「円安なら輸出株」は本当?|33業種を10年ぶん測ったら、上がったのは7業種で、電機は入っていませんでした

「円安なら輸出株」は本当? 東証33業種を10年ぶん数えた結果、上がったのは7業種だけで電気機器は入っていない(輸送用機器+0.36・電気機器+0.04・小売業−0.27)
この記事でわかること
円安が進んだ日に、どの銘柄が本当に上がってきたのか。
そして「輸出株」の看板と、中身がどれだけずれているか。

「円安だから輸出株」。相場のニュースで、いちばんよく見る組み合わせだと思います。 私も日々のレポートを書きながら、円が1円動くたびにどの銘柄を見ればいいのか、毎回あいまいなまま書いていました。 そこで、東証33業種の代表98銘柄と、名前の知られた45銘柄について、10年ぶんの値動きを数え直しました。

結果を先に書きます。円安の日にはっきり上がったのは、33業種のうち7業種だけでした。 そして「輸出株といえば」で名前の挙がる電気機器は、そこに入っていません

この記事の要点
  • 円安の日に上がったのは7業種。頭ひとつ抜けているのは輸送用機器で、2番手の倍以上。
  • 電気機器は帯の中。村田・ファナック・東京エレクトロン・ソニーなど9銘柄すべてが、円安の日も日経平均と同じ動きでした。
  • 円安にいちばん弱い小売業の中で、百貨店だけが逆を向いている
  • 円高で上がる横綱はニトリ。円安の日に日経に勝てたのは37%だけ。
  • ただし、この動きはすべて寄り付きで終わっている。翌朝に買っても間に合わない。

※本記事は過去データの集計です。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。

「感応度」という物差しを1つだけ使います

この記事では、数字を「感応度」ひとつにそろえます。読み方はこうです。

感応度の読み方
  1. ドル円が1%の円安に動いた日を集めます。
  2. その日、その銘柄が日経平均より何%多く上がったかを平均します。
  3. プラスなら円安メリット、マイナスなら円高メリット、0のあたりなら為替とはほとんど関係なし。

日経平均そのものを差し引いているのは、円安の日は市場全体が上がりやすいからです。 実際に測ると、日経平均は1%の円安につき、平均して+0.34%上がってきました。 この記事の数字は、そこからさらにどれだけ勝ったかを表しています。

ただ、+0.34や+0.27と言われても、大きいのか小さいのか分かりにくいと思います。 1ドル150円のときに1円の円安(150円→151円)が進んだ場合に直すと、こうなります。

測ったもの感応度1円の円安が進んだ日は
日経平均そのもの+0.34平均で+0.23%上がってきた
マツダ(対 日経平均)+0.48日経より+0.32%多く上がった
トヨタ自動車(対 日経平均)+0.27日経より+0.18%多く上がった
電気機器(対 日経平均)+0.04日経とほとんど変わらなかった
ニトリHD(対 日経平均)−0.71日経より−0.47%負けた

1円の円安は、150円のときで約0.67%にあたります。感応度に0.67をかけた数字が右の欄です。

33業種で測ると、上がったのは7業種でした

まず業種で見ます。東証33業種それぞれについて代表3社ずつ、98銘柄の平均を取りました。 図の水色の帯は「本当は差がなくても、まぐれでこのくらいは出てしまう範囲」です。 棒が帯からはみ出していれば、日経平均とは違う動きをしていたと言えます。

円安で上がったのは7業種。「電機」はそこに入らない棒=ドル円が1%円安に動いた日に、その業種が日経平均より何%多く上がったか(10年平均)※東証33業種を代表3社ずつ・98銘柄で集計。棒が帯からはみ出した業種だけ、日経平均と違う動きと言えますまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)-0.30-0.20-0.100.00+0.10+0.20+0.30+0.40+0.50輸送用機器+0.36鉱業+0.17鉄鋼+0.16ゴム製品+0.12銀行業+0.12建設業+0.10石油・石炭製品+0.09証券・商品先物+0.09保険業+0.07その他金融業+0.07卸売業+0.06不動産業+0.05機械+0.04海運業+0.04電気機器+0.04繊維製品+0.02倉庫・運輸関連+0.02医薬品+0.01非鉄金属-0.01空運業-0.02ガラス・土石製品-0.03金属製品-0.03精密機器-0.03陸運業-0.06その他製品-0.07電気・ガス業-0.07化学-0.08水産・農林-0.13パルプ・紙-0.15食料品-0.17情報・通信業-0.19サービス業-0.20小売業-0.27帯からはみ出したのは上が7業種、下も7業種。ただし輸送用機器の+0.36は、2番手の鉱業の倍以上です。「輸出株といえば電機」と言われますが、電気機器は+0.04で帯の中。上位7業種に入っていません。海運業や不動産業も、円安と結びつけて語られるわりに、動きは日経平均と変わりませんでした。出典:Yahoo!ファイナンスの日足終値より私が集計。2016年9月〜2026年9月・2,141営業日
図1:東証33業種の感応度。上に7業種、下に7業種が帯からはみ出している。輸送用機器の+0.36は2番手の鉱業の倍以上
▼検証条件
対象:東証33業種の代表3社ずつ・98銘柄/日経平均/ドル円/期間:2016年9月〜2026年9月(2,141営業日)/集計:前営業日の終値から当日の終値までの騰落について、業種平均から日経平均を引いた値を、ドル円の騰落で説明する直線を1本引いたときの傾き。帯は標準誤差を2倍した幅/配当:含まない/出典:Yahoo!ファイナンス

上にはみ出したのは輸送用機器・鉱業・鉄鋼・ゴム製品・銀行業・建設業・証券の7業種です。 ただし並びを見ると、輸送用機器の+0.36だけが頭ひとつ抜けています。2番手の鉱業が+0.17ですから、倍以上の開きです。 円安で買われるのは、実質的にクルマだと言っていい形でした。

下にはみ出したのも7業種で、小売業−0.27、サービス業−0.20、情報・通信業−0.19、食料品−0.17と続きます。 輸入したものを国内で売る業種が並んでいて、ここは素直な結果です。

問題は真ん中です。電気機器は+0.04で、帯の中にすっぽり収まっています。 「輸出株といえば電機」と言われるわりに、円安の日の値動きは日経平均とほとんど変わりませんでした。 誤解のないように書いておくと、円安の日に電機が下がったわけではありません。日経平均と同じくらいは上がっています。 ただ、それ以上には上がっていなかった、というのがこの図の意味です。 円安と結びつけて語られがちな海運業(+0.04)や不動産業(+0.05)も同じで、帯の中です。

なぜクルマなのか。会社が公表している「1円でいくら」を見てみます

ここで一度、数字の理由を考えておきます。上場企業の多くは決算のときに、 「1ドルにつき1円の円安が進むと、営業利益がいくら増えるか」を自分から公表しています。 これを「為替感応度」と呼びますが、この記事の感応度(株価の反応)とは別物なので、ここでは「1円でいくら」と書き分けます。

会社1円の円安で、営業利益は年間の営業利益利益に対する割合
トヨタ自動車+500億円3兆7,662億円約1.3%
ホンダ+100億円
日産自動車+120億円
村田製作所+45億円2,818億円約1.6%
日立製作所+8億円ごくわずか
東京エレクトロン「製品のほとんどが円建て取引で、売上高への影響は少ない」(会社の説明)

「1円でいくら」は各社が2026年3月期の決算時に公表した対ドルの数字(会社ごとに利益の定義が少し違います)。年間の営業利益は2026年3月期の実績。 ホンダ・日産は同じ期に一時的な損失があり、割合を出すと意味がぼやけるので空欄にしました。出典は脚注に置いています。

まず見えるのは、金額の桁がまるで違うことです。トヨタは1円で500億円。村田製作所の45億円の10倍以上、日立の8億円とは60倍以上です。 自動車はいまでも国内で作って輸出する台数が多く、円安がそのまま円建ての売上を押し上げます。 「円安=クルマ」と市場が反射的に動くのは、まずこの金額の大きさが理由だと思います。

ただ、利益に対する割合で見ると、話が少し変わります。トヨタの500億円は年間の営業利益の約1.3%、村田の45億円は約1.6%で、率にすると村田のほうがむしろ大きい。 それでも村田の株価は、円安の日に日経平均以上には上がっていませんでした(図3)。 つまり「利益への効き」だけでは、株価の反応の差は説明しきれないのです。

私はここに2つの理由があると見ています。ひとつは、電機の中で会社ごとの効き方がバラバラなこと。 村田のように効く会社もあれば、日立のように海外で作って海外で売る比率が高く、ほとんど効かない会社もある。 東京エレクトロンに至っては取引そのものが円建てです。業種でまとめて平均すると、こうした違いが打ち消し合って、帯の中に収まります。 自動車は完成車もタイヤも部品も同じ向きに効くので、業種として大きく出ます。

もうひとつは、後の章で触れる「その日の主役」の問題です。村田や東京エレクトロンの株価は、スマホや半導体の需要、アメリカの金利や半導体株に引っ張られる日が多く、 為替はその陰に隠れてしまう。円安が業績に効いていないのではなく、値動きの材料としては順位が低い、ということだと思います。

なお日本取引所グループの解説によると、日本企業全体では1円の円高で経常利益が減る割合は、2000年ごろの約1%から現在は0.4%程度まで下がっています。 現地生産が進んだ結果で、「輸出株」という言葉が指していた中身が、この20年で変わってきたことの裏づけだと思います。

その小売業の中に、ひとつだけ逆を向く集団がいました

ここで一度、業種のくくりを疑ってみます。33業種は幅が広いので、中で打ち消し合っているかもしれません。 いちばん円安に弱かった小売業を、6つのグループに割ってみました。

その小売業の中に、ひとつだけ逆を向く集団がいた棒=ドル円が1%円安に動いた日に、そのグループが日経平均より何%多く上がったか(10年平均)※左が33業種の「小売業」まるごと。右がその中身を6つに割ったものまぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)-0.60-0.40-0.200.00+0.20+0.4033業種のくくり代表3社の平均-0.27小売業ぜんぶ中身を割ると百貨店だけ、まるごとの結果と逆を向いています+0.26百貨店+0.01衣料専門店-0.09家電量販-0.15総合スーパーコンビニ-0.23ドラッグストア-0.45家具生活雑貨小売業はまるごとだと−0.27で、円安にいちばん弱い業種でした。ところが中を割ると、百貨店だけが+0.26。全40グループでも完成車に次ぐ2番手で、向きが逆さまです。「小売は円安に弱い」と覚えていると、百貨店でちょうど反対のことをやってしまいます。出典:Yahoo!ファイナンスの日足終値より私が集計。2016年9月〜2026年9月・2,141営業日
図2:左が33業種の「小売業」まるごと。右はその中身を6つに割ったもの。百貨店だけが、まるごとの結果と逆を向いている
▼検証条件
対象:小売業の代表銘柄を6グループに分けたもの(百貨店=Jフロント・高島屋・三越伊勢丹 ほか)/期間:2016年9月〜2026年9月(2,141営業日)/集計:図1と同じ/配当:含まない/出典:Yahoo!ファイナンス

まるごとだと−0.27でいちばん弱い業種でした。ところが中を割ると、百貨店だけが+0.26。 サブ業種40グループの中でも、完成車に次ぐ2番手です。まるごとの結果と、向きが逆さまでした。

いちばん弱かったのは家具・生活雑貨の−0.45、次いでドラッグストアの−0.23。 つまり小売業という看板の下で、円安で買われる集団と売られる集団が同居していたことになります。 「小売は円安に弱い」とだけ覚えていると、百貨店でちょうど反対のことをやってしまいます。

銘柄の早見表

ここからが本題の早見表です。名前の知られた45銘柄について同じ物差しで測り、3つのグループに分けました。

銘柄で見ると、「輸出株」の看板と中身がずれている棒=ドル円が1%円安に動いた日に、その銘柄が日経平均より何%多く上がったか(10年平均)※上から順に、円安に強い12銘柄/評判のわりに動かなかった9銘柄/円高に強い12銘柄まぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)-0.80-0.60-0.40-0.200.00+0.20+0.40+0.60円安の日に上がった12銘柄7261 マツダ+0.487270 SUBARU+0.391963 日揮HD+0.347267 ホンダ+0.331605 INPEX+0.286305 日立建機+0.287203 トヨタ自動車+0.276902 デンソー+0.236301 コマツ+0.217011 三菱重工業+0.208306 三菱UFJ FG+0.177751 キヤノン+0.15「輸出株」と呼ばれるのに、動かなかった9銘柄6981 村田製作所+0.016954 ファナック+0.046762 TDK+0.076273 SMC-0.026594 ニデック-0.058035 東京エレクトロン-0.076758 ソニーグループ-0.076146 ディスコ-0.087741 HOYA-0.11円高の日に上がった12銘柄9843 ニトリHD-0.707453 良品計画-0.392269 明治HD-0.274063 信越化学工業-0.228267 イオン-0.164911 資生堂-0.152802 味の素-0.143382 セブン&アイ・HD-0.149432 NTT-0.139503 関西電力-0.139531 東京ガス-0.134452 花王-0.12上の12銘柄は自動車・機械・資源・銀行に偏っています。電気機器はキヤノン1社だけでした。まん中の9銘柄は村田・ファナック・東京エレクトロン・ソニーなど「輸出株」の代表格ですが、9社とも帯の中。円安の日も円高の日も、日経平均とほとんど同じ動きでした。出典:Yahoo!ファイナンスの日足終値より私が集計。2016年9月〜2026年9月・2,141営業日
図3:個別銘柄の感応度。上が円安の日に上がった12銘柄、まん中が「輸出株」と呼ばれるのに動かなかった9銘柄、下が円高の日に上がった12銘柄
コード銘柄感応度1円の円安で判定
円安の日に上がった12銘柄
7261マツダ+0.48+0.32%
7270SUBARU+0.39+0.26%
1963日揮HD+0.34+0.23%
7267ホンダ+0.33+0.22%
1605INPEX+0.28+0.19%
6305日立建機+0.28+0.19%
7203トヨタ自動車+0.27+0.18%
6902デンソー+0.23+0.15%
6301コマツ+0.21+0.14%
7011三菱重工業+0.20+0.14%
8306三菱UFJ FG+0.17+0.12%
7751キヤノン+0.15+0.10%
「輸出株」と呼ばれるのに、動かなかった9銘柄
6981村田製作所+0.01+0.01%×
6954ファナック+0.04+0.03%×
6762TDK+0.07+0.04%×
6273SMC−0.02−0.01%×
6594ニデック−0.05−0.03%×
8035東京エレクトロン−0.07−0.04%×
6758ソニーグループ−0.07−0.05%×
6146ディスコ−0.08−0.05%×
7741HOYA−0.11−0.07%×
円高の日に上がった12銘柄
9843ニトリHD−0.70−0.47%
7453良品計画−0.39−0.26%
2269明治HD−0.27−0.18%
4063信越化学工業−0.22−0.15%
8267イオン−0.16−0.11%
4911資生堂−0.15−0.10%×
2802味の素−0.14−0.09%
3382セブン&アイ・HD−0.14−0.09%
9432NTT−0.13−0.09%
9503関西電力−0.13−0.09%×
9531東京ガス−0.13−0.09%×
4452花王−0.12−0.08%×

感応度=ドル円が1%円安に動いた日に、その銘柄が日経平均より何%多く上がったかの10年平均。 「1円の円安で」は、1ドル150円のときに1円の円安が進んだ場合の目安に直したものです。 判定は◎=まぐれで出る確率が数百回に1回未満、○=20回に1回を切る、×=偶然の範囲。

▼検証条件
対象:東証上場の45銘柄/日経平均/ドル円/期間:2016年9月〜2026年9月(2,141営業日)/集計:図1と同じ。株価は分割・配当を調整した終値/配当:含まない/出典:Yahoo!ファイナンス

上の12銘柄は、自動車・機械・資源・銀行に偏っています。 電気機器はキヤノン1社だけで、しかも12銘柄のいちばん下でした。

下の12銘柄では、ニトリHDの−0.71が突出しています。 円安の日に日経平均に勝てたのは37.0%、逆に円高の日は61.4%。勝率で24ポイントも開いていて、 この銘柄については「為替を見ていれば向きが分かる」と言っていい水準です。

この記事の白眉
「輸出株」と呼ばれる9銘柄は、
円安の日も円高の日も、日経平均とほとんど同じ動きでした。

「輸出株なのに動かない」は、集計の間違いではないのか

ここは私も疑いました。村田製作所も東京エレクトロンも、売上の大半は海外です。 円安になれば円建ての売上が増えるはずで、株価が動かないほうがおかしいと考えるのが自然だと思います。

そこで、同じ98銘柄を今度は別の材料で測り直しました。ドル円ではなく、前日のアメリカの長期金利と金の値動きです。

測ったグループドル円米10年金利
半導体製造装置−0.10(偶然の範囲)−0.055+0.13
完成車+0.33+0.077−0.12
メガバンク+0.12+0.106−0.11

太字は帯からはみ出したもの。米金利と金は、前日の動きを受けて翌日の東京がどう動いたかで測っています。 半導体製造装置は東京エレクトロン・ディスコ・アドバンテスト・SCREENの4社平均。

答えが出ました。半導体製造装置は「動かない」のではなく、別の材料で動いていたのです。 為替に対しては偶然の範囲ですが、米国の長期金利に対してはサブ業種40グループの中でいちばん弱く、 金が上がった日には非鉄金属に次いで強い、という反応をしていました。

つまりこういうことだと思います。株価はその日、いちばん強い材料に引っ張られて動きます。 半導体まわりの銘柄にとって、その日の主役は金利や海外の半導体株であって、為替ではない。 円安のぶんは業績には効いていても、値動きとしては他の材料に埋もれてしまう、ということですね。

もうひとつ、私にも説明がつかない結果があります。信越化学工業の−0.22です。 海外売上比率の高さでは代表格なのに、10年で見ると円高の日のほうが強い側に入っていました。 半導体材料としての性格が出ているのかもしれませんが、ここは推測になるので、そのまま数字だけ置いておきます。

では、円安になったら買えばいいのか

ここまでは「同じ日に一緒に動いたか」を測ってきました。当然、次に気になるのは 「円安のニュースを見てから買って、間に合うのか」だと思います。

そこで、前日までに進んだ円安を受けて翌日どうなるかを、2つに分けて測りました。 ひとつは寄り付きの窓(前日の終値から当日の始値まで)、もうひとつは寄ってから引けまで(当日の始値から終値まで)です。

円安のぶんは、寄り付きで終わっている棒=前日までに1%円安が進んだあと、その銘柄が日経平均より何%多く上がったか(10年平均)※左が前日の終値から当日の始値までの窓。右が始値から終値までの、寄ってからの半日まぐれでもこのくらいは出る範囲(帯をはみ出したら「偶然では出にくい」)-0.40-0.200.00+0.20+0.40寄り付きの窓前日の終値 → 当日の始値+0.30SUBARU+0.28マツダ+0.19コマツ+0.18デンソー+0.17ホンダ+0.14トヨタ-0.30ニトリ寄ってから引けまで当日の始値 → 当日の終値-0.01SUBARU+0.09マツダ-0.04コマツ0.00デンソー+0.03ホンダ+0.02トヨタ-0.09ニトリ左は7銘柄すべてが帯の外。前日までの円安は、翌朝の寄り付きにきちんと乗っています。ところが右は7銘柄すべてが帯の中で、偶然の範囲。寄ったあとには、もう何も残っていません。円安のニュースを見てから翌朝に買っても、その日ぶんはすでに値段に入っている、ということです。出典:Yahoo!ファイナンスの日足終値より私が集計。2016年9月〜2026年9月・2,141営業日
図4:左が寄り付きの窓、右が寄ってから引けまで。7銘柄すべて、左は帯の外・右は帯の中に収まっている
▼検証条件
対象:図3の上位・下位から7銘柄/日経平均/ドル円/期間:2016年9月〜2026年9月(2,140営業日)/集計:前日までに確定したドル円の騰落で、翌日の値動きを説明する直線を1本引いたときの傾き。値動きは日経平均を引いたうえで、寄り付きの窓と寄ってから引けまでに分けている/配当:含まない/出典:Yahoo!ファイナンス

きれいに分かれました。左は7銘柄すべてが帯の外、右は7銘柄すべてが帯の中です。 前日までの円安は翌朝の寄り付きにはきちんと乗るのに、寄ったあとには何も残っていません。

この検証は、前日の終値までに分かっていた為替だけを使っています。 つまり「今晩の円安を見て、明日の寄りで買う」という手順そのものを再現した形です。 その結果が「寄りで終わっている」ですから、この早見表は売買の合図としては使えない、というのが正直な結論になります。

この結果、実践にどう活かす?

1
持ち株が今日なぜ動いたか、の説明に使う
この表がいちばん役に立つのは、買う前ではなく買ったあとだと思います。 「今日は自分の持ち株だけ弱かった」というときに為替を見て、感応度がマイナス側の銘柄なら理由がつきます。
2
為替の影響を消したいなら、両側を持つ
円安に強い側と弱い側を組み合わせると、為替で振られるぶんを打ち消せます。 完成車と家具・生活雑貨のように、向きがはっきり逆のものを選ぶと効きが分かりやすくなります。
3
「輸出株だから円安で上がるはず」で入らない
まん中の9銘柄が示しているのは、看板と値動きが別物だということです。 円安を理由に電機を買っても、過去10年の値動きで見るかぎり、日経平均を買うのと変わりませんでした。
大事なところ 平均で勝っていても、外れる日はふつうにあります

感応度がいちばん高いマツダでさえ、円安が進んだ日に日経平均に勝てたのは54.6%です。 2日に1回近くは負けています。逆に円高に振れた日の平均は−0.45%、勝てたのは36.4%まで落ちます。 「円安に強い銘柄」は、円高になったときに同じだけ沈む銘柄でもある、ということですね。

私の場合
日々のレポートで為替と業種の並びを書くとき、これまでは「円安→輸出関連が堅調」と、ひとまとめに書いていました。 この集計をしてからは、輸送用機器とそれ以外を分けて書くようにしています。 電機を「輸出関連」と書いてしまうと、読んでいる方の判断を狂わせかねないと思ったからです。

まとめ

10年ぶん数えて分かったのは、「円安で輸出株」という言い方が、思っていたよりずっと粗いということでした。 本当に上がっていたのは33業種のうち7業種で、その中でも輸送用機器が抜けている。 電機は日経平均どまりで、いちばん弱いはずの小売業の中では百貨店だけが逆を向いている。

そして、その動きはすべて寄り付きで終わっています。 だからこの記事は、明日の売買を決めるためではなく、今日の値動きを説明するための表として置いておきます。 金・原油・金利についても同じ物差しで測って、続きを書く予定です。

よくある質問

Q. 銘柄はどうやって選んだのですか? 都合のいいものを並べていませんか?
その疑いを避けるために、先に東証33業種をすべて測っています(図1)。代表銘柄は各業種3社ずつ、時価総額と知名度で機械的に選び、10年ぶんの株価がそろわない銘柄だけ差し替えました。図3の45銘柄は、その中から名前の知られたものを取り出して並べたものです。順位を入れ替えたり、都合の悪い銘柄を外したりはしていません。
Q. 「1%の円安」というのは、どのくらいの動きですか?
1ドル150円のときで、1円ぶんの円安(150円→151円)が約0.67%にあたります。ドル円が1日で1%以上動く日は、この10年で全体の約17%(359日)でした。
Q. ドル円の終値は、東京市場が閉まったあとの値ではないですか?
そのとおりです。使っているドル円の日足終値は東京の大引けより後の時刻なので、同じ日の感応度には、東京が引けたあとの為替の動きも一部混ざっています。ただし図4の「寄り付きの窓」は、前日までに確定した為替だけを使って翌朝の値動きを測っているので、この問題を受けません。図1〜図3を「一緒に動いた度合い」、図4を「先に分かっていたことが効いたか」として読み分けていただくのが正確です。
Q. 日経平均には電機の比重が大きいので、日経平均を引くと電機の動きが消えてしまうのでは?
その面はあります。日経平均は東京エレクトロンやアドバンテストなど電気機器の比重が大きい指数なので、「日経平均に勝ったか」で測ると、電機は日経平均そのものに近い動きになりやすいです。ですからこの記事の「電機は帯の中」は、「円安の日に電機は上がらなかった」という意味ではなく、「日経平均より多くは上がらなかった」という意味です。日経平均を引かずに測れば、電機も1%の円安で+0.4%ほど上がっています。同じ物差しで、輸送用機器はそこにさらに+0.36%を上乗せしていた、という差です。
Q. 期間を変えても、同じ結果になりますか?
10年を前半(2016〜2021年)と後半(2021〜2026年)に割っても、両端の顔ぶれはほとんど変わりませんでした。マツダは+0.53→+0.45、ニトリHDは−0.67→−0.72です。一方でSUBARUは+0.19→+0.51と後半で強まり、電力・食品は前半のほうが円高メリットが強く出ていました。
  • データ出典:Yahoo!ファイナンス(日経平均・ドル円・各銘柄の日次終値、および始値。金=COMEX金先物、原油=WTI原油先物、米10年金利=CBOE 10年国債利回り指数)。集計はすべて私が行っています。
  • 集計期間は2016年9月5日〜2026年9月3日。日経平均・ドル円・対象銘柄のすべてに値がある日だけを使い、2,141営業日となりました。
  • 「感応度」は、日経平均を引いた騰落率をドル円の騰落率で説明する直線(最小二乗法)の傾きです。判定の◎○×は、傾きを標準誤差で割った値の大きさによります(◎=3.0以上、○=2.0以上3.0未満、×=2.0未満。日経平均そのものの感応度は+0.344)。
  • 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、標準誤差を2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
  • 業種分類は東証33業種によります。代表銘柄は各業種3社(空運業のみ2社)、合計98銘柄。サブ業種40グループは私が分けたもので、公式の分類ではありません(代表124銘柄)。
  • 株価は分割・配当を調整した終値を使っています。図4の寄り付きの窓と寄ってから引けまでは、同じ日の始値・終値をそのまま使っています。手数料・税金は含んでいません。
  • 金・原油・米10年金利は日本時間の夜に値が決まるため、前日の騰落を翌日の東京の値動きに当てる形で測っています。
  • 「1円でいくら」の出典:トヨタ・ホンダ・日産は時事通信「〔為替感応度〕自動車企業、想定レートは平均1ドル144円86銭=26年3月期」(2025年11月10日)。村田製作所・日立製作所はアセットアライブ「2026年3月期の想定為替レートと為替感応度一覧」(2Q決算発表時の会社公表値。日立は調整後EBITA)。東京エレクトロンは同社「2023年3月期 第1四半期決算説明会 質疑応答集」。年間の営業利益はトヨタ(Car Watch、2026年3月期決算記事)・村田製作所(2026年3月期決算短信)。
  • 「1円の円高で経常利益が約1%→0.4%程度」は、東証マネ部!(日本取引所グループ)「いまさら聞けない『円高と業績』の常識」によります。
  • ドル円の日足終値は東京の大引けより後の時刻です。私の日次レポートで使っている東京15時の値と比べると、値動きの大きい日で0.8円、通常の日で0.2〜0.3円ほどの差がありました。

本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。

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