみたら、そういう日が本当にあることが分かりました。この話は記事の後半で数字にします。
残りの220社が何をしても関係ない。
「インチキ指数」「欠陥指数」という言い方も見かけます。私自身、日本を代表する指数のはずなのにおかしくないか、と思いながら見てきました。ただ、けなす前に中身を数えたことがなかったので、今回それをやります。
この記事で答えるのは、次の5つです。
- いま、どれだけ偏っているのか。それは他の指数と比べて多いのか
- いま日経平均に効く銘柄・業種と、効かない銘柄・業種はどれか(早見表にしました)
- 偏りだしたのは最近なのか、昔からなのか
- なぜ主役が入れ替わるのか。トヨタが上がれば「自動車の指数」になるのか
- 結局、「残りの220社は関係ない」と言えるのか
まず、日経平均がどうやって計算されているか
日経平均は、225社の株価をもとに計算する指数です。時価総額(会社の大きさ)は使いません。
ただし、実際の計算は2段階になっています。ここを知らないままだと、「なぜ1社で1割も占めるのか」がずっと分からないままになります。私も長いあいだ、なんとなくしか分かっていませんでした。
1段階目:株価に「株価換算係数」を掛ける
会社ごとに株価換算係数という掛け算の数字が決まっています。決めているのは日本経済新聞社で、ルールは3つです。①2021年にこの仕組みに切り替えたとき、それまでの「みなし額面」から機械的に換算した(額面50円の会社は1)。②株式分割・併合があれば、その比率どおりに係数を掛ける(トヨタの5は2021年の5分割、三菱自動車の0.1は2018年の併合)。③新しく採用する会社は原則1だが、それだと重くなりすぎる場合は0.1〜0.9に下げる(ディスコの0.2など)。この掛け算をしたあとの数字が、日経平均の計算で使われる「その会社の株価」になります。
たとえばアドバンテストは33,690円×7.2=242,568円、三菱自動車は393円×0.1=39円です。実際の株価の差は86倍ですが、係数を掛けたあとは約6,100倍の差になります。
2段階目:225社ぶんを全部足して、除数で割る
1段階目で出した「計算に使う株価」を225社ぶん足すと、1,978,158円(8月31日)。これを除数という数(この日は29.83110217)で割ると、66,311.93円。これがその日の日経平均株価そのものです。ニュースで見る「日経平均、66,311円」はこうやって出ています。
「225で割るんじゃないの?」——私も最初はそう思っていました。実際に225で割ってみると1,978,158 ÷ 225 = 8,792円で、本当の日経平均(66,312円)と7.5倍もちがいます。
理由は、株式分割や銘柄の入れ替えがあっても指数が飛ばないように、そのたびに除数のほうを調整してきたからです。その結果、割る数は225から29.83まで下がりました。名前は「平均」ですが、割る数が小さいので、1社の株価の動きがそのまま大きく響く数字になっています。
この2段階が分かると、1社の重さも出せます
同じ割り算を1社ぶんだけやれば、その会社が日経平均の何円ぶんを作っているかが出ます。この記事ではこれを「受け持ち円分」と呼びます。
| 銘柄 | 計算に使う株価 | 受け持ち円分(÷除数) | 日経平均の割合 |
|---|---|---|---|
| アドバンテスト | 242,568円 | 8,131円ぶん | 12.26% |
| ファーストリテイリング | 173,880円 | 5,829円ぶん | 8.79% |
| トヨタ自動車 | 15,780円 | 529円ぶん | 0.80% |
| 三菱自動車工業 | 39円 | 1.3円ぶん | 0.002% |
225社の平均は「1社で295円ぶん」なので、アドバンテストはその27倍を1社で受け持っていることになります。
そして受け持ち円分の1%が、その会社が1%動いたときに日経平均が動く円です。アドバンテストなら81円、三菱自動車なら0.013円。この記事ではこの数字を物差しに使います。
ただし「株価が高ければ効く」とは限りません。ディスコの株価は58,120円で東京エレクトロン(56,440円)とほぼ同じですが、係数が0.2なので、1%上がっても日経平均は3.9円しか動きません。東京エレクトロンは56.8円で、14倍の差があります。効き目を決めるのは株価そのものではなく、株価と係数を掛けた額です。
いま、どれだけ偏っているのか
225社をウエート(日経平均に占める割合)の大きい順に並べて、上から足していったのが次の図です。
上位3社はアドバンテスト12.26%、ファーストリテイリング8.79%、東京エレクトロン8.56%で、合わせて29.61%。上から10社で48.32%と、ほぼ半分です。
「29.6%」は、偏っているのか、ふつうなのか
数字だけ見せられても、それが多いのか少ないのか分かりません。同じ物差し(上位3社と上位10社が全体の何%か)で、TOPIXとS&P500も測ってみました。
S&P500も「AIの数社に偏っている」とよく言われる指数ですが、日経平均はそれよりさらに偏っています。TOPIXは日経平均の3分の1以下でした。
面白いのは、同じ会社でも指数によって扱いが全然違うことです。アドバンテストは日経平均では12.26%で1位ですが、TOPIXでは1.7%で9位。逆に三菱UFJはTOPIXで3.9%の1位ですが、日経平均では0.186%しかありません。三菱UFJでいえば、指数を替えると20倍以上ちがう重さで扱われています。
上位3社で3割、上位10社で半分。他の指数と並べても、日経平均の偏り方は突出しています。ここまでは通説のとおりです。
効く業種と、効かない業種
いま、どの業種が日経平均を動かしていて、どの業種が動かしていないのか。業種ごとにまとめたのが次の図です。
電気機器が32社で38.08%。この業種がそろって1%上がるだけで、日経平均は252円動きます。ただし電気機器の中も平らではなく、アドバンテストと東京エレクトロンの2社だけで20.82%。電気機器32社の合計の半分以上を、この2社が占めています。「結局、半導体なのか」への答えは「かなりの部分はそうです」になります。
銀行のなかを見ると、もうひとつ気づくことがあります。日経平均に入っている銀行10社のうちいちばん重いのは、しずおかFG(0.1864%)でした。三菱UFJ(0.1860%)をわずかに上回っています。時価総額でいえば桁が違う2社が、日経平均の中ではほぼ同じ重さで扱われている、ということです。
効く銘柄・効かない銘柄の早見表
業種でまとめると分かりやすい反面、同じ業種でも銘柄ごとに大きく違います。銘柄で並べたのが次の表です。いちばん右の「1%で日経が何円動くか」だけ見れば足ります。
| 銘柄 | ウエート | 1%で日経が動く円 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 【効く】1%動くと日経平均が10円以上動く12社。この12社だけで日経平均の51.4% | |||||
| アドバンテスト | 12.26% | 81.3円 | |||
| ファーストリテイリング | 8.79% | 58.3円 | |||
| 東京エレクトロン | 8.56% | 56.8円 | |||
| ソフトバンクG | 6.31% | 41.8円 | |||
| リクルートHD | 2.76% | 18.3円 | |||
| TDK | 2.33% | 15.5円 | |||
| イビデン | 2.07% | 13.7円 | |||
| KDDI | 1.80% | 11.9円 | |||
| キオクシアHD | 1.77% | 11.7円 | |||
| フジクラ | 1.67% | 11.1円 | |||
| ファナック | 1.53% | 10.1円 | |||
| 信越化学工業 | 1.52% | 10.1円 | |||
| 【ふつう】1%で1〜10円102社。合わせて41.0% | |||||
| 京セラ | 1.48% | 9.8円 | |||
| ダイキン工業 | 1.07% | 7.1円 | |||
| 中外製薬 | 1.05% | 7.0円 | |||
| テルモ | 1.02% | 6.7円 | |||
| ソニーG | 1.02% | 6.7円 | |||
| 村田製作所 | 0.87% | 5.8円 | |||
| 三菱商事 | 0.73% | 4.8円 | |||
| レーザーテック | 0.68% | 4.5円 | |||
| デンソー | 0.39% | 2.6円 | |||
| ニトリHD | 0.39% | 2.6円 | |||
| セブン&アイ・HD | 0.31% | 2.0円 | |||
| 三菱UFJFG | 0.19% | 1.2円 | |||
| 【ほとんど効かない】1%上がっても日経平均は1円も動かない111社。全部足しても7.7% | |||||
| ソフトバンク | 0.12% | 0.80円 | |||
| 日本郵船 | 0.11% | 0.71円 | |||
| 三井住友FG | 0.11% | 0.70円 | |||
| NTT | 0.09% | 0.58円 | |||
| 東日本旅客鉄道 | 0.05% | 0.36円 | |||
| みずほFG | 0.04% | 0.29円 | |||
| 日本製鉄 | 0.02% | 0.11円 | |||
| 日産自動車 | 0.02% | 0.11円 | |||
| 中部電力 | 0.01% | 0.096円 | |||
| りそなHD | 0.01% | 0.085円 | |||
| 東京電力HD | 0.00% | 0.018円 | |||
| 三菱自動車工業 | 0.00% | 0.013円 | |||
効かない側の最小は三菱自動車で、1%上がっても日経平均は0.013円。アドバンテストとの差は6,100倍でした。
この表でいちばん言いたいのは、1%上がっても日経平均が1円も動かない銘柄が111社あることです。225社のほぼ半分が、その日の日経平均にほとんど関係していません。裏を返すと、日経平均の上げ下げは、この111社が何をしたかをほとんど映していないということでもあります。
では「日経3」でないなら「日経いくつ」なのか。上から数えると、100社で日経平均の90.1%を受け持っています。残り125社は全部足しても9.9%、下から40社は全部足しても1%に届きません。重さだけで言えば、いまの日経平均は「日経100」でほぼ再現できる指数です。
偏りは、今に始まったことなのか
ここまでは「いまの写真」です。次は10年ぶんの動画にします。過去の株価換算係数は公表されていないので、いまの係数を過去の株価に当てはめて、各時点のウエートを組み直しました(細かい条件は記事末尾の▼検証条件に)。顔ぶれはいまの225社で通しているので、当時の実際の日経平均とは少し違います。
2021年2月のファーストリテイリングは12.13%、2024年9月は12.29%。
いまのアドバンテスト(12.26%)とほぼ同じです。
私は「日経平均の歪みを作っているのはアドバンテストだ」と思っていました。でも数字はそう言っていません。1位が指数の1割以上を占める状態は、10年前から続いていて、その席に座っている会社が入れ替わっただけです。10年前から2025年8月まで、その席にいたのはほぼずっとファーストリテイリングでした。
では何も変わっていないのかというと、そうでもありません。変わったのは、1位の下に並ぶ会社の重さでした。1位だけ見れば昔と同じでも、上位10社まで広げると倍近くになっています。
なぜ、主役は入れ替わるのか
半導体が強かったから株価が上がって、値がさになって、それで効くようになっただけではないのか。
答えは、ほぼその通りです。そしてそれこそが株価平均型(時価総額ではなく株価を足して作る型)という作りの性質でした。株価が上がれば、その分だけそのまま受け持ちが増え、次の日からもっと効くようになります。
| 銘柄 | 株価 | 日経平均の伸びの何倍か |
|---|---|---|
| アドバンテスト | 99.1倍 | 24.6倍 |
| フジクラ | 60.4倍 | 15.0倍 |
| イビデン | 30.4倍 | 7.5倍 |
| 東京エレクトロン | 19.1倍 | 4.7倍 |
| 日立製作所 | 11.6倍 | 2.9倍 |
| 三菱UFJ FG | 7.3倍 | 1.8倍 |
| ファーストリテイリング | 6.7倍 | 1.7倍 |
| ソニーグループ | 6.1倍 | 1.5倍 |
| トヨタ自動車 | 2.7倍 | 0.7倍 |
逆にトヨタの伸びは日経平均の0.7倍にとどまったので、割合は1.25%から0.80%へ下がっています。
「新しく採用されたから上位に来ただけではないのか」——そうではありませんでした。アドバンテストも東京エレクトロンも、10年前から日経平均に入っています。アドバンテストは当時0.59%だった会社が、株価が99倍になった結果、いまの12.26%になりました。入れ替えではなく、株価だけでここまで来ています。
そしてもうひとつ。日立製作所は株価が11.6倍と、日経平均の2.9倍伸びています。それでも日経平均に占める割合は、いまも0.27%です。株価が5,438円で係数が1だからです。同じ「株価が上がった」でも、株価の水準と係数しだいで、指数への効き方はまったく違います。
トヨタが上がったら、「自動車の指数」になるのか
半導体に偏っているのは分かりました。では自動車がぐんぐん上がったら、今度は自動車の指数になるのか。
答えは「仕組みのうえではあり得るが、トヨタの株価がいまの15倍になる必要がある」でした。
トヨタが1%上がったときに日経平均が動くのは5.29円です。アドバンテストは81.3円ですから、15.4倍の差があります。トヨタの株価が2倍になっても、日経平均に占める割合は1.58%。いまのアドバンテスト1社ぶん(8,131円の受け持ち)に並ぶには、トヨタの株価が15.4倍(1株あたり約48,600円)必要という計算になります。時価総額でいえば、約46兆円が約710兆円になる計算です※。
あり得ないとは言いません。アドバンテスト自身が、10年で株価99倍・0.59%から12.26%へ来た会社です。ただしアドバンテストは株価3万円台に係数7.2、トヨタは株価3千円台に係数5なので、同じ道をたどるには、アドバンテストと同じ倍率ではなく、その15倍多く上がらないといけません。自動運転などで自動車株が半導体株のようになったとしても、トヨタ1社の株価が15倍というのは、それだけ重い条件です。
業種でも同じです。自動車10社を全部足しても、アドバンテスト1社の5分の1以下。10社がそろって1%上がっても日経平均は15円しか動きません。時価総額なら日本最大級のトヨタが、日経平均のなかではこの扱いです。理由は単純で、株価平均型は「会社の大きさ」ではなく「株価の高さ(と係数)」で重みが決まるからです。
で、「残りの220社は関係ない」と言えるのか
偏っているのは事実として、それで日経平均の上げ下げが本当に決まっているのか。その日の日経平均の動きから1社ぶんだけを取り除いて、上げと下げが逆になるかを見ます。逆になったなら、その日の日経平均の向きはその1社が決めていたことになります。
ひとつ条件を付けました。日経平均が0.2%以上動いた日だけを数えます。ほとんど動かなかった日は、どの銘柄を抜いても上げ下げが入れ替わりやすく、数えても意味がないからです。
アドバンテストは2022年まで1日もありません。2023年に初めて1日出て、2025年は6日、2026年は9月9日までに4日です。
ファーストリテイリングのウエートは10年間ずっと7〜11%あって、2026年のアドバンテスト(年平均11.3%)とほとんど変わりません。それなのに、1社で日経平均の向きを変えた日は年0〜2日。10年で13日だけです。
ウエートが大きいだけでは、指数を振り回すことにはならないということになります。
なぜアドバンテストだけが、これほど振り回すのか
ウエートはほぼ同じなのに、動かす力が違う。理由は1日の値幅です。日経平均をどれだけ動かすかは、ウエートだけでは決まりません。
ウエートが「席の大きさ」だとすると、値幅は「その席の人がどれだけ動くか」です。席が大きくても静かに座っていれば、指数はほとんど動きません。
| ウエート(年平均) | 1日の値幅 | 日経を動かす幅 | |
|---|---|---|---|
| 2016年 | |||
| アドバンテスト | 0.6% | 1.66% | 0.010% |
| ファーストリテイリング | 7.6% | 1.56% | 0.117% |
| (日経平均の1日の値幅) | ― | ― | 0.77% |
| 2026年 | |||
| アドバンテスト | 11.3% | 3.72% | 0.417% |
| ファーストリテイリング | 9.5% | 1.56% | 0.148% |
| (日経平均の1日の値幅) | ― | ― | 1.51% |
2026年の日経平均は1日に平均1.51%動いていますが、その3割近く(0.417%)をアドバンテスト1社が作っていることになります。
ファーストリテイリングは席は大きいけれど、静かに座っていたわけです。アドバンテストは席が大きくなったうえに、値幅が1.66%から3.72%へ荒くなりました。半導体やAI関連の材料で大きく飛ぶ銘柄なので、その荒さがそのまま日経平均に乗ります。
冒頭に書いた2025年10月29日(日経平均が最高値を更新したのに181社が下げた日)はその極端な例です。この日アドバンテストは+22%のストップ高で、1社で日経平均を2.12ポイント押し上げました。上にも下にも効くので、荒い銘柄の比重が増えたぶん、日経平均そのものの値幅も0.77%から1.51%へ倍になっています。
それでも「関係ない」とは言えません
上位3社のうちどれか1社で向きが変わった日は、2016〜2022年は年0〜2日でした。それが2025年は10日、2026年は147日中7日。21日に1日の割合です。「上位3社で決まる」と言い切れる日は確かに増えましたが、残りの20日は220社の側が向きを決めています。
もうひとつの数え方だと、もっと多くなります。225社の値動きをそのまま平均したもの(1社1票の多数決に近い数字)と、日経平均の向きが逆になった日は、2017年が184日中3日だったのに対し、2026年は147日中24日(16%)。61日に1日から6日に1日へ、10倍に増えています。
1社で向きが変わる日は増えました。それは本当です。
でも「残りの220社が何をしても関係ない」と言えるのは、21日に1日だけです。
「日経は上がっているのに、自分の持ち株は上がらない」の正体
冒頭の「指数は上がっているのに、自分の持ち株はついていかない」は、こういうことでした。
まず、日経平均が上がった日が、日本株全体が上がった日とはかぎりません。2025年10月29日は日経平均が2.17%上がりましたが、225社のうち181社は下げていました。ここまで極端でなくても、日経平均がプラスなのに7割以上の銘柄が下げていた日は、この10年で9日ありました。そのうち7日が2023年以降です。
225社の値動きをそのまま平均した「1社1票の多数決」と日経平均の向きが逆だった日は、2026年は6日に1日。10年前は61日に1日でした。体感がずれる日は10倍に増えています。
つまり、あの感覚の正体は、その日の上昇が数社に集中していて、日経平均がそれを「日本株全体の上昇」として表示していた、ということでした。上がっていたのは上位の数社で、それを持っていなければ自分の資産は増えません。
ウエートはその銘柄が日経平均を動かす力であって、その銘柄の上がりやすさとは関係ありません。三菱自動車のウエートは0.002%ですが、三菱自動車の株価が10%上がれば、持っている人の資産は10%増えます。日経平均がそれを表示しないだけです。
だから「効かない銘柄を持っているから上がらない」のではなく、「その日に上がっていた数社を持っていなかった」というのが正確なところです。
逆も起きます。日経平均が下げた日に自分の持ち株が平気だった、という日もあるはずです。同じ理由です。
10月1日に、仕組みが少し変わります
日経平均には、1銘柄が大きくなりすぎないようにする上限(ウエートキャップ)の仕組みが2022年10月から入っています。1月末と7月末の時点で10%を超えていると、係数が段階的に下げられます。
10年でこれが働いたのは4回だけです。
| 適用日 | 銘柄 | 係数 |
|---|---|---|
| 2024年10月1日 | ファーストリテイリング | 3.0 → 2.7 |
| 2025年4月1日 | ファーストリテイリング | 2.7 → 2.4 |
| 2026年4月1日 | アドバンテスト | 8.0 → 7.2 |
| 2026年10月1日 | アドバンテスト | 7.2 → 6.4 |
この仕組みで偏りが直るのかというと、そこまでは期待しにくいところです。上限は10%ですが、係数を下げても株価が上がればすぐ戻ります。実際、アドバンテストは2026年4月に下げられたあとも、8月末で12.26%まで戻っています。
この結果、実践にどう活かす?
まとめ
- 〇偏っているのは本当。上位3社で29.6%、上位10社で48.3%。S&P500の1.5倍、TOPIXの3.2倍
- △「いまの」と言うほど新しい話ではない。「1社で1割超」は10年前からで、ファーストリテイリングは2021年2月に12.13%、2024年9月に12.29%あった
- 〇変わったのは振り回す力。ファーストリテイリングは同じくらいのウエートがあっても1社で向きを変えた日は年0〜2日。アドバンテストは2022年まで0日、2025年に6日
- 〇その正体はウエートではなく値幅。アドバンテストが1日に日経平均を動かす幅は0.417%で、ほぼ同じウエートのファーストリテイリング(0.148%)の2.8倍(3倍近く)
- ×「残りの220社が何をしても関係ない」は言い過ぎ。21日に1日の話で、残りの20日は220社の側が向きを決めている
いちばん変わったのは1位の顔ぶれではなく、その1位がどれだけ暴れるかでした。アドバンテストが日経平均を動かす幅は10年で42倍、ファーストリテイリングは1.3倍です。
よくある質問
株価換算係数:公表されていないため、ウエート×日経平均終値×除数÷同日終値で逆算した。225社すべてで公表ウエートを再現でき、アドバンテストは公表値の7.2と一致した。
過去のウエート:分割調整した株価に、逆算した係数を掛けて各時点で組み直した。上限(キャップ)で係数が変わった4回は、その時点の係数に置き換えている。構成銘柄は現在の225社で遡っているため、当時の顔ぶれとは一部異なる。集計期間は2016年9月〜2026年8月(月末ごと)。向きが逆になった日の集計は2026年9月9日まで。
向きが逆になった日:日々の値動きをウエートで足し合わせて日経平均の動きを組み直し、そこから対象を除いた場合と符号を比べた。日経平均が0.2%以上動いた日だけを数えている(ほとんど動かなかった日は、どの銘柄を除いても符号が変わりやすいため)。0.05%以上で数えるとファーストリテイリングは年3〜7日になるが、その大半は日経平均が0.2%も動かなかった日だった。
1日の値幅:上下どちらも大きさとして数えた、その年の平均(絶対値の平均)。「日経平均を動かす幅」はウエート×値幅で、方向は考えていない。
この記事は「偶然かどうか」を測る回ではありません。ウエートも日数も推計ではなく数え上げなので、他の検証記事で使っている「まぐれでもこのくらいは出る範囲」の帯は置いていません。
比較の指数:TOPIXは「はじめてのNISA・日本株式インデックス(TOPIX)」の月次レポート(2026年7月31日)、S&P500はSPYの組入比率(2026年8月19日)。小数第1位までの公表値を足しているため、合計に若干の丸め誤差がある。
- 日経平均株価の算出要領・株価換算係数・ウエートキャップについては、日経平均プロフィル(日本経済新聞社)の公表資料による。
- キャップによる係数変更は「「◯◯」に対する指数算出上の取り扱いについて」として公表される(2024年7月31日・2025年1月31日・2026年1月30日・2026年7月31日)。
- ウエートキャップの導入は2022年10月、株価換算係数という仕組み自体の導入は2021年10月(それ以前は「みなし額面」による調整)。
- 2025年10月29日のアドバンテストのストップ高は、前日の営業利益計画の上方修正と自社株買いの発表による。
- 株価はYahoo!ファイナンスの日足(分割調整ずみ)を使用した。
- トヨタの時価総額は、2026年6月30日の自己株式消却後の発行済株式総数14,594,987,460株(トヨタ自動車「株式の状況」)×8月31日終値3,156円で計算した約46.1兆円。15.4倍で約709兆円。















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