キオクシアはなぜ急落?|半導体の中で資金が入れ替わった1日の中身
2026年8月28日の日経平均は273.58円高の66,405.56円(+0.41%)と3営業日ぶりに反発しました。前日の米国市場でフィラデルフィア半導体指数が+2.33%と上げた流れを引き継ぎ、寄り付きから買い優勢で、前引け後には一時710円高まで買われています。
ところが、その日にいちばん下げたのも半導体関連でした。キオクシアホールディングスは-8.76%、フジクラは-2.91%、古河電気工業は-4.55%。いずれも前日にエヌビディアの好決算を受けて買われた銘柄です。
同じ「AI・半導体」という括りの中で、買われる側と売られる側が一晩で入れ替わっています。この記事では、その入れ替わりがどこまで広がっていたのかを、私が毎日集計している業種内の資金フローで確かめます。
① 前日いちばん上げた2グループが、そのまま当日の下落率上位に並びました。メモリ・基板が+3.66%→-5.28%、電線・光ケーブルが+3.45%→-3.60%と、ほぼ鏡像の動きです
② それでも東証の電気機器業種指数は+0.90%で33業種の7位でした。指数の見た目と中身がずれていて、122銘柄の均等加重で見た対TOPIX相対は-0.59ptとマイナスです
③ 入れ替わっていたのは市場全体ではなく、主力の中だけでした。売買代金の大きい100銘柄では「前日に買われた銘柄ほど当日は売られる」という関係がはっきり出ています。ところが全市場1,520銘柄で同じことを調べると、その関係はほとんど見当たりません
何が起きたか|好決算の翌々日に、並びが裏返った
エヌビディアの決算をはさんだ2営業日で、半導体関連の順番が前後入れ替わりました。
ことの起点は8月27日です。エヌビディアの2027年度第2四半期決算は売上・利益・ガイダンスの3項目すべてが市場予想を上回りました。ところが日経平均は130.18円安と反落し、その中でキオクシアホールディングスが+5.00%、フジクラが+3.68%、古河電気工業が+4.71%と買われる一方、アドバンテストは-3.05%、太陽誘電は-1.77%と売られています。
そして8月28日は、その並びがそのまま裏返りました。アドバンテストは+1.91%で日経平均への寄与度が+159.30円、太陽誘電は+3.87%です。逆にキオクシアは-8.76%で寄与度-107.94円、フジクラは-2.91%で-32.18円、イビデンは-1.80%で-24.81円と、前日の主役が揃って下げ側に回っています。
市場では月末のポジション調整という見方も出ていますし、今晩のジャクソンホール会議でのウォーシュFRB議長の講演を控えた持ち高整理という説明も聞こえてきます。ただ、それだけだと「なぜ半導体の中だけで前後が入れ替わったのか」は説明しきれません。ですので、まずはどこまでが入れ替わっていたのかを数えてみます。
数値で見るインパクト|前日の上位2グループが、そのまま下落率の上位に
半導体まわりを5つのグループに分けると、前日の順番と当日の順番がきれいに逆を向いていました。
売買代金の大きい半導体関連を、稼ぎ方の近さで5グループに分けて単純平均を取りました。前日(8月27日)と当日(8月28日)を並べたものが次の図です。
図1:半導体まわり5グループの平均騰落率。薄い青が8月27日、濃い紺が8月28日。前日に大きく上げた下2つのグループが、当日は下落率の上位に回っています。
| グループ | 構成銘柄 | 8/27 | 8/28 | 2日累計 |
|---|---|---|---|---|
| 検査・前工程装置 | アドバンテスト、東京エレクトロン、KOKUSAI、レーザーテック、ディスコ、SCREEN | +0.32% | +0.87% | +1.19% |
| 電子部品 | 太陽誘電、村田製作所、TDK | +0.49% | +2.07% | +2.56% |
| ウェハ・材料 | SUMCO、信越化学工業 | +0.65% | +0.07% | +0.71% |
| メモリ・基板 | キオクシアHD、イビデン | +3.66% | -5.28% | -1.62% |
| 電線・光ケーブル | フジクラ、古河電気工業、住友電気工業 | +3.45% | -3.60% | -0.14% |
単純平均。株価・騰落率は東証の当日終値ベース。グループ分けは各社の主な稼ぎ方による筆者の分類です。
前日にプラス3%台だった2グループが、当日はマイナス3〜5%台。前日にプラス0%台だった3グループは、当日もプラスを保っています。順番が前後で入れ替わっただけでなく、上げ幅と下げ幅の大きさまで対応しているのが、この日の特徴でした。
もっとも、2日をまとめて見ると印象は変わります。装置と電子部品は2日累計で+1.19%・+2.56%と積み上がった一方、メモリ・基板は-1.62%、電線は-0.14%と行って来いです。往復した側は2日かけてほぼ元の位置に戻り、乗り遅れていた側だけが前に進んだ、という2日間だったと言えそうです。
国内市場の反応|指数は素直に上げ、入れ替わったのは主力の中だけ
市場全体はむしろ幅広く買われた日でした。前日と逆を向く動きが出ていたのは、売買代金の大きい銘柄に限った話です。
まず市場全体です。TOPIXは+0.72%で7日続伸、グロース250は+3.16%と約3カ月ぶりの高値をつけました。プライムの値上がりは873・値下がりは635で、前日の713対770から逆転しています。
年初来高値更新は98銘柄、安値更新は2銘柄でした。つまり裾野はむしろ広がった日です。
業種別では33業種のうち18業種が上昇しました。対TOPIX相対で見ると、上位はサービス業+2.17pt・海運業+1.41pt・その他製品+1.36pt・証券+0.99pt・銀行業+0.82pt。下位はガラス土石-1.92pt、そして非鉄金属-2.48ptが最下位です。前日に業種トップだった非鉄金属が、翌日そのまま最下位に落ちています。
そのうえで、市場全体でも「前日上がったものが今日は下がる」動きが起きていたのかを確かめました。1,520銘柄について、前日の騰落率と当日の騰落率がどのくらい逆を向いているかを測ると-0.006。ほとんど関係がなかった、という結果です。
※ここで使っているのは相関係数という物差しです。-1に近いほど「前日と逆」、0なら「前日と関係なし」、+1に近いほど「前日と同じ方向」を表します。
実際、前日に上げていた上位20%の当日平均は+0.49%、前日に売られていた下位20%も+0.33%と、どちらもプラスでした。市場全体では入れ替えではなく、素直に広く買われていたわけです。
ところが対象を売買代金上位100銘柄に絞ると、同じ数字が-0.327に変わります。前日に買われていた上位25銘柄は当日平均-0.16%、前日に売られていた下位25銘柄は当日平均+0.78%。資金が集まる主力の中だけで、前日と真逆の入れ替えが起きていたという形です。
独自分析|電気機器を3つの測り方で測ると、符号が変わります
同じ業種・同じ日でも、加重の仕方を変えると+2.45%から-3.18%まで結果が動きます。
電気機器は122銘柄が属する業種で、キオクシアはこの日、業種の売買代金の45%を1銘柄で占めていました。その巨大な1銘柄が-8.76%です。にもかかわらず、東証の業種指数は+0.90%で33業種の7位でした。
図2:電気機器122銘柄を、売買代金加重・東証の業種指数(時価総額加重)・均等加重の3通りで測った結果。8月28日は3つとも符号や大きさが食い違いました。
| 測り方 | 意味 | 8/27 | 8/28 |
|---|---|---|---|
| 売買代金加重 | その日動いたお金の平均 | +2.45% | -3.18% |
| 東証の業種指数 | 時価総額(浮動株)加重 | +0.62% | +0.90% |
| 均等加重 | 122銘柄を1銘柄1票で平均 | +0.72% | +0.13% |
| 均等加重の対TOPIX相対 | TOPIXとの差(pt) | +0.57pt | -0.59pt |
| 代金加重(キオクシア除く) | 最大銘柄を外した場合 | -0.08% | +1.37% |
筆者の集計値。業種指数のみ東証公表値で、それ以外は当日の終値・売買代金から算出しています。
この表でいちばん目を引くのは、いちばん下の行です。キオクシアを除いた代金加重は、前日が-0.08%、当日が+1.37%。つまり8月27日は「キオクシアだけが上がって残り121銘柄は横ばい」、8月28日は「キオクシアだけが下がって残りは上がった」という2日間でした。2日とも、この1銘柄と業種の残りは逆を向いていたことになります。
均等加重で見ると+0.13%で、TOPIXの+0.72%に0.59pt負けています。業種内の上昇銘柄は63・下落は56・変わらずが3で、上昇比率は51.6%。前日の68.0%から大きく下がりました。業種指数は7位でも、銘柄の層に降りると市場平均に負けているという日だったわけです。
8月24日の非鉄金属は、これとちょうど逆でした。あの日は業種指数が-0.72%で33業種28位なのに、均等加重の対TOPIX相対は+1.41pt。指数が冴えないのに中身は買われていました。
今回は逆に、指数が良いのに中身が負けています。指数と中身がずれる方向は、日によって両側に振れますので、片側だけ覚えても役に立たないんですよね。
なお、この-0.327がどのくらい珍しいのかも数えてみました。同じ計算をデータのある80営業日ぶん並べると、真ん中の日は-0.004です。そのなかで-0.327は、前日と逆を向いた度合いが強いほうから10番目にあたります。毎日起きることではありませんが、月に1回くらいは出る、という位置ですね。
注目セクター・銘柄|10日の累積で見ると、電気機器はまだ戻り途中です
当日の順位だけ見ると強い業種ですが、累積では33業種の下位に沈んだままです。
電気機器の対TOPIX相対は、当日こそ+0.18ptですが10日累計では-3.71ptです。内訳を見ると8月18日の-2.67pt、8月19日の-0.88ptが大きく効いていて、そこからの戻りがまだ途中という形になっています。ですので今回の+0.18ptは、トレンドの転換というより下げ止まりの範囲に見えます。
個別では、この2日間で位置づけが変わったのは装置と電子部品です。とくに太陽誘電は+3.87%で電気機器の代金3位、村田製作所+1.20%、TDK+1.14%と、電子部品が揃ってプラスになりました。AI向けの需要が語られるとき、これまで主役だったのは電線とメモリでしたが、この2日はその周辺にお金が回っているように見えます。
反対に、キオクシアは1銘柄で売買代金1兆5,902億円=市場全体の19.6%を集めました。前日の23.9%からは下がったものの、依然として市場の5分の1です。この規模の銘柄が業種に1つあるあいだは、電気機器の業種指数はキオクシアの気分を測る指標に近くなるという点は、覚えておいて損はないと思います(半導体まわりの銘柄ごとの位置づけは半導体・AI関連の銘柄ガイドで整理しています)。
翌日以降のシナリオ|確認したいのは4つです
往復が終わったのか、それとも入れ替わりの初日なのかは、まだ決まっていません。
- ① ウォーシュFRB議長の講演への反応
今晩のジャクソンホール会議が初の基調講演です。インフレ抑止の姿勢が強く出れば米金利とドル円が動きますので、週明けの前提そのものが入れ替わる可能性があります - ② キオクシアの売買代金シェアが下がるか
23.9%→19.6%と2日連続で低下しています。ここがさらに下がると業種指数と中身のずれは縮みます。逆に再び2割超で居座るなら、業種の数字は当分あてになりません - ③ 電線3社が戻るか、それとも装置・部品が続くか
2日累計では電線が-0.14%、装置が+1.19%、電子部品が+2.56%です。ここから電線が取り返すなら往復、装置側が伸び続けるなら入れ替わりが進んでいる、という読み分けになります - ④ 主力の中の入れ替わりが続くか
前日と逆を向く動きが8月28日だけで終わるなら、月末とジャクソンホール会議を前にした持ち高の整理だった、という話で片づきます。逆に週明けも2日3日と続くようなら、AI関連の中で買われる場所そのものが動き始めている、という読みになります。私は毎日この数字を出して並べておくつもりです
ひとつ補足しておくと、この日の相場は騰落レシオ25日が125.31と節目に乗り、RSI70超の比率は24.0%でした。過熱の目盛りは高めですが、資金集中度は32.6%から27.4%へ下がって「分散」に戻っています。熱はあるが1銘柄への偏りは緩んだ、という組み合わせです。当日のマーケット全体の動きは日次レポートで詳しく取り上げています。
🏆 この記事のまとめ
- 8月28日の日経平均は273.58円高の66,405.56円で3営業日ぶりに反発。一時は710円高まで買われましたが、ジャクソンホール会議を控えて伸び悩んで引けています
- 前日いちばん買われた2グループが、そのまま当日の下落率上位に並びました。メモリ・基板が+3.66%→-5.28%、電線・光ケーブルが+3.45%→-3.60%。逆に検査・前工程装置と電子部品は2日連続でプラスです
- 入れ替わっていたのは市場全体ではありません。前日と当日でどのくらい逆を向いたかを測ると、1,520銘柄全体では-0.006でほとんど関係なし。売買代金上位100銘柄に絞ると-0.327で、80営業日のうち逆向きが強いほうから10番目でした
- 電気機器の業種指数は+0.90%で33業種7位ですが、122銘柄の均等加重は+0.13%で対TOPIX相対は-0.59pt。上昇比率も68.0%から51.6%へ低下しています
- キオクシアを除いた代金加重は前日-0.08%、当日+1.37%。2日間ずっと、この1銘柄と業種の残り121銘柄は逆を向いていました
- 2日累計では装置+1.19%・電子部品+2.56%に対し、メモリ・基板-1.62%・電線-0.14%。往復した側は元の位置に戻り、乗り遅れていた側だけが前に進んだ2日間です
数値の出所:株価・騰落率・売買代金・業種指数は2026年8月28日の東証終値および当日のランキングデータ。日経平均への寄与度、業種内の均等加重・代金加重・対TOPIX相対騰落・上昇比率・前日比との相関は、いずれも筆者の集計値です。エヌビディアの決算内容とジャクソンホール会議の日程は各種報道ベースで、確報で修正される場合があります。
今回いちばん引っかかったのは、業種指数が33業種の7位だったことです。キオクシアが業種代金の45%を占めて-8.76%まで下げているのに、指数はプラス。時価総額の加重と売買代金の加重がここまで食い違うと、業種という単位そのものが機能しなくなるところがあります。
私が均等加重と代金加重を毎日並べているのは、こういう日を取りこぼさないためです。ただ、今回で分かったのは、ずれる方向は片側ではないということでした。8月24日の非鉄は「指数が悪くて中身が良い」、今回の電気機器は「指数が良くて中身が悪い」。同じ道具でも読む向きが逆になるので、思い込みを持って見ると間違えます。
そのうえで、市場全体では前日との逆向きがほとんど出なかったことは重く見ています。全体は素直に上げていて、入れ替わったのは代金上位だけでした。となると、これは相場観の変化というより、月末とジャクソンホールを前にした持ち高の整理という説明のほうが素直かなと思います。
なので当面は、電線3社とキオクシアが戻るかどうかを見ています。戻るなら今回は往復でおしまいですし、戻らないまま装置と電子部品が伸び続けるなら、AI関連の中で買われる場所が動いたという話になります。判断はそこを見てからでも遅くない、というのが今の私の立ち位置です。
前日のエヌビディア決算と日本株の反応はエヌビディア好決算でも日経は反落、米SOXと日本の半導体株の連動については米SOXが下がった翌日は日本の半導体も下がるのかで検証しています。8月24日の非鉄金属の回は金高の恩恵が乗る会社と乗らない会社にまとめました。















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