1Q決算の途中経過|659社の21%が上方修正・機械と電機は下方修正ゼロ

1Q決算の途中経過|659社の21%が上方修正・機械と電機は下方修正ゼロ

2026年8月4日の引け後までに、東証プライムの1,555社のうち659社が4〜6月期の決算発表を終えました。全体の42%です。

そこで私は、7月1日から8月4日までに配信された決算の見出し674本を1本ずつ拾い、上方修正・下方修正・増配を数えてみました。結果は上方修正139社に対し、下方修正19社です。割合にすると21.1%と2.9%で、7倍の開きがあります。

ただ、面白かったのは全体の数字ではありませんでした。業種に分けると、上方修正率が0%の業種と100%の業種が同居していたのです。

この記事の要点(先に3つ)
① 発表を終えた659社のうち21.1%が上方修正、2.9%が下方修正でした。ここまでの1Qは、かなり良い決算シーズンです。

機械42社・電気機器56社・化学46社は、いずれも上方修正が3割を超え、下方修正がまだ1社も出ていません。海運にいたっては、発表を終えた5社すべてが上方修正でした。

③ この強弱は株価にもおおむね出ています。ただし化学だけは、下方修正ゼロなのに対TOPIX相対騰落の10日累積が-3.92ptと置いていかれています。

何が起きたか|プライムの42%が発表を終えた

まず、いまがシーズンのどのあたりかを押さえておきます。3月期企業の1Q決算は7月下旬から動きはじめ、7月30日と31日の2日間だけで287本が出ました。

ただし、ここはまだ折り返し前です。発表のピークは8月5日から8月14日にかけてで、残る約900社の多くはこの10日間に集中します。ですから本記事の数字は、シーズン前半戦の途中経過ということになります。

なお集計の対象は、株探の決算速報(プライム)に7月1日から8月4日までに掲載された見出し674本です。同じ会社が複数回登場する場合は1社として数えたため、社数は659社になります。業種区分も株探の33業種(東証の業種分類に準拠)に合わせました。

数値で見るインパクト|上方修正21.1%に対し下方修正2.9%

全体の集計は次のとおりです。母数はいずれも「発表を終えた659社」で、プライム全体ではありません。

項目社数発表済み659社に対する比率
決算を発表済み659社42.4%(プライム1,555社に対して)
上方修正139社21.1%
下方修正19社2.9%
増配・配当の増額108社16.4%
「最高益」に言及89社13.5%

※見出しに「上方修正」「下方修正」と明記されたものだけを数えています。株式分割にともなう形式的な配当予想の修正は、増配から除きました。

5社に1社が上方修正、下方修正は3%未満という水準です。しかも増配が108社と、決して少なくありません。

ここで気になるのは、「序盤だから良く見えているだけではないか」という点です。良い内容の会社ほど早めに発表する傾向は一般に指摘されますので、発表が増えてからの4営業日を日ごとに割ってみました。

日付見出し本数うち上方修正上方修正の比率
7月30日(木)101本25本24.8%
7月31日(金)186本36本19.4%
8月3日(月)63本13本20.6%
8月4日(火)72本20本27.8%

※この表だけは銘柄数ではなく見出しの本数ベースです。1社が複数の記事に登場する場合があるため、全体集計の社数とは一致しません。

発表本数が4営業日で3倍以上に増えても、比率は19〜28%のレンジに収まっていました。とはいえ、これで序盤バイアスが否定できたわけではありません。そのため今の21%は「ここまでの数字」として読み、8月中旬にもう一度確かめるのが安全だと思っています。

独自分析|33業種に分けると、0%から100%まで開いた

ここからが本題です。同じ21.1%でも、業種によってまったく景色が違いました。

※本記事でいう「上方修正率」は、その業種で決算を発表した会社のうち業績予想を引き上げた会社の割合です。また「ネット上方率」は上方修正率から下方修正率を引いた差で、%どうしの引き算になるため単位はポイント(pt)になります。

なお図1と次の表は、発表が14社以上あった16業種に絞りました。1社の増減で比率が跳ねる業種を混ぜないためで、冒頭で触れた上方修正率100%の海運(発表5社)もここでは外れます。海運は次の章で単独に扱います。

東証プライムの業種別 上方修正率と下方修正率(2026年7月1日〜8月4日) 決算を14社以上発表した16業種について、発表済み社数に対する上方修正率(右・赤)と下方修正率(左・青)を並べたもの。並び順はネット上方率の高い順。機械38.1%対0%、電気機器35.7%対0%、化学32.6%対0%、輸送用機器33.3%対4.8%、卸売業23.6%対1.8%、小売業19.7%対0%、情報・通信業16.7%対0%、銀行業14.3%対0%、サービス業9.3%対1.9%、陸運業7.1%対0%、建設業9.1%対4.5%、食料品10.3%対10.3%、電気・ガス0%対0%、証券・商品0%対0%、医薬品6.2%対12.5%、不動産業5.9%対17.6%。医薬品と不動産業だけが下方修正のほうが多い。 上方修正率は業種でここまで開いた 2026/7/1〜8/4・東証プライム。決算を14社以上発表した16業種/カッコ内は発表済み社数 ← 下方修正率 上方修正率 → 機械(42) 38.1% 0 電気機器(56) 35.7% 0 化学(46) 32.6% 0 輸送用機器(21) 33.3% 4.8% 卸売業(55) 23.6% 1.8% 小売業(66) 19.7% 0 情報・通信業(60) 16.7% 0 銀行業(42) 14.3% 0 サービス業(54) 9.3% 1.9% 陸運業(14) 7.1% 0 建設業(22) 9.1% 4.5% 食料品(29) 10.3% 10.3% 電気・ガス(18) 0 0 証券・商品(17) 0 0 医薬品(16) 6.2% 12.5% 不動産業(17) 5.9% 17.6% 機械・電気機器・化学は3割超が上方修正、下方修正はゼロ。逆に不動産と医薬品だけが下方修正のほうが多い 並び順はネット上方率(上方修正率−下方修正率)の高い順/緑の「0」=下方修正がまだ1社も出ていない業種 電気・ガスと証券・商品は上下ともゼロ。データ:株探「決算速報」見出しより独自集計
図1:東証プライムの業種別 上方修正率(右)と下方修正率(左)。2026年7月1日〜8月4日に決算を14社以上発表した16業種を、ネット上方率(上方修正率−下方修正率)の高い順に並べています。株探「決算速報」の見出しから独自集計。

数字で並べると次のようになります。並びは図1と同じく、ネット上方率の高い順です。

業種発表済み上方修正上方修正率下方修正率ネット上方率
機械42社16社38.1%0.0%+38.1pt
電気機器56社20社35.7%0.0%+35.7pt
化学46社15社32.6%0.0%+32.6pt
輸送用機器21社7社33.3%4.8%+28.5pt
卸売業55社13社23.6%1.8%+21.8pt
小売業66社13社19.7%0.0%+19.7pt
情報・通信業60社10社16.7%0.0%+16.7pt
銀行業42社6社14.3%0.0%+14.3pt
サービス業54社5社9.3%1.9%+7.4pt
陸運業14社1社7.1%0.0%+7.1pt
建設業22社2社9.1%4.5%+4.6pt
食料品29社3社10.3%10.3%0.0pt
電気・ガス18社0社0.0%0.0%0.0pt
証券・商品17社0社0.0%0.0%0.0pt
医薬品16社1社6.2%12.5%-6.3pt
不動産業17社1社5.9%17.6%-11.7pt

※発表済みが14社以上の16業種のみ掲載。ネット上方率は、表に載せた小数第1位の上方修正率・下方修正率どうしの差です。

ここで上位3業種が示しているのは、水準の高さよりも下方修正がゼロで揃っていることのほうだと思います。機械・電気機器・化学を合わせて144社が発表を終え、引き下げは1社も出ていません。

一方で、電気・ガスと証券・商品は上下ともゼロでした。この2業種はプライムにそれぞれ18社・19社あり、うち18社と17社がすでに発表を終えています。「予想を動かさない業種」として、ほぼ確定した姿と見てよさそうです。

注目セクター|「全社」と「ゼロ」で読む3つのかたまり

① 海運は、発表を終えた5社すべてが上方修正

もっとも極端だったのは海運です。プライムに5社ありますが、その5社すべてが予想を引き上げました。郵船・商船三井・川崎汽船の大手3社に、ユナイテッド海運と飯野海運が続いています。

しかも海運は5社中5社で発表が完了しています。つまりこの100%は途中経過ではなく、すでに確定した数字です。

② 機械・電気機器・化学は「まだ1社も下げていない」

発表数の多い業種でゼロが続くと、意味が変わってきます。電気機器のように56社が出し終えて下方修正ゼロという形は、たまたまで起きるものではないはずです。

この3業種はAIやデータセンター向けの設備投資と関係の深い会社が多く、8月4日にはイビデンが通期経常を41%引き上げました。ですから「一部の半導体銘柄だけが強い」というより、設備投資まわりが面で強いという読み方のほうが実態に近そうです。

③ 不動産と医薬品だけが下方修正超過

逆側では、不動産が上方1社に対し下方3社、医薬品が上方1社に対し下方2社でした。つまり33業種のうち、引き下げが引き上げを上回ったのはこの2つだけです。ただし発表を終えたのはどちらもまだ20社に届きませんので、断定するには早いと考えています。

株価は追いついているか|決算の強弱を対TOPIX相対騰落と重ねる

ここまでは決算の中身の話でした。そこで、私が毎日つけている独自指標と重ねて、株価の反応も見ておきます。

対TOPIX相対騰落とは
業種の騰落率からTOPIXの騰落率を引いた差分です。指数が大きく動いた日は33業種の騰落率がまとめて上下するため、騰落率だけでは「資金が入った業種」を見分けられません。差分なら、市場平均に勝った業種=資金が残った業種が浮かびます。以下は8月4日の当日値と、7月22日からの10営業日の累積です。
→ もっと詳しく知りたい方は:対TOPIX相対騰落・累積ptの読み方を読む
業種上方修正率8/4の相対騰落10日累積
海運業100.0%+1.59pt+7.26pt(33業種で最大)
機械38.1%+3.21pt(同2位)+3.06pt
電気機器35.7%+1.11pt+1.38pt
化学32.6%+0.98pt-3.92pt
卸売業23.6%-0.88pt+2.65pt
医薬品6.2%-0.76pt-2.52pt
不動産業5.9%-0.54pt-5.96pt(同最小)
電気・ガス0.0%-1.22pt+0.54pt

※対TOPIX相対騰落は私の日次集計から。10日累積は2026年7月22日〜8月4日の合計です。順位相関は、図1の16業種に海運を加えた17業種で算出しました。

両端はきれいに揃いました。上方修正率100%の海運は10日累積でも+7.26ptと33業種で最も強く、逆に下方修正超過だった不動産は-5.96ptで最も弱いという並びです。上方修正率の上位5業種の累積平均は+1.73pt、下位5業種は-2.27ptですから、決算の強弱は株価にもおおむね出ていると言えます。

ただし、真ん中はそれほどきれいではありません。順位相関は0.60、海運を除くと0.51まで下がります。つまり両端は効くが、中位の並べ替えには使えないという程度の関係です。

そのなかで目を引いたのが化学でした。46社が発表を終えて上方修正15社・下方修正ゼロなのに、10日累積は-3.92ptと下から2番目です。決算の中身と株価がここまで逆を向いている業種は、ほかにありません。逆に電気・ガスは上下ともゼロのまま累積+0.54ptとわずかにプラスでしたから、修正を出さない業種の株価は、決算とは別の理由で動いているということでしょう。

もう1本の記事との関係|コンセンサスは翌日の株価、上方修正はEPS

同じ日に出したもう1本の記事とは、話が食い違って見えるかもしれません。そちらでは「上方修正でも、修正後の計画が市場予想に届かなければ売られる」と書きました(上方修正でも売られる株|分岐はコンセンサス超えか)。ところがこの記事では、上方修正が多いことを良い材料として扱っています。

ただ、この2つは見ている対象と時間軸が違います。コンセンサスに届いたかどうかは、その銘柄の翌日の株価を決めるものです。株価は会社の計画ではなくアナリスト予想を織り込んでいますので、期待とのズレが出れば内容が良くても売られます。実際、上方修正を出しながら8.02%下げた三井E&Sがその例でした。

これに対して、上方修正が何社出たかは、指数のEPS(1株利益)を押し上げます。会社予想の積み上げがEPSですから、PERが変わらなければ、切り上がったぶんだけ日経平均やTOPIXの水準も上がる計算になります。つまりコンセンサス超えは個別銘柄の短期の話、上方修正の多さは指数の中期の話で、片方が売り材料でもう片方が買い材料という矛盾は起きません。むしろ「個別では選別されるが、指数の土台は上がっている」というのが、いまの決算シーズンの姿だと思います。

とくに今回の139社には、トヨタ・ソニーグループ・日立・村田製作所・京セラ・日本製鉄・クボタといった時価総額の大きい会社が並びました。指数への効きは社数ではなく時価総額の重みで決まりますから、この顔ぶれは効きやすいほうでしょう。

実際、この動きは日経平均のEPSにもう出ています。決算が集中した7月29日から8月4日にかけて、EPSは2,795円から2,912円へ4.2%切り上がりました。同じ期間の日経平均の上昇率は+4.11%で、PERは21.98倍から21.96倍とほとんど動いていません。つまりこの間の上げは株が割高になったのではなく、利益そのものが増えたぶんだったということです。

この集計の限界|見出しに書かれた分しか数えていない

ただ、この数字の性格については3つ書き添えておきます。

ひとつめは、見出しに「上方修正」と明記された分しか数えていないことです。決算短信のなかで実質的に予想を引き上げていても、見出しが「4-6月期は◯%増益で着地」となっていれば、この集計には入りません。つまり21.1%は実態よりやや低めに出ている可能性があります。

ふたつめは、まだ発表していない約900社が中小型株に偏っていることです。規模の大きい会社ほど発表が早い傾向がありますし、中小型は1Qの時点で予想を据え置く会社が多くなります。ですから比率は今後下がりやすい、と見ておくのが自然でしょう。

みっつめは細かい話で、7月上旬の12本については見出しが途中までしか取得できず、方向を判定できていません。674本のうちの12本ですから、比率への影響はほとんどないと思います。

これからの数日|ピークは8月5日から14日

◎ 強気に見るなら

上方修正が下方修正を7倍上回る地合いは、そう頻繁には出てきません。機械・電気機器・化学のゼロがこのまま続けば、設備投資関連には追い風が残ります。海運のように業種まるごとが引き上がるケースが他でも出てくれば、物色の幅は広がりそうです。

△ 弱気に見るなら

ただ、上方修正それ自体は買いの根拠になりません。修正後の計画が市場予想に届かなければ売られますので、上方修正率が高いまま推移しても、個別では下げる銘柄が増える展開はありえます。さらに残り約900社の中小型が加われば、比率そのものも下がります。

そこで私は、次の10日間で3つを見ています。全体の上方修正率が20%台を保つか、機械・電気機器・化学のゼロが崩れないか、そして化学の相対騰落が決算に追いついてくるかどうかです。

📝 個人的な見解
個別の決算はコンセンサスに届いたかで選別されますが、上方修正が積み上がること自体は日本株のEPSを押し上げます。短期は選別、中期は土台の底上げ——この2階建てで見ています

整理は3つです。

  • 比率より「ゼロ」を見ています。というのも、上方修正率は発表社数が少ないうちは簡単に振れますが、電気機器56社で下方修正ゼロという形は、母数が増えるほど価値が上がるからです。逆に言えば、ここに1社目が出た日は注意しておきたいところです。
  • 海運の5社全社は、業種で買う判断がしやすい形だと感じています。ただし全社発表済みということは、材料が出尽くしている可能性もあります。ですから新規で追うより、すでに持っている場合の判断材料として使うほうが向いていそうです。
  • いちばん気になっているのは化学です。決算と株価がこれだけ逆を向いていると、私は「株価のほうが間違っている」か「決算に出ていない何かがある」かのどちらかだと考えます。ただし今回の材料では判別できませんので、しばらく相対騰落の推移を見るつもりです。

結論は「途中経過としては良い決算シーズン、ただし判断は8月14日以降」です。

※本記事の集計は、株探「決算速報」(東証プライム)に2026年7月1日から8月4日までに掲載された見出し674本を、私が独自に分類・集計したものです。業種区分は株探の33業種(東証の業種分類に準拠)を使用し、プライム構成銘柄数は同社の業種別一覧に基づく1,555社としています。見出しの文言による分類のため、決算短信の本文で実質的に予想を修正しているケースは反映されていない場合があります。記載の数値は執筆時点のものであり、決算発表の進捗にともなって変動します。本記事は情報整理・分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と裁量で行っていただくようお願いいたします。

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