11因子モデルとは ─ 日本株の強弱を客観的な数値で捉える独自スコアリング手法
11因子モデルとは何か
11因子モデルは、その日の日本株市場の状態を11個の指標(因子)で採点して、合計スコアで相場の強弱を表現してみるという手法です。合計スコアは-9 〜 +11の範囲で動き、値が大きいほど強気、小さいほど弱気を示すイメージになっています。
モデルの全体像 ─ 5つの因子群
11個の因子は、測定する内容の性質ごとに5つの群(A〜E群)に分けています。各群は、それぞれ違った観点から相場の状態を見るためのものです。
| 因子群 | テーマ | 因子数 | スコア範囲 | 測定内容 |
|---|---|---|---|---|
| A群 | トレンド(市場の方向) | 3因子 | -3 〜 +3 | 指数がどちらに動いているか |
| B群 | 幅・需給(市場の深さ) | 3因子 | -3 〜 +3 | 上昇が全体に広がっているか、一部銘柄だけか |
| C群 | 内部エネルギー(資金と勢い) | 3因子 | -3 〜 +3 | 買い意欲・モメンタムの強さ |
| D群 | 過熱調整(マイナスのみ) | 2因子 | -3 〜 0 | 過熱・資金集中によるリスク |
| E群 | マクロ(外部環境) | 2因子 | -2 〜 +2 | 米国市場・VIX等の外部要因 |
ここでのポイントは、D群が「マイナスのみ」の設計になっていること。相場における「過熱」ってそもそもリスク要因として働くものなので、プラス方向のスコアは付けない仕様にしています。この結果、合計スコアは-9〜+11という少し非対称な範囲になるんですが、これは設計上のこだわりです。
各因子の詳細
以下、A群からE群まで、11因子すべての中身を順に解説します。
A1:TOPIX前日比
市場全体の方向を一番素直に表してくれるのがTOPIXの前日比騰落率。日経平均ではなくTOPIXを使っているのは、一部の値がさ株の影響を受けにくく、市場全体の動きを幅広く反映してくれるからです。
- +1点:+0.5%以上(明確な上昇)
- 0点:±0.5%以内(方向感なし)
- -1点:-0.5%以下(明確な下落)
A2:日経-TOPIX差
日経平均とTOPIXの騰落率の差を見ることで、大型株主導の相場かどうかが分かります。日経平均が優位な日はSBGやファストリみたいな値がさ株が日経を押し上げているケースが多くて、相場全体の広がりとは少し違う動きになっていたりします。
- +1点:日経-TOPIX差が+0.5pt以上(大型主導・値がさ株強い)
- 0点:±0.5pt以内(中立)
- -1点:-0.5pt以下(日経劣後・大型株弱い)
A3:グロース-TOPIX差
グロース250指数とTOPIXの騰落率の差です。中小型グロース銘柄が選ばれているかを測れます。プラスならリスク選好的な局面、マイナスなら大型・バリュー優位な局面、という感じで読み取れます。
- +1点:グロース-TOPIX差が+0.5pt以上
- 0点:±0.5pt以内
- -1点:-0.5pt以下
B1:値上がり業種比率
東証33業種のうち、何業種が前日比プラスで引けたかを見るシンプルな指標です。全面高の日は30業種以上がプラスになりますし、全面安の日は一桁まで落ちてしまうので、相場の広がりが一目で分かるんですよね。
- +1点:22業種以上が上昇(広範囲の上昇)
- 0点:11〜21業種(まだら模様)
- -1点:10業種以下(全面安の様相)
B2:新高値-新安値スプレッド
当日の年初来高値更新銘柄数と、年初来安値更新銘柄数の差です。需給バランスの健全度が見える指標で、上昇相場だと高値更新が優位、下落相場だと安値更新が優位になっていきます。
- +1点:スプレッドが+30以上
- 0点:-29 〜 +29
- -1点:-30以下
B3:上昇銘柄比率
東証プライム約1,540銘柄のうち、前日比プラスで引けた銘柄の割合です。値上がり業種比率(B1)よりも粒度の細かい全体感が見えるのがポイントです。
- +1点:65%以上が上昇(圧倒的な買い優勢)
- 0点:35〜64%
- -1点:35%以下(売り優勢)
C1:シクリカル-ディフェンシブ差
シクリカル(景気敏感)セクターの平均騰落率と、ディフェンシブ(景気非敏感)セクターの平均騰落率の差です。リスクオン/リスクオフの本丸ともいえる指標で、投資家のリスク許容度が一目で分かるのが魅力です。
ディフェンシブ(6業種):食料品、医薬品、電気・ガス業、陸運業、水産・農林業、空運業
教科書的に景気敏感度が高い業種をシクリカル、生活必需品や公共インフラのように景気の影響を受けにくい業種をディフェンシブとして選んでいます。その他19業種(建設・金融・小売・情通・素材系など)はどちらでもない扱いです。
- +1点:差が+1.0%以上(リスクオン明確)
- 0点:±1.0%以内
- -1点:-1.0%以下(リスクオフ明確)
C2:売買代金急増銘柄の平均騰落率
売買代金が過去平均の1.5倍以上に急増した銘柄たちの、平均騰落率を見る指標です。資金が流入している先でどんな動きが起きているかが分かるので、個別銘柄レベルのモメンタムが健全かどうかが見えてきます。
- +1点:平均騰落率が+2.0%以上
- 0点:±2.0%以内
- -1点:-2.0%以下
C3:RSI健全度
RSI(相対力指数)が50以上の銘柄比率と、70以上(過熱域)の銘柄比率を組み合わせた指標です。「過熱なき上昇」かどうかを見ることができます。
- +1点:RSI50以上が55%以上、かつRSI70以上が20%未満(健全な上昇)
- 0点:上記の中間
- -1点:RSI70以上が25%超(過熱警戒)
D群は先ほど触れたとおり、プラスのスコアは出ない設計です。「過熱しているほどリスクは高まる」という考え方で、リスクの高まり具合をマイナススコアで表現しています。
D1:過熱度ブレーキ
RSI70超の銘柄比率が20%を超えているか、あるいは騰落レシオ25日が120を超えているかをチェックします。どちらかに該当すると-2点が付く、やや厳しめの設計です。過熱感が強い局面では、短期的な反落リスクが高まっていると考えて警戒します。
- 0点:RSI70超比率が20%以下、かつ騰落レシオが120以下
- -2点:いずれかが基準超過(過熱警戒)
D2:資金集中リスク
売買代金上位3銘柄が市場全体の売買代金に占める割合を見ます。特定銘柄に資金が偏りすぎていると、その銘柄の値動きで市場全体が動いてしまうので、相場の健全性という意味ではあまり良くない状態、という判断です。
- 0点:TOP3シェアが30%以下
- -1点:30%超(資金集中リスクあり)
E1:VIX
米国の恐怖指数VIXの水準です。市場のリスク許容度を表す代表的な指標で、低いほどリスクオン、高いほどリスクオフという具合に、投資家の不安感が数値として見えてきます。
- +1点:VIX 15未満(リスクオン明確)
- 0点:15〜25(中立圏)
- -1点:25超(警戒域)
E2:米国株合算
前日のナスダック総合指数とS&P500の騰落率の合算値です。日本株は米国株の動きにどうしても引っ張られる傾向があるので、前日の米国市場の結果はその日の日本株を見るうえで外せない材料になります。
- +1点:合算が+1%以上
- 0点:±1%以内
- -1点:-1%以下
スコアの読み方 ─ 7段階の判定レンジ
11因子の合計スコアは、以下のように7段階で判定しています。
| スコアレンジ | 判定 | 相場の状態 |
|---|---|---|
| +7 〜 +11 | 強気・全面リスクオン | ほぼ全因子がプラス。買いが市場全体に広がった状態 |
| +4 〜 +6 | 強気 | トレンド・幅・勢いが揃って上昇基調 |
| +1 〜 +3 | やや強気 | 上昇傾向だが力強さは限定的 |
| -1 〜 0 | 中立・様子見 | 方向感に欠ける局面 |
| -3 〜 -2 | やや弱気 | 下落圧力が優勢だが、底堅さも残る |
| -6 〜 -4 | 弱気 | 広範囲の下落・リスクオフ明確 |
| -9 〜 -7 | 全面安・警戒 | ほぼ全因子がマイナス。売りが市場全体に広がった状態 |
実例:2026年4月13〜17日の週間スコア推移
実際にこのモデルを使うと、1週間の相場の動きがどんなふうに数値化されるのか、見てみましょう。2026年4月13日〜17日のスコア推移です。
| 日付 | 総合 | A群 トレンド | B群 幅需給 | C群 勢い | D群 過熱 | E群 マクロ | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4/13(月) | -5 | -2 | -2 | -1 | 0 | 0 | 弱気 |
| 4/14(火) | +5 | +2 | +1 | +2 | 0 | 0 | 強気 |
| 4/15(水) | +2 | +1 | +1 | 0 | 0 | 0 | やや強気 |
| 4/16(木) | +8 | +3 | +2 | +3 | -1 | +1 | 強気・リスクオン |
| 4/17(金) | -4 | 0 | -2 | +1 | -3 | 0 | 弱気 |
このスコア推移からは、いくつかの特徴が読み取れます。月曜は中東情勢の緊迫と原油急騰を受けて-5ptの弱気スタートに。そこから火曜には値上がり業種が4業種から24業種へと急拡大し、シクリカル主導の全面高によってA群+2・C群+2と日本株内部のエネルギーが急回復、+5ptまで10ポイントの急改善を見せました。木曜には日経平均が史上最高値を記録し、A群+3・B群+2・C群+3と3群すべてが満点圏まで伸びて+8ptという今週の最高値を付けています。ただ金曜には反動で-4ptと急落。ここで注目したいのは金曜のD群が-3まで下がったことで、過熱度ブレーキ(-2)と資金集中リスク(-1)の両方が点灯しています。急騰の翌日に過熱調整のシグナルがちゃんと出る、という形で、モデルが機能している例ですね。
このモデルを使うメリット
11因子モデルを使ってみて実感しているメリットは、だいたい次の3つです。
- 感覚ではなく数値で比較できる:「今日は強かった」ではなく「+6ptだった」と数字で残せるので、過去の相場との比較や後からの振り返りがしやすくなります。
- 因子分解で「なぜ強いのか」が分かる:総合スコアが同じ+5でも、A群主導なのかC群主導なのかで相場の性質はぜんぜん違います。5つの群の内訳を見ることで、上昇の質が見えてくるのが面白いところです。
- 過熱シグナルを見逃しにくい:D群が独立した群として動くので、上昇相場の裏でリスクが溜まっていることをスコアで気づけるようになります。
モデルの限界と注意点
どんなに指標を組み合わせて作ったモデルでも、地政学リスクや要人発言、金融政策の急変など、相場は一夜にして一変します。11因子モデルは過去のデータから計算できる指標の組み合わせなので、突発的なイベントを予知するようなものではありません。スコアはあくまで「今現在の相場の立ち位置を数値化してみたもの」であって、将来を保証するものではない、という点はお忘れなく。
それから、もう一度お伝えしておきたいのが、このモデルは私が勝手に設計して、勝手に運用しているものだということ。学術的に検証されたものでもなければ、市場で認知されているものでもありません。あくまで私自身の相場観察を助けるためのツールであって、絶対の基準ではないです。使っていただく場合は、他の指標や情報と併用して、最終的な投資判断はご自身の責任で行うようにしてください。
まとめ
- 日本株市場の状態を11個の指標で採点する、私独自のスコアリング手法
- 5つの因子群(A トレンド/B 幅・需給/C 勢い/D 過熱/E マクロ)で構成
- 合計スコアは-9 〜 +11の範囲、7段階で判定
- D群がマイナスのみの非対称設計で、過熱リスクを独立して把握できる
- 感覚的な判断を補う「客観的な数値」という位置づけ
- 相場は水物、モデルは絶対ではない点は忘れずに
本ブログの日次・週次レポートで出てくる「+6pt」「-4pt」といったスコアは、このモデルによる採点結果です。A〜E群の内訳もレポート内で出しているので、「なぜ今日はこのスコアなのか」を因子分解で見られる作りになっています。日々の相場観察の参考にしてもらえたら嬉しいです。
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