2026年9月9日、日経平均は前日比126円55銭安(-0.19%)の6万5,142円78銭で2日続落しました。動いた幅は0.19%ですので、指数としてはほとんど動いていない一日です。
ところが業種別に見ると、いちばん上がった非鉄金属が+6.88%で、いちばん下げた証券・商品先物業が-2.31%。指数が止まっているのに、中身はずいぶん入れ替わっています。
そこでこの記事では、トップだった非鉄金属+6.88%の中を開けて、何が買われた日だったのかを見ます。結論を先に書くと、中身は理由の違う3つに分かれていて、同じ流れは業種の外にも広がっていました。
① 日経平均は126円55銭安の6万5,142円78銭。指数は0.19%しか動いていませんが、業種別では非鉄金属+6.88%と証券・商品先物業-2.31%が同じ日に並びました
② その非鉄金属を細かく分けると、電線・金価格や貴金属・非鉄や製錬の3つ。上がったきっかけはそれぞれ別で、3つとも構成銘柄が全部上がりました
③ さらに同じ流れは業種の外にも出ていました。重電・電力機器はTOPIXより3%以上強く上げたのに、その業種にあたる電気機器はTOPIXとまったく同じ動き。33業種の表だけ見ていたら気づけない並びでした
何が起きたか|指数はほとんど動きませんでした
まず、この日の相場がどれくらい動いたのかを押さえておきます。ひとことで言うと、動いていません。
終値は6万5,142円78銭で、前日比126円55銭安(-0.19%)。TOPIX(東証プライムの全銘柄をまとめた指数)は-0.09%、東証グロース市場250指数は-0.42%と、3つとも小幅マイナスでした。前日8日の米国市場が下げた流れで売り先行に始まったものの、6万5,000円の手前で買い戻しが入り、前場には6万5,794円03銭(前日比525円高)まで戻す場面もあります。そこからは新しい材料が出ずに、もみ合ったまま引けました。
一方で、上げの材料になったニュースは外から2本入っていました。
ひとつが光ファイバーです。米コーニングが8日、ベライゾンに2027年から2032年にかけて8,000万マイルを超える光ファイバーと接続部材を供給する長期契約を結んだと発表しました。AI向けのデータセンターをつなぐ長距離の通信網に使われるもので、コーニングの株価は8日の米国市場で7.5%上げています。
もうひとつが金属と原油です。銅のロンドン金属取引所の先物が過去最高値を更新し、WTI原油も94.53ドルと、中東の供給不安を背景に90ドル台での高止まりが続いています。
つまり9日は、指数を動かす材料がないまま、外から来た材料に反応した業種だけが大きく動いた日でした。売買代金は9兆2,303億円と前日から7,529億円増えています。指数は止まっていても、お金は動いていました。
数値で見るインパクト|上と下が、前日と入れ替わりました
指数がほとんど動いていないぶん、業種別の開き方が目立った日でした。
| 上がった業種 | 値上がり率 | 下げた業種 | 値上がり率 |
|---|---|---|---|
| 非鉄金属 | +6.88% | 証券・商品先物業 | -2.31% |
| 石油・石炭製品 | +5.01% | サービス業 | -1.86% |
| 鉱業 | +2.17% | 小売業 | -1.85% |
| 電気・ガス業 | +1.98% | 保険業 | -1.83% |
| ガラス・土石製品 | +1.81% | 医薬品 | -1.76% |
東証33業種の上位5業種と下位5業種です。上がったのは16業種、下げたのは17業種でした(前日の上がった業種は9つ)。
上がった側には素材や資源の業種が並び、下げた側は内需・金融・ディフェンシブと呼ばれる業種でした。前日8日とは、上下がちょうど入れ替わっています。日次レポートで毎日測っている「景気に敏感な業種の平均−ディフェンシブな業種の平均」も、前日の-2.00%から+1.54%へ符号ごと反転しました。
指数を動かした銘柄も綱引きです。押し下げたのはアドバンテストの231円70銭とファーストリテイリングの150円45銭、押し上げたのはソフトバンクグループの204円35銭とフジクラの82円46銭。この4銘柄だけでほぼ相殺されて、126円安に収まりました。
※ここでの円は寄与額といって、その銘柄の値動きが日経平均を何円動かしたかを表す概算です。日経平均は株価の高い銘柄ほど影響が大きいため、少数の銘柄で数字が決まります。
国内市場の反応|非鉄金属+6.88%を、3つに分けました
ここからが本題です。トップだった非鉄金属の中を開けると、理由の違う3つが同居していました。
先に物差しを説明します。ここから使うのは、その業種やジャンルの値上がり率からTOPIXの値上がり率を引いた差で、単位はポイントと書きます(図の中ではptと書いています)。この日のTOPIXは-0.09%でしたので、非鉄金属+6.88%なら+6.97ポイントです。
値上がり率をそのまま比べると、市場全体が上がった日は全部の業種が良く見えてしまいます。そこで市場全体と比べてどうだったかに直したものが対TOPIX相対騰落で、プラスなら市場より強く、マイナスなら弱かったことになります。
そのうえで私は、33業種よりもう一段細かい「ジャンル」に分けた表を自分で作って、毎日いっしょに見ています。33業種は分類が大きすぎて、中で別のものが動いていても平均されて消えるからです。この日の非鉄金属をその分け方で開いたのが図1です。
図1:東証33業種でトップだった非鉄金属を3つのジャンルに分けたものです。棒はその日の値上がり率からTOPIXの値上がり率(-0.09%)を引いた差で、構成銘柄の値上がり率の平均は電線+8.53%、金価格・貴金属+5.03%、非鉄・製錬+3.86%です。金価格・貴金属と非鉄・製錬には、三菱マテリアルや住友金属鉱山のように両方に入っている銘柄があります。
いちばん強かったのが電線でした。TOPIXを8.62ポイント上回っています。古河電気工業が12.63%高、フジクラが8.07%高、SWCCが7.71%高、住友電気工業が5.72%高で、4社すべてが上げました。コーニングの契約が、そのまま日本の電線メーカーへの連想買いにつながった形ですね。
売買代金も、この4社だけで4,848億円。非鉄金属という業種で売買された金額の7割以上を電線が占めていて、フジクラ1社で2,771億円です。業種の名前は非鉄金属ですが、お金が動いていたのは電線でした。
2番目が金価格・貴金属で5.12ポイント上回り、フルヤ金属が7.86%高、住友金属鉱山が6.17%高、三菱マテリアルが5.46%高。3番目が非鉄や製錬のグループで3.95ポイント上回り、JX金属が4.91%高、三井金属が5.20%高、東邦亜鉛が5.03%高でした。
これはもっともな見方で、半分は当たっていました。製錬のグループは11銘柄すべてが5%前後でそろって上げています。一部の銘柄が引っ張ったのではなくグループ全体が同じくらい買われた形ですので、銅や金の相場が効いた側だと見ていいと思います。
ただ、それでは電線の8.62ポイントは説明しにくいところです。電線メーカーは銅を仕入れて使う側ですので、銅が上がったから電線も上がる、という向きの話ではありません。この日の非鉄金属は「銅の話」と「光ファイバーの話」が、たまたま同じ業種の中に同居していたと読むのが素直かなと思います。
33業種の表では、見えなかった並びがあります
ここまでは非鉄金属の中の話でした。ところが同じ分け方で全体を並べ直すと、電気を作る・送る・つなぐ側が、業種の枠をまたいで横並びで上がっていたのが分かります。図2がその対比です。
図2:上の濃い棒が細かいジャンル、下の薄い棒がそのジャンルが入っている33業種です。どちらもTOPIXを引いた差。電線の4社は重電・電力機器と電力インフラ・送配電にも入っています(1銘柄が複数のジャンルに入る作りにしてあります)。
目を引くのが重電・電力機器です。TOPIXを3.11ポイント上回っているのに、その業種にあたる電気機器は-0.09%。TOPIXの-0.09%とぴったり同じで、引いた差は±0.00ポイントでした。33業種の表では18番目に並ぶだけで、この日いちばん大きかった流れはそこに表示されません。
電力インフラ・送配電も同じです。2.89ポイント上回っていますが、この20銘柄が入っている業種は建設業で+1.33ポイント。原子力は2.22ポイントで、業種は機械の+1.74ポイントでした。
これも当然出てくる疑問です。答えは上がった銘柄の数で確かめられます。重電・電力機器は22銘柄のうち20銘柄、電力インフラ・送配電は20銘柄のうち18銘柄が上げました。電線の4社を外しても、上げた側のほうがはるかに多く残ります。
名前を挙げると、三菱電機が2.01%高、富士電機が2.74%高、明電舎が3.84%高、東光高岳が3.54%高、ダイヘンが3.22%高、ジーエス・ユアサ コーポレーションが4.98%高。原子力では三菱重工業が2.83%高、東京電力ホールディングスが3.31%高、日本製鋼所が3.72%高です。電線とは別の会社が、そろって上げています。
電気・ガス業は+1.98%と33業種の4番目でしたので、こちらは業種の表でも見えていました。ただ重電・送配電・原子力については、細かく分けて初めて並びが出てきた形です(33業種そのものの分け方は33業種セクターマップにまとめています)。
電線の光ファイバーも重電や送配電も、行き着く先はデータセンターです。この日はクアルコムがアマゾンとAI向けデータセンター用の半導体で提携したとも伝わっていましたので、市場がこの一連の材料をまとめて買ったようには見えます。もっとも、どこからが連想の広がりなのかは、この日の値動きだけでは分けられません(データセンター関連を電力・冷却・建設などの層に分けた話はデータセンター関連株の見極め方で整理しています)。
面白いのは、同じAIでも売られた側があったことです。ソフトウエアやデータ側を集めたジャンルはTOPIXを1.65ポイント下回り、16銘柄のうち上げたのは3銘柄だけ。アドバンテストが2.84%安、野村総合研究所が3.04%安、リクルートホールディングスが2.45%安です。買われたのは「電気を運ぶ側」で、「データを扱う側」は売られていたことになります。
翌日以降のシナリオ|見るのは3つです
9日の値動きの形から、明日以降に確かめたい点です。
- ① 電線の2日目。材料はコーニングの契約報道1本で、非鉄金属の売買代金の4割はフジクラ1社です。日次レポートの判定でも、非鉄金属は25日ぶんの累積では上位にいるものの当日の勢いは失速側で、「見送り」のまま変わっていません
- ② WTIと銅の水準。石油・石炭製品+5.01%は出光興産7.58%高が押し上げた形で、こちらは中身が1銘柄に寄っています。前日の記事で確かめたい点に挙げていたところで、原油高が続けば資源側は支えられますが、指数全体には重荷になります
- ③ 10日の米PPIと11日の米CPI。11日は東京で9月のメジャーSQ(先物とオプションの決済日)も重なります。さらに18日には日銀の金融政策決定会合の結果が出ます。中身と関係のない値動きが出やすい日程が続きますので、週の後半の数字は額面どおりに受け取らないほうがよさそうです
相場の温度そのものは、前日より少し戻りました。上がった業種は9から16へ増え、値上がりした銘柄の比率も23.3%から38.8%へ回復しています。ただ、東証プライムで上がったのは602銘柄、下げたのは920銘柄で、まだ下げ側のほうが多いままです。
売買の集中も見ておきたいところです。キオクシアホールディングスは1兆7,589億円で4営業日続けて売買代金の首位でしたが、市場に占める比率は前日の24%から19%へ下がりました。集中は薄まりましたが、そのぶんが幅広く回ったわけではないという数字ですね。空売り比率は42.4%から44.2%へ上がり、8月以降では高い部類に入っています。
まとめ
9月9日のマーケット・3行まとめ
- 日経平均は126円55銭安(-0.19%)の6万5,142円78銭で2日続落。指数はほとんど動いていませんが、業種別では非鉄金属+6.88%と証券・商品先物業-2.31%が同じ日に並びました
- その非鉄金属を分けると、電線・金価格や貴金属・非鉄や製錬の3つ。どれも構成銘柄が全部上がりましたが、きっかけは光ファイバーの契約と、銅や金の相場という別々のものでした
- 同じ流れは業種の外にも出ていて、重電・電力機器はTOPIXより3%以上強く上げながら、その業種にあたる電気機器は市場と同じ動き。33業種の表には現れませんでした
指数が動かない日でも、中身は入れ替わっているという日でした。業種の名前と、その中で実際に買われているものが一致しないことがある、というのがこの日のいちばんの収穫かなと思います。
電線については、米コーニングの契約という材料がはっきりある急騰でしたので、そりゃ電線各社は反応するよな、というのが最初の感想です。ここは分かりやすい動きでした。
むしろ考えたのが金や非鉄のほうです。銅高もありますが、ここまで上がってきた国債の利回りが一服したこと(日本の10年は前日の2.909%から2.884%へ)と、個別のチャートを見るとちょうどいい押し目の位置に来ていたことが重なったのかな、という感想です。実際、私が毎日見ている押し目の状態表示でも、金価格・貴金属はこの日「押し目反転」に変わりました。
ただし、地合いそのものは良くないと思っています。中東情勢は良くなく、原油は90ドル台に張り付いたまま。日経もTOPIXもチャートの形は悪いままです。前日に大きく売られた機械やガラス・土石製品が戻していますので、この日の上げは前日の急落の反動という見方もできます。
私は個別株は地合いには勝てないと思っていますので、ここからするすると上がっていくかどうかは慎重に見るべきところだと思っています。
前日の記事で「中東の続報とWTIの水準」を確かめる点に挙げていました。あわせて円高で日経1,130円安|下げた業種の並びは10年の集計どおりでしたもどうぞ。非鉄金属のどこに金属高の恩恵が乗るのかは住友金属鉱山はなぜ上がる?|金高の恩恵が乗る会社と乗らない会社の違いで経路ごとに整理しています。当日のマーケット全体の動きは日次レポートをどうぞ。














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