エヌビディア好決算でも日経は反落|半導体で明暗が割れた1日の中身

エヌビディア決算 2026年8月27日 売上高962億ドル 前年同期比106%増 8〜10月期ガイダンス1080億ドル 日経平均は130.18円安で3日ぶり反落 アドバンテストの寄与度マイナス263.08円 キオクシアはプラス5.00% 電気機器の対TOPIX相対プラス0.47pt

エヌビディア好決算でも日経は反落|半導体で明暗が割れた1日の中身

2026年8月27日の東京市場は、日経平均が130.18円安の66,131.98円(-0.20%)と3営業日ぶりに反落しました。前日の米国市場の引け後に出たエヌビディアの5〜7月期決算は、売上高962億ドル・前年同期比106%増と市場予想を上回る内容です。それでも東京は朝方に500円超の上昇で寄り付いたあと失速しました。

ただ、この日を「AI関連が売られた日」とまとめると、中身を取り違えます。TOPIXは+0.15%で6日続伸、グロース250にいたっては+2.15%の大幅高で、指数の下げはほぼ1銘柄で説明がついてしまう形だったんですよね。

決算の数字と東京の値動きのズレがどこで起きたのかを、業種別の対TOPIX相対騰落で分解してみます。

この記事の要点(先に3つ)
① 決算そのものは売上高962億ドル・前年同期比106%増、8〜10月期ガイダンスも1,080億ドルで市場予想超え。数字だけ見れば完勝の内容でした。

② それでも日経平均は反落。ただし下げ方は極端に偏っていて、アドバンテスト-3.05%の寄与度-263.08円だけで、指数の下げ幅130.18円の2倍以上を押し下げています。

③ 同じAI関連でもキオクシアHDは+5.00%、1銘柄で東証プライムの売買代金の23.9%を占めました。資金はAI関連から逃げたというより、AI関連の中で乗り換えたように見えます。

何が起きたか|決算は、数字だけ見れば完勝だった

エヌビディアが現地26日の引け後に発表した2027年1月期第2四半期(2026年5〜7月期)決算は、売上高962億ドル・前年同期比106%増でした。事前の市場予想は920億ドル前後でしたから、40億ドルほどの上振れです。

しかも、けん引役がはっきりしています。売上の大半を占めるデータセンター部門が890億ドル・前年同期比117%増と、全体の伸びを上回るペースで拡大しました。

決算の評価が割れるときは、実額より「予想からの上振れ幅」を見たほうが早いんですよね。主要項目を並べておきます。

項目実績・見通し市場予想評価
5〜7月期 売上高962億ドル(前年比+106%)約920億ドル上回る
5〜7月期 調整後EPS2.22ドル約2.09ドル上回る
8〜10月期 売上高見通し1,080億ドル(±2%)1,040億ドル前後上回る
8〜10月期 売上総利益率見通し74.0%(±50bp)5〜7月期実績の75.0%から低下

3項目すべてで予想を超えていますから、「決算が悪かったから売られた」という説明は成り立ちにくいところです。強いて引っかかる点を挙げるなら、売上総利益率の見通しが75.0%から74.0%へ下がったことでしょうか。1ポイントの低下ではありますが、伸びの勢いに比べて利益率が頭打ちになりつつある、と受け取られる余地は残ります。

ところが、株価の反応は素直ではありませんでした。日本経済新聞は「市場予測超えも株価は2%安」と報じており、時間外では売られる場面が先に来ています。その後は切り返す場面もありましたが、年初来で大きく上げてきた銘柄が予想を超えたときに出やすい、利益確定の形に見えますね。

国内市場の反応|指数の下げは、ほぼ1銘柄で説明がつく

では東京はどう動いたか。日経平均は1,172円の値幅をつけたうえで130.18円安で引けました。一方でTOPIXは+0.15%と6日続伸、プライムの値上がり713に対して値下がり770と、中身はほぼ拮抗しています。この食い違いは、寄与度を並べるとすぐに見えてきます。

2026年8月27日 日経平均への寄与度が大きかった10銘柄 アドバンテストが1銘柄でマイナス263.08円と、日経平均の下げ幅130.18円の2倍以上を押し下げた。一方でキオクシアホールディングスがプラス58.66円、東京エレクトロンがプラス50.28円、フジクラがプラス39.22円と、同じ半導体・AI関連でも寄与の符号が分かれた。 同じAI関連で、寄与度の符号が割れた1日 2026/08/27 日経平均への寄与度(円) 上位5銘柄と下位5銘柄 日経平均の下げ幅は -130.18円(-0.20%) キオクシアHD +5.00% +58.66円 東京エレクトロン +0.90% +50.28円 フジクラ +3.68% +39.22円 イビデン +2.32% +31.18円 ソフトバンクG +0.72% +29.77円 中外製薬 -1.47% -10.46円 コナミG -2.27% -16.93円 リクルートHD -1.08% -18.60円 ファーストリテイリング -0.80% -46.66円 アドバンテスト -3.05% -263.08円 0円 アドバンテスト1銘柄の -263.08円 は、日経平均の下げ幅の2倍以上 プラス寄与の上位5銘柄を合計すると +209.11円。指数の下げは1銘柄でほぼ説明がつきます 出典:当日終値をもとに筆者集計(寄与度は日経平均の算出基準に基づく概算)
図1:2026/08/27の日経平均への寄与度(上位5銘柄・下位5銘柄)。アドバンテスト1銘柄で-263.08円と、指数の下げ幅130.18円の2倍以上を押し下げた

アドバンテストは半導体の検査装置(テスター)を手がける会社で、株価水準が高いぶん日経平均への影響度が非常に大きい銘柄です。そのアドバンテストがこの日は-3.05%で、寄与度は-263.08円。つまり、アドバンテストを除けば日経平均はプラスだった計算になります。

ところが、プラス側の顔ぶれも同じAI関連なんですよね。キオクシアHDが+5.00%(寄与+58.66円)、東京エレクトロンが+0.90%(同+50.28円)、フジクラが+3.68%(同+39.22円)、イビデンが+2.32%(同+31.18円)。上位5銘柄を足すと+209.11円です。

つまり、指数を押し下げたのはアドバンテスト1銘柄で、その一方でメモリー・製造装置・電線は買われた構図でした。日米の半導体株の連動については「米SOXが下がった翌日は日本の半導体も下がる」は本当かで検証していますが、今回のように材料が好内容の日は、業種の中で銘柄が選別される展開になりやすいところがあります。

独自分析|電気機器は「勝ってはいた」が、上位6番目タイだった

ここからが本題です。私は毎日、東証33業種の騰落率からTOPIXの騰落率を引いた「対TOPIX相対騰落」を取っています。市場平均に勝ったか負けたかを、業種ごとに見るためのものです。

2026年8月27日 業種別の対TOPIX相対騰落 対TOPIX相対騰落の上位8業種と下位7業種。非鉄金属がプラス1.39ptで最も強く、電気機器はプラス0.47ptで上位に入ったが、10日累計ではマイナス3.10ptで33業種中30位にとどまる。下位はその他製品マイナス1.45pt、精密機器マイナス1.12pt。 電気機器は「勝ってはいた」が、上位6番目タイだった 2026/08/27 業種別の対TOPIX相対騰落(pt) 上位8業種と下位7業種 対TOPIX相対=業種騰落率 −TOPIX前日比(本日のTOPIXは +0.15%) 非鉄金属 +1.39pt 石油・石炭製品 +0.98pt 繊維製品 +0.62pt 銀行業 +0.53pt 証券・商品先物業 +0.48pt 電気機器 +0.47pt 鉱業 +0.47pt 化学 +0.43pt サービス業 -0.66pt 小売業 -0.74pt 鉄鋼 -0.75pt 海運業 -0.81pt 医薬品 -0.87pt 精密機器 -1.12pt その他製品 -1.45pt 0pt 上位8業種/下位7業種(33業種中) 電気機器は本日 +0.47pt。ただし10日累計は -3.10pt で33業種中30位です 業種内の買い越し比率は +52.0% ですが、最大銘柄のキオクシアHD(業種売買代金の52%)を除くと +1.1%。 業種内で上昇した銘柄の比率は39.3%と、半分に届いていません。 出典:東証33業種指数をもとに筆者集計(市場資金フロー日報・業種ヒートマップ)
図2:2026/08/27の業種別の対TOPIX相対騰落(上位8業種・下位7業種)。電気機器は+0.47ptで6番目タイ、10日累計では-3.10ptと33業種中30位にとどまる

半導体を多く含む電気機器は、本日+0.47pt(相対騰落=業種騰落率+0.62%からTOPIX+0.15%を引いた差)でした。プラスなので、市場平均には負けていません。ただ、順位は33業種中6番目タイ(鉱業と同率)で、最大級の追い風が吹いた日としては控えめな勝ち方といった感じでしょうか。

むしろ目立ったのは非鉄金属の+1.39ptと石油・石炭製品の+0.98ptで、フジクラを含む電線株と資源が上位を占めました。逆に下位には、その他製品-1.45ptや精密機器-1.12ptが並んでいます。

対TOPIX相対騰落とは
業種の騰落率から、その日のTOPIXの騰落率を引いた数字です。単位はpt(ポイント)。市場全体が上がった日でも「市場ほどは買われていない業種」が分かり、逆に全面安の日でも「相対的に踏みとどまった業種」が浮かび上がります。1日の値だけでなく、10日累計で積み上げると資金の向かい先の変化が読み取りやすくなります。
→ もっと詳しく知りたい方は:対TOPIX相対騰落 累積ptの読み方を読む

ところが、10日累計で見ると景色が変わります。電気機器は-3.10ptで33業種中30位。この2週間、市場平均に負け続けてきた業種が、決算当日にようやく+0.47pt取り返した、という並びです。

しかも、業種の中身も同じ方向を指しています。電気機器の買い越し比率は+52.0%と厚く見えますが、最大銘柄のキオクシアHD(業種売買代金の52%)を除くと+1.1%まで縮みます。業種内で上昇した銘柄の比率も39.3%と半分に届いておらず、実態は1銘柄に寄った動きだったと読み取れます。

では、電気機器の中でどこが重かったのか。私が試験的に集計しているサブ業種別の相対騰落(33業種を一段細かく分け、構成銘柄の騰落率を単純平均してTOPIXを引いたもの)で、半導体まわりを並べてみます。

サブ業種(銘柄数)対TOPIX相対上昇銘柄比率買い越し比率
電線(4)+2.63pt100%+100%
FPD・プリント基板(7)+2.38pt100%+100%
半導体(10)+1.51pt90%+100%
半導体製造装置(28)+1.25pt71%-36.8%
半導体材料・電子材料(28)+1.24pt93%+97.9%

半導体まわりの5つは、すべて相対でプラス、上昇銘柄比率も7割以上です。目を引くのは半導体製造装置で、28銘柄中20銘柄が上がっているのに、買い越し比率は-36.8%。
装置株が売られたのではなく、アドバンテスト1銘柄の売買代金が大きすぎて、群としての符号をひっくり返した形なんですよね。

逆に、電気機器の中で重かったのは半導体以外でした。FA・ロボット-0.13pt、OA・精密-0.27pt、医療エレクトロニクス-0.87ptと、AIから遠い群が並んでマイナスです。
電気機器の上昇銘柄比率が39.3%にとどまったのは、半導体が弱かったからではなく、それ以外が静かだったから、と整理できそうです。

※サブ業種の分類は私が独自に作っている試作段階のもので、東証プライムのうち約1,450銘柄を対象にしています。

テーマ別で見ても、テクノロジーは本日-0.33pt、マイナスは9日連続です(テーマ別の集計方法はテーマ別資金フローと3対立軸の読み方で解説しています)。好決算の日ですら流れが変わらなかった点は、重く見ておきたいところです。

注目セクター・銘柄|PER7倍と38倍が、同じ「AI関連」に同居している

では、明暗はどこで分かれたのか。私が見ているのは期待値の高さです。値動きと予想PERを並べると対比がはっきりします。

銘柄騰落率売買代金予想PER
キオクシアHD(285A)+5.00%1兆8,797億円7.26倍
フジクラ(5803)+3.68%2,989億円27.95倍
アドバンテスト(6857)-3.05%3,863億円37.86倍

キオクシアHDの予想PERは7.26倍、アドバンテストは37.86倍。同じAI関連でも、株価に織り込まれた期待の量がまるで違います。
好材料が出たとき、期待の薄いほうには買う余地が残り、厚いほうは「すでに買われている」ぶんだけ利益確定が出やすい——今日の値動きは、その典型に見えました。

一方で、需給の偏りも押さえておきたいところです。東証プライムの売買代金は7兆8,701億円と4営業日ぶりに7兆円台を回復しましたが、キオクシアHD1銘柄で1兆8,797億円、市場全体の23.9%。代金が増えたというより、1銘柄に資金が集まった結果として全体が膨らんだ形です。

ただし、これは裏を返せば裾野の薄さでもあります。私が過熱度の目安にしている市場体温計も、前日の「熱気」から「微熱」へ一段下がっていて、上がっている銘柄は限られているという認識は持っておきたいですね。

翌日以降のシナリオ|28日はウォーシュ講演と東京都区部CPI

さて、28日は材料が重なります。朝方に7月の完全失業率・有効求人倍率と8月の東京都区部CPIが出て、そのうえ夜にはウォーシュFRB議長のジャクソンホール講演が控えます。市場は9月の利上げを日銀で9割前後、FRBで4割前後織り込んでいるとされ、どちらに振れても金利が意識されやすい配置です。

◎ 強気に見るなら

決算は3項目すべてで予想超えで、AI投資の減速を示す数字はまだ出ていません。むしろ電気機器の10日累計-3.10ptは裏返せば出遅れですし、TOPIXは6日続伸で年初来安値更新はゼロ。アドバンテストの利益確定が一巡すれば、指数の重しは自然に軽くなるという見立てです。

△ 弱気に見るなら

好材料の日にテクノロジーが9日連続マイナスというのは、資金の向きが変わりつつあるサインとも読めます。しかも、売買代金の23.9%が1銘柄という集中は、その銘柄が止まれば市場全体の商いが細る構図でもあります。そのうえウォーシュ議長がインフレ警戒を強めれば、高PER銘柄には逆風が乗ります。

どちらに転ぶにせよ、私が翌日いちばん先に見るのは、アドバンテストの寄り付きです。利益確定の一巡なら下げ止まり、逆に期待の剥落なら戻りが鈍くなります。この1銘柄の反応で、今日の下げの意味がだいぶ変わってくる気がします。

📝 個人的な見解
売られたのはAI関連ではなく、期待が厚く積み上がっていたほうだった

私の整理は3つです。

  • 「好決算なのに東京は不発」という見方は、半分だけ当たっていると見ています。指数は確かに反落しました。ただ電気機器の対TOPIX相対はプラスで、キオクシアHD・東京エレクトロン・フジクラはそろって上昇しています。売られたのは業種ではなく期待が厚く積み上がっていた銘柄のほう、と読むのが素直だと思います。
  • それでも、テクノロジーの9日連続マイナスは軽く見ていません。1日の+0.47ptで結論を出すより、10日累計が-3.10ptから浮き上がってくるかどうかを見るほうが確かかなと思っています。
  • 売買代金の集中は、追い風にも向かい風にも読めます。1銘柄で市場の23.9%というのは、その銘柄への確信が強い証拠でもあり、他に行き先がない証拠でもあります。資金が電気機器の中で広がるかどうかを、当面の確認点に置くつもりです。

好決算が出た日にこそ、その材料で「上がらなかったもの」が見えます。今日はそれがきれいに出た1日でした。

半導体セクターの全体像は日本の半導体株の見極め方、当日のマーケット全体の動きは日次レポートで取り上げています。

※本記事は、会社公表の決算資料および私が独自に集計・分析した市場データをもとにした情報整理・分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。エヌビディアの決算数値は会社発表(2027年1月期第2四半期)に基づき、市場予想は各種報道による事前コンセンサスの概数です。日経平均への寄与度は当日終値をもとにした概算値で、算出方法により差が生じる場合があります。予想PER・売買代金・対TOPIX相対騰落は2026年8月27日大引け時点の値です。サブ業種別の相対騰落は私が独自に定めた分類による試算値で、東証の業種区分とは異なります。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と裁量で行っていただくようお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA