そして「金利といえば銀行」の先に、何が並んでいるか。
9月1日、日本の長期金利が3%の目前まで上がりました。教科書どおりなら銀行が買われ、不動産が売られる日です。 ところが私の手元の集計では、メガバンク3社の平均は+0.6%ほどにとどまり、不動産の大手3社はむしろ+1.8%。 教科書と逆のことが起きた1日でした(その日の顛末はこちらに書いています)。
1日だけ見ていても答えは出ません。そこで為替回と同じ物差しで、 東証33業種の代表98銘柄と、名前の知られた37銘柄について、10年ぶん・2,442営業日の値動きを数え直しました。 今回は日本の長期金利(10年国債の利回り)を主役にして、アメリカの長期金利は答え合わせに使います。
結果を先に書きます。金利が上がった日に上がっていたのは金融の3業種、下がっていたのは不動産と「守りの株」でした。 そして銘柄で見ると、いちばん落ちていたのは不動産デベロッパー(土地を仕入れてビルやマンションを建てる会社。ここでは三井不動産・三菱地所・住友不動産の3社)ではなく、J-REITでした。
- 金利が上がった日に上がったのは銀行・保険・証券。3番手まで金融の独占で、地銀はメガバンクと並ぶか上でした。
- 下がったのは不動産、陸運、医薬品、空運。値動きの静かな「守りの株」が金利の日には売られていました。
- 銘柄ではJ-REITの下げが不動産大手3社の倍。ニトリ・花王・明治など、円高メリット側の生活必需品もここに並びます。
- 電気機器は日本の金利では上がって見えますが、アメリカの金利では帯の中。金利ではなく「強気の日」の顔ぶれです。
- 為替回と違い、銀行だけは前日の金利上昇が翌日にも残っていました。寄り付きと日中の両方です。
- ただし2026年は「金利が上がると日経平均が下がる」年。銀行・保険の強さは変わりませんが、守りの株は日経より下がりにくい側に回っています。
※本記事は過去データの集計です。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
「金利が0.1%上がった日」を物差しにします
この記事の数字は、ぜんぶ「日本の長期金利が1日で0.1%上がった日に、その銘柄が日経平均より何%多く上がったか」の10年平均です。 為替回で使った「感応度」と同じ作りで、材料をドル円から金利に替えただけです。
- 日本の10年国債の利回り(財務省の公表値)が、前の日より0.1%上がった日を考えます。
- その日、その銘柄が日経平均より何%多く上がったかを平均します。
- プラスなら金利上昇で買われる側、マイナスなら売られる側、0のあたりなら金利とはほとんど関係なし。
ひとつ断っておくと、1日で0.1%というのは大きな動きです。この10年で1日に0.1%以上動いた日は12日しかなく、 ふだんの日はだいたい±0.03%の範囲で動いています(2022年以降のばらつきの幅で2.7bp、1bp=0.01%)。 0.1%というのは「日銀が動いた日」「海外で金利が急騰した翌日」くらいの規模だと思ってください。ふつうの大きめの日(0.03%)なら、表の数字の3分の1ほどが目安になります。
そして日経平均そのものも、金利が上がった日には動いています。「金利が上がると株は下がる」というのが教科書の説明で、私もそのイメージでした。 ところが10年ぶんを測ると、日経平均は0.1%の金利上昇につき、平均して+0.96%上がってきました。 この10年の日本では、金利が上がる日は「景気が強い」「日銀が動けるほど物価が上がっている」と受け取られて、株も一緒に上がる日のほうが多かったのです(ただし2026年は逆で、この話はあとの章で扱います)。 この記事の数字は、日経平均の動きを引いたうえで、さらにどれだけ勝ったか(負けたか)を表しています。だから日経平均が上がる日でも下がる日でも、同じ物差しで読めます。
| 測ったもの | 0.1%上がった日 | ふつうの大きめの日(0.03%)なら |
|---|---|---|
| 日経平均そのもの | +0.96% | およそ+0.29% |
| 銀行業(対 日経平均) | +1.79% | 日経より+0.54%ほど多く上がった |
| 医薬品(対 日経平均) | −0.47% | 日経より−0.14%ほど負けた |
| 不動産業(対 日経平均) | −0.73% | 日経より−0.22%ほど負けた |
右の欄は、0.1%を0.03%に読み替えたぶん、左の数字を3分の1ほどにした目安です。
33業種で測ると、上がったのは金融、下がったのは「守りの株」でした
まず業種で見ます。東証33業種それぞれについて代表3社ずつ、98銘柄の平均を取りました。 図の水色の帯は「本当は差がなくても、まぐれでこのくらいは出てしまう範囲」です。 棒が帯からはみ出していれば、日経平均とは違う動きをしていたと言えます。
上にはみ出したのは13業種ありますが、並びを見ると銀行業+1.79・保険業+1.41・証券+0.86の3つが頭抜けています。 4番手の海運業と輸送用機器が+0.68ですから、金融3業種だけ別の物差しで動いているような形です。
下にはみ出したのは9業種で、先頭が不動産業の−0.73。 続くのが陸運業−0.58、医薬品−0.47、空運業−0.39、電気・ガス業−0.34、情報・通信業−0.29です。 不動産を別にすると、鉄道・薬・電力・通信と、景気に左右されにくい「守りの株」が並んでいます。 金利が上がった日は、金融が買われて、守りの株が売られる日だった、ということです。
金利が上がった日に不動産が下がるのは、私には想像どおりでした。ただ、為替回の中で私は「アメリカの金利で測ると、不動産はほとんど動かない」と書いています。 今回は日本の金利で−0.73とはっきり帯の外です。為替回の答えは、測り方が粗かったせいで出ていたことが分かりました。この話は次の章で続けます。
なぜ金融が上がり、守りの株が下がるのか。私の理解を短く
銀行は「安く集めて高く貸す」商売なので、金利が上がると貸す側の金利が先に上がり、もうけの差が広がります。 この理屈と、20年分の月次データで確かめた結果は「金利が上がれば銀行株は買い」は本当かに書いたので、ここでは繰り返しません。 生命保険も似ていて、集めた保険料を長い期間の債券で運用しているので、金利が上がるほど運用の利回りが上がります。第一生命の+2.32(後の早見表)は、銀行と並ぶ大きさでした。
上がる側と下がる側の理屈を、「差」で1枚にまとめるとこうなります。
下がる側は、理由が2つに分かれると思っています。ひとつは不動産とREITで、こちらは借金で建物を買う商売なので、金利が上がると利払いが増えるうえ、 「家賃収入の利回り」と「国債の利回り」の差が縮んで、投資対象としての魅力が落ちます。REITはこの効き方がとくに素直です。
もうひとつは鉄道・薬・電力・通信・食品で、こちらは業績が金利で傷むわけではありません。 ただ、これらは値動きが静かで配当が安定しているので、「債券の代わり」として買われてきた株です。 国債の利回りが上がれば、わざわざ株で債券の代わりをする必要が薄れる。そうやって、金利の日に静かに売られていたのだと私は見ています。
2本の物差しで測ると、「金利銘柄」と「強気の日の顔ぶれ」が分かれました
ここで、読者の方が当然抱くであろう疑問に先に答えておきます。 「この10年は金利が上がった日に株も上がっていたのだから、図1は金利の効き目ではなく、強気の日に買われる業種を並べただけでは?」という疑いです。 私も同じことを考えました。
そこで同じ98銘柄を、今度はアメリカの長期金利で測り直しました。アメリカの金利は日本時間の夜に決まるので、 「前の晩にアメリカの金利が0.1%上がった翌日、東京でその業種がどう動いたか」を測ることになります。 前の晩に決まった材料は、その日の東京の強気・弱気とは切り離されています。2本の物差しで同じ向きに出た業種だけを、金利で動く業種と呼ぶことにしました。
きれいに3つに分かれました。銀行・保険・証券は両方で上、不動産・医薬品・情報通信は両方で下。ここまでが、どちらの国の金利でも同じ向きに動く「金利銘柄」です。 輸送用機器と海運も両方で上ですが、こちらは為替回で見たとおり円安の日に強い業種で、金利の日と円安の日が重なりやすいぶんが乗っていると思います。
いっぽう電気機器は、日本の金利では+0.49で帯の外なのに、アメリカの金利では+0.02で帯の中。 つまり「東京が強気の日に買われる業種」であって、金利で動いているわけではありませんでした。 空運は日本の金利では下なのに、アメリカの金利では帯のふちで上向きと、向きが逆です。金利銘柄と呼ぶには筋が通りません。
そして不動産です。日本の金利では−0.73、アメリカの金利では−0.14で、どちらの物差しでも帯の外でした。 数字の大きさが5倍ちがって見えますが、これは日経平均そのものも日本の金利で+0.96、アメリカの金利で+0.19と5倍ちがうのと同じで、物差しの目盛りの差です。 為替回で「米金利で不動産は動かない」と書いたのは、あのときの測り方(利回りの1%の変化)がゼロ金利の時期に細かすぎて、答えがぼやけていたためでした。今回の答え合わせで、不動産は金利銘柄に戻ります。
ただし2026年は、「金利が上がると株が下がる」年です
ここで、読者の方が持っているであろうもう一つのイメージに答えておきます。「金利が上がったら株は下がるのでは?」という、教科書どおりの感覚です。 10年平均では逆でしたが、実は2026年に入ってからは、その感覚のほうが当たっています。
| 測ったもの | 10年平均 | 2026年だけ | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 日経平均そのもの | +0.96% | −1.29% | 2026年は金利が上がった日に日経が下がる |
| 銀行業(対 日経) | +1.79 | +1.07 | 日経が下がる日でも、日経より強い |
| 保険業(対 日経) | +1.41 | +1.26 | 同上 |
| 不動産業(対 日経) | −0.73 | −0.59(偶然の範囲) | 向きは同じだが、日数が少なく帯が広い |
| 陸運業(対 日経) | −0.58 | +0.91(偶然の範囲) | 日経が下がる日は、下がりにくい側に回る |
| 医薬品(対 日経) | −0.47 | +0.65(偶然の範囲) | 同上 |
| J-REIT(対 日経) | −1.56 | +0.84(偶然の範囲) | 同上。10年平均とは逆向き |
2026年は1月〜9月4日の165営業日。日数が少ないので「まぐれでもこのくらいは出る範囲」が10年平均の3倍ほど広く、銀行・保険以外は帯の中です。
2026年に絞ると、日経平均は金利が0.1%上がった日に平均−1.29%。10年平均の+0.96%と符号が逆です。 長期金利が2%を超えて3%に迫るなかで、金利上昇が「景気の強さ」ではなく「株の重し」として受け取られる年になった、ということだと思います。 金利が0.03%以上上がった日の日経平均は、10年平均だと勝率56%でしたが、2026年は40日で勝率47.5%、平均−0.12%。逆に金利が下がった日は平均+1.34%・勝率70%でした。
それでも銀行と保険が日経平均より強いことは、2026年でも変わっていません。日経が下がる日にも、この2業種は日経ほどは下がらないか、逆に上がっている。ここは10年平均と同じです。
変わったのは守りの株です。10年平均では「金利の日に売られる側」でしたが、2026年のように株全体が下がる金利上昇では、鉄道・薬・REITは「日経より下がりにくい側」に回って、対日経ではプラスに転じています(帯の中なので断定はできません)。 つまり守りの株が金利で売られるのは、株全体が強気の日に限った話で、金利上昇が株安を連れてくる年には、守りの株はふつうに守りの役目をしていました。この記事の早見表を使うときは、いまがどちらの年なのかを、日経平均の反応で先に確かめてください。
業種を割ると、地銀がメガバンクに並びました
33業種は幅が広いので、為替回と同じくサブ業種40グループ(代表124銘柄)にも割って測りました。目を引いたところだけ表にします。
| グループ | 日本の金利 | 判定 | アメリカの金利 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 地方銀行 | +2.00 | ◎ | +0.68 | ◎ |
| メガバンク | +1.79 | ◎ | +0.63 | ◎ |
| 重電・総合電機 | +0.81 | ◎ | +0.26 | ◎ |
| 百貨店 | +0.59 | ◎ | +0.37 | ◎ |
| 半導体製造装置 | +0.15 | × | −0.15 | ○ |
| 鉄道 | −0.40 | ○ | +0.01 | × |
| 化粧品・日用品 | −0.54 | ◎ | −0.17 | ◎ |
| 不動産デベロッパー | −0.73 | ◎ | −0.14 | ○ |
| ドラッグストア | −0.83 | ◎ | −0.32 | ◎ |
| 家具・生活雑貨 | −0.91 | ◎ | −0.38 | ◎ |
| J-REIT(参考・2銘柄) | −1.56 | ◎ | −0.51 | ◎ |
サブ業種40グループ(代表124銘柄)から、目を引いたものを抜き出しました。数字の読み方は上の早見表と同じです。
いちばん意外だったのは地方銀行の+2.00が、メガバンクの+1.79と並んでいたことです。地銀のほうがわずかに上ですが、この差は偶然の範囲です。 それでも「金利といえばメガバンク」ではなく、地銀も同じだけ買われていました。預金を国内で集めて国内で貸す商売がほとんどなので、日本の金利には素直なのだと思います。
半導体製造装置は日本の金利では帯の中、アメリカの金利ではマイナス側で帯の外です。為替回で「半導体製造装置は米金利に弱い」と書いた結果と同じで、この集団を動かしているのはアメリカの金利のほうでした。
下げ側では家具・生活雑貨−0.91とドラッグストア−0.83が、不動産デベロッパーの−0.73より下です。 為替回で円高メリットの代表だった集団が、金利でも同じ側に並びました。そしてその全部の下に、参考で載せたJ-REITの−1.56があります。
銘柄の早見表
ここからが本題の早見表です。名前の知られた37銘柄を同じ物差しで測り、4つのグループに分けました。REITは東証33業種の外なので、業種の集計には入れず、ここで初めて出てきます。
| コード | 銘柄 | 日本の金利 | 判定 | アメリカの金利 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 金利で上がった側① 銀行・保険・証券 | |||||
| 8308 | りそなHD | +2.34 | ◎ | +0.83 | ◎ |
| 8750 | 第一生命HD | +2.32 | ◎ | +1.02 | ◎ |
| 8331 | 千葉銀行 | +2.27 | ◎ | +0.81 | ◎ |
| 8306 | 三菱UFJ FG | +1.98 | ◎ | +0.71 | ◎ |
| 8411 | みずほFG | +1.82 | ◎ | +0.58 | ◎ |
| 8316 | 三井住友FG | +1.58 | ◎ | +0.60 | ◎ |
| 8766 | 東京海上HD | +1.11 | ◎ | +0.44 | ◎ |
| 8604 | 野村HD | +1.03 | ◎ | +0.28 | ◎ |
| 金利で上がった側② 金融以外(アメリカの金利でも上) | |||||
| 6501 | 日立製作所 | +1.29 | ◎ | +0.28 | ◎ |
| 7011 | 三菱重工業 | +1.06 | ◎ | +0.46 | ◎ |
| 3099 | 三越伊勢丹HD | +0.90 | ◎ | +0.47 | ◎ |
| 7267 | ホンダ | +0.88 | ◎ | +0.39 | ◎ |
| 7261 | マツダ | +0.84 | ◎ | +0.56 | ◎ |
| 8031 | 三井物産 | +0.71 | ◎ | +0.34 | ◎ |
| 1605 | INPEX | +0.68 | ◎ | +0.51 | ◎ |
| 5020 | ENEOS HD | +0.57 | ◎ | +0.33 | ◎ |
| どちらの金利でも動かなかった9銘柄 | |||||
| 4063 | 信越化学工業 | +0.23 | × | −0.09 | × |
| 6758 | ソニーグループ | −0.03 | × | −0.05 | × |
| 6861 | キーエンス | +0.02 | × | −0.08 | × |
| 9983 | ファーストリテイリング | −0.02 | × | −0.03 | × |
| 6981 | 村田製作所 | +0.06 | × | +0.06 | × |
| 7974 | 任天堂 | +0.13 | × | −0.12 | × |
| 9984 | ソフトバンクG | +0.17 | × | −0.15 | × |
| 4543 | テルモ | +0.03 | × | +0.04 | × |
| 2914 | JT | +0.12 | × | +0.05 | × |
| 金利で下がった側 不動産・REIT・生活必需品 | |||||
| 8952 | JリアルエステイトREIT | −1.63 | ◎ | −0.51 | ◎ |
| 9843 | ニトリHD | −1.49 | ◎ | −0.68 | ◎ |
| 8951 | 日本ビルファンドREIT | −1.48 | ◎ | −0.50 | ◎ |
| 8113 | ユニ・チャーム | −0.97 | ◎ | −0.29 | ◎ |
| 8802 | 三菱地所 | −0.89 | ◎ | −0.22 | ◎ |
| 9064 | ヤマトHD | −0.83 | ◎ | −0.10 | × |
| 8801 | 三井不動産 | −0.74 | ◎ | −0.06 | × |
| 2269 | 明治HD | −0.71 | ◎ | −0.22 | ◎ |
| 4519 | 中外製薬 | −0.67 | ◎ | −0.23 | ◎ |
| 4452 | 花王 | −0.66 | ◎ | −0.16 | ○ |
| 2802 | 味の素 | −0.64 | ◎ | −0.20 | ◎ |
| 9433 | KDDI | −0.62 | ◎ | −0.10 | × |
「日本の金利」=日本の長期金利が1日で0.1%上がった日に、その銘柄が日経平均より何%多く上がったかの10年平均。 「アメリカの金利」=アメリカの長期金利が前の晩に0.1%上がった翌日の東京で、同じように測ったもの。 判定は◎=まぐれで出る確率が数百回に1回未満、○=20回に1回を切る、×=偶然の範囲。REITの2銘柄は東証33業種の外なので、業種の集計(図1)には入っていません。
上げ側の先頭はりそな+2.34・第一生命+2.32・千葉銀行+2.27で、メガバンクの3社(+1.98/+1.82/+1.58)より前に出ています。 金融以外では日立製作所+1.29と三菱重工業+1.06が目立ちますが、アメリカの金利でも帯の外なので、こちらは「強気の日の顔ぶれ」ではなく本物だと見ています。
下げ側の先頭はJ-REITの2銘柄で−1.63と−1.48。三菱地所−0.89、三井不動産−0.74の倍近い落ち方です。 金利上昇が不動産株に与える影響は業種の集計でも見えていましたが、J-REITへの影響はそれよりはっきり大きい、ということです。 そのあいだにニトリ−1.49が割り込み、ユニ・チャーム・明治・中外製薬・花王・味の素と、生活必需品が続きます。 為替回で「円高で上がる側」に並んだ顔ぶれが、金利の回でも「下がる側」に並びました。円安の日と金利上昇の日が重なりやすいぶんが乗っているのだと思います。
そして上がる側では、地銀と生保がメガバンクと並んでいました。
では、金利が上がったら翌日に買えばいいのか
ここまでは「同じ日に一緒に動いたか」を測ってきました。日本の金利は東京の時間に動くので、 「金利が上がったのを見てから買って、間に合うのか」は同じ日の数字では分かりません。
そこで為替回と同じく、前日に金利が0.1%上がったあと、翌日どうなるかを2つに分けて測りました。 ひとつは寄り付きの窓(前日の終値から翌日の始値まで)、もうひとつは寄ってから引けまで(翌日の始値から終値まで)です。
為替回とは違う結果になりました。メガバンクと地方銀行は、寄り付きの窓も、寄ってから引けまでも、両方が帯の外です。 前日の金利上昇が、翌日の日中まで効いていました。翌日を丸ごと1日で測ると+0.84(図の2本を足すと+0.78)で、同じ日の反応+1.79に対しておよそ半分が翌日に残っている計算です。 証券も寄ってからの半日で帯の外でした。
いっぽう不動産デベロッパーは寄り付きの窓で−0.25と下げるものの、寄ってからは帯の中。J-REITに至っては翌日には何も残っていません。 下げる側は、前日のうちに織り込み終わっています。
この検証は、前日の終値までに分かっていた金利だけを使っています。つまり「今日の金利上昇を見て、明日の寄りで銀行を買う」という手順を再現した形です。 その結果が「半分残る」ですから、為替回の表とは違って、銀行株に限っては合図として使える余地がある、というのが正直な結論です。
金利が1日で0.03%以上上がった日(10年で136日)に絞ると、メガバンクが日経平均に勝てたのは67.6%、翌日に勝てたのは61.0%です。 3回に1回は負けていて、その136日を悪いほうから並べて下から1割目の日を見ると、同じ日で−1.42%、翌日で−1.21%でした。 逆に金利が0.03%以上下がった日は、メガバンクは平均−0.70%で勝率37.4%。 「金利で上がる銘柄」は、金利が下がった日に同じだけ沈む銘柄でもある、ということですね。
この結果、実践にどう活かす?
まとめ
10年ぶん数えて分かったのは、「金利といえば銀行」の先に、もっとはっきりした反応をする集団があるということでした。 上げ側では地銀と生保がメガバンクと並び、下げ側ではJ-REITが不動産大手3社の倍の落ち方をしている。 そして電気機器や空運のように、金利で動いて見えて、実は「強気の日」に動いていただけの業種も分かりました。 2026年は金利上昇が株安を連れてくる年に変わっていますが、そのなかでも銀行と保険が日経平均より強いことは変わっていません。
為替回では「動きは寄り付きで終わる」でしたが、今回は銀行だけが翌日にも半分残っています。 だからこの記事は、今日の値動きを説明するための表であると同時に、銀行株に限っては明日の合図として使える余地のある表として置いておきます。 次は原油で同じことを測る予定です。
よくある質問
- データ出典:日本10年国債利回りは財務省「国債金利情報」の日次の値(10年)。株価・日経平均・アメリカ10年国債利回り(CBOE 10年国債利回り指数)はYahoo!ファイナンスの日次の始値・終値。集計はすべて私が行っています。
- 集計期間は2016年9月5日〜2026年9月4日。日経平均と日本10年国債利回りの両方に値がある日を使い、2,442営業日となりました(アメリカの金利を使う集計は2,440営業日、翌日を測る集計は2,441営業日)。
- 「感応度」は、日経平均を引いた騰落率を、10年国債利回りの変化(0.1%=10bpを1単位)で説明する直線(最小二乗法)の傾きです。判定の◎○×は、傾きを標準誤差で割った値の大きさによります(◎=3.0以上、○=2.0以上3.0未満、×=2.0未満)。日経平均そのものの感応度は日本の金利で+0.96、アメリカの金利で+0.19です。
- 「まぐれでもこのくらいは出る範囲」は、標準誤差を2倍した幅です。おおまかに、本当は差がなくても20回に1回くらいはこの幅の外に出てしまう、という目安として使っています。
- 為替回の「輸出株なのに動かないのは集計ミスではないのか」の章に置いた3材料の比較表では、アメリカの金利を「利回りの1%の変化」で測っていました。今回は「0.1%(10bp)の変化」に単位を揃えたので、同じ銘柄でも数字は一致しません。向きと順位は同じです。
- 日本の金利は東京の時間(財務省の値は15時ごろの基準)に決まるので同じ日の株価と、アメリカの金利は日本時間の夜に決まるので翌日の東京の株価と組み合わせています。日本の金利の日次変化に、前の日との連動(自己相関)はほとんどありませんでした(+0.003)。
- 業種分類は東証33業種によります。代表銘柄は各業種3社(空運業のみ2社)、合計98銘柄。サブ業種40グループは私が分けたもので、公式の分類ではありません(代表124銘柄)。J-REITは日本ビルファンド投資法人(8951)とジャパンリアルエステイト投資法人(8952)の2銘柄の平均です。
- 株価は分割・配当を調整した終値を使っています。図4の寄り付きの窓と寄ってから引けまでは、同じ日の始値・終値をそのまま使っています。手数料・税金は含んでいません。
- 「2026年だけ」の集計は2026年1月5日〜9月4日の165営業日。同じ方法で2025年以降(408営業日)を測ると、日経平均そのものは+0.46(帯の中)、銀行業+1.39・保険業+1.11・不動産業−0.93・J-REIT−0.66で、10年平均と同じ向きでした。符号が逆転しているのは2026年に入ってからです。
- 9月1日の数字(三菱UFJ・三井住友・みずほの3社平均+0.63%、三井不動産・三菱地所・住友不動産の3社平均+1.79%、日経平均−0.15%、長期金利は+0.044%の2.987%)は、この記事と同じデータから私が計算したものです。
本記事は過去データの分析であり、将来の値動きを保証するものではありません。特定の銘柄や売買を推奨するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。数値の集計は私が行っていますが、誤りが含まれる可能性があります。







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