2026年11月5日、日経平均は1,110円安の6万1,077円(−1.79%)と4日続落しました。ただ、同じ日にTOPIXは+1.16%で、東証プライムは値上がり1,130銘柄・値下がり410銘柄。下げた株より上げた株が3倍近く多い日でした。
前日に結果が出た米中間選挙で民主党が上下両院を取り、アメリカではAI・半導体と防衛・石油が売られ、病院・小売・再生エネルギーが買われました。日本でもその向きがそのまま出て、トランプ就任から買われてきた群が売られ、置いていかれていた群が買われる、きれいな入れ替わりになっています。
① 日経平均の下げ1,110円のうち、アドバンテスト1銘柄で約1,097円。半導体を除けば、上げた日です。
② 私のサブ業種139群で見ると、トランプ就任から強かった上位28群は選挙後2日で平均−5.3%、弱かった下位28群は平均+3.2%(TOPIXとの差)。
③ 信用買いの含み損は、市場全体で−16〜−18%。半導体の主力は−30〜−45%で、追証と投げが出やすい水準です。
11月5日の相場|1,110円安の中身は、ほぼ半導体でした
33業種のうち25業種が上げ、下げたのは半導体と資源です。
朝は400円超高で始まり、6万2,600円台で買いが止まりました。10時台にマイナスに転じ、引けにかけて下げ幅を広げています。安値は6万786円で、前日の6万30円は割れていません。
アドバンテストが−14.70%(2万9,485円)、東京エレクトロン−9.41%、ソフトバンクグループ−6.76%、キオクシアホールディングス−13.14%(9,324円)。アドバンテスト1銘柄で日経平均を約1,097円押し下げており、この1銘柄が下げ幅のほぼ全部です。村田製作所はストップ安の−16.57%でした。
反対に、33業種の上位は輸送用機器・不動産・ゴム製品・空運・その他製品。トヨタ自動車が+16.7%、三菱地所+9.9%、日本航空+8.0%です。売買代金は東証プライムで11兆7,850億円と、前日(10兆8,100億円)に続いて2日連続の10兆円超でした。
アメリカの反応|民主党勝利で買われたもの、売られたもの
選挙の翌日、ダウは+3.0%。売られたのは半導体・防衛・石油だけでした。
4日の米国市場はダウ+3.03%、S&P500+1.58%、ナスダック+1.44%。恐怖指数(VIX)は20.8から16.6に下がり、原油(WTI)は−8.3%の88ドル、10年債利回りは4.95%から4.88%に下がりました。市場全体は選挙結果を歓迎した形です。
その中で、業種ごとの向きははっきり分かれています。
| アメリカで | 業種 | 4日の値動き | 市場が織り込んだこと |
|---|---|---|---|
| 買われた | 病院・医療保険 | +10%前後 | メディケイド(低所得者向け医療保険)の削減が止まる |
| 生活必需品・ディスカウント小売 | +9.6% | (報道に理由の記載なし。業種ETFが最高値) | |
| 大手IT(マイクロソフト・アマゾン・アップル) | +5〜7% | データセンター規制は、すでに計算能力を持つ大手に有利 | |
| 太陽光・再生エネルギー | +4.6% | 再生エネ支援に戻る | |
| 売られた | 防衛 | −4.5〜−6.9% | イランとの戦争が終わりに向かう |
| 石油・エネルギー | −4.6〜−5.2% | 同上(原油−8%) | |
| 半導体(SOX指数)・データセンター | −3.1%(データセンター関連は−10%前後) | AIインフラへの規制・監視が強まる |
4日の米国市場。業種の値動きはOANDA証券とBusiness Insiderの報道によるものです。「織り込んだこと」は報道で挙げられた理由で、私の推測ではありません。
アメリカの「ハイテク」は下がっていません。大手ITは+5〜7%で、売られたのは半導体・データセンターという「AIインフラ」の側だけでした。日本で売られたのも同じ側で、今日の下げを「ハイテク売り」と呼ぶのは正確ではありません。
ただ、日本には買われた側の受け皿になる大型のハイテク株がありませんでした。電機・精密の時価総額1兆円以上36社で選挙後2日にTOPIXに勝ったのは、テルモ・オリンパスなど医療機器を中心に6社だけで、日立・富士通・NECも下げています。
トランプ相場の逆回転|139のサブ業種で見ると
トランプ就任から強かった群ほど売られ、弱かった群ほど買われました。
図1は、私が毎日集計している139のサブ業種を、トランプ就任(2025年1月20日)から選挙前(11月2日)までの値動きで並べたものです。左がその期間の値動き、右が選挙後2日(11月4〜5日)の値動きで、どちらもTOPIXとの差で示しています。上の10群がトランプ相場で買われた群、下の10群が置いていかれた群です。
図1:トランプ就任からの値動き(左)と、米中間選挙後2日の値動き(右)。サブ業種139群のうち、左で上位10群と下位10群。色は左右とも、オレンジ=TOPIXに勝った、紺=TOPIXに負けた。
上の10群は、左がオレンジで右が紺。下の10群は、左が紺で右がオレンジです。色が左右で入れ替わった行が、資金が逆向きに動いた群になります。
139群すべてで見ると、トランプ相場で強かった上位28群(上位1/5)は選挙後2日で平均−5.3%、弱かった下位28群は平均+3.2%。下位28群のうち26群がTOPIXに勝ちました。電線−17.2%、半導体製造装置−14.7%、AIインフラ−11.3%。完成車+9.4%、大手デベロッパー+8.8%、空運・空港+7.7%です。
例外は、地銀・総合商社・金
上の10群で右がオレンジのままなのは、総合商社(+3.8%)と金価格・貴金属(+2.5%)。地銀も−0.5%とほぼ動いていません。この3群はトランプ相場で買われていた側ですが、買われた理由は「金利上昇」「金の値上がり」で、トランプの政策そのものではありませんでした。逆回転したのは「関税・AIインフラ・戦争」で買われた群だけ、と私は見ています。
自動車は、決算と重なった日でした
完成車は、トランプ就任からTOPIXに−49%と139群でいちばん弱く、選挙後2日では+9.4%といちばん強い群でした。ただ、5日はトヨタが通期の営業利益見通しを3兆4,000億円から3兆9,000億円に引き上げ、自社株買いの枠を1兆3,000億円に広げた日でもあります。トヨタの+16.7%は決算の分が大きく、日本経済新聞も理由を「上方修正と中東緩和期待」としています。
それでも、同じ日にホンダ+8.0%、日産+10.5%、マツダ+9.3%、SUBARU+9.0%、スズキ+8.9%と、完成車10社がそろって上げました。円相場は157円台と前日より円高です。関税で押さえつけられていた側に資金が戻った、と私は見ていますが、トヨタの決算と重なった日なので、関税だけとは言い切れません。
7月にも、同じ形がありました
同じ形は、7月28〜29日にも出ています。中国の露光装置の量産報道で米半導体株が続落し、日経平均が2,566円下げた2日間です。売られたのは半導体製造装置−16%、FPD・プリント基板−13%、電線−11%。買われたのはエンタメ・IP+11%、二輪+8%、遊技機+8%、完成車+7%で、顔ぶれは今回とほぼ同じでした。
そのあとどうなったかというと、売られた上位28群はその後5日で+7.7%、20日で+5.0%とTOPIXに勝ち、買われた下位28群は5日で−5.6%と元に戻っています。つまり7月の入れ替わりは、2〜3週間で元の主役に資金が帰りました。今回も同じかどうかは、来週の動きで決まります。
信用買いの含み損|市場全体で−16〜−18%、半導体は−30〜−45%
昨日の長い下ヒゲで助かった玉が、今日まとめて沈みました。
JPXが9月末から毎日公表している銘柄別の信用残には「金額」の欄があり、株数で割ると買い方の平均の建値(買った値段)が分かります。11月4日時点の買い残を今日の終値で評価したのが、次の表です。
| 銘柄 | 買い方の平均建値 | 11月5日終値 | 含み損 | 買い残(建値ベース) |
|---|---|---|---|---|
| キオクシアHD | 16,535円 | 9,324円 | −44% | 8,734億円 |
| 古河電気工業 | 3,868円 | 2,143円 | −45% | 739億円 |
| 村田製作所 | 8,129円 | 5,032円 | −38% | 729億円 |
| フジクラ | 4,985円 | 3,260円 | −35% | 1,214億円 |
| ディスコ | 60,803円 | 41,450円 | −32% | 622億円 |
| 東京エレクトロン | 12,314円 | 8,753円 | −29% | 1,460億円 |
| ソフトバンクグループ | 5,632円 | 3,980円 | −29% | 2,375億円 |
| 三菱重工業 | 3,810円 | 3,052円 | −20% | 794億円 |
| アドバンテスト | 34,836円 | 29,485円 | −15% | 1,203億円 |
| (比較)三菱UFJ | 3,296円 | 3,449円 | +5% | 1,276億円 |
| (比較)トヨタ自動車 | 3,043円 | 3,533円 | +16% | 348億円 |
| 市場全体(4,182銘柄) | — | — | −16.4% | 6兆4,362億円 |
11月4日申込分の信用買い残(JPX公表・J-Quants経由)を11月5日の終値で評価。建値=買い残の金額÷株数。市場全体はJPXの週次の公式値(10月30日時点−12.54%)より1.4ポイントほど浅く出る計算なので、公式値に合わせると今日は−18%前後になります。
市場全体の−16〜−18%は、過去1年の公式値の最悪だった10月23日(−13.5%)を大きく超えています。−15〜−20%は、追証と投げが出やすい水準としてよく語られる目安です。キオクシア1銘柄の買い残が8,734億円と市場全体の14%を占めていて、含み損3,800億円の多くがこの1銘柄に集まっています。
半導体の主力は−30〜−45%で、昨日の長い下ヒゲで「助かった」はずの玉が、今日の二番底でまとめて沈んだ形です。アドバンテストだけ浅いのは、上げながら買い残が減っていた(利食いが先に出ていた)ためで、フジクラ・古河電工・村田は下げながら買い残が増えていた(逆張りで積み上げていた)分だけ深くなっています。
ここから|見たい3つ
6万円と25日線、そして来週火曜の信用残です。
図2は日経平均の3月からの日足です。上の段がローソク足と25日線、下の段が25日線からの乖離率(終値が25日線より何%上か下か)で、6万円のゾーンと−7%の線は私が引いたものです。
図2:日経平均の日足(2026年3月2日〜11月5日)。上=ローソク足と25日線、下=25日線からの乖離率。赤い点は6万円のゾーンで止まった日、下段の赤い字は乖離率が−7%前後まで下がった日。
- ① 6万円が持つか。5月20日(安値5万9,292円・終値5万9,804円)、7月29日(安値6万449円)、昨日(安値6万30円)と、6万円前後で3回止まっています。線というより「ゾーン」で、今日の安値6万786円はその上です。乖離率は−6.9%で、−7%前後まで下がった3月23日・7月17日・7月29日は、いずれもその後2日で3〜5%戻しました。戻るなら、第1目標は25日線の6万5,600円前後です。
- ② 日経平均の戻りは、半導体の戻りと同じ意味。TOPIXはプラスで、値上がり銘柄は1,130。崩れているのは日経平均の寄与の大きい数銘柄だけです。日経平均は3銘柄の指数かで書いたとおり、日経平均が7万円を目指す展開は、アドバンテスト・ソフトバンクG・東京エレクトロンが戻る展開とほぼ同じ意味になります。
- ③ 来週火曜の信用残。今週の投げが本当に出たかは、11月10日に出る週次の信用残で確かめられます。買い残が減って評価損率が−12%台に戻っていれば、この2日で売りがあらかた出たと見ることができます。減っていなければ、含み損を抱えた玉がまだ残っていることになります。
まとめ
11月5日のマーケット・3行まとめ
日経平均は1,110円安の6万1,077円。ただしTOPIXは+1.16%、値上がり1,130・値下がり410で、下げはアドバンテスト1銘柄分でした。
民主党勝利で、トランプ就任から買われてきた半導体・電線・AIインフラが売られ、置いていかれていた自動車・小売・不動産が買われました。地銀・商社・金は逆回転していません。
信用買いの含み損は市場全体で−16〜−18%、半導体の主力は−30〜−45%。追証と投げが出やすい水準に入っています。
下げたのは指数で、売られたのはAIインフラだけ。資金は市場の中で移動しただけでした。
私は、個人投資家のストレスがいよいよ限界に来ていると感じています。昨日の長い下ヒゲで「助かった」と思った人にとって、今日の下げは精神的にかなりきついはずです。キオクシアが1万円を割れたのも、1万円を支えと見ていた人には堪えたと思います。
ただ、数字を見ると、崩れているのは日経平均の寄与の大きい数銘柄だけです。6万円のゾーンは5月と7月に2回止まっていて、25日線との乖離も−7%前後と、過去に反発が出てきた水準です。
ただ、もう一段の下げが来て6万円を割れたら、一気に下に走ることも当然考えておく必要があります。含み損が追証の水準に入っている買い方が多いので、支えが外れたときの売りは普段より大きくなりやすいと見ています。反発のシナリオと同じ重さで、割れたときの手当て(どこで逃げるか)を先に決めておくつもりです。
7月の逆回転は2〜3週間で元に戻りました。自動車や小売に移った資金が居座るのか、また半導体に帰るのかは、来週の信用残と、半導体が6万円のゾーンで止まるかどうかで判断したいと思います。
日本株:東証プライム1,539銘柄の日足と信用残はJ-Quants(JPX総研)。日経平均の終値・値上がり値下がり銘柄数・売買代金・アドバンテストの寄与は株探・OANDA証券の大引け後の報道。図2の日経平均の日足・25日線・乖離率はYahoo!ファイナンスの日足から私が計算しました。
米国株と選挙結果:OANDA証券「米中間選挙の結果」(上院 民主54・共和44、下院 民主242・共和151、未確定あり)とBusiness Insider Japanの報道。業種の値動きの幅は報道で挙げられた代表的なETF・銘柄の値です。
サブ業種:東証プライムの構成銘柄を私が139のサブ業種に分け、各群を等金額で集計したものです。「トランプ就任からの値動き」は2025年1月20日の終値から2026年11月2日の終値まで、「選挙後2日」は11月2日の終値から11月5日の終値まで。どちらもTOPIXとの差で示しています。1銘柄が複数のサブ業種に入ることがあります。
信用買いの含み損:JPXが毎営業日公表する銘柄別信用残の「買い残金額÷買い残株数」を買い方の平均建値とし、11月4日申込分の残高を11月5日の終値で評価。同じ方法で10月23日・30日を計算すると公式値(JPX二市場の信用評価損率、トレーダーズ・ウェブ掲載)より1.4ポイント浅く出たため、本文では公式値に合わせた−18%前後も併記しました。
7月の前例:7月28〜29日の2日間について同じ集計を行い、その後5日・20日のTOPIXとの差を見ています。7月28日の下げの理由は日本経済新聞・穂積書房の記事によります。
前の営業日の相場は半導体株、決算で明暗、その前は半導体に戻った資金が、2日でまた逃げ場に帰りましたにまとめています。中間選挙のあとの株価は通説検証#25で調べました。125のサブ業種の毎日の並びは今日の日本株(11月5日)と日次レポートで追っています。














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