2026年10月23日、日経平均は214円68銭安の6万2,693円16銭で続落しました。終値は小さな下げですが、中身は荒れた日です。朝は一時1,445円安の6万1,462円まで下げて6万2,000円を割り、午後に半導体株の押し目買いで1,230円戻しました。
1日の値動きだけ見ると「下で買われた日」。ただ週で見ると、月曜から3.3%下げた大きな陰線です。
株価は安くなった。でも、上で買った人がまだたくさん残っている。この2つが同時に見えた日でした。
① 一時1,445円安から1,230円戻して引けました。前日22日の1,713円安(2.65%安)と合わせ、下げの中心はAI・半導体株です。週足は3.3%の陰線ですが、安値6万1,462円は、2025年4月と2026年3月の安値を結んだ上昇トレンドラインに触れた位置でした。
② 日経平均の指数ベースPERは20.76倍。1年前の25.05倍、4月の26.29倍から下がり、2025年8月以来の低さです。ただし「安い」は、いまの利益見通しが保たれる前提での話です。
③ 信用取引で買っている人の含み損(信用評価損益率)は−10.41%と今年の低さ。それでも買い残は6兆6,640億円と1年前の1.5倍のまま減っていません。戻りを待つ人が多く残っていて、投げ(あきらめの売り)はまだ出ていないと私は見ています。
一時1,445円安から1,230円戻しました|日足は下ヒゲ、週足は陰線です
安いところは拾われた。ただ、週で見ると大きく下げた週です。
きっかけは前日22日の米国市場です。半導体製造装置メーカーの決算が予想を下回り、AI関連株に売りが広がりました。東京は22日に1,713円安(2.65%安)の6万2,907円で7月30日以来の安値。22日は東京エレクトロン1銘柄だけで日経平均を約239円押し下げ、23日はアドバンテスト1銘柄で約293円分です。寄り付きは240円安、下げ幅は一時1,400円台まで広がり、午後に半導体株の押し目買いで縮めました。東証プライムの売買代金は8兆9,383億円、値上がり553銘柄・値下がり951銘柄です。
日足は、始値6万2,667円・終値6万2,693円とほぼ同じ値で、下に1,204円のヒゲが出た十字線(下ヒゲ)。週足は、月曜の始値6万4,819円から金曜の終値6万2,693円まで3.3%下げた陰線で、前週末比2,631円(4.0%)の下げです。日足は「下で買われた日」、週足は「大きく売られた週」。見る時間軸で正反対に見えます。
図1:日経平均の週足(2025年3月〜2026年10月23日)。線は2025年4月7日週の安値3万792円と2026年3月30日週の安値5万558円を結んだもので、今週の位置では約6万1,798円です。今週の安値6万1,462円は、この線の335円下まで下げてから戻しました。
この線は、過去の安値2点を結んで右へ延ばしただけのものです。1年半、日経平均はこの線の上で動いてきました。ここで止まる保証はなく、割ったかどうかは来週以降の終値で見ます。
値段の物差し|PERは20.76倍、2025年8月以来の低さです
安くなったのは本当です。ただ、条件つきです。
日経平均の指数ベースPER(株価が1年分の利益の何倍かを表す数字で、低いほど安い)は、この日20.76倍でした。1年前の2025年10月24日は25.05倍、今年4月24日週の26.29倍が直近の高い値で、そこから21%下がっています。20.76倍より低かったのは2025年8月1日週の20.56倍が最後で、1年2か月余りぶりの低さです。
「株価が下がったからではなく、利益が増えたからでは?」という見方は、半分そのとおりです。PERは株価を利益で割った数字なので、利益の見通しが上がれば株価が同じでもPERは下がります。前回の決算で業績を上方修正した会社が多かったことが、PERが下がった理由の半分です。
そこに今回の材料が重なります。借金でAIデータセンターを建てている米コアウィーブの社債が売られ、利回りが15%台に上がったことで「AIへの投資はこの先も続くのか」という不安が広がりました。AI向けクラウド会社を集めた米ETFは10月に31%、米半導体ETFも13%下げています。AI投資が減速すれば半導体や電線の会社の利益見通しは下がり、株価が動かなくてもPERは上がる。いまの20.76倍が「安い」と言えるのは、いまの利益見通しが保たれるあいだだけです。
図2:左は日経平均の指数ベースPER(週末値・2025年1月〜2026年10月23日)、右は二市場の信用評価損益率(申込日ベース・2024年11月〜2026年10月16日)。PERは20.76倍と2025年8月以来の低さ、信用評価損益率は−10.41%で、2025年4月4日の−15.31%にはまだ届いていません。
需給の物差し|信用の含み損は−10.41%、買い残は1年前の1.5倍のままです
安くなっても、上で買った人がたくさん残っています。
信用評価損益率(信用取引で株を買っている人が、平均でどのくらいの含み損を抱えているかを表す数字)は、10月16日申込分で−10.41%でした。前週の−6.58%から1週間で4ポイント近く悪化し、7月17日の−10.45%と並ぶ今年の低さです。読み方の目安は、松井証券の解説では「−20%前後で底入れの目安、0%に近づくと天井圏」とされています※1。直近2年でいちばん低かったのは、関税ショックのあった2025年4月4日の−15.31%で、いまはそこまで届いていません。
一方、買い残(信用で買ったまま持っている株の金額)は6兆6,640億円で、前週から440億円減っただけ。1年前の4兆4,984億円から1.5倍に膨らみ、6月のピーク7兆167億円からも5%ほどしか減っていません。含み損は増えたのに買い残が減っていない。つまり、損を確定して手放した人より、戻りを待って持ち続けている人のほうが多いということです。
この日も、私が見た範囲では投げ売りと呼べる動きは出ず、むしろ午後に押し目買いで戻しています。戻りを待つ人が多い相場では、株価が上がったところで「やれやれ」の売り(含み損が減ったところで手放す売り)が出やすく、上値は重くなりがちです。松井証券の顧客分では10月22日時点で−13.3%まで悪化しており、来週公表される二市場の数字(10月23日申込分)はさらに低くなっている可能性があります。
戻るきっかけは何か|11月3日の米中間選挙は、上下どちらの見方もあります
いまの相場が上を向くには、何かのきっかけが要ります。
AI投資への不安は、コアウィーブの資金繰りや決算が確かめられるまで消えにくい材料です。中東情勢を背景にNY原油が101ドル台で高止まりしているのも、物価と金利を通じて株の重しになります。どちらも放っておいて消える材料ではないので、はっきりした上向きの材料が出るまで、戻りは限られると私は見ています。
候補のひとつが、11月3日の米国の中間選挙です。『アノマリー投資』(ジェフリー・ハーシュ)には、中間選挙のあとはアメリカ株が上がりやすい、と書かれています。では日本株はどうなのか。同じ日付で1950年からの19回を数えた結果を、「米中間選挙のあと、日本株は上がる」は本当か?に書きました。
逆の見方もあります。中間選挙で民主党が下院の多数を取るとAIへの規制が進み、AI関連株には下向きの材料になる、という見立てです※2。選挙は「通過すれば上がる」とは限らず、結果しだいで向きが変わる材料として見ておきます。
- ① 今週の安値6万1,462円を、終値で割るかどうか。図1の線(約6万1,798円)に触れた位置です。ここを終値で割ると、1年半続いた上昇トレンドラインを失うことになります。
- ② 信用評価損益率が−15%に近づくか。10月23日申込分は来週公表されます。買い残が減りながら含み損が深くなれば「投げが出た」に近づきます。減らずに深くなるだけなら、上値の重さは続きます。
- ③ 米半導体株とコアウィーブの社債が落ち着くか。SOX指数と社債の利回りが止まれば、東京のアドバンテストと東京エレクトロンの寄り付きは変わります。米半導体と日本の半導体の関係は米半導体5.86%安でも日本の半導体は下げずに書きました。
まとめ
10月23日のマーケット・3行まとめ
日経平均は一時1,445円安から1,230円戻して6万2,693円。週足は3.3%の陰線で、安値は1年半続いた上昇トレンドラインに触れた位置でした。
PERは20.76倍と2025年8月以来の低さ。ただし、AI投資の減速で利益見通しが下がれば「安い」は消えます。
信用の含み損は−10.41%で今年の低さに並びながら、買い残は1年前の1.5倍のまま。投げはまだ出ていないと私は見ています。戻るには材料が要り、11月3日の米中間選挙は上下どちらの見方もあります。
株価は安くなった。上で買った人は残ったまま。この2つが同時に見えた日でした。
私は中型株を中心に数日から数週間のスイングをしています。戻りを待つ人が多い相場では、上がったところで売りが出やすく、買ってもすぐ上値を抑えられがちです。週足の線に触れたのは意識していますが、2点を結んだだけの線なので、ここで止まると決めてかかるのは危ないと思っています。
見ているのは、信用の含み損が深くなりながら買い残が減り始めるかどうか。それが出てから戻りを買うほうが、いまの位置で買うより分が良いというのが、いまの私の見立てです。投げが出ないまま戻る展開もあり得ます。そのときは乗り遅れても仕方ないと割り切っています。
指数と相場の経過:日経平均の始値・高値・安値・終値はYahoo!ファイナンス(^N225)の日足で、週足は10月19日から23日までの日足から私が集計しました。22日の東京エレクトロンの押し下げ額、23日のアドバンテストの押し下げ額、売買代金、値上がり・値下がりの銘柄数、「一部の半導体株に押し目買い」は大引け後の報道(財経新聞・8and)によるものです。
図1の線:2025年4月7日週の安値と2026年3月30日週の安値の2点を結び、週を横軸にして右へ延ばしたものです。今週の位置の値(約6万1,798円)は、その直線の計算値です。
PER:日本経済新聞社の日経平均プロフィル「株価収益率」の指数ベース(倍)です。図2は各週の最終営業日の値を使い、本文の「1年前」は2025年10月24日の値です。
信用評価損益率と買い残:トレーダーズ・ウェブ「信用残の推移」の二市場(東証・名証)・申込日ベースの週次データです。10月16日申込分が作成時点の最新で、翌週に公表されます。松井証券店内の数値は同社「投資指標(松井証券店内)」の10月22日分です。
材料:コアウィーブの社債利回り・NCLDとSOXXの下落率はBusiness Insider JapanとBloombergの報道、NY原油は10月23日朝の値、米中間選挙の見方は日経xTECHの記事、中間選挙のアノマリーは『アノマリー投資』(ジェフリー・A・ハーシュ、パンローリング)の記述によります。
急落のあとの戻りは「急落の翌日は反発する」は本当か?、米半導体との関係は米半導体5.86%安でも日本の半導体は下げず、中間選挙のアノマリーは「米中間選挙のあと、日本株は上がる」は本当か?にまとめています。前回のマーケットニュースは日経3,318円安は歴代3位の下げ幅、毎日の数字は日次レポートで追っています。
※1 松井証券「信用評価損益率のご紹介」(matsui.co.jp)。「買い方の評価損益率が−20%を下回ると追証が発生する水準となり、−20%前後で底入れの目安、反対に0%に近づくと天井圏に達したと見なされます」との記述によります。
※2 日経xTECH「コアウィーブ株急落は『さざ波』 AI揺るがす規制リスク、焦点は米中間選挙」(2026年10月)。
















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