2026年9月7日、ドル円は1ドル156円20銭台から1円70銭ほど円高に振れて154円台に入りました。それでも日経平均は前週末比1,378円90銭高(+2.12%)の6万6,399円84銭で、6万6,000円台を回復しています。円高と大幅な株高が、同じ日に並んだ形です。
ただ、中身を見ると印象が変わります。東証プライムで上がった銘柄は40.7%で、下がった銘柄は56.9%。日経平均の上げ幅1,378円90銭のうち、約1,212円はたった4銘柄が押し上げたぶんでした。
そこでこの記事では、まず円がいつ動いたのかを時間で確かめます。そのうえで、指数の上げ幅と上がった銘柄の数がここまでずれた日を、どう受け止めればいいのかを整理します。結論を先に言うと、株式市場が開いている間の円高は50銭ほどで、大きく動いたのは東京が引けたあとでした。
① ドル円は東京の取引時間中は156円20銭台から155円70銭ほどの範囲でした。15時30分の大引けを過ぎた17時台に一気に154円0銭台まで進み、19時台は154円50銭前後。前週末の終値156円22銭からは1円70銭ほどの円高です
② 日経平均+2.12%に対して、TOPIXは+0.55%、東証グロース市場250指数は-0.65%。上げ幅の88%(約1,212円)はソフトバンクグループ・アドバンテスト・東京エレクトロン・キオクシアホールディングスの4銘柄ぶんで、残る約167円が221銘柄の合計でした
③ 起点は、米マイクロン・テクノロジーがAI向けの高速メモリーの生産能力を倍にする検討に入ったという4日の報道です。前週末の米国では半導体株の指数(SOX)が3.37%上げた一方、ダウ・ナスダック・S&P500はそろって下げています。半導体だけが逆を向いた流れが、そのまま東京へ持ち込まれました
何が起きたか|円が買われたのは、東京が引けたあとでした
円高と株高が同じ日に並びました。ただ、この二つが同じ時間に起きたわけではありません。
7日のドル円は、朝8時の時点で1ドル156円10銭台でした。東京の株式市場が開いていた9時から15時30分までは、156円20銭台から155円70銭ほどの間で行き来しています。値幅にすると50銭ほどで、株価が身構えるほどの動きではありませんでした。
動いたのは、そのあとです。16時台までは155円台後半でしたが、17時台に入って154円0銭台まで1円60銭ほど下げました。19時台は154円50銭前後で、前週末の終値156円22銭と比べると1円70銭ほどの円高になります。
ドル円の日中の動きを、東京の株式市場が開いていた時間帯といっしょに並べたのが図1です。
図1:9月7日のドル円(15分ごとの終値・日本時間)。データはYahoo!ファイナンスの15分足を私が整理したものです。青い帯が東京の株式市場が開いている時間で、円の数字が小さくなるほど円高です。
円が買われた背景としてよく挙げられているのは、日銀の利上げが速まるのではないかという見方です。とはいえ、前の晩の米国はちょうど逆の材料で動いていました。8月の雇用統計が予想を上回り、FRBの9月利上げ観測が強まって、ダウ・ナスダック・S&P500がそろって下げています。
米国の金利が上がるという話は、ふつうならドルを買う理由になります。それでも7日の東京では、円を買う側のほうが勝った形でした(為替の効き方は、本ブログ独自の11因子モデルのE群として毎日追っています)。中央銀行の会合が日米で近づいている週ですので、材料の綱引きが起きやすい局面なのかなと思います。
数値で見るインパクト|上げ幅の88%は、4銘柄ぶんでした
日経平均は2%を超えて上げました。ただ、東証プライムでは下がった銘柄のほうが多い日でもあります。
終値は6万6,399円84銭で、前週末比1,378円90銭高(+2.12%)の続伸です。前場には6万6,668円71銭まで上げていて、そこから268円ほど削って引けました。同じ日のTOPIX(東証プライムの全銘柄をまとめた指数)は+0.55%、新興市場をまとめた東証グロース市場250指数は-0.65%です。
この3つの数字の差が、7日の性格をそのまま表しています。日経平均は225銘柄を株価の大きさで足し上げる作り方をしているので、株価の高い数銘柄が動くと指数が大きく振れます。いっぽうTOPIXは1,600社を超える全銘柄をならした指数ですので、「広く上がったのか」を見るならTOPIXのほうが素直です。
図2:上の段は9月7日の3指数の騰落率、下の段は日経平均の上げ幅1,378円90銭の内訳と、東証プライムで上がった銘柄・下がった銘柄の割合です。寄与額と銘柄数は公表値をもとに整理しました。
そこで上げ幅の中身です。ソフトバンクグループとアドバンテストの2銘柄で約839円、これに東京エレクトロンとキオクシアホールディングスを加えた4銘柄で約1,212円を押し上げました。上げ幅1,378円90銭の88%にあたります。残る約167円が、それ以外の221銘柄を全部足した合計です。
| 集計の対象 | 上がった | 下がった |
|---|---|---|
| 東証プライム全体 | 40.7% | 56.9% |
| 日経平均の225銘柄 | 105銘柄 | 120銘柄 |
| 東証33業種 | 17業種 | 16業種 |
※東証プライムの残り2.4%は変わらずです。指数が2%を超えて上げた日ですが、どの切り口で数えても「上がった銘柄が多かった」とは言いにくい並びになっています。
売買代金は8兆377億円で、前週末の8兆3,282億円からむしろ減りました。新しいお金が入ってきたというより、すでに市場にある資金がメモリー関連の一点へ寄せられた、と読むほうが素直そうです。東証グロース市場250指数が4営業日ぶりに下げたのも、その裏返しに見えますね。
指数の騰落率は「どれだけ上げたか」を教えてくれますが、「何銘柄が上げたか」は教えてくれません。そこで私は毎日、値上がりした銘柄の数と値下がりした銘柄の数を並べて、市場の広がりを見ています。7日のように指数が2%上げて、値下がり銘柄のほうが多い日は、上げの中身が薄いという合図になります。
この銘柄数の比率は、本ブログでは市場体温計の1つ目の層として毎日集計しています。
ここで、読んでいて当然出てくる疑問にも触れておきます。「指数が上がったのだから、それでいいのでは」という見方です。指数に連動する投資信託や先物を持っている場合は、たしかにそのとおりだと思います。
ただ、個別株を持っている人の実感は、日経平均の+2.12%より、値下がり56.9%のほうに近いはずです。その中間にあるTOPIXの+0.55%が、実感としてはいちばん近い目盛りなのかなと思います。
国内市場の反応|上位に海運、下位に医薬品と銀行が並びました
業種の並びを見ると、指数を押し上げた半導体のほかに何が動いたかが分かります。
東証33業種で上位に来たのは、海運業、ガラス・土石製品、電気機器でした。原油が上がったことを映して、海運や非鉄金属など市況に連動しやすい業種にも買いが入っています。半導体が集まる電気機器が上位なのは、そのままの並びですね。
いっぽう下位は、水産・農林業、医薬品、銀行業です。ここは少し引っかかるところで、日銀の利上げ観測が円を押し上げた日に銀行が下位というのは、素直な並びではありません。ただ10年物国債の利回りは2.906%と前週末から0.016%上がっただけですので、金利そのものはほとんど動いていないというのが数字の側の答えでした。
なお、この日の主役だった銘柄も挙げておきます。ソフトバンクグループが+11.22%、キオクシアホールディングスが+9.31%、イビデンが+8.42%、レーザーテックが+7.26%。前週末に米国のメモリー株が急伸した流れを、そのまま引き継いだ形です。台湾株と韓国株も大幅に上げていて、動いていたのは日本だけではありません。
ところで、為替が業種ごとにどのくらい効くのかは、10年ぶんのデータで別に測ってあります。1%の円安につき日経平均より多く上がったのは輸送用機器が頭ひとつ抜けていて、電気機器は日経平均と同じだけは動くものの、それ以上ではありませんでした。円安の日と円高の日を分けて測り直しても、電気機器はどちらも帯の中で、逆に小売や陸運は円高の日にだけ日経平均より強くなる形でした(この集計は「円安なら輸出株」は本当?で紹介しています)。7日に指数を押し上げた4銘柄のうち3社は電気機器ですので、円高がこのまま進んでも、この3社には為替より半導体の需給のほうが効きやすいのかなと思います。
円高の大半は、東京が引けたあとに進みました。つまり7日の株価は、この円高をまだほとんど織り込んでいません。8日の寄り付きが、その答え合わせになります。
翌日以降のシナリオ|見るのは3つです
7日の値動きの形から、明日以降に確かめたい点を3つに絞ります。
- ① 8日の寄り付きで、154円台がどう値付けされるか。7日の東京が見ていたのは155円台後半までです。9月3日の記事では「円高が156円台で止まるか」を見どころに挙げていましたが、止まらずに154円台まで来ました。輸出の比重が大きい銘柄には、ここから重しになりやすいところです
- ② 買いが広がるかどうか。7日は売買代金8兆377億円、値上がり銘柄の割合40.7%でした。TOPIXが7日の4,125.80を上回りながら、電気機器以外の業種も上位に顔を出すなら、資金が市場全体へ戻ってきたと読めます。逆に半導体だけが上げる日が続くようなら、広がりは出ていないということです
- ③ 11日に重なる2つの予定。日本時間21時30分に米国の8月消費者物価指数(市場予想は前月比+0.4%、変動の大きい品目を除いたコアが+0.2%)、同じ日に東京では9月のメジャーSQ(先物とオプションの決済日)を迎えます。中身と関係のない値動きが出やすい日ですので、週の後半は数字を額面どおりに受け取らないほうがよさそうです
なお8日は、朝8時50分に4〜6月期GDPの2次速報が出ます。予想は年率+1.8%です。米国は7日がレイバー・デーの祝日で休場でしたので、7日の東京の上げが米国側でどう評価されるかは、9日の朝まで持ち越しになります。ここも、7日の上げをそのまま信じにくい理由の一つですね。
まとめ
9月7日のマーケット・3行まとめ
- ドル円は東京の取引時間中は156円20銭台から155円70銭ほどの50銭幅にとどまり、大引け後の17時台に154円0銭台まで1円60銭ほど進みました。前週末の終値156円22銭からは1円70銭ほどの円高です
- 日経平均は1,378円90銭高(+2.12%)の6万6,399円84銭で6万6,000円台を回復。ただしTOPIXは+0.55%、東証グロース市場250指数は-0.65%で、東証プライムでは下がった銘柄が56.9%を占めました
- 上げ幅の88%(約1,212円)はソフトバンクグループ・アドバンテスト・東京エレクトロン・キオクシアホールディングスの4銘柄ぶん。売買代金は前週末より減っていて、新しい資金というより一点への集中に見えます
- 起点は米マイクロンのAI向け高速メモリー増産検討の報道です。業種別では海運業・ガラス土石・電気機器が上位、水産農林・医薬品・銀行業が下位でした
起点は金曜日の米国で、3指数が下げるなか半導体株の指数だけが上げました。その1本に引っ張られた形です。いっぽう円高が進んだのは東京が引けたあとですので、7日の株価はまだそれを織り込んでいません。
出発点は、金曜日の米国だと見ています。ダウ・ナスダック・S&P500の3指数はそろって下げたのに、半導体株の指数(SOX)だけが3.37%上げました。つまり7日の東京は、その1本だけ上を向いた線に引っ張られた形です。
そう考えると、私は7日を「日本株が買われた日」とは受け取っていません。上げ幅の88%が4銘柄ぶんで、しかも東証プライムでは下がった銘柄のほうが多いわけですから、半導体株のみの上昇といってもいい内容でした。ちなみに台湾株と韓国株も大きく上げていますので、動いていたのは日本株というより半導体というテーマのほうですね。
いっぽうで気になっているのが、円高のタイミングです。17時台の1円60銭は東京が閉まったあとの動きでしたので、7日の株価には入っていません。ですので半導体の勢いが一服したときに、この円高が表に出てくる形になりやすいところだと思っています。
明日は、いつもより慎重に見るつもりです。まずは8時50分のGDPと、寄り付きの為替の反応。そのうえで、TOPIXが7日の4,125.80を超えられるかどうかが、私の中では2つ目の分かれ目になります。
前回の韓国株につれ安の回で挙げた「円高が156円台で止まるか」の答え合わせにあたる記事です。あわせて韓国株につれ安の20分|日経は韓国の3割だけ動く・TOPIXは反発もどうぞ。翌日の答え合わせは円高で日経1,130円安|下げた業種の並びは10年の集計どおりでしたに書いています。当日のマーケット全体の動きは日次レポートで詳しく紹介しています。














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